せきねしんいちの観劇&稽古日記
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2008年06月27日(金) 顔合わせ

 池袋のリリィスタジオで「劇読みvol.2」の顔合わせ。
 大勢の作家とキャスト、三人の演出家で、とにかく大所帯。
 劇団劇作家のみなさんの挨拶からはじまり、演出家からはそれぞれの演出プランのようなものについてのあれこれ、キャストの紹介などなど。
 その後、懇親会。初めましてのみなさんとご挨拶。
 実は、劇読みでは初めましての川端桜ちゃんが、前に出演していたようなデジャブ。
 「人の香り」でご一緒する清水さんと作品についてのあれやこれやをおしゃべり。
 稽古場への道で、「襤褸と宝石」で共演したSくんとすれ違う。
 自転車に乗っている顔は間違いなく彼だと思ったのだけれど、自信がなかったので(彼も僕に気がつかないようだったし)そのまま、歩いてきてしまった。
 その後、井上さん、健翔さんと話していたら、二人も彼とすれ違っていたことが判明。
 やっぱりそうだったんだ。
 この近くに住んでいるのだそう。
 それにしても、続けざまに三人とすれ違うなんて(スタジオの前で井上さん、その後、僕、健翔さんという順番)!
 終了後、居酒屋で軽く飲み会。というか食事をして帰る。
 さあ、始まった。


2008年06月23日(月) 久しぶりに

 「新・こころ」のキャストのみんなと久しぶりに会う。
 これまた久しぶりの六本木。
 仕事を終えて、ばたばたとかけつける。
 集まったのは、柳内さん、遠藤くん、桑島くん、ヤケ太さん、それにもっちゃんに僕の計6名。
 柳内さんのヨーロッパ旅行の写真を見せてもらい、わいわいおしゃべり。
 芝居の現場以外で会うと、僕はとたんに話すのが苦手になるのかもしれない。
 芝居の話じゃない話でわいわい盛り上がることに、やや乗り遅れる。
 桑島くんとは今週末顔合わせの「劇読み」でもご一緒する。
 そんな話もちらほらしつつ、またねと別れる。
 桑島さんともっちゃんは、そのまま柳内さんのおうちにお泊まりすることが急遽決定。
 身軽でいいなあと、つい思ってしまう。


2008年06月22日(日) 取り憑く芝居

 ハイバイ「て」を見に行く(下北沢駅前劇場)。
 おばあちゃんの葬式から始まる、家族の物語。
 葬式と、祖母の生前に家族が集まった日が交互に描かれる。
 いるいるこういう人という人物が、そのまんまそこにいる。
 芝居じゃないような、そんなたたずまいを大事にする芝居というか。
 人物にとっても共感する部分と、いやだなあと思う部分も交互に。
 おおよその芝居は、人物はまず普通にしゃべることが前提になっている(無自覚に)と思うけれど、今日の舞台では、人物は何を話しているのかよくわからない。
 でも、その話しぷりは、あきらかに、僕の記憶にあるいろいろな人(父や母)だったりする。
 そのわからなさを含めて、人物は謎をいっぱい抱えたまま、そこにいる。
 セリフで伝えるということよりも、たたずまいまるごとが何かになるというのは、いっそ映像に近いのかもしれない。
 「現代口語演劇」というもののおもしろさと不思議さに、ひさしぶりに触れたような気持ち。
 ああ、おもしろかった!とすっきり席を立つことができないたちの芝居に久しぶりに出会う。
 「取り憑く芝居」なんだろうと思う。
 帰りの電車でも、いろんなことをずっと考えてしまう。
 案内をくれた三好さんに感謝!


