せきねしんいちの観劇&稽古日記
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2009年02月25日(水) |
富士見丘小学校演劇授業 |
熱はまだ下がらないのだけれど、出かける。これは風邪じゃない、知恵熱だと言い聞かせる。 毎年、この時期に必ず風邪を引くのだけれど、こんなにぎりぎりになってというのは初めて。 この頃の急に寒い陽気、特に体育館での練習は、やっぱりハードなんだと思う。ずいぶん気をつけていたつもりだったのだけれど・・・。いや、これは知恵熱。 今日は、1時間目から4時間目までの授業。 前半は小返し、後半は通し稽古の予定だったのを、昨日の通しを踏まえて、全体の小返しの稽古を午前中いっっぱいていねいにすることにした。 あちこちで芝居が立ち上がってくる。そんなかんじ。 子供たちはすごい。昨日と今日で全然違うことになっていく。文字通り、稽古すればちゃんとよくなっていく。 授業の合間に音楽の染谷先生とそんなことを話す。一日ごとによくなっていくということのすごさ。そして、それを彼ら自身がわかっているということのすごさについて。 持ってきたカラーウィッグは、やはり小学生の女の子にはどぎつすぎるので、別のヘッドドレスをつくることになった(かぶってみた魔女っ子たちはべそをかいてしまった。ごめんなさい)。 後半の全員が登場する場面の動きを、昨日のつづきでていねいにつくっていった。 わあなんて大勢なの?!と思っていたシーンが、そんなに大勢には感じられなくなってきたのは、一人一人がちゃんとしたキャラクターとして描かれている台本のせいもあるけれど、子どもたち一人一人がちゃんとその場にいてくれるからだと思う。しょうがないからいる、いさせられているような子は一人もいない。なんでもなく、あたりまえにそこにいられることのたのもしさ。 明日はリハーサル。 僕は、午後からの仕事を休ませてもらって、まっすぐ家に帰り、まずは寝ることにして、夕方から病院へ行く。
2009年02月24日(火) |
富士見丘小学校演劇授業 |
午前中。20分休みの間に、外クラスのイスのバミリをきめる。昨日の中クラスの教室のイスの位置とは違う、輪になって話し合う形。テープの色も赤にする。 火星人の衣装の確認をする。火星人は台本に指定してあるとおり「タコ」のような形なのだけれど、衣装もそのまんま「タコ」だ。演じる子たちにデザイン画を描いてもらい、それを元に図工の澁谷先生がつくってくれた。赤いトレーナーに、腰のまわりに8本のタコの足がぶらさがっている。8本のうちの何本かには針金の芯が入っていて、自在に曲げられる。足には白い綿で吸盤のようなものがいくつかくっついている。頭は赤いニット帽。赤いのがなかなかなかったのを、昨日100円ショップで見つけて買ってきた。 衣装合わせをしていたら、火星人役の子が「(タコの)吸盤は普通中側じゃない?」と言いだした。言われてみればたしかにそのとおり。でも、これはタコじゃなくて火星人だから、外側にくっついててもいいんじゃない?ということにする。というか、内側につけてしまったらせっかくのアクセントが見えなくなるので。 今日は3、4時間目をグループに分かれての練習、午後は、照明の伊藤さんを迎えての通し稽古という予定だ。 まず、全体の授業予定を説明してから、3チームに分かれる。 僕は体育館で中クラス、篠原さんは視聴覚室で外クラス、渡邉さんには体育館で火星人と魔法使いをお願いした。 渡邉さんとは、後半、火星人と中クラスの場面を一緒にやりましょうと話していたのだけれど、全然時間が足りない。前半の転校生の場面をつくるので、ほぼ時間いっぱいになってしまった。 渡邉さんも火星人チームをつくるのでいっぱいで、魔法使いは平田さんが急遽担当してくれることになった。 かなりばたばたなかんじで午前中が終了。 午後は、まずオープニングの歌とダンスの練習をしてから、通して演じてみてもらう。 今日もお休みの子が何人も、大人達が交替で代役を演じた。ここ数日の練習がちゃんとできている後半に比べて、前半があちこちでうまくいかなくなってしまう。たしかにひさしぶりだものなあ、全体を通すのは。 洋平役の彼がセリフが出なくて涙ぐんでしまう。セリフの最後で誰を指すのかわかっているのに、名前が出てこない。同じ外クラスの子がアドリブで「次の人を指せばいいんだよ」とフォローしていたのがすばらしい。でも、名前がなかなか出てこないのが、もどかしかったんだと思う。そして、友達のフォローがうれしいと、余計泣けてきたりもするんだよなあと思ったりもする。 全体としては、午前中のチーム毎の練習のせいで、それぞれのチームはよくまとまっているのだけれど、全員のチーム感というのがいまひとつな通し稽古になった。 特に、火星人と魔法使いは初めて衣装をつけて登場したので、他のチームは、観客と同じような気持ちで盛り上がってしまった。その後、また芝居にもどるということが、できなかったかもしれない。篠原さんが、後の振り返りで「観客としてリラックスして見ちゃったあと、前のめりになって見る出演者に戻れなかったね」と話していた。 それでも、全体の上演時間は約60分。いいかんじだけど、もう少し短くなるだろう。 終了後の子どもたちとの振り返りでは、「みんなでつくろう」ということを話す。 それぞれのチームだけでがんばるんじゃなくて、ほかのチームとのやりとりをちゃんとしよう。 火星人も魔法使いもとってもおかしいけど、観客としてじゃなく、仲間として見るようにしよう。 明日はどんなことになるか楽しみだ。 魔法使いの衣装が、火星人にくらべて少し地味かもしれないということで、派手なウィッグをかぶってみてはどうだろうということになり、劇団の倉庫に取りに行くことにした。 予定していた劇団劇作家の合評会は、遅くなってしまったので、急遽お休みさせてもらう。 というか、寒くてしかたない。風と雨がほんとに刺すように冷たくかんじられる。 それでも、倉庫でピックアップした後、岸本くんの家での「新・こころ」の同窓会に顔を出すことにする。 もっちゃん、まみぃ、鶴丸くん、まちゃ、えんちゃん、桑島くん、久しぶりの面々。 男ばかりのキャストなので、当たり前だけどみんなが男で、その男感(?)にドキドキする。 もっちゃんの手料理をごちそうになり、一日遅れの誕生日を祝ってもらった。 どうもありがとう! 去年もこうしてお祝いしてもらったんだったと思い出す。 遅くならないうちに、お先に失礼する。さっきまでふらふらしていたのに、暖かさとやさしさのおかげで元気になれたような気持ちでほっかりする。 家に帰って熱を計ったら39度を超えていた。・・・とにかく寝る。
2009年02月23日(月) |
富士見丘小学校演劇授業 |
体温計の電池が切れてしまったので、富士見ヶ丘の百円ショップで購入。 すごい昔、印刷会社でバイトしていたとき、取引先の社販で買ったきり、電池を替えたことはなかった。 今日は、3、4時間目の授業。後半の稽古をする。 授業前に、大人たちは体育館にイスを並べる。 まず、客席最前列のパイプイスを並べる。本番のときの客席がどこまでかわかるように。 それから、中クラスのイスの位置にバミリの赤いテープを貼る。3列×5+1の計16席。 休み時間の間に、魔法使いと火星人の衣装の確認。いいかんじにできあがっている。 今日は欠席が三人いる。風邪だそうでとても心配。 低学年は明日から学級閉鎖のクラスもあるそうだ。 今日から健翔さんが来てくれて、お休みの子の代役を生き生きと演じてくれる。 体育倉庫近くの仮設のひな段と本舞台前のひな段との間は約20メートル(もっとか?)。この間に、中クラスがいつもいて、外クラスの子たちはこの広い体育館のはしとはしでやりとりをする。 健翔さんが思い切りのいい芝居をしてくれたおかげで、外クラスの子たちの声が自然に出てくる。なんでこんなことができるんだろう?というくらい、離れた距離での普通の会話が成立してる。 ラストの全員が登場する場面の稽古をして、ようやく、みんなで芝居をつくったなあというかんじがしてきた。チーム毎の一人一人ががんばってるんじゃなくて、6年生全員でつくる場面。少しずつ形になってきたと思う。 