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2004年09月27日(月) 「良夜」- 後の月編 -

※だ、である調に疲れたのでしばし休憩。

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 まぶしく熱い夏が終わって季節は秋になりました。

そして明日は天保暦の8月15日。今年は中秋の名月が満月と重なります。28日の東京での月の出は17時32分、南中(月の中心が子午線を通過する)は23時38分だそうです。晴れるといいですね。お月見。

ここ数日は天候が不順なので気になりますが、お月見ができない年は豊作とも言われますから、たとえ見えなくともよしとしましょう。

再録をつづけて今年で4年めになるので、もう飽きた、という方もいらっしゃるでしょう。まあ年中行事ということでお許しいただいて今年も再録してしまいます。今年は後半を大幅に改変しました。


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     「紫苑と良夜 - 後の月 -」

 この季節になると、実家の庭には薄紫の紫苑の花が咲きます。

日ごとに空が澄んでくるように感じるいまの季節、ふんわりと房になって揺れる紫苑の花を小さい頃は飽かずに眺めていました。

紫苑はキク科の多年草。古い時代には鎮咳・去痰などの薬草として用いられていましたが、儚いうすむらさきの花が美しいので、しだいに観賞用としての栽培が盛んになったようです。

紫苑が咲くとお月見の季節。
月明かりの綺麗な夜、主に陰暦の8月15日(今年は陽暦の9月28日)の中秋の名月の夜のことを「良夜(りょうや)」と呼ぶそうです。

語源は北宋の詩人蘇東坡の書『後赤壁賦』の

  「月白く風清し、此の良夜を如何・・・」

や『徒然草』の

  「この宿、清明なるゆゑに、月を翫(もてあそ)ぶに良夜とす」

などからきているようです。

月の美しい夜は十五夜だけではありません。中秋の名月から一ヶ月後、陰暦9月13日の十三夜は「後の月」とも呼ばれ日本では古くからこちらが最も美しい月だと云われてきました。お月見は秋の収穫を祝うことから、十三夜の月が「栗や豆の形に似ている」という説もあるそうですが、天候が不順な中秋の名月の頃より安定して恵まれることが多いため、より澄んだ空に昇る「後の月」のほうが綺麗に見えることに由来しているようです。

お団子や里芋を月に見立て神酒を備え、月を眺めながら詩歌を詠み、酒宴に興じていた古き良き時代の人々の姿が忍ばれます。

忙しさに追われて夜空を見上げるのも忘れがちな毎日ですが、たまにはゆっくりと空を見上げて美しい良夜を楽しみたいものです。

そんな日は、窓からの風に揺れる懐かしい紫苑の花を部屋に飾って。  

  
  いもうとの小さき歩みいそがせて千代紙かひに行く月夜かな

            /木下利玄


              (2001.9.10付日記を改稿)

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