2008年06月20日(金) 役者の色気

 夕方から、綾瀬へ「梅雨のZAN・PARA2008」を見に行く。
 高校の演劇部の学校も地区も越えた横のつながりで、古い友人のZANさんが仕切っている。
 小松川の演劇部から、板垣さんと清水さんが出演している「竜馬が行くー立志篇ー」を見る。
 司馬遼太郎の名作が脚色されたものをさらに30分にまとめて見せる。
 冒頭、竜馬が出会う婆たちのセリフが、清水邦夫の作品の断片だった。
 養成所時代にやった作品。なつかしい気持ちになる。
 竜馬が脱藩して勝海舟と出会い、自分の進むべき道を知り、覚悟を決めるまでのお話。
 殺陣あり、ダンスありのにぎやかな芝居。
 竜馬を演じる二年生の男子がなかなかかっこいい。背が高くて、立ち姿が美しい。芝居をするとやや三枚目によりになる愛嬌もある。彼が真ん中にいるだけで、この芝居のかなりの部分がOKになってる。役者の色気で見せる芝居。客席の盛り上がりも含めて、そんな芝居、近頃そうはないものね。
 時代劇&土佐弁のセリフが、やや聞き取りにくかったのが残念。ちゃんとセリフが伝わっていかないのが、ちょっともどかしい。
 それでも、婆の群衆シーンが冒頭に入ったせいで、竜馬を動かす思いのようなものの存在が浮かび上がっていた。おもしろいアイデアだった。
 何より、みんな楽しそうに力いっぱい演じているのがいい。
 小松川の二人も、演劇部での公演より、生き生きとたくましくかんじられた。
 客席は高校生でいっぱい。
 小松川の村上さん、服部くん、そして、OBの小林くん、金盛さんにご挨拶。
 服部くんは他高の女子から「犬!」と声をかけられていた。去年の地区大会で、犬の着ぐるみを着たんだよね。そんなふうに呼ばれてるのも人気がある証拠だろう。
 遠くのZANさんに手を振って、お先に失礼してくる。


2008年06月19日(木) あいまいさを認める

 高校時代の恩師、中島浩籌さんの法政大学での講義にゲスト講師として話をしにいく。
 新宿で待ち合わせをして、めじろ台へ。
 駅前のバーミヤンで昼食をいただく。バーミヤンはどこに行っても、スタッフのお姉さんがいいかんじの大人だ。こういうファミレスはありだと思う。というか、時代の流れか。
 2000年からうかがっているこの授業、一年おきで、今年は五回目だ。
 教育心理の講座で教職課程をとっている学生さんたちに、僕のライフヒストリーを「発達」というテーマを頭の隅に置きながら話す。90分×2コマ。
 2年に一度、自分のこれまでを振り返り、今を考えるいい機会をもらっている。
 準備していたアメリカの同性婚のことなどは、すっかり忘れて話して、質疑応答。
 テレビドラマ「ラストフレンズ」(今日が最終回)のことなども話しながら、うかんできたのは
、現代のセクシュアリティにおけるゆらぎとあいまいさの許容のされ方だ。
 「ラストフレンズ」もそうだけれど、よくわからないけど、今自分はここにいるんだということを、ちゃんと言えるようになったんじゃないか。
 男、女、ゲイ、レズビアンという、箱のどれかに入るしかないんじゃなくて、一人一人の有り様はグラデーションで、いくつもある座標軸の中の小さな点のように、あらゆるところにちらばっている。
 ドラマでそんなキャラクターを見ると、ああ、なんてはっきりしないの!といらいらした昔もあった。
 でも、今は、無理にカテゴライズするのではなく、ゆれうごく、あいまいな、もしかしたら、自分でもよくわからない自分を受け入れればいいんだなあと思える。
 言葉にしたことのない、そんな思いを、言葉にして伝えた授業だった。
 授業の後、今回も別の教室で何人かの学生さんたちと話す。
 ここで初めて、アメリカの同性婚の話を質問されて、ああ、そうだったっけ!と話をする。
 二十年近く前、目の前にいる彼らと同じような年代の自分のことを、彼らに話すことが妙におかしかった。
 よくわからない若い子たちという遠さではなく、不思議に近く思えたのはひさしぶりの感覚。
 フライングステージの公演案内は今のところないので、HPにアクセスしてメルマガを登録してみてねと話す。
 このブログも読んでくれているとうれしいな。
 今日はどうもありがとう。楽しい時間を感謝です。


