![]() |
![]() |
※時間軸&カップリング混合・現代パラレル・バッドエンド注意※ 029:デルタ 「仕方なく、だからな。別にお前からのプレゼントが嬉しかったからではないぞ」 もう毎年恒例になっているホワイトデー前日のあいつからの電話に、俺は笑って問いを返す。 「仕方なしにでも何でも良いよ。 今年もまたデートしてくれるんだろ?バレンタインのお礼デート」 何処で何をしてもらおうかな、といかにも嬉しそうに独り言の様に続けると、彼はうっと黙り込み、暫くしてからぼそぼそと肯定の返事をした。 「本当に、仕方なく、なのだからな。勘違いするな」 「ああ、判った。そういう事にしておくよ」 彼はまだ何か言いたそうだったが、それを無視して話を進める。 「で、どうする?何時くらいからなら会えるんだ?俺は朝から空いてるけど」 尋ねると、彼は一つ溜息をついてから「済ませなければならない用事があるから、昼以降にしてくれ」と言う。 「用事?」 「ああ……会わなければならない者が……」 俺はピンと来て、殊更低い声で尋ねた。 「お前、俺以外とも『お礼デート』の約束をしてるんじゃないだろうな」 ……さっきより幾分長い沈黙の後、彼は引き攣った乾いた声で「まさか」と笑った。 「デートの約束はしていない……」 「ん?デート以外の約束はしてるのか」 「………」 「ガルデン」 答えを促す様に彼の名前を呼ぶと、観念したのか、やはりぼそぼそとした声で弁解めいた事を言う。 「その……お前からのものと同じ様なプレゼントを貰ったから……ホワイトデーにはお返しをしなければならない、とお前が言っていたし……プレゼントを返そうと思って……」 ……要するに、俺以外の誰かが、俺と同じ様に一ヶ月前に彼にプレゼントを渡していて…… で、律儀な彼は、俺へと同じ様にそれにお返しをしよう、と考えていた訳だ。 ……お返しをされた相手が、それを本命と「勘違い」したらどうするつもりだ。 誰から貰ったか知らないけど俺以外にそんなもん返さなくて良いんだよ、と叫びそうになったが、其処をグッと堪えて、出来るだけ優しい声で言ってやる。 「そうか、だったら一つ、良い事を教えてやるよ。 そのお返しのプレゼントを渡す時に、『これは義理だからな』って言うんだ。 『私にはアデューっていう本命が居るから』って」 ……こいつの本命は俺に決まってるんだから、別に間違ったアドバイスはしていない。 彼はいまいち俺の言っている「ギリ」や「ホンメイ」を理解できていない様子だったが、何度も念押しした結果、とりあえず「判った」と返事をした。よしよし。 「出来るだけ早く切り上げて、連絡くれよ」 「ああ……」 「じゃあ、また明日な」 そう言って電話を切る間際、受話器の向こうから「どうなっても知らんからな」という自棄気味の呟きが聞こえた気がした。 ―――――翌日の昼近く。 今日のデートではどうしてやろうかと色々楽しい計画を立てながら連絡を待っていたところ、突然に玄関のドアチャイムが鳴った。 ひょっとしてガルデンだろうか。 ぴんぽんぴんぽんと連打されるチャイムに、つい慌てて走っていく。 「ああ、今開けるよ」 走ったそのままの勢いで、ドアスコープを覗く事もせず「お待たせ」と不用意にドアを開ける。 瞬間、妙な風圧を感じて、俺は反射的に後ずさった。 ドカッ。 「―――――」 一瞬前まで俺が立っていた場所に、まるで槍投げの槍の様に鉄パイプが突き刺さっている。 何があったのか理解するより先に、俺は咄嗟にドアを閉めようとする――――― が、スチール製の分厚いドアが完全に閉まりきるより先に、僅かに残っていた隙間に何かが挟み込まれた。 指だ。 ガツッ、と見ている方が悲鳴を上げたくなる音に、ドアノブを引っ張っていた力が思わず緩む。 するとその……明らかにガルデンのものではない、黒くて無骨な……指は、今の衝撃に何の痛みも感じていないかの様に、とんでもない力でもってドアをこじ開けようとしてきた。 俺は今度こそ身の危険を感じて、必死でそれに抵抗する。 ……無駄だった。 めきめきと音を立てて歪んでいくドア。破られるのも時間の問題だろう。 腕力や握力には自信がある俺ですらどうにもしようがない、それはまさに人外の力と言って良かった。 