せきねしんいちの観劇&稽古日記
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2010年03月10日(水) ありがとうの会

 3月10日(水)
 午後から、富士見丘小学校の卒業を祝う会、「ありがとうの会」にお招きいただく。
 ランチルームに集合して、六年生に案内されて体育館へ。
 保護者のみなさん、六年生の出し物を楽しく拝見。
 お礼のカードとプレゼント、お花をいただく。
 終了後、先生方、講師陣で振り返りの会。
 今年の卒業公演のこと、そして来年のことなどなど、たくさんの話。


2010年03月09日(火) リーディング「湯島の境内」

 「湯島の境内」のリーディング本番。
 下北沢の劇小劇場へ向かう。
 みぞれまじりの雨が雪に変わりそうな天気。
 先日、拝見した稽古に少しだけ動きがついて、青井さんが「余所事浄瑠璃」の「三千歳」を語っての上演。
 始まりと終わりにニーナ・シモンの歌が入って。
 終演後、シンポジウム。
 外に出ると吹雪のようなことに。
 青井さん、北川さんに御挨拶して、石原燃ちゃんと失礼する。
 二人で自然食の定食屋さんで食事。
 こんなところがあったんだねえと言い合いながら。


2010年03月05日(金) リーディング「湯島の境内」稽古場見学

 3月5日(金)
 演出家協会主催の近代劇研究会のリーディング、泉鏡花「湯島の境内」の稽古を見学させてもらう。
 演出は青井陽治さん。
 久しぶりに行った西新宿の花伝社。中野坂上から下っていったら、青梅街道沿いの町並みががらりと変わっていてびっくり。
 こんな大きな道やビルがあったっけ?と戸惑う。
 稽古場で石原燃ちゃんと合流。
 北川能功さんの早瀬主税がまっすぐですがすがしい。
 女形でお蔦を演じる樋口さんも、新派の口調を真似るのではなく、ひたすらまっすぐにセリフを発しているのがいい。
 青井さんが稽古の合間にセリフをしゃべる口調が、そのまま新派で、それを聞いているだけでもおもしろかった。
 帰り道、青井さんとおしゃべりしながら、まっすぐに語られる鏡花のセリフがラシーヌのようですねと話す。
 新宿までの長い道を芝居の話、鏡花の話をあれこれしながら。
 初めて見た1986年の「天守物語」@日生劇場のことなどなど。
 本番がとても楽しみ。


2009年11月25日(水) 猫たちと写真

 仕事場の近くの神社は、昨日酉の市だった。
 お参りして熊手を買うわけでもないのだけれど、毎年、露天を一通り冷やかしてみる。
 昨日までの酉の市のにぎわいが嘘のような神社の前の美容室。
 おなじみの猫が昼寝している。いい天気だものね。
 この間まで、首輪の名前が「み」しか読めなかったのが、新しくなって「みぃちゃん」という名前だということが判明。
 さわってもいやがらない、おとなしい猫。
 ひとなでして、写真を一枚。
 実家の猫は、急性の尿毒症で入院していたのだけれど、おしっこが自力で出るようになり、退院が決まったそう。ほっと一安心。
 ベランダにやってくる猫たちは、この頃太ってまるまるとしてきた。冬支度か。
 今日はうまく撮影できなかったので、また今度。