2008年06月18日(水) 犬とエレベーター

 富士見丘小学校演劇授業。
 今日の講師は永井愛さん。3時間目から6時間目まで、6年1組2組、2クラスともを篠原さんと一緒に見学させていただく。
 即興劇の授業。テーマは「場をつくる」。
 5人のチームから一人ずつ出て行って、場をつくる。
 椅子を3つ並べたベンチのようなものと、バラバラの椅子が少し離れて2つ。
 この空間を、さあ、どこにするか?
 セリフなしで動作で場を説明してゆくのだけれど、みんなものすごい確率でゲームをしている。
 座っていても、歩いていても、公園でも部屋でも、当然のように。
 5人目がここはどこかという場をコールして、場面に入ると、それまでだまっていた人物が新しく動き始めて、関係が生まれてくる。
 一組ずつやっていくなかで、みんなどんどん上達していく。前のチームをただ見るだけじゃなく、自分ならどうするかということを考えているからだろう。
 動きだけで場を表すということがまずできるようになったら、次は、どうやって人と関係をつくっていくかが問題になってくる。
 永井さんは、大人に話すのと同じような言葉でダメだしをする。「また公園だとうんざりだよね」「自分が何なのか決めると話がしやすいね」「何していいかわからなかったら、前の人と同じことをするの。二番目の人は許します。一人と二人じゃおもしろさが違うからね」。
 ベンチの下に潜り込んだ子とその様子を見守る子。ここはどこ? 地震の被害現場?と思っていたら、5人目のコールは「公園!」だった。まあ、こういうこともある。
 ベンチの上に立ってバランスを取っている子がいて、これはサーフィン?と思っていたら、これも公園の平均台ということになってしまった。誰かが泳ぎ始めでもしないと「海」はむずかしそう。
 一人目が正面を向いて、黒板を拭くような仕草を始めたチーム。教室? またか・・とあまり期待しないで見ていたら、これがとてもおもしろくなった。
 掃除を始めてゴミを集め、ジャンケンで負けた子が捨てに行く。
 これだけの一見なんでもないことが実におもしろかったのだ。
 それは、それまでの誰だがわからない人じゃなくて、彼ら自身(みんなお互いの本名を呼んでいたし)を演じていたからだろう。そして、場面はまぎれもない「教室」だった。
 この「教室」のチームから一気に、その後のチームの演技の質が変わっていった。
 一番目の子が、ピアノの影にかくれてピストルを撃った。何人かが次々出て行って、みんながピストルをかまえて、最後の子が「運動場!」。永井さんが「はい、ストップ」と止めて、「違う場所にして」と。
 もう一度やった結果、今度は「だれもいない住宅地!」ということに。
 彼らは、ピストルでさんざん撃ち合っているうちに、ピストル犯をつかまえる警察になり、犯人を車で護送(無線で連絡もした)、警察で取り調べ、そして裁判と、お話をどんどんどんどんすすめていった。
 場面ももちろん変わっていって、取調室では「お前がやったんだろう!」という刑事に、しらばっくれる犯人、そして裁判所。「被告人は控訴できますよ」とどこでおぼえたそのセリフ?というようなのも登場し、最後の判決を裁判長が「判決は死刑。執行はうーん、明日ね」というところでおしまい。
 何の打ち合わせもないまま、ここまで運んでしまったことがまずすごい。そして、それぞれのキャラクターをみんなが見事に演じていたのがもっとすごい。中でも犯人役の彼は「それでもぼくはやってない」とうそぶいたりして。判決を言い渡された瞬間の「へ?」という表情もすごかった。拍手!
 後半は、エレベーター。5人の人が乗り合わせたエレベーターが止まってしまうというエチュード。
 「知らない人どうし」の話し方はむずかしい。みんなで笑いながら、アニメのようなセリフをつるつるしゃべってしまう。
 「知らない人とそんなにくっつくの?」永井さんの指摘は具体的だ。
 妙にこわい人を演じた男子が登場したときには、「いいね、怖い人。いるね、こういう人。こういう人がいると、離れるよね」と。
 回を重ねるごとにだんだん、ユニークなキャラクター、そして、場面が生まれていく。
 赤ちゃんを抱いて登場した女の子がいた。永井さんがこっそり見ていた子たちに「赤ちゃんの泣き声やって」と耳打ちしたのだけれど、「え、できません」と何人にも「断られ」て、あきらめていたら、どこからか赤ちゃんの泣き声が! 後で聞いたのだけれど、子どもたちの間を伝言がまわって、結局、違う子が赤ちゃんになったらしい。この赤ちゃんは、エレベーター内の緊張に敏感で実にいい泣き方をしていた。拍手。