冷や汗が噴き出してくる。 「何なんだ、誰だよお前!!」 思わず叫ぶが、返事は無い。ただ、ぐるるる、と獣の様な唸り声が聞こえてくるだけだ。 それに、歯軋りとも何ともつかない、ギギギ、という耳障りな音。 ……誰かは知らないが、相手が常軌を逸しているのは判った。 「勘弁してくれよ……」 徐々に開いていくドアを、それでも悪足掻きで全力で引っ張っていると、何故か昨夜の彼の言葉を思い出した。 ―――――どうなっても知らんからな 「……!!」 これまでより更に強い力でドアを引かれ、俺ははっと顔を上げる。 そして凍りつく。 眼前に細く開いた歪んだドアの隙間から、攣り上がり血走った赤い目が、あからさまな狂気と殺意の光を湛えて俺をじっと見据えていた――――― ・ ・ ・ 「―――――うわあああああ!!!」 悲鳴を上げて飛び起きる。 ……飛び起きた事で、今までの恐怖体験が夢だったと気づく。 いつの間にか眠ってしまっていたらしい。 念の為に恐る恐る玄関に行ってみるが、特に何の異常も無い。勿論、床に鉄パイプも刺さっていなかった。 「………は、はああ………」 疲れきって深々と息をつき、携帯の時計を見る。……昼前。 その時、まるで図った様なタイミングでドアチャイムが鳴った。 「!!」 俺は上げかけた悲鳴を飲み込み、目の前のドアを見つめた。 ピンポーン 繰り返されるチャイム。 上がる息を殺し、足音を潜めてドアに近づき、ドアスコープを覗く。 其処には、夢に出て来た様な奴ではなく、淡い若草色の髪をお下げにした小柄な美少女が立っていた。 ……これだけなら、不審に思いつつもドアを開けたかもしれない。 しかし俺は見てしまったのだ。 少女が、ドアチャイムを鳴らしているのとは逆の手に、大きな鉈(なた)を持っているのを…… 「―――――」 絶句し、硬直する。そして居留守を決め込んでやり過ごそうと、一歩・二歩と後ずさる…… 瞬間、握り締めていた携帯電話が、けたたましい呼び出し音を鳴らした。 ……ほんの数秒の間があいた後、ドアチャイムの形を取っていたアプローチは、遠慮なしのノックとドアノブを回すがちゃがちゃという金属音に変化した。 ああ、そう言えば、用が済んだら連絡してくれって、あいつに言っておいたっけ…… 鳴り続ける呼び出し音と、あの華奢な少女によるものだとは信じたくないけたたましい騒音を遠くに聞きながら、俺は茫然と立ち尽くした。 夢なら早く醒めてくれ。 ――――― 当サイトメイン取り扱いの攻三人(アデュー、パティ、シュテル)が作る三角形の中心にガルデンが居て、三人でそれを取り合う、といった感じのラブコメ王道を書くつもりだったのですが…… 思いもよらず人でなしな話になってしまいました。こんな筈では…… ホワイトデー本番はもう少しまともな(ましな)話を書きたいです。 ああ。
アンジェリークspecial2(主人公が茶髪の方)を夜篠嬢より勧められて、埃をかぶってたPS(PS2はうちには無い)を取り出しいそいそとやってみました。 おおお……設定も演出も台詞もすべてがこっ恥ずかしい……!!(だがそれが良い) ゲーム進行のメインである「宇宙の育成」の勝手が判らず、ちんたらちんたらプレイしている為にまだエンディングは迎えていないのですが、光の守護聖ジュリアスや闇の守護聖クラヴィスをはじめとした、様々なタイプのステキなツンデレさんに早くもウハウハしています。 (※ツンデレ……「普段はツンツン、二人っきりの時は急にしおらしくなってデレデレといちゃつく」ようなタイプのキャラクターの事……こちらのサイト様の「ツンデレ初心者の方へ」より) また、「精神」を司る教官にして軍人・偉丈夫・厳つい・傷モノ・最年長の割に相当純情・声が立木文彦氏、と六拍子も七拍子も揃った「ヴィクトール」も、大変な破壊力をお持ちでした。 で、そんな設定に惹かれて好感度や相性をずんどこ上げた結果、彼は「カッコイイ」「頼れる」というより「カワイイ」「守りたくなる(もしくは苛めたくなる)」という「大きな番犬」タイプなんだな……!!と驚きました。キリッとシリアスな表情でおさまっているジャケ絵に騙されていたよ。 最初に書きました通り、まだエンディングにも到達していないのですが、それでも「一回り以上も年の違う主人公に対し、坂を転げ落ちるが如くどんどんメロメロデレデレになっていく」様子は不味いものすら感じます。 また、突然主人公の部屋に訊ねてきてやくたいもない会話をした後、「(またこうやって遊びに来ても)な、いいよな?」と訊いてくる必死さにも目頭が熱くなりました。 表示される顔グラフィックは普通の穏やかな笑顔だったけれど、私はこの台詞に彼の本気を見た気がしたんだ……。 後、「アンジェリーク」シリーズの中で、守護聖たちの力を借りて何かを育てるのが目的のものは須く、下克上萌え要素もあると思いました。 流石コーエークオリティ。
気がつけば2万ヒット、有難う御座います。 歩みの遅い当サイトでは御座いますが、これからもガルデン萌えの旗を掲げてアレやコレやを頑張ります。 ――――― ネットに使用する回線を光ファイバーに変えました。 それに伴いプロバイダも変更致しましたので、これまでの当方のプロバイダメールアドレスは、今月いっぱいで使用できなくなります。 何か御用等御座いましたら、当サイトにも記載のホットメールのアドレスか、御存知の方は携帯の方にメールを送って頂ければ……!と思います。 お手数お掛け致しますが、どうぞ宜しくお願い致します。 ――――― 新しい環境でネットに繋ぐべくケーブルや説明書の海で溺れていた時に思いついた話。 シュテルの角は避雷針(?)みたいに雷の力を集めたりする為のものじゃないかと勝手に考えているのですが。 実はこんな能力もあれば便利だなあと思いました。 エルドギアとの技術提携により、下り最高1000Mbpsを約束。その内光の速さをも超えて過去や未来にもアクセス出来る様になる予定。(これはどちらかと言うとゼファーの管轄か) 関係ない話ですが、シュテルがもし何らかのサイトを作るなら、トップページから激重フラッシュ使いまくり(音も鳴らしまくり)のごてごてしたものになるのではないかなと思いました。
SPITFIRE様のシュテル紹介記事がとても素晴らしかったです! シュテル可愛いよシュテル。 最近、様々なサイト様でステキなシュテル(の話題)をお見かけする事が多くて、とても幸せです。 遂に来るか、シュテルブーム……。(何だろうそれは) (以下ティアダナーンネタバレ含む) ……シュテルなら、黒かろうが白かろうが尻尾が生えていようがとげとげしていようがどれでも魅力的だと思うのですが、ただ一つ、ティアダナーンの闘い第一章の冒頭に出てきた中年男の声にだけは未だに少し馴染めないでいます。 あれはナビアがシュテルを通じてアースティアのリューに呼びかけたもので…… という事は、あの声はシュテルのものだと(シュテルがナビアの言葉を代弁しているのだと)考える事も出来るわけで…… ……う……うーん……デフォルトの鳴き声が野獣の如き唸り声であるシュテルにしては、ちょっと口調が平坦&声質が高過ぎないか……(平坦なのは『機械音声』っぽくしているのだと思いますが) OVAゼファーがあんな良い声しているのにさあ……!! いや、でも、「リューは事と次第によっては人間の使う音声を発する事が出来る」というのが判るだけでも素晴らしいシーンだけどね!! ハグハグの願望の岩のアレといい、邪竜族が人間に化けられる設定といい、リューナイトは異種族間交流に優しいアニメですね。
昨日紹介しましたフリーゲーム、「D-MASTER」なのですが……。 (以下ネタバレ(?)・微妙にスプラッタ注意) 某所、地下迷宮建設予定地にて、銀髪の主と異形の下僕が何やら話し合っている。 「……ガルデン様、此度の迷宮は如何致しましょうか」 「うむ、最初からやたらと規模を大きくしても、侵入者共の動向を見ているのに気をとられて、罠や配下の怪物共まで目が行き届かんしな。 とりあえず深さは地下三階まで、部屋は各階10個ずつで良かろう」 「はっ、承知致しました。して、その罠や魔物はどの様に……」 「そうだな、此処に『腐人(ゾンビ)』、此処には『突刃(突き出す刃)』を配置しよう。『突刃』は維持コストが低い罠の割に、侵入者共への効果が高いからな。多めに配置しておけ」 「侵入者共をおびき寄せる『宝物』は何処に配置致しますか?」 「今は配置する必要はない。 こちらの手勢や資金源がまだ乏しい内は、置いておいた所でそう大した効果は無いし、しかも盗賊どもにすぐに盗られてしまうのだから」 「ははっ。 それではガルデン様、今こそ新たな死の場を創り出し、無機質なる無情と死呼ぶ使い魔共の召喚を」 下僕に促され、主はその三日月の様な唇から、禍々しく響く言霊を二十、三十と零す。 その「力ある言葉」は、幾許かの「資源」(それは例えば、配下の魔物や敵対する冒険者から絞り取った血や魂などだ)を代償に、主の望んだ通りの地下迷宮をこの世に顕現せしめた。 下僕は、主の大いなる力への崇拝の念と、これから訪れる歓喜の刻への喜色をない交ぜにした表情で以って、主の前に跪いた。 「……時は満ちました。 血肉と罠、魔物と宝物の上に君臨せし我らが主よ、あぎとの開かれたこの迷宮にて、さもしく愚かな冒険者共に死出の制裁を……」 「ガルデン様ー」 折角カッコつけてキメようとした所で、何とも緊張感の無い横槍を入れられて、下僕は「む……」と渋面を作った。 それも意に介さず、主の下に馳せ参じてきたのは、やはり下僕と同様に主の下に仕えている死霊術師の魔女である。 「うん?イドロではないか。どうした?」 「いえ、風呂の用意が出来ましたのでお知らせに参ったのですが……」 「ああ、そうか……もうそんな時間だったか。 ……シュテル!」 「は、はい、何でしょうか」 悪い予感を覚えつつ、下僕は主を仰ぎ見る。 それを睥睨し、主は偉そうにとんでもない事を命じた。 「私は小一時間ほど風呂に入ってくるから、その間この迷宮に異常が無いか見ていろ」 「ええっ?!そ、そんな、何を仰るのですか!!もうすぐにでも侵入者共が現れるというのに!」 「最初のうちはそう大したことの無い奴らばかりだから大丈夫だ、盗られるようなものも無いしな」 「そういう問題ではありません!この迷宮の主はガルデン様唯一人、何か異常があったところで、しもべでしかないわたしにはどうする事も……」 いきなりふってわいた災難に慌て、必死で訴える下僕。 しかし主は大物の余裕で、それをばっさり切り捨てる。 「まあ、駄目になった時は駄目になった時で、その経験を生かして次に挑戦すれば良かろう。 ともかく私は風呂に入ってくるからな、呼びに来たりするなよ」 「が、ガルデン様ーー……」 情けない叫びに、遠ざかる主と魔女の足音が被さる。 しばらく呆然としていた下僕だったが、やがて、迷宮に押し入ってきた冒険者達とそれを迎え撃つ配下の魔物達が争い合う物音、更に仕掛けた罠の炸裂音まで耳にして、 (せめてこの迷宮がどの様な末路を辿るかを記録しておかねば……) ……と、悲壮極まりない決意を胸に現場へ向かったのであった。 小一時間後 ……ほこほこと温まった体を寝間着と半纏で包み、銀髪の半エルフが風呂場から出てきた。 片手にスポーツドリンク、もう片手にバスタオルを持って、ゴキゲンな様子である。 「……ふう、良い湯だった」 湯冷めしない内に寝よう、とぺたぺたスリッパを鳴らしながら寝室へ向かう。 と、其処に物凄い勢いで下僕が走ってきた。 「が、ガルデン様!大変です!!」 その姿を見た瞬間、自分が彼に地下迷宮を任せていた事を思い出した半エルフは、途端にきりっと「主」の顔になり、落ち着き払って尋ねた。 「騒々しいな、何があった?やはり駄目になったか?」 すると下僕は(湯上りの熱で少々潤んだ眼差しや、いつにも増して瑞々しく血色の良い肌、濡れて乱れた細い髪などに少なからず動揺しつつも)「し、失礼致しました」と姿勢を正し、深呼吸を一回してから改めて口を開いた。 「じ、実は―――――」 ……下僕の報告に、(冷えるといけないからと魔女に防寒着を着せ付けられてから)急いで馳せ参じた地下迷宮は、それはもうとんでもない有様になっていた。 まず、妙に静まり返った迷宮内の其処彼処に仕掛けられた罠や魔物。 コストは良いがそう大した威力は無かった刃の罠は、幾千もの血と魂を啜った挙句、発動した瞬間に哀れな獲物の体力の実に四割を奪ってしまう凶悪無比な死の剣と成り果て。 