せきねしんいちの観劇&稽古日記
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稽古場の階段を上っている途中、あれ?といやな予感がしたのだけれど、稽古がはじまり、しばらく動いているうちに、予感は確信に変わった。 また、やってしまった。ぎっくり腰だ。 無理な動きをして「ぎくっ」というようなショックがあるのとは違う、疲れがたまったあげくに「もうだめです・・・」と筋肉が音を上げるようなタチのぎっくり腰だと、以前行った医者に言われた。 稽古が続いているから、日頃の運動不足もやや解消されてるんじゃないのかと思っていたのに。 季節の変わり目、夏のはじまりと終わり、冷房のきつい部屋に長くいること、用心していたつもりだったのに。 みるみるまっすぐに立って歩けなくなり、びっこをひくようになり、みんなに心配してもらう。 ごめんなさい。自己管理の甘さが招いた結果です。 夕方の食事休憩の時間に、道路をはさんだ向こう側の薬局に湿布を買いに行く。 そのほんの何分かの道が、もう気が遠くなるくらい遠く感じられた。 稽古場に戻ったら、長谷川恵一郎さんが、コルセットを貸してくれた。どうもありがとう。 通し稽古ではなく、小返し稽古の日だったので、出番のないシーンは、ずっと座ったまま見学をさせてもらう。 急に立ったり座ったり、ちょっと重たいものを持ったり、何でもないと思ってたことが、実は、用心しなくてはいけない動作になってしまっていたんだとわかり、ショックを受ける。 初日まではまだ間があるので、なんとかなるだろうけど、これからの数日の稽古、非戦を選ぶ演劇人の会のリーディングの稽古&本番はだいじょうぶだろうか? 最寄り駅について、家までの道で、痛みに耐えられず歩けなくなり、しばらく立ち止まって、道ばたにしゃがんでしまった。 徒歩6分の道を20分かけて家に着き、とにかく横になる。 早く直りますように。
「祝/弔」稽古。 今日は一日、小返し。 「正しいことをやろうとするんじゃなくて、瞬間を楽しもう」という言葉が浮かぶ。 一度、声にしてみたら、ぐーんと自分に返ってきたようでびっくり。 とたんに、今こうして芝居をしていることが、楽しくなってしまう。 にやにやしながら、だめ出しを聞いてしまう、妙なナチュラルハイな気分。 あ、この頃はこんなふうなことを、毎回の舞台の稽古で繰り返している気がするなあ。 野坂さんに「台本なんか持っててもしょうがない。いつまでも自分のセリフをどう言おうかということばかり考えてもしょうがない。大事なのは、聞くこと」と言ってもらって、どんどん聞くこと、その場にいることが楽しくなる。自分一人でやろうとすると疲れるけど、みんなでやってるんだと思うと、疲れはその場にいる人数分の一になるんだなあなどと考える。 ずっとかけているメガネを外すと、僕は作家・演出家モードから、役者モードに切り替わる。 今日は、メガネをかけたり外したりしながら、のびのびと、また時に確認しながらおそるおそる、劇の中の時間を生きることができたんじゃないだろうか。 どうなるのか全然わからない、つかみどころのない大きなものに思えていた今回の舞台、そして僕の役も、瞬間瞬間を正直に生きてしまえばいいんだと気がついた。 全部をやろうとするからわからなくなる。今だけを考えていけば、きっとどこかに行ける。 あ、これもまた、この間、似たようなことを自分に言い聞かせたばかりだった(演出しながら人にも言ったっけ)。 明日の稽古も楽しみ。
今日は稽古場日記を書かせてもらいました。 どうぞこちらもごらんください。 写真は、今日も家の近くの猫。 ほぼ毎日見かける、一番のおなじみ。 (まだ、仲良くはなれてないのだけれど)。 視線の先には、いつも一緒にいるトラ猫がいます。 道路をはさんで、なにやら話しているところを一枚。
