せきねしんいちの観劇&稽古日記
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暖かい日。電車はもう冷房が入っている。 駅でいいにおいがすると思ったら、大きな藤が植えてあった。満開の花房が甘いにおいをだしている。 藤ってこんなにかおるものだったんだ。 長唄の「藤娘」は、この甘いにおいの中で踊ってるんだなあと、思ったりする。 劇場入りして、アップ、そして、ダンスと段取りの確認。 そして開演。 2日目の舞台なので、出来たことをなぞらないように、今を楽しむよう心がける。 終演後、宇田くん、アルピーナさんにご挨拶。バーバーといっしょにしばしおしゃべり。 雑遊では、3つの演目が交互上演される。今も袖には知らない小道具が置いてあるのだけれど、これがさらに増えていく。 「狂人教育」の装置をばらして、明後日、また立ち上げることに。 そんなことを3つの演目で次々やっていく。 なんてすごいんだろう・・・。 スタッフさんの大変さはどれだけだろう。特に舞台監督さんのメモリーはとんでもない数のきっかけですごいことになってるんじゃないかと思う。 客演陣はお先に・・・ということで、失礼する。 帰り、いただいたメールに返事をしたり、お礼を送ったりしているうちに、すっかり終電近くなってしまった。 明日は休演日。 明後日、劇場はどんなことになってるんだろうかと、ちょっと楽しみ。
ゆっくりだった昨日とはうってかわって、あわただしい初日。 場当たり、ゲネプロの後、本番が2回だ。 衣装とメークありでの場当たり。小道具も動きも多いこの芝居は、確認することがいっぱい。 スタッフのみなさんも昨日の今日なのに、ほんとうにたくさんのきっかけをクリアしていかないといけない。 装置のトラブルがあったりして(!)時間が押してしまい、ゲネプロはやや駆け足で。 開場を少し押して、初日、開演。 昨日よりはずっと声のとおりがよくなった劇場。 仲良くなれたんじゃないだろうか。 外に出て、見に来てくれたもっちゃんと話し、すぐに二回目の準備。 落ち着いてやれたんじゃないかと思えた舞台。 おつかれさまでした。 終演後、差し入れのお裾分けのポカリスウェットを飲みながら帰ってくる。 今日は4回弱、通したことになるので、腰が痛い。 普通の芝居でも、一番疲れるのは足と腰なのだけれど(立ちっぱなしだからね)、今回は1時間の舞台で休んでいられる時間が全くないので(舞台でも、裏でも)なおさらだろう。 終演後は、汗だくで、そして息があがって、はあはあ言っている。 そんなにすごい動きをしているわけでもないのに、どういうことだろう? 明日もゆっくりな入り時間。 これから一週間、この劇場、この芝居とつきあっていく。 短距離走というか、障害物競走というか、とにかく全編ダッシュ!に近いような勢いで芝居をしています。 みなさんのご来場をお待ちしています!
2008年04月28日(月) |
劇場入りと酔っぱらい |
朝、NHKの「生活ホットモーニング」に長塚京三さんが出ているのを見る。 来月、出演する舞台「エンバース」の話をいろいろしている。 演出の板垣さんが稽古場で話している映像も。 イギリスで見たこの舞台を長塚さんはぜひやりたいと思い、自ら翻訳されたそう。 その訳について板垣さんは、「セリフにリズムがある」と話していた。 その後、短い場面のセリフをスタジオで語った長塚さん。 たしかに耳に気持ちのいい訳だなあと思った。 「とつおいつ」なんて言葉も出てくる、しっかり考えられた練られたセリフだ。 芝居について、訳について話す長塚さんは、とてもしっかり自分の「理屈」を持っている人だなあと思った。持っていてもなかなかその理屈を話せない俳優が、日本には多いと僕は思うのだけれど、長塚さんは、自分の思うことをしっかり話すことのできる俳優なんだと思った。 「エンバース」、共演は、益岡徹さん、樫山文枝さん。見に行けるといいのだけれど。