やはりコストは良いもののそう強くもなかったゾンビ兵達は、戦の場数を踏んだからか浴びた血から生気を奪ったか、敵の体力を最高で七割近く奪う極悪非道な攻撃力を身につけていた。 また、二千弱ほどしか残っていなかった筈の「資源」は、どうした事か八万九千余りに膨れ上がり、最初はゼロからスタートしたこの迷宮の「知名度」や、同じ闇に棲む者共からの「評価」も、五万だの十万だのと恐ろしい数値を示している。 たった一つしかなく、しかもどうせ盗まれるだろうからと倉庫にしまっておいた「宝物」は、刃の露と消えた侵入者達が落としたものか、現存する限りの全ての種類が所狭しと並べられていた。 そして――――― 「……何だ、これは」 表情を作るのも忘れてぽかんとしている主に追い討ちをかけるのは、下僕が必死で作成した「侵入者」達のリスト。 最初はレベル1や2の初心者(ノービス)や剣士、僧侶、魔法使いなどばかりであったのが、どんどんと高ランク・高レベルのものになってゆき、最後には「剣王」だの「天王」だの「魔王」だのと各職業のマスタークラスがずらっと名前を連ねている。 まさかそんな筈は、と迷宮内の隅に置き去られた侵入者達の成れの果てを検分してみるが、どれも今ではボロボロに傷つき汚れながらも、嘗ては素晴らしい物であっただろうと判る程に立派な装備をしている。 ……下僕の記録に間違いは無いわけだ。 「……最初は確かに、あなた様の仰る通り、取るに足りぬ無謀者ばかりが踏み込んでまいりました。 が、彼奴等を屠っている内に罠や魔物は力を増し、周辺にも『あの迷宮は一度入れば二度と出られぬ』との噂が流布し…… その為、ただの向こう見ずばかりでない、腕に覚えのある者共がやって来るようになりまして……」 普通ならば、その時点でこの迷宮は制圧されて終わりなのであろう。 「迷宮の主」による新たな罠や魔物の召喚、細かな判断や策を仰げぬ状況で、どんどんと勢力を増す侵入者共に抗うのはとてつもなく難しい。 だが、この迷宮はどうやら、初歩も初歩の罠と魔物、浅い階層と少ない部屋だけで、死をも恐れぬ連中の猛攻を防ぎきったらしい。 「……ラッキーだったな」 「斯様な事、運や偶然だけで成し得る事ではありませぬ。 最初の段階での、あなた様の罠や魔物の設置が絶妙であったからでありましょう」 と、下僕が血や灰に塗れた冷たい床に膝を着いた。 それを見たか、魂無き筈のゾンビ兵までもが一斉に跪く。 「な……何だ?」 只ならぬ様相に気色ばむ主に、下僕は深々と頭を垂れ、告げた。 「我らが主よ、今このとき死招く者達の王として主が選ばれました。 此度より王として、あらゆる厄災を遍く全てに・・・」 「な……何……?」 またもぽかんとする主に、顔を上げた下僕は苦笑を浮かべる。 「『評価』が既に十万を超えたのを、御覧になったでしょう」 「あ、ああ……」 「あなた様と同じ道を歩む彼方此方の『迷宮の主』達は、この悪魔の業とでも言うべき『偉業』に畏怖と敬意をあらわし、あなた様こそが己らの頂点に君臨する『迷宮の王』……『ダンジョンマスター』である、と認めたのです」 「…………」 まさか風呂に入ってのんびりしている間に、そんなどえらいものに祭り上げられるとは思ってもいなかった主……王は、言葉も無く目をぱちぱちさせた後、ひとつ大きな溜息をついた。 「……シュテル」 「何でしょうか、我が王よ」 「とりあえず……これからどうしたら良いのだ?」 途方にくれた王に尋ねられ、下僕は小さく笑った。 「それは無論、このまま技を磨き、迷宮の王として君臨し続けるか…… または、同類共からの評価を撥ねつけ、今一度迷宮の構成からやり直す事も可能です」 如何致しますか?と逆に尋ねられた王は、また溜息をついて、 「……とりあえず、一晩寝てから考える……」 言い終わると同時に、迷宮中に響くようなくしゃみをしたのだった。 そんな訳で、ちょっと油断して目を離すと(普通とは違う意味で)えらい事になるゲームだったのでした。 太字部分はゲームからの引用です。不覚にもこれを見た時はちょっと感動してしまいました。 取り敢えず、最初から最後まで吃驚するほどのやりこみ主従ゲーだったという事で……
|
![]() |
![]() |