大勢の中での芝居は、すぐによくわからなくなってしまう。 どうしたら、見ていてわかるかということを考えるよりも、演じている彼ら自身がまずわかることが大事だ。 今、誰に話しているかということを一人一人確認しながら、芝居をつくっていく。 今回のお芝居は、大勢でのディスカッションが多いので、誰に話しているのかというのが、ちょっとわかりにくい。全部のセリフがみんなに対しての意見であったりもするので。 それでも、一人一人に「誰にしゃべってる?」と確認していく。 なんだか、よく聞こえないセリフだなあというのは、声が出てないんじゃなくて、誰に向かって話していいのか自信が持てないからだったりする。 後半に登場する先生と国の役人たち。それまでのわさわさわした場面が、すっと真剣な空間になっていく。 誰に話してる?と確認したら、ハヤシさんが演じるスズヤマ先生が、きっちり相手の正面に立ってセリフを言ってくれた。かっこいい。 それに対する役人役のシンカワくんも、受けて立っているのが頼もしい。 から向き合ってくれたのがうれしい。 そんな大人達に対する子供たちの反応も確認。びっくりすると、カラダはどうなる?と、女の子を急に「ワッ!」を脅かしてみた。背中がびくっとして、息が止まる。ほらね、カラダが変わったよね?と話す。 全員が登場する場面の話の中心はどこかも確認。話をちゃんと聞いてないと、その人だけ、そこにいないことになってしまうよと話す。みんなで場面をつくるというのはそういことだよと。余計な動きをすると、集中してないってことが、すぐにわかってしまうよと。 大人でもむずかしい場面。まずはとりかかった、そんなかんじの稽古。 授業のあと、給食をいただきながら、明日の打ち合わせ。 明日は、午前午後、計4時間の授業。 家に帰って、体温計の電池を交換して計ってみたら、やっぱり・・というくらい熱が高い。イチゴとビタミンをたくさんとって寝る。
2009年02月22日(日) |
青年劇場「博士の愛した数式」 |
劇団劇作家の同人である福山啓子さんの台本、演出による「博士の愛した数式」を観にシアターサンモールへ。まだ熱っぽいのだけれど、気合いを入れてシャワーを浴びて出かける。 原作は、小川洋子の同名小説で、映画化もされてる。 事故によって90分しか記憶が残らないようになってしまった数学の元教授と、シングルマザーの家政婦とその息子のお話。 開演前、みっちゃんこと、相楽満子さんに会い、ハグ。 劇中に登場する数についてのエピソードが、とても美しい。 素数、ルート、完全数、友愛数などなど、目の前に繰り広げられるのは、人と人とのドラマなのだけれど、そこに数式の世界が加わっても、とってつけたようなかんじがしないのがいい。かえって抽象的なイメージが広がって、世界に不思議な奥行きが生まれてくる。 マイケル・フレインの「コペンハーゲン」は、量子物理学の用語、たとえば「不確定性原理」というものが劇中、大きな意味をもって登場するのだけれど、それと同じようなと言ったらいいだろうか。 数学や物理学というのは、ものすごく理系の現実的なものだという印象があるのに、実はものすごく文学的、芸術的なものなんだと気がつかされる、そんなかんじ。 ラストシーン、登場人物たちが登場してお茶を飲んでいる、それだけの場面で泣けてくる。言葉にならないものが、きっとたくさん胸にひびいたんだと思う。 終演後、福山さん、福島さんにご挨拶。 帰りにヨドバシカメラで買い物をして帰宅する。 熱はようやく平熱に。鼻水が出てしかたないのは、花粉症から来る風邪だからかもしれない。 夜、富士見丘小の明日の授業のためのレジュメを準備する。 限られた授業時間を有効に使いたい。子どもたちと一緒に、ああでもないこうでもないと作っていく時間が、今年はとても少ない。ある意味、とても能率的に進んでいるのだけれど、いろいろやってみるのが、芝居づくりのおもしろさだと言えないこともないので、あんまり能率的にやってしまうのもどうだろうかと考える。 でも、大人達が右往左往する時間は無駄なことは間違いない。 明日から金曜の本番まで、ラストスパート、がんばろう。
