愛より淡く
DiaryINDEX|past|will
2002年09月12日(木) |
ハネムーンで起きた悲劇 |
「じぶん音楽大学に行ったらええねん、ボク、音大に通う女の子に憧れてるねん」
その昔、好きだった男の子のその一言で私はピアノ科受験を決意した。
今思えば主体性もなんにもなかった。ほとんど思いつきに近かった。
あなたのためにがんばるわ!!あなた好みのぉあなたが好みのぉ♪わたしになりたい〜♪てか。
ピアノ科を受験するために紹介してもらった先生は、私と同じ高校の出身だった。 本来ならピアニストとして活躍できるほどの才能を持った人だったそうだが、わけあって自宅にひきこもり音大受験生を対象にピアノを教えておられた。
先生は小柄でほっそりとしていて、純日本的な美しい人だった。レッスンの時はいつもワンピース姿だった。俳優の唐沢寿明さんに似ている弟さんがいた。 一番最初のレッスンの時に、教室の場所がわからず、その弟さんが駅まで迎えに来てくれたのだ。
先生は、新婚旅行先のヨーロッパでご主人を亡くされている。ご主人は彼女の目の
前で交通事故に遭ってそのまま帰らぬ人になってしまったそうだ。
ハネムーンの予期せぬ惨事だった。
あまりのショッキングな出来事に、先生は一時的に精神に支障をきたしてしまわれたとのこと。
先生には半年近く習ったけれど、結局受験は断念した。先生にピアノ科はとても無理だと言われてしまったことや経済的な事情もあったけれど、一番の原因は、その子に失恋したことかもしれない。やる気激減。
それにあまりにあさはかすぎた。ピアノ科がそんな生半可な気持ちで受験できるほど甘いものではないということすらわかっていなかった。身のほど知らずもいいとこだった。お恥ずかしい限りである。
でもそのおかげで先生に出会えたので、短い間だったけど受験を志してよかったと思っている。
先生は、なんというか、秋の日差しのような儚くてかよわいイメージだった。
ありがとうございましたゥ
|