ゆっくりな劇場入り初日。 初めましてのスペース雑遊は、都営新宿線の新宿三丁目の駅のすぐ上。 地下に降りて、ドアを開けるとすぐ客席。 アゴラ劇場の3F部分だけのような印象。 狭い空間に人とモノがいっぱいで、舞台を作っている真っ最中。 音響以外のスタッフさんが大阪の方で、今日初めてぼくらの「狂人教育」の舞台を見る。プランはそれからということで、まず通してみる。 衣装を着て、大体の空間を確認したあと、頭から。 なんとも不思議な、心細い、アウェーな感覚。 小屋入り初日は耳が慣れないものだから、自分の声もよく聞こえない。 昨日までの稽古場の残響の長さに慣れてしまっていることもあって、ちゃんと声は出てるんだろうかと、心配になる。 冒頭に袖で一人でスタンバイをしているとき、左の脇腹を突っつかれた気がした。 となりには、小道具の棺桶が置いてあるだけなのに・・・。 いやな気持ちはしないけれど、いたずらをされたような、挨拶をされたような気持ち。 通しというか、段取りの確認を時間いっぱいまでやって、今日はここまで。 劇場にいた時間はそんなに長くないはずなのに、きっちりへとへとになる。 神経をはりつめていたせいだろうか。 外で明日の予定の確認をしたあと、なんとなく帰りがたくて、道路脇のコーンとロープで囲まれた「安全地帯」で少しおしゃべり。 先に歩いていった泰志さんが、よっぱらいのおじ(い)さん(トレンチコートで白髪のこぎれいなかんじ)と一緒に戻ってきた。 このあたりのバーを探しているらしい。 店の名前を聞いてもよくわからない。 「それって、ゲイバー?」などと聞いているうちに、よっぱらいは、近くにいたチョビちゃん、バーバー(馬場くん)に向かって「あなたはかわいい、きみもかわいい・・」、そして、僕に向かって「きみも『かつては』かわいかった」と言った。 御苑大通りの横断歩道を渡り、二丁目に向かって歩いていく後ろ姿に「車に轢かれろ!」と大声でつっこんでおく。よっぱらいは、振り返らないまま手を振って歩いていった。 二丁目の近くの劇場だからって、こんな目にあわなくてもいいじゃないかと思う。言われたことよりも、言い返したことの大人げなさを反省。やっぱり、二丁目の近くだからかな・・・。他じゃあんなこと言えないもの。 その後、自宅近くのコンビニのレジでも、あきらかに目つきのイっててしまっている酔っぱらいにからまれ、「明日は初日・・・」と心の中で言いながら、喧嘩をしないで外に出た。 酔っぱらいの二連発はどういうことだ? 僕にすきがあるのか? 脇腹を突っついた誰かのいたずらか? とりあえず、家に着いてから、塩をまいて気持ちを落ち着けた。
稽古場最終日。 昨日の通しのダメだしのあと、小返し、そして、衣装とメークありで通してみる。 今日は、集中しながら、意識を広げてみる、なんてことを考えてみた。 というか、それができてる状態じゃないと、手も足も出ない芝居なんだということに改めて気がつく。 僕が演じる祖母の役は、僕にとって初めての老け役。 イメージしているのは、大昔に見た「リチャード三世」で美輪さんが演じていたマーガレットだ。 当時、美輪さんは40代だったと思う。 稽古の初めの頃、「毛皮のマリー」や「青森県のせむし男」を演じていた美輪さんが、この祖母を演じたらどんなだろうと考えた。 たぶん、それがきれいな役づくりになったのだと思う。 美輪さんは、思い切った汚れ役の演技を見事にする人だ。 近頃では「卒塔婆小町」とか「ピアフ」とか。 思い切って、汚しておいても、どこかに毅然としたものがあるのは、美輪さんの舞台にかける真摯な姿勢があるからだろう。 決して、お笑いにしないで、でも、おかしくて、哀しくて、そして、とっても力強い。 僕もそんなふうになれたらなあと思いながら演じている。 公演の案内のメールをいつも見に来てくれるみなさんに送った。 60分で終わるとても短い、不思議な芝居だけれど、たくさんの人に見てもらいたいと思う。 明日は劇場入り。
オレノくん、それに音響さんが来てくれて、録音。 僕の冒頭の歌は結局伴奏ありということになった。 いろいろなお願いして、オレノくんに演奏してもらう。 小返し、そしてダンスの練習のあと、通してみる。 だんだん、この芝居がわかってきたような気がする。 約1時間のこの「狂人教育」という芝居。 その中で、どんな風に変化していくのかということが、腑に落ちてきた。 集中のしかただけじゃなく、相手にどんなふうに向き合うのかということも。 ちゃんと渡さないとちゃんと帰ってこないという当たりまえのことも。 芝居は一人でつくってるんじゃなくて、みんなで積み上げているんだということも。 通し自体は、「ちょっと疲れてたかもしれない」という出来。 明日はどうしてみようか。
6月に出演する、ショウデザイン舎の「襤褸と宝石」の顔合わせにシアターΧまで。 加藤道夫の最後の作品を、山本健翔さんが演出する。 主演は、ANZAさんと別所ユージさん。 出演とともに美術も担当している三谷昇さんが、装置の模型を机の上に並べていた。 そのまっすぐな、そして、何より、芝居を楽しんでいるその姿に感動する。 はるか昔、演劇集団円の養成所にいたとき、「赤ずきんちゃんの森の狼たちのクリスマス」という舞台が、アトリエで上演された。 そのゲネプロの直前、森番の役で出演していