愛より淡く
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2008年09月12日(金) |
破滅に導く「肌の触れ合いへの要求」 |
何度読んでも、ほとんど何も感じなかった小説を、昨夜、読み直してみると、なぜだかじわ〜っときてしまった。
学生時代に英語のリーダーのテキストになっていた小説だった。
中年の男女が登場する物語で、女性の方は、いわゆるさみしい境遇にある夫人だった。
夫人は、夫には顧みてもらえず、娘も成長して親離れしていて、いつもひとりぼっちで長い夜をやり過ごしていた。
でも、ひょんなことから、ある男性と知り合うことになり、夫人はしだいに彼に惹かれていく。
二人は、しばし、夫人の家で会い、哲学談義?のようなものに花を咲かせるようになる。
男性は、夫人のことを、女性としてではなく、同志?のような感覚で見ていた。
でも夫人の方は、そうではなかった。
そう、それはおそらく恋心。
ある夜、内に秘めたる恋情を抑えきれなくなった夫人は、とうとう思い切った行動に出てしまう。
そしてこの思い切った行動が、後に破滅的な結末を生むことになる。
その夫人の思い切った行動とは、いつものように自分の思想について熱弁をふるっていた男性の手をとり、自分のほっぺたにおしつけるという行動だった。
これが、夫人にとって、初めてのスキンシップというか肌のふれあいへの要求?だったのかもしれない。
でも、男性は、困惑してしまう。
同志だと思っていた夫人が、自分をそういう対象と見ていたなんて!と、幻滅に近いものを味わい、逃げるように夫人の家を去るのだった。
そして、二人は、喫茶店(菓子店)で落ち合い、今後もう会わないことを、互いに話し合って決めたのだった。
夫人は、その後どうなったのかというと、また一人ぼっちで長いさみしい夜を過ごす元の境遇に戻ってしまった。
でも、男性との薔薇色の日々を忘れられずに、
しだいに酒に溺れるようになっていく。
おそらく、酒に浸りながら、かつて男性とこの場所で語り合った楽しかった日々を思い出していたのだろう。
そんなある日、泥酔した夫人は、線路沿いをおぼつかない足取りで歩いているうちに、列車に轢かれてしまう。
夫人の轢死事件を、男性は偶然、新聞で目にする。
そして、夫人とのことを回想し、
その後の夫人のさみしい境遇を想像する。
もしかしたら、自分が彼女の人生を台無しにしてしまったのではないかと いう思いが頭をかすめる。
というふうに私は勝手に解釈して、じわ〜とこみあげてきたのですが、こういう気持になったのは、昨夜がはじめてだったのでした。
つづく
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