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「祝/弔」稽古。 小返しのあと、通し。 照明の黒尾さんが来てくださる。「新・こころ」以来のごぶさた。 衣装を見て、僕の役を「男なの?女なの?」と聞かれる。 男なんだけど、女装してますとお答えする。今回の役はそんな役だ。まあ、それだけではないのだけれども・・・。 2つの芝居の同時進行で、思いも寄らない事態があちこちで勃発。 なかなか芝居のタイムが定まらない。申し訳ない。 最初の僕の移動は、十数秒遅れてしまう。 隣の隣の教室に走っていったら、知らないセリフが聞こえた。ので、すぐに飛び込んでいった。 冷や汗やらなにやら、いろんな汗でぐだぐだに・・(笑)。 反対になかなかやってこない人を待つ場面も経験する。 まだまだ稽古ができるこの時期に、いろんなことを経験するのは大事。そう、自分に言い聞かせる。 帰り、昨日、お店が閉まっていた近くの広島風お好み焼きの店で猪股さんを囲んでの「猪股会(通称)」。 客演のメンバーを中心にけっこうな人数が集まってにぎやかに。 お好み焼き、おいしかった。 西巣鴨の駅で、ラ・カンパニー・アンの面々とばったり。 おなじみの餃子屋にいたとのこと。 夕方、水木さん、演出の長谷さん、岸浪綾香ちゃんとは会っていたのだけれど。 電車の中であれやこれやおしゃべり。 いつも思うことだけれど、この稽古場では、ほんとうにいろいろな人とばったり会う。 ジプシーで移動しているときには、ありえない楽しみがたくさん。
写真は、稽古場でウィッグをかぶっている松岡さん。見える形では舞台には登場しない予定だそうですが、なんだか「いるいるこういう人」になっていたので(中古レコード屋とかに?)。
もう一枚は、家の近くの野良猫。このあたりは野良猫が多い地域なのだと思う。 その中でもかなりイケメンな彼(たぶん)。
そうそう、公演情報も。
クロカミショウネン18 「祝/弔 IWAI/TOMURAI」
作・演出:野坂実 出演:吉川アダム、加藤裕、渡辺裕也、久米靖馬、 ワダ・タワー(以上、クロカミショウネン18) 日ケ久保香、太田鷹史、岡田梨那、古賀亜矢子 松岡努 遠藤祐生、小山志保、神崎友里、清水智子 杉本政志 中泉裕矢(Oi-SCALE)、高橋美津子 長谷川恵一郎(くろいぬパレード)、 細身慎之介(劇団上田) 米田弥央(カムカムミニキーナ) 関根信一(劇団フライングステージ) 猪俣俊明 日程:2008年9月4日(木)〜9月15日(月・祝) 会場:下北沢 駅前劇場+OFFOFFシアター チケット料金:全席指定 前売り 3200円 当日 3500円
予約受付中です。 僕は、駅前劇場版の方に主に出演しています。 OFFOFFシアターの方にも顔を出していますので、ぜひ両方ご覧いただけたらと思います。 ご予約はこちらから、どうぞ。 僕の扱いで、WEB予約が可能です。 どうぞよろしくお願いいたします! 「祝/弔」の稽古場日記のブログはこちらです。 キャストがリレー形式で毎日更新中です。 どうぞご覧ください。
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すっかりごぶさたの日記です。 7月の劇団劇作家の「劇読みvol.2」の演出と出演のあれやこれやを全くアップすることもなく、約一月半も日記をアップしていませんでした。 稽古と本番でばたばたしていた「真っ最中」に引っ越しをして、一人暮らしももうじき丸ひと月が過ぎようとしています。 今は、9月4日初日のクロカミショウネン18「祝/弔」の稽古中です。 引っ越し祝にもらったデジカメでいろいろ写真を撮って、どんどんアップするんだ!という計画はなかなか現実になっていません。ごめんなさい・・・。 この一月半にあったあれこれ、さかのぼってアップしていこうと思いますが、まずは、その日にあったこと、このところはほぼ稽古ばっかりですが、お知らせしていこうと思います。 よろしくお願いします。