2009年11月21日(土) 学習発表会と演劇が根付くということ

 11月21日(土)
 富士見丘小学校の学習発表会。
 インフルエンザによる学級閉鎖で、昨日の生徒向けの発表は延期、今日の保護者向けの発表が初日ということになったそう。
 朝9時からの開演に間に合うよう家を出る。
 会場の体育館で、前校長先生の宮先生、篠原さん、相馬くんと一緒になる。
 寒いので暖かくしてきて下さいと言われていて、それなりに準備をしていたのだけれど、やっぱり冷えるなあと。それでも、午前中いっぱい、12時半まで1年から6年までの発表をとても楽しく拝見した。
 以下、プログラム順に・・・
 三年生「すごいぞ、大豆パワー」。授業で学んだ大豆についての発表。近くの中野さんの畑で枝豆ともやしが決闘するという場面がおかしい。芝居じたてになっているのだけれど、みんな生き生きと元気にしゃべっていて、感動した。
 四年生「環境 過去から未来へ私たちが守るべきもの」。「3つのR」リデュース・リユース・リサイクルについての発表。各自がつくったエコバッグや、みんなが気をつけて、どれだけ二酸化炭素の排出を減らせたかという、とても具体的な取り組みと研究。玉川上水ができるまでは、時代劇になっていた。すばらしい。
 一年生「むかしばなしのせかいへ うらしまたろう」。ご存じ浦島太郎のお話。海の魚たちがコロスになって、歌で物語をすすめていく構成。魚のかぶりものや、衣装に工夫がいっぱい。乙姫さまは登場しないかわりに、玉手箱のやりとりが秀逸だった。魚たち「この玉手箱をあげましょう。でも、決して開けてはいけません」、浦島「何がはいってるんですか?」、魚たち「開ければわかります」。なんだ、このシュールなやりとりは? そして陸へ戻った浦島さんは、百年経っていることにびっくりして、原作(?)ではたしか、自分で玉手箱を開けておじいさんになったと思うのだけれど、今回は、村人が勝手に(!)開けてしまい、おじいさんになってしまうというもの。ここもまた、なんというか不条理感いっぱいで、終演後、篠原さん、相馬くんと「昔話って不条理だよねえ」「別役さんの本みたい」と言い合った。
 二年生「音楽劇 スーホの白い馬」。モンゴルの楽器、馬頭琴の由来を物語るお話。絵本で何度も読んでいる哀しい物語。白い馬と少年スーホの友情に涙する。スーホ役、馬役、それぞれ何人かでリレーしていくスタイルなのだけれど、場面場面に演じている彼ら彼女たちの工夫が輝いていた。羊の群れを襲う狼役は一人で、たっぷりと舞台一杯をつかっての演技。かっこよかった。映像を多用しながら、最後にみんなで歌うときは、馬頭琴の映像を、舞台横の壁に、プロジェクターを先生が手でもって映写。これもまたライブなあじわいでよかった。
 五年生「音楽とともに世界旅行へ出かけよう」。気球に乗って世界へ行き、その国々の歌を歌っていくという構成。棒の先にボールをつけたものとパネルで気球を表して、どんどん世界をめぐっていく軽やかさがいい。とても演劇的。最初の気球が空に上がっていく場面は、下手のギャラリーを使っていた。
 6年生「将来へのプロローグ」。総合の時間にいろいろな職業の方に来ていただいてうかがったお話を元に、それを再現するという構造。
 将来何になりたい?というやりとりから、じゃあ○○さんに話を聞いてみようよという構成は毎回同じで、いろいろな人に会いに行く。この会いに行った大人達を演じるというのが、おもしろい。ただ、話を聞くだけでなく、その人になってみると、また違ったことに気がつくのではないだろうか。台本も子供たちが相談して構成したそうだ。内科医、セパタクローの選手、ファイナンシャルプランナー、料理研究家などなど、デフォルメするというのではないけれど、6年生が演じる大人ということで、十分おもしろみが生まれている。
 直前に一組、二組がそれぞれ順番に学級閉鎖になってしまい、十分な練習ができなかったそう。たしかに、セリフをしゃべっているのが自信なさそうだったり、誰にしゃべっているのかわからないまま、ただ覚えたセリフを言っているようなところもあった。でも、とてもおもしろい発表になっていると思う。今度の在校生向けの発表に向けて、もっともっとがんばってほしい。
 今日も給食をごちそうになりながら、今後のうちあわせなどをする。
 どの学年の発表も、いろんなところに「演劇」が顔を出しているのが、おもしろかった。こうやって伝統は根付いていくのだなあと思った。
 篠原さんから、雑誌「演劇と教育」をいただく。去年の富士見丘小学校の「お芝居をつくろう」と題材に、篠原さんが「子どもたちと一緒に脚本を作る」という連載をしている。帰りの電車で早速読ませてもらった。上演台本も掲載されていて、とてもなつかしい。去年の今頃、子供たちと一緒にだいほんづくりをしていたことがとてもていねいに書いてある。また、平田オリザさんの全国演劇教育研究集会での講演「なぜ演劇教育なのか?」もとてもおもしろく読んだ。
 今年度の卒業公演の授業も来月からスタートだ。ここしばらく続いた、客演、客演出と、何が違うのか、何が同じなのか、いろいろ考える。ともあれ、気持ちがぐっと引き締まった。いい一日だった。


