せきねしんいちの観劇&稽古日記
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2009年03月25日(水) 富士見丘小学校卒業式

 富士見丘小学校の卒業式にうかがう。
 演劇授業関係では、篠原さん、山本健翔さんと僕が出席。
 今年もまた、卒業証書をもらう前に、舞台の上から、一言挨拶する卒業生達。
 将来の夢を語る彼らの言葉のものおじしない、力強さがたのもしい。
 「俳優になりたい」「声優になりたい」といってくれた彼らの言葉がとてもうれしい。
 来賓の紹介の時間、それまで正面を向いていた卒業生が、上手側の来賓席に座ったまま向き直る。
 他の来賓のみなさんに比べ、僕たちの一言を聞いてくれているとき、彼らの表情がやわらかくなったように見えるのがうれしい。ただの来賓じゃない、僕たちは同じ苦労をした「仲間」だなあと思える瞬間。
 降り出した雨のせいで、毎年恒例の校庭でのアーチは今年はなし。
 そのかわり、校舎の一階の廊下に5年生がつくった花のアーチをくぐって、6年生達が旅立っていくことに。
 いつもわいわいおしゃべりや記念撮影をする時間がないのは、ちょっとさびしいのだけれど、今年もわいわい手を振り、さよならをする。
 卒業式ではとても大きく見えていた彼らが、とってもちっちゃい子どもなんだということに気づいて、びっくりする。舞台俳優を間近に見たときのような驚きと似ている。
 卒業公演の記録DVDをいただいて帰る。楽しみに見せてもらおうと思う。
 卒業おめでとう。楽しい時間をどうもありがとう!


2009年03月24日(火) オーガニックシアター「メッカへの道」

 武蔵野芸能劇場へオーガニックシアター「メッカへの道」を見に行く。
 開演前に、劇団劇作家の石原燃さんと一緒になり、並んで観劇。
 篠原さんは、まっすぐに役にとりくんでいて、みごとな演技。
 終盤の長セリフは、演技とは思えないほど、まっすぐに言葉が生み出されていて、感動。
 「正しく読む」ということよりも、読んでいる、演じている今を強く感じさせる舞台だった。
 終演後、篠原さんにご挨拶。お疲れ様でした。
 帰りの電車では、劇団劇作家の福山さんと、劇団劇作家のことについてあれこれ伺う。


2009年03月22日(日) 稽古場と隅田川

 午前中、篠原久美子さんが出演する、オーガニックシアターのリーディング公演「メッカへの道」の稽古場へおじゃまする。
 通し稽古の後半は拝見する。
 ほとんど初めて見る篠原さんの俳優としての演技が新鮮。そして、終盤、台本を話して語り始める横山道乃さんの自由自在さが圧倒的。
 夜、吾妻橋のアサヒスーパードライホールに「タナトス」という舞台を見に行く。
「開けてはならなかった記憶の扉・・・  漂流していた幽霊舟の中で発見されたのは、廃人となった少女だった。舟は何処から来て、何処を目指し、そして何が起ったのか?全ての答えは、閉ざされた少女の心の中にある。スコットランドヤードに呼び出された一人の心理学者は、少女の心の闇から真実を探り出すよう依頼を受ける。はたして、少女が目にしたものとは・・・」(公式ブログより)
 開演前に作者の実家の浅草のお煎餅やさんのごませんべいをいただいたり、ワンドリンクのサービルがあったり、アットホームな雰囲気が気持ちいい。上演中、特殊な装置でコーヒーの匂いがホールに広がるのも不思議なかんじ。
 お芝居は、大胆なひっくり返しが仕組まれた構造なのだけれど、いま一つわかりにくく、終演後、もやもやした気持ちになる。
 それまで信じて見ていたことをひっくり返すのには、ほんとうはどうなのかということを、もっと強烈に印象づけてほしかったなあと思う。
 強くなった雨の中、吾妻橋を渡り浅草の駅へ。隅田公園の桜はまだ咲かないようだ。


2009年03月20日(金) おやじカフェ

 池袋の西口公演のテントで開催中の「おやじカフェ」にKOBAくんと行く。
 知り合いの堀江さんが、キャストとしてウェイターをしている。
 ドーム型のテントの中がまるまるカフェになっている。
 ウェイターの「おやじ」さんたちが、微妙なパフォーマンスをしながらドリンクやフードを持ってきてくれる。合間には、全員でのダンス(曲はなつかしの「YMCA」や「スカイハイ」)。
 堀江さんは、コムデギャルソンのギャザースカート風のエプロン。他のおじさまがたも、微妙に女子的なテイストになっているのが、おもしろい。サービスするというのは、多分に女性的な気持ちになったりするんだろうか。
 久しぶりのKOBAくんと楽しくおしゃべり。
 後半は、芸術劇場小ホールで上演中の「声紋都市ー父からの手紙」のポストパフォーマンストークが、同じ会場で。そのままいてもかまわないということで。作演出の松田正隆さんと映画監督の是枝裕和さんのトークを聞かせてもらう。
 終了後、KOBAくんと食事をして別れる。
 いっぱい話した一日。


