天国の扉
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2006年11月16日(木)




昨日眠れなかった分、ぐっすりと10時まで寝てしまっていた。
それから午前中は、あちこちに電話。

近々道路工事が始まるので、その家屋調査の手配。
手術の日程に合わせて、新聞と郵便を止める手配。
郵便は直に行って書類を書かないと止められないそうだ。あとまわし。
取引先にも電話。
入院・手術の日程を伝え、これからの仕事を休ませてもらえるように段取り。
「わかった。復帰できる状態になったら電話下さい」
年末進行のこの時期に、迷惑かけて申し訳ないけれど、なんとか年末年始の休みには仕事が出来る状態に持っていくからね、と電話を切る。

お昼に子供が帰ってきた。
今日は期末テストの初日で給食がなかったのだ。
しまった。お昼ご飯に何も用意をしていない。
食材はあるのだけれど、作る気力がない。
お金を渡して、子供にコンビニで何か買ってきてくれるように頼む。
一緒におにぎりとサンドイッチをほおばる。

午後からは、昨日買ったお菓子を持って、友達のところに、入院日、車を出してもらえるようにお願いに行く。
スケジュールが固まったことを話しているうちに、不覚にも泣いてしまった。申し訳ない。謝りながら、涙を必死に止める。
その後、入院のための品物の買い物。
あいにくの雨の中、歩きで雑貨屋に向かう。歩いてる最中も出て来る涙をぬぐいながら、情けなく思う。
入院中に使うスプーンやフォーク、箸に箸箱。蓋付きのマグカップ。洗面器を100円ショップで購入。私が帝王切開を受けたときには、食事の時のスプーンの金属の味がとても嫌だったので、スプーンは金属のものと竹製のもの、陶製のものをそれぞれ準備。
銀行で、先月分の仕事の入金確認。まだ入金されてなかったorz
仕方がないので、生活費の口座からおろす。
買い物途中、通りがかりのスーパーでボジョレー・ヌーボだったんだなと思う。
毎年、二人で味わっていたボジョレー。買いたかったけれど、荷物がありすぎるから購入を控えた。
その後、ドラッグストアでハブラシセット、シャンプーセット、ウェットティッシュなどを購入。
最後に衣料品店を回って、下着代わりのTシャツ、ボクサーブリーフ、靴下、バスタオル、枕の下に敷く大判のバスタオル、タオルを数枚ずつ購入。
ついでに子供の下着と靴下も買う。
今日だけで2万ちかくの支出。
早く入金がありますように(>_<)

そういうことをしている間に、携帯に友達からmailが入る。
皆それぞれに心配してくれている。
そんなふうに心配を掛けてしまうから、内緒にしていたのに、取引先にいる友達から話を聞いたらしい。
あのおしゃべりめ……と思いながらも、口止めをちゃんとしておかなかったことにちょっと後悔しつつ、皆の思いやりに感謝する。

あまりに荷物が多くなりすぎて、帰りはタクシーで帰ってきた。
帰宅後、少し眠る。

主人が実家を回ってから帰ってきた。
入院前に実家の義母のために食材の買い出しに付き合ってきたのだ。
「これ、あったから」
とボジョレーを買ってきてくれた。考えることがいつも一緒だ。
「なぜかわからないけど、グラス2個つけてくれたよ」
急きょ、夕食をワインに合うメニューに変更して、2人でもらったグラスを使って楽しむ。
食後、また眠ってしまった。

人の親切がものすごく身にしみる。
たくさんの買い物袋をかかえていたのを見かねて、まとめますか? と大きな袋に入れてくれた衣料品店のお姉さん。
大きな荷物を気遣ってくれたタクシーの運転手さん。
ワイングラスを2つサービスしてくれたお店の人。
快く入院日のドライバー役を引き受けてくれた友達。
mailで一生懸命はげまし、なぐさめてくれる友達。
みんな、みんな、ありがとう。

2006年11月15日(水)




月曜日、二人で検査の結果を聞きに行く。
やはり大腸ガン。正確には直腸ガン。
直腸とS字結腸の境目あたりに腫瘍があるらしい。
CT・バリウムなどの検査結果により、目に見える転移はないとのこと。
「ほかはきれいなものですよ」
それを聞いてちょっと安心できた。
ただし、ステージは2もしくは3。
3じゃなきゃいいんだけど……。いや、でも4でないだけマシ。
主人が腹腔鏡手術の話を持ちだす。
主治医が「ここでは腹腔鏡はやってないので、どうしてもということであれば紹介状を書きます」と言ってくれる。
スムーズに大学病院への転院が決まった。