2009年11月20日(金) ハイリンド「華々しき一族」「お婿さんの学校」

 11月20日(金)
 ハイリンド「華々しき一族」「お婿さんの学校」
 劇読みで一緒だった(といってもチームは別。打ち上げでほとんど初めて楽しくもりあがった)枝元萌さん、それに「短編連続上演」「夢はおもちゃ箱につめこんで」の小泉真希さんが出演。
 ミクシィの「目劇者」コミュで案内をもらって、多根周作さんにチケットをお願いした。感謝。
 もっちゃんと二人で、赤坂レッドシアターへ。
 森本薫の「華々しき一族」。枝元さんが演じる「諏訪」は、杉村春子さんの持ち役。
 軽やかなハイコメディが、心理劇のような感触の重厚な舞台になってて、新鮮。
 思いよりも先に言葉が先行してしまう人物達が織りなす軽やかなコメディというのが、この作品の本来の味じゃないかと思うのだけれど、演出の中野成樹さんは、言葉がより先行していく軽々しさよりも、思い悩んだ果てに選んだ行動が、はてしない混乱の渦を巻き起こすという構造を選んだように思えた。
 枝元さん演じる、舞踊家の諏訪は、軽やかで、登場してから、一気に舞台に風を巻き起こす。鉄風役の芥勘兵衛さんも、この複雑な恋愛を唯一外から見る役割が適確。
 ラスト、須貝が去ってしまったあと、諏訪と二人の娘がハンカチをとりあって泣いて終わるのを、今回はばっさりカット。ラストは深く深くうなだれていく、美納が印象的だった。
 モリエールの「お婿さんの学校」、「亭主学校」っていうタイトルで読んでたんじゃないかと思う。
 とっても楽しい舞台。
 レゴでつくった家のような装置が、ぐっと生きてきた。
 たぶんしとやかなお嬢さん役の小泉さんが、なんだかとても今風の女の子でおかしい。
 大きな荷物を抱えて出てきた瞬間が、「ふるあめりかに袖はぬらさじ」の洋妾口(らしゃめんぐち)の遊女みたいな、そんなふてくされ感。
 「華々しき一族」から「お婿さんの学校」への転換がとてもおしゃれ。「華々しき」の重たさは、これ以降の軽さを際だたせるためだったのかもしれないと思った。
 終演後、小泉さん、枝元さんにごあいさつ。多根さんへも初めまして。
 帰り道は、また少しのんびり帰りたくなって銀座線浅草まわりで。