2009年03月19日(木) 劇団印象「青鬼」

 相鉄本多劇場に劇団印象の「青鬼」を見に行く。
 今日も、岸本くん、遠藤くん、相楽みっちゃんと一緒になる。
 先週見せてもらった稽古が断片だったので、一体どんなお話だろうとわくわく。
 旅先でイルカの肉を食べてからすっかりイルカ好きになり、食用のイルカを部屋で飼うほどになった夫と妻のお話。そのうち、イルカは人間の言葉が話せるようになり、どんどん人間になっていく。同時に、夫もどんどんイルカになっていき・・・。
 冒頭から、イルカの着ぐるみが登場してびっくり。卑怯だなあ(笑)と思いながら、一気に引き込まれる。芝居の嘘の楽しさに無理矢理ひきずりこまれるかんじ。
 食べる側と食べられる側に友情があったらどうなるんだろうというお話は、なかなかに深くておもしろい。
 映画「マダガスカル」では、ライオンとシマウマの間に友情があるのだけれど、そんなの絵空事だという観客の思いにちゃんと答えて、終盤、シマウマが肉に見えてしまうライオンが描かれる。
 児童文学の「ドリトル先生」も動物たちがみんな仲良しな設定だけれど(ドリトル先生も含めて)、子どもの頃、大好きだったこのお話が遠くなったのは、ドリトル先生が仲良しのブタのかたわらでハムを食べている挿絵を見てしまったからだ。
 「マダガスカル」は、「魚を食べる」という結論(or逃げ道)を選んで見事だったのだけれど、「青鬼」の結末はもっとシビアだ。
 「食べたら死んでしまう」という、この物語のルールは、「ちょっとだけ食べれば死なないんじゃない」という逃げ道が思い浮かんでしまうのだけれど、これはやっぱり寓話なのだと思う。
 「食べたいほど好き」という言葉のもつ怖さや、食欲の裏にある淋しさまでが感じられる、おもしろい舞台だった。
 終演後の初日乾杯におじゃまする。
 帰りの電車では、もっちゃん、えんちゃんと芝居の話をたくさん。
 なんとなく、まっすぐ帰るのがもったいなくなり、今日も渋谷から銀座線で浅草まで出て、終電までの短い時間、浅草の町を散歩する。


2009年03月17日(火) 「昔の女」

 新国立劇場小ホール「昔の女」(作:ローラント・シンメルプフェニヒ 演出:倉持裕)
 日下部そうくんが出演の舞台に、岸本くんと待ち合わせをして行く。
 開演前に加藤裕さん、相楽満子さんともばったり。

<あらすじ:公式サイトより>
 引越しの準備をしているある三人家族のもとに、突然24年前に別れた夫の恋人が現れた。今は長年連れ添った妻も息子もいるという夫に、その女は永遠の愛を誓う約束を果たしに来たと繰り返し迫り、彼を次第に恐怖へと陥れてゆく……。

 余計なものがそぎ落とされたセリフの文体が「ドイツってかんじね」と勝手な印象。
 時間が微妙に行きつ戻りつする構成に、中盤やや集中がとぎれそうになる。ゆうべの徹夜を後悔する。
 日下部そうくんは、息子役。実年齢よりはずっと若い十代の若者をさらさらと演じている。独特なカラダだなあと感じ入る。
 ラスト、「昔の女」を演じる西田尚美が思い出の歌を歌い、夫、松重豊が徐々に思い出していく場面にひきつけられる。
 それまで、やや過剰にコミカルな演技が多かったのが、ここで一気に「本気」になったような印象。俳優の力のすごさ、芸の力を見た思い。感動する。
 昔の女からのプレゼントを開けて焼け死ぬ妻、燃え上がる家、荷物を入れた段ボール箱から息子の死体が現れる。それまでずっと閉まらなかったドアが開かなくなり、夫はドアの前で死んでいく。そして、すさまじい轟音と炎の中、沈んでいく家の装置。ものすごい。
 皆殺しのラストの割に、観劇後の気分が妙にさっぱりしているのは、この芝居が「悲劇」の骨格を持っているからだと思う。
 「昔の女」を主人公として見れば、この戯曲は、ギリシャ悲劇の「メディア」そのものだ。
 息子を殺し、贈り物で夫の新しい恋人を殺し、夫を絶望の淵に沈め、どこかへ去っていく。
 ただ、「昔の女」の怒りと悲しみは、メディアに比べるとかなり不条理に思える。
 ラフカディオ・ハーンの「怪談」の中の「破約」を思い出す。再婚はしないと誓った夫を残し死んだ妻が、新しい妻のもとへ化けて出て、復讐をする。復讐するなら夫の方じゃないかという聞き手に対して、「それは女の考え方ではない」という語り手。しんみりと哀しく怖い話だ。
 めちゃくちゃじゃないか・・と思いながらも、どこかに同情してしまったり、せつない気持ちになったりするのは、なぜだろう?
 ギリシャの哲学者アリストテレスは、「悲劇は観客の心に怖れと憐れみを呼び起こし、感情を浄化する作用がある」という。
 芝居を見て、そんな気持ちになることはあまりないのだけれど、今日の観劇後は、その言葉にとても納得させられた。
 終演後、楽屋にお邪魔して、そうくんに挨拶。お疲れ様でした。
 新宿駅までの道を、加藤さん、みっちゃんとおしゃべりしながら歩いて帰る。


2009年03月15日(日) 劇団のはじまり

 夜、タックスノットへ。ゲイのメンバーをあつめて新しく劇団を始めたという彼と、おしゃべり。
 相談に乗るというほどのことでもなく、フライングステージが旗上げの頃、どんなだったか、どんな苦労をしたかということなどを話す。
 17年前のことを思い出しながら、今との距離を考える。
 変わったところ、変わらないところ。
 「がんばってね」と言いながら、かえって元気をもらったような気持ち。


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