「祝/弔」稽古。 午後から、小返し。夜に通し。 今回の舞台は駅前劇場とOFFOFFシアターの2つで同時にお話がすすんでいく。 キャストは、両方の劇場を行ったり来たり。 稽古場のにしすがも創造舎での稽古は、教室を二つ借りて、今日の通し稽古では、同時にスタート。2つの劇場の間を移動するように、2つ先の教室へ廊下をダッシュ。 芝居は、だいたい今目に見えていることを意識していれば、だいたいなんとかなるものだと思うのだけれど、となりのとなりの教室(稽古場)のことが、とても気になり、なかなか集中できない。ちゃんと間に合うだろうかとか、帰ってこれるだろうかとか・・・。 予定した時間に間に合わないということが、とんでもなくおっかない。 まるで、タイムトラベルで未来や過去に行ってみたものの、現在に帰ってこれなくなるように。 今日の通しはもう二回目(たしか・・)。 そんな心配、というか余計な意識はそれほどしないで、当たり前のように二つの空間を押さえられるようになったのか、気持ちは今やっていることに集中できた気持ち。 帰り、遠藤くんと二人、思いつきで大塚まで歩いてみる。 もう秋になっちゃうんだろうか?というような、少し涼しい夜の風。 途中で横切った地蔵通り商店街は、さすがの早じまいでもう真っ暗だった。
「祝/弔」稽古。 岸本くんこと、もっちゃんが来てくれている。 僕は、今週末から来週にかけて、非戦を選ぶ演劇人の会のリーディングの稽古と本番があるので、稽古に参加できない。 その間、僕の稽古場代役を樺澤氏がもっちゃんにお願いしてくれた。 僕もまだきっちりとはつかめていない役をずっと見ていてくれる。 今日は、僕と一緒に教室から教室へ廊下を一緒に走ってもらう。 稽古のあと、遠藤くんの企画で、もっちゃん、それに職場が近いヤケ太さんと一緒に軽い飲み会。 久しぶりの近況報告。あれやこれや盛りだくさんのヤケ太さん。おめでとう! 写真は、西巣鴨の改札でとった一枚。
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2008年07月02日(水) |
演劇と近い子どもたち |
富士見丘小学校演劇授業。 今日は一時間目から、「けんかの台本を書いて演じる」の授業。 講師は鈴木里沙さん。 一時間目からということは、家を7時前には出ていないといけない。 朝の五時まで仕事をしていて、このまま出かけようかと思ったのだけれど、つい眠ってしまう。 枕元には猫が寝ていて、こいつは毎朝6時過ぎに外に出せとうるさく鳴くから大丈夫と。 目が覚めたら、7時45分!! 猫は爆睡していた。どうして、どうして? 雨の日ならともかく、こんなにいい天気なのに・・・ すぐに篠原さんと平田さんに電話をする。 1,2時間目の1組の授業には間に合わず、3,4時間目の2組の授業から参加する。 即興でやる組と台本をそのままに演じる組とに別れて、どんどんやってもらう。 里沙ちゃんが演じる、お母さんのまっすぐさがとてもおかしい。 子どもたちも一生懸命だ。楽しそうなのが何より。 後半、僕も俳優として参加。 朝っぱらから喧嘩をしている姉妹を叱る母親をまずは。 理屈よりも、声の大きさで勝ったかな?というかんじ。 つづいて置きっぱなしにしていた自転車を倒された大人と倒した子ども二人のけんか。 授業の前に、里沙ちゃんに言われた、「自転車は大変ですよ」と。 たしかに、この大人はとっても理不尽だ。 まあ、もともとの台本は子どもたちが書いたものなのだけれど。 「すみません」と謝っている子どもに、いつまでもねちねちと言いがかりをつける。 とりあえず、正当化しないと強く言えないので、大事な自転車という設定を大事にする。 それにしても、子ども相手に強くモノをいうのは大人の一番いやなところだなあと思う。 まあ、今日のテーマは「けんか」だからしょうがないか。 子どもたちは、僕のめちゃくちゃな理屈にちゃんと答えて、決して負けないでくれた。 よしよし。 「学校はどこ?」「家はどこなの?」などと質問すると、彼らの表情が少し硬くなった。 そうだよね、知らない人に教えちゃいけないもんね。 おもいがけず彼らの防犯意識もかいま見えたような場面になった。 最後に振り返りの時間。 