2009年11月19日(木) 講演会『Gay Spirits』とワールドプレミア

 11月19日(木)
 東工大での講演会「多言語・多文化とともに生きる(9)講演会『Gay Spirits』」、本番の日。
 講演会で本番というのもおかしいが、芝居仕立てなので気分は「初日」だ。
 今日は朝から冷たい雨。
 構成というか構造をどうしたものか、ずっと悩んでいて、昼前にようやく思いつき、これで行こうと決める。
 話の中身は、僕のライフヒストリーがメインなので、何より構造、設定が大事。
 以前の谷岡さんとの打ち合わせでは、関根が来れなくなったかわりに急遽代理でやってきた誰かが、関根についてあることないこと話すというもの。
 この線に沿って、「じゃあ、誰が来るか」ということをずっと考えていた。実は関根は双子でその一方の方の弟、または妹などなど。
 ただ、他人が語るライフヒストリーというのは、ただの伝言でないかぎり、その人が僕をどう思うかということを設定しなくてはならず、そのことで苦労する。
 新しい設定は、あくまでも僕自身だ。名前は最後まで名乗らない予定だけれども。
 劇中(講演中)に登場するエピソードとセリフ(!)の整理をする。
 夕方、大岡山駅の改札で谷岡さんと待ち合わせ。
 歩きながら、設定を変更したことをまずは伝える。
 その後、書類を提出に学科の準備室へ寄り、会場のホールとなりのカフェへ。
 どんなふうに変わったかを説明させてもらう。
  場面は、オーディション会場。僕のイメージでは「劇場」なのだけれど、会場のホールはフラットな部屋なので、まずは普通の部屋でも可ということに。
 「Gay Spirits」という新作舞台のためのオーディション、ゲイの息子を持った母親役のオーディションに女装して、女優のふりをしてやってきたのが僕という設定。
 ダスティン・ホフマンが映画「トッツィー」でやってたようなこと。
 演出家を前に、課題になっているチェーホフの「かもめ」のセリフを語る、最終審査の場面。
 ダスティン・ホフマンはまんまと成功するんだけども、僕は、男だということがばれてしまう。いろいろ言い訳をするんだけどダメで、演出家たちは出て行ってしまう。
 と、一人演出助手の若い男の子が残っているので、彼を相手に話し始める。
 というもの。
 谷岡さんには、視線を決めたいのとタイムキープをお願いしたいので、客席のセンターに座ってもらえるようお願いする。
 で、会場に移動。とてもきれいなホール。全然、劇場ではないのだけれど、やっぱりここは劇場だという設定にしてしまった方が、おもしろそうだと決めた。
 着替えてメークをして、お客様に御挨拶。
 いっこうさん、ミゾさん、黒岩くん、えりさん、もっちゃん、フライングステージのお客様方など、雨の中、ほんとうにありがたい。
 で、開演。
 どうなるかわからないけど、まずはやってみる。
 舞台に飛び出していくのと同じ気持ちで、控え室からホールへ出て行った。
 そして、60分。
 大岡山のホールは、いつの間にか日生劇場の舞台になり(笑)、僕は、客席の暗がりにいる若者とずっと話をしていた。
 ふしぎな時間。そして、話しているのは自分の人生といういつもの講演と同じなはずなのに、全然違う、気持ちでいることがとても不思議だった。
 谷岡さんとの打ち合わせでは、最初と最後が「かもめ」のセリフですと言ったはずが、最後にまたニーナになるだけの度胸がなく(笑)、ややフェードアウト気味に退場して、終わった。
 拍手をいただいて、また出て行って御挨拶。
 やあ、終わった、終わった。僕は何をやったんだろう?
 その後、谷岡さんと溝口さん、僕にこの企画をすすめてくれた二人と一緒に座談会。
 企画のなれそめ、できたこと、できなかったこと、やりたかったことなどなどを話す。
 お客様からの質問で、男役と女役を演じるときの違いについてというのに答えて、少し実演してみる。
 あくまでも「僕はこうです」と言いながら。
 女の人は、歩くときの左右の足の動線がほぼ一直線だけれども(モデルさんは足の前に足を出す歩き方)、男の人は、右足と左足がそれぞれ前に出て二本の線になるということ。そして、女役は、胸(デコルテ)を気持ち上げるような意識でいること、男役でそれをやると宝塚の男役になってしまうので、僕は男の時は気持ち肩を少し前に入れるような気持ちでいること、などを話した。
 その後、近くの居酒屋で打ち上げ。楽しく飲み、しゃべり、いい時間をすごした。
 ごちそうさまでした。
 次はいつになるかわからないのだけれど、おもしろい一人芝居になりそうな作品が生まれたんじゃないかと思う。
 二度目は新鮮さがなくなるねえという意見に、誰かが、「落語みたいにやればいい」と言った。一字一句が同じでなくても、落語のように語っていくと思えば、ずいぶんいろいろなことができるんじゃないか。
 何より、女装してオーディションにやってきて、帰りがたくてぐずぐずしている俳優というのは、なんともうすら哀しくもおかしい。
 演出助手の彼との話の内容も、彼が何を言うかということを変えていけば、いろんな方向へひろがっていくだろう。
 「講演」が「公演」になるといいなと思う。
 誰かが言ってくれた「ワールドプレミア(世界初演)」に立ち会ってくれたみなさんに感謝だ。
 ありがとうございました。


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