記憶の記録。
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2003年12月01日(月)

いよいよM先生と会う日がやってきた。
昨夜の寝つきが悪かったせいで、朝起きるのは辛かったが何とか用意を手伝ってもらって予約時間には間に合った。
診察室に入って、まず「正直、こんなに早く転院されてこられるとは思ってなかったんですが…O先生とは納得いくまでお話できましたか?」と言われた。
入院中の面談時に、MちゃんがO先生に嫌われている気がする、話が通じあわないと感じている云々というのを転院理由に挙げていたせいだろう。
だけど、そう感じているのはMちゃんだけで、アタシにしてみれば転院の第一の理由は「Y病院は入院設備が整っており、夜間の救急対応もしてくれる」ってこと、次に「ケースワーカーさんが常駐している」ことと「電車に乗らずに通える」ことだ。
それらのことをO先生に話した上で、O先生がその日のうちに紹介状を書いてくれたのだ。
M先生にそう告げると、「ああ、分かりました」と納得されたようだった。
他の科よりも紹介状や前の病院でのことを気にするという点で、精神科業界というのは本当に特殊なんだなとつくづく思う。
O先生のところに行くのも、O崎先生の直接の電話での紹介があったからこそ即日の初診が許されたんだもの。

それはともかく、今日の診察ではこれからの治療方針と頻度の話をした。
方針としては、DIDそのものよりも本体のMちゃんの長年の抑鬱状態と幾つかの神経症症状の軽減が目標だ。もちろん、場合に応じては人格間の混乱の平静化なども行ってもらうけれども、とにかく私達に必要なのは本体の生きる力だ。
彼女にとっては、退院後の今の状態は「静かな絶望に満ちた日々」らしい。
「先生と周りの人の迷惑になるので自分から死んだりはしないけれど、出来れば早く自分が死ねばいいと思う」と話していた。パニック発作が出るくせに、「事故に巻き込まれて死んでしまいたい」願望はあるらしい。
怒りをぶつけるのは簡単だ。
他の苦労人を引き合いに出して、人生観を語るのも簡単だ。
でも、そんなことで私達が救われるわけもないのだ。
大丈夫、私達はあなたを見捨てないよ、Mちゃん。
一緒に頑張るのだ。
そう、一緒に。

頻度としては、2週に一回ということになった。
ここでもやっぱり「ゆっくりいきましょう」という言葉が出る。
全くですと深くうなづく。

M先生は終始冷静で淡々と話される。
多分、Mちゃんは「嫌われている」と怯えているのだろう。
でも、今までのことを考えると、新しく描き始める地図のナビゲーターにはこれくらいの冷静な距離を持てる先生がいい。
O崎先生との8年間は、とても大事な時間であるとともに多少癒着が大きすぎた時間でもあったから。
こんなことをいえるまでにも、長い時間かかったけれど(もっとも、これをいえる人格自体が今は私と数人だけだろうけど)。
あとは、私達が頑張ってMちゃんの悲しい思い込みに飲まれないようにするだけだ。

会計をすませて、薬を2週間分もらうとやはり結構な出費だった。
32条の申請も早く考えたい。
今まで頑張ったんだもの、必要な助成制度は受ければいいんだよ、Mちゃん(彼女は『自分みたいなうそつきには必要ない』と言い張るので)


昼過ぎに帰ってから、一人で徒歩10分ほどのスーパーまで散歩を兼ねて買い物に出たところ、遁走が出た。バス停の前を通り過ぎる瞬間、音を聞いて「ああ、バスが来てるんだな」と思ったのだが、次に気がつけばもうバスの中で、自分がいたバス停から3つも先に来ていた。誰か今日の診察がやっぱり怖くて遠くに逃げたかったのかな、と考えながら仕方なくそのまま10分ほどバスに乗り遠い駅前のスーパーまで行った。
本屋をのぞき、そこでまた記憶がとんだ。
次に気がついたのは某クドナルドの座席で、目の前には大きいハンバーガー3つ分の包み紙。
うわあぁぁ。
ここしばらく、記憶を飛ばしての過食なんかしていなかったのに。
よっぽど診察がストレスだったのかと怯えながら恥ずかしい気持ちで店を出る(仕方ないのは分かってるけど、やっぱり恥ずかしいものです…)。
スーパーでは子供人格達が協力して一生懸命考えて千円以内で夕飯のおかずをお買い物。うまく予算内に収まり、ゴキゲンだった。こういう、いわゆる「育てなおし」に日々付き合ってくれる妹やS達に本当に感謝している。
いつの日か、きっとどの子供達も全ての感覚や記憶を共有できるだろうな、と信じられる。
が、買い物を終えて帰宅するも、ハンバーガーのことはすぐには言い出せなかった。
どうにもバツが悪い感じがして。
でも、結局バレることとなった。
帰宅してすぐ、アタシの腕が誰かにのっとられ(オカルト的比喩ではなく、DIDによくある感覚です)、トイレの中で口に指を突っ込まれ嘔吐してしまった。
気分悪さでいっぱいの頭の中に、「してやったり!」という感情が混じる。そういえば、買い物に出る前にもラーメンやケーキ類をやたら食べていた人格がいた。昼食を食べたにも関わらず、である。
ああしまったな、と思う。
ストレスである程度の過食に走るのはこの身体の癖なので、多少は気にしないのだが、指を突っ込んでまで吐くのはもう昔に卒業しているはずだ。
多分、M先生のところにこれから通い続けられると言う安心感が変な方に向いてしまい、「昔しんどかったこと」の追体験をしようとしているのかもしれないと思う。子供の頃からしんどくて辛くて、でも誰にも話せなかったことを、今ならM先生に救ってもらえるんだろうという期待。
そういう信頼したい気持ちは正しいけれど方法が間違っている、と自分達で自分達を諭す。
そのときに戻って体現して見せなくても、M先生は私達を疑ったりしないのだから、大丈夫。信じよう。ね。
とりあえず、ハンバーガーの件を話して、「過食しそうだったら、あるいは過去に過食していた人格Mzが出ていたら注意して見ててね」と頼む。
一つしかない身体も、どの人格も、もう傷つけたくない。
…しかし吐いたときに血が混じっているのには参った…。
絶対内科行きます、ここで約束します(泣)


色々あって疲れたのだが、ちょっと夜が来るのが怖い。
どうか穏やかに眠れますように。







どうでもいいんだけど、この日記題名つけなくてもいいんですね。
さっき気付きました(驚)




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11:45追記。
「契約書」の話をするのをうっかり忘れていたことを思い出した。
明日、病院に電話してM先生に伝えてもらえるかどうか聞くこと。



あかり