朝、篠原さん、平田さんと電話で打ち合わせ。 メールのやりとりより、電話で直接話した方がすっきりする。 何より、朝から電話で話すと元気が出るような気持ちになる、この頃だ。 今日は一日、仕事。 仕事先の最寄り駅を下りてすぐの横断歩道で、いやな寒気に襲われる。 案の定、熱が出ていた。またか・・・。 年度末の仕事の前倒しで、今週が仕事の山だ。こちらの締め切りは3月3日。富士見丘小学校の卒業の卒業公演は金曜日なので、二つのピークがほぼ重なっている。 葛根湯を買って帰り、部屋を暖かくして横になるががたがた震えて眠れない。 気合いを入れてつくった野菜スープも食欲がないので、そのまま。しかも、また作りすぎた。 買ってあったハッサクとバナナを食べてみる。
非戦を選ぶ演劇人の会のリーディング「9条は守りたいのに口ベタなあなたへ」でご一緒した、板倉光隆さんが出演している小林多喜二の「蟹工船」の朗読劇を観に(聞きに)、三鷹の武蔵野芸能劇場へ。 伽羅というユニットでの公演で、キャストはみなさん声優としてはベテランの方ばかり。 開演前に上演時間が1時間50分と知り、これはかなりつらいんじゃないかと思ったのだけれど、全然そんなことなかった。あっという間だった。 北洋に船で出て、蟹を捕って加工する労働者達の最低最悪の生活と、資本家による搾取と、ひどい労働条件の中での命がけの闘いが描かれている「蟹工船」。 イデオロギー的なものがクローズアップされて、やや青臭いものになってるんじゃないかという予想はまるっきり裏切られた。 俳優ってすごいなあと思った。 非戦を選ぶ演劇人の会のリーディングでもいつも思うことだけれど、俳優というのは「伝える」プロだと思う。 文字で読んだりしただけでは、ただのメッセージにしかならない言葉が、俳優の肉体、声とカラダを通して出てくると、生き生きとしたものにかわっていく。 今日、出演の俳優さんたちはみなさんとてもすばらしかった。一人で何役もの人物を演じ分けていく、その技術が当たり前にあるのがすごい。語られる色が見えてくるような、そんなリーディングだった。 小林多喜二が書いた言葉や世界は明らかにそこにあるのだけれど、何よりもまず、そこに人間がいた。人間がちゃんといる芝居は、いくらでも観ていられるんだと思った。 話の内容ではなく、むしろ、俳優の力のすごさに感動して泣けてしまった、そんな舞台。 終演後、板倉さんにご挨拶。ほんとにひさしぶりの山崎くんにもばったり会って、近況の報告など。 今日は、小林多喜二が拷問により殺された日ということで、ロビーに彼の享年である29本の薔薇が飾られていた。 終演後、どうぞお持ち帰りくださいと言っていただき、一本をいただいて帰る。 びっくりするくらい大きな真紅の薔薇の花。家につくまでにややぐったりしていたのだけれど、水切りをして活けたら、しっかり蘇ったのがとてもうれしい。
「祝/弔」で共演したコガさんが、「ジェラシー 夢の虜」を見に来てくれて、差し入れにキャットフードをくれた。カリカリじゃない缶詰だ。 ベランダにやってくる猫たちには、いつもカリカリしかやっていなかったのだけれど、公演が終わってすぐ、猫たちにもお裾分けというか、僕が食べるわけにはいかないので、缶詰を出してみた。 大喜びで食べていたのはいいのだけれど、その後、いつものカリカリを食べなくなってしまった。 猫ってそういう生き物だよねえと思ったが、ここで、カリカリをやめて猫缶に切り替えるというのも、負けを認めるようでくやしい。というか、いつもはカリカリ、時々猫缶というペースに慣れてほしい。 というわけで、食べるまで他のものはやらないよという意地を通した結果、猫たちはカリカリを食べる日常にもどってきた。 今朝、久しぶりにコガさんの猫缶をあけてみたところ、ベランダに黒いのがてくてくやってきた。 間近に見るのはけっこうひさしぶり。心なしか少しやせたような気がする。 いつも一緒のトラの姿は見えず、一人で全部を平らげてまたひなたぼっこに戻っていったのを見届けて、仕事にでかけた。
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