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2003年06月26日(木) バンベルクの騎士と天使の足

 ヨーロッパの6月は1年のなかでいちばんいい季節。

梅雨はなく、いろんな花々が咲き、赤や青のベリーが実をつけ、各地でカーニバルが行われるさわやかな季節。

本来ならそうなのだろうけれど、今年のドイツは違っているらしい。到着した日に連絡を入れて、きょう会うことになったバンベルクに住む友人のシュトラウス夫人はそう言っていた。

今年は異常気象で5月から気温が上がり、もう6週間も雨が降らないカラカラ天気がつづいているのだそう。おかげで夫人宅のさくらんぼの樹は、夫妻がクロアチアにバカンスに出かけている間に、果実は赤をとおり越してまっ黒になってしまった。「去年はパーフェクトだったのに…」と残念そうだ。

広くて手入れの行きとどいたシュトラウス家のガーデンのさくらんぼの樹の下に長椅子をおいて、わたしは昼寝をさせてもらった。そのあと緑茶と夕食をご馳走になる。お礼にお土産に持ってきていた簡易ゆかたと巾着、それに扇子を渡した。

朝、エルランゲンからバンベルク中央駅まで汽車で移動して、シュトラウス夫妻宅を訪問する前に、懐かしいバンベルクの街を歩いてみた。2年前にも歩いた街。広場に立つ市、土産物のお店、ガラスの工芸店、宝石店、それにレーグニッツ川に架かる橋の上に建てられ、壁面に美しいフレスコ画が描かれている旧市庁舎の中を通り抜ける。ここはわたしのお気に入りの場所。何が楽しいかと言えば、フレスコ画から彫刻として立体的に川に飛び出している「天使の足」がなんとも愛嬌があって最高にかわいらしい。18世紀ロココ調の芸術。

大聖堂(Dom)で、13世紀初めに作られた中世の理想の騎士像である「バンベルガー・ライター(バンベルクの騎士)」の像を見上げていたら、日本人の団体と遇った。モノトーン好きのヨーロッパ人に比べて、日本の人々はカラフルな服装を身に着けているので、それなりに目立つ。2年前にわたしも見学した古い宮殿とミュージアムを見学してDomまで巡って来たのだろう。今回の旅では日本人にほとんど遇っていない。それだけ海外に出ている人が少ないようだ。

バンベルクはほんとうに美しい街だ。ニュルンベルクとならんで古城街道に位置する街には、レーグニッツ川と大きな運河マイン・ドナウ・カナルが流れていて、川遊覧が楽しめる。レーグニッツ川沿いにはオレンジの高屋根、白い壁に窓木枠が美しいたくさんの採光窓を持つ独特の家屋、それぞれの窓には花、バルコニーにも色とりどりの花が揺れるロマンチックな往時の漁師たちの家が並んでいる。ここは「小さなヴェニス」と呼ばれるドイツの世界遺産。

懐かしい場所を巡りながら、Dom広場の下のガラス工芸店で馬の絵のステンドグラスを買う。前回寄ったときは鳥のステンドグラスを買ったのだった。今度はみどりの草原に立つ鹿毛の精悍な馬。75ユーロ(1万円くらい)。


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夏音 |MAILMy追加