火曜日、ぐずついた天気の中、午前中に紹介状を取りに行く。
午後からはかなりの雨脚だった。
午前中に行っておいてよかった。
主人は、水曜に会社を休む段取りをしてきた。

そして、今日、水曜日。夕べはほとんど眠れなかった。
紹介状と検査結果の入った大きな袋をもって、朝も7時前から家を出発。
診療受付時間の8時半よりかなり早く大学病院へ到着する。
紹介状は検査結果の大きな袋に入っていて、どこが宛先だかわからない。
とりあえず内科で初診を申し込んでみたら、宛先は外科だった。
内科から外科にまわされ、12時近くまで、延々とまたされる。
その後初診の問診。
入院や手術の具体的日程が示される。今のスケジュールだと12月の末か、1月の頭しか空いていないとのこと。
「できるだけ早い方が……」
と言ってみたら、
「あ、ちょっと待って。もしかして、この時間のキャンセルが出てるから、ここに入れるならば……。来週すぐ入院ということになりますが」
来週早々と聞いて、主人が入院をしぶる。
私も、それはあまりにいきなりの話だと思って、一瞬躊躇した。
一通り問診が終わり、1月頭の日程を考えにおいて、診察を待つ。

いや、でも、ちょっと待てよ。
今のところ、転移は見られないにしても、一刻を争う病気ではないのか?
患部をできるだけ早く取ってしまった方が、安心なのではないか?
そんな考えが頭をよぎり、主人に話す。
「仕事の引継ぎとか段取りが……」
仕事のことなんて、元気になれば、いくらでも取り返せる。
これはきっと何かの導きに違いないんだから。
こんなタイミングでキャンセルがあるなんて、奇跡的なんだから。
待合室で主人を説得した。
何より、このタイミングで手術が出来れば、お正月休みが明けると同時に仕事復帰だって可能じゃないか。
年末年始は家族みんなで過ごすことだってできるじゃないか。
考える時間が長いより、切ってもらった方が絶対いいよ。
「心の準備をする時間が欲しかったんだけど」
と言いながら、主人も納得してくれた。
気持ちはとてもよくわかる。でも、やっぱり早い方がいい。

名前を呼ばれて診察室へ入る。
再度、病状について詳しく説明を受ける。今度の主治医の説明は、とても納得できるものだった。
転移がない場合、5年生存率80%。あった場合、70%。
取り除いた細胞の検査結果によっては抗ガン剤治療などに移行する可能性もあるそうだ。どうか、転移してませんように。
主人が気にしていた人工肛門の問題も、位置的にはまったく必要がないことが分かる。
この大学病院での腹腔鏡手術は症例的にまだ数が少なく、身体にかかる負担も開腹に比べてもそれほど差はないと説明される。
入院期間はどちらも同じ。だったら、なおさら……。
結局、開腹手術にすることに決めた。そして来週入院と話はどんどんと進んでいく。
やはりこれは何かの導きなのだ、と思った。
最初に問診をしてくれた医師と、再度、具体的なスケジュールを話し合い、その後、入院前検査。
結局終わったのは2時を回った頃だった。

「お腹空いたね」
と言いながら、デパートのレストランに向かい、2人でランチ。
前に2人で食べて、とてもおいしかった中華のセットメニューを頼む。
その後、「今年は贈るのやめておこうか?」と話していたお歳暮を「いや、やっぱり、こういうときこそきちんと義理を通さないと」ということで、選びに行く。
早期受けたまりは、なんと今日からだった。
これも不思議な巡り合わせ。

帰り道、明日主人が一人で行く予定だった実家に、二人で報告に行く。
義母も心配そうな顔をしていたが、とんとん拍子に日程が決まったことに喜んでくれた。手術後、数日、子供をあずかっていただくことと、くれぐれも子供には病状に関しては内緒にして欲しいということをお願いして、早々に帰宅する。

あとは入院準備。
手術本番を待つだけ。

がんばれ、パパ!
がんばれ、私!

ガンなんかに絶対負けるもんか。


      

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