子どもたちは、とても楽しんでくれたようだ。 はじめはどうなるか心配だったけど、やってみたら、とてもおもしろかった、うまくできた、という感想がとてもうれしい。 僕は、「演じようとすると、どうしてもどう話すか、どうやっておもしろくするかを考えてしまうけど、だいじなのはちゃんと聞くことです。今日は、みんなまずちゃんと聞くことができていたから、うまくいったんだと思いますよ」とコメント。 給食をいただいて、昼休みに、演劇部の「十分劇場」を見に、視聴覚室へ。 昼休みに、視聴覚室の舞台を使って、公演があるのだと、昨日、馬場先生から連絡をもらった。 びっくりしたのは、観客の子どもたちがどんどこやってくることだ。 開演までに100人近くになっただろうか(ざっと数えてみた)。 そして、みんなとてもちゃんと舞台を見ている。 演目は「わがままな王様」。 とってもわがままな王様と大臣と家来たちのやりとり。 ほとんどを王様がずっとしゃべりたおして、客席にむかっても話しかける。 黒いハンカチを出して、「これは何色だ?」と聞くと、客席は「黒!」と答える。 王様は、「いや、これは白だ。私が白と言ったら白なんだ!」と、わがままほうだい。 後半、王様の言葉はみんな逆さまの意味で受け取ればいいんですねと家来たちが言いだし、王様の意志に反して、みんな大喜びでお城を出て行ってしまう。 困った王様は、客席にまた黒いハンカチを出して、「これは何色だ?」と聞くと、客席は「白!」、王様は「違う、違う、これは黒だ!」と言うけど、もう後の祭りというお話し。 演じていた演劇部のみんな(さっきまで演劇授業で一緒だった六年生たち)も立派だけど、ちゃんと聞いて、言い返していく客席の子どもたちも立派だった。 終演後、カーテンコールの後、観客の子どもたちは、何でもないかのように部屋を出て行った。 今は、昼休みなんだね。 このなんでもなさが、すごいことだと思う。 大上段に構えるんじゃなくて、さらっとやって、さらっと見に行く。 そのかんじは、この学校に演劇が当たり前のようにあるんだということの証明だと思う。 篠原さんが、「イギリスにいるみたい・・・」とつぶやいた。 たしかにそうかもしれない。こんなに演劇と近い子どもたち(しかも下級生もいっぱい)は、よそにはそうはいないだろう。 次回の授業は、卒業公演のテーマについての話し合い。 2月の発表の準備がもう始まる。 今回のけんかの作文もおもしろかった。 今度はどんなアイデアが集まるか、期待が高まる。
帰りに、篠原さんと「劇読み」の打ち合わせ。 昨日までどうなるんだろうかと心配だったことがらが少し見えてきたようでほっとする。 前向きな気持ちになれたのは、今日の子どもたちから元気をもらえたからかもしれない。 この気持ち、忘れないでいたいと思う。
今度の水曜日の富士見丘小学校の演劇授業用の台本を書く。 今度の授業は、「けんかの台本を書いて演じる」。 子どもたちに書いてもらった、けんかの台本を、篠原さんと二人で計6本選び、3本ずつ構成する。 それにしても、今年の六年生のセリフのうまさにはびっくりする。 例年、おもしろいなあと思うものが多いのだけれど、今年は、台本としてちゃんと書けてるものが多い。 演劇が彼らに根付いているということだろうか。 僕の担当は、朝から喧嘩をしている兄と妹、それにくわわる母親、社会科見学のしおりのホチキスの留め方で言い合いをする二人、母親の留守にケーキを食べて喧嘩をする兄弟の三本。 セリフ自体はほとんどいじることなく、演じやすいようト書きを入れたり、「ケーキ」の原作に登場していない母親を出したりといった作業。 わくわく楽しく構成する。 台本を書くのは、いつもつらく大変な思いをするものだけれど、年に一度のこの「けんかの台本」づくりは、たのしいなあと思いながらやらせてもらっている。 「劇読み」のやりとりを濃密に。 こちらもまたやりでのある仕事だ。
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