 そして、最後のチーム。このチームは四人。男子二人に女子二人。
 それぞれのキャラクターをつくって、エレベーターの前で待つところから場面は始まるのだけれど、このチームの二人目、エレベーターの前に、四つんばいになって近づく男子。何だろう?と思っていたら、片足をあげて「おしっこ」をした。犬?! 
 エレベーターのエチュードは毎年一回五年やっているのだけれど、人間以外が登場したのは初めてだ。見ていたみんなはもう騒然(笑)。
 この犬は、エレベーターに乗ると自分でボタンを押して(!)、隅に丸くなって座った。
 そして、エレベーターが止まっても、ずっと寝ている。まあ、犬だから、何もできないんだけど。
 この犬っぷりが見事だった。もう、演じきってる。
 そして、乗り合わせた男子が、もう二人いる女子にどうしましょう?と話しかけても、二人はなんだか知らん顔。備え付けの電話をかけて「人が三人と犬が一匹とじこめられてるんです。・・・ふざけてないです! ・・・切れた」ということに。
 彼は、女子に話しかけたいんだけどできず、エレベーターも動かず、つい犬をなでに行ってしまう。この気持ちのゆれが生々しくて、切なくて、とってもおかしかった。
 エレベーターが止まってるのに犬にさわってしまう気持ち(しかも相手は眠っている)、とてもよくわかる。というか、途方にくれてる彼の気持ちがものすごくリアルだった。
 みんな大笑いして、大拍手! すばらしかったなあ。ものすごいものを見せてもらった。
 終了後、先生方とフィードバック。
 5年間続けている演劇授業の積み重ね、演劇のDNAがあきらかにあるんじゃないかと永井さん。
 今年の6年生は、一年目の発表を二年生のときに見ている。
 「体育館の一番前で、退屈しないかと思っていたのに、ちゃんと覚えてるんだなあって」と長崎先生。
 ほんとにすごいことだと思う。一年目の彼らももちろんがんばったし、すばらしかった。でも、目に見えないものがこんなふうに伝わっていくのってなんていいんだろう。
 先生方と一緒に、あれはおもしろかった!と話ながら、演じていた子のことをいろいろうかがい、そして、たとえば最後の犬が登場したエレベーターで「何もできないでいた女子二人はあの場で何を思っていただろう?」と馬場先生。やっぱり、ここは学校なんだ。演技の上手い下手じゃなく、子どものことをまず第一に考える。
 今日は、職場体験で一昨年の6年生が学校に来ていた。「光速マシーンに乗って」の代だ。みんな大人に一歩近づいて、それでもやっぱり演劇授業の時の表情がありありと浮かぶ中学二年生だ。
 帰りは、永井さん、篠原さんと「非戦を選ぶ演劇人の会」の打ち合わせをさっくり。
 電車の中では、今日の授業のこと、あの「犬」の話でもりあがる。
 夕方から、新宿で、「劇読み!」の打ち合わせを、石原さん、篠原さん、相馬くん、上原くんと。
 演出打ち合わせと台本について。熱が入って、3時間、みっちり話してしまい、のどががらがらになる(怒鳴ったりしたわけじゃないのに)。
 思ったことを存分に言わせてもらった。がんばれ、石原さん!


2008年06月16日(月) バラの匂い

 街を歩いているとバラの香りがして、ふと立ち止まる。
 どこかで咲いてるんだろうか?
 それともさっきすれ違った女の人のコロンだろうか?
 今準備をしている「劇読みvol.2」の「人の香り」のせいだろうか?
 資生堂の「薔薇園」というコロンをもっていた。
 友人からもらったんだった。もう、ずいぶん前のことだ。
 香水は、いろいろな香りがミックスされたものだろうと思うが、これは、かなりバラそのものに近い。
 今でもまだ売っていることにびっくりして、なつかしくて、つい買ってしまいそうになった(笑)。
 昨日は、父の日。
 買ってきたメロンを仏壇に供えておいた。
 何日かおいて熟すのを待ってからと思っていたら、家中がものすごいメロンの匂いになった。
 そんなに大きくない安物なのに、この主張のしかたはなんだろう?
 人工の香料じゃない自然の匂いは、やっぱり違う強さをもっているようだ。
 生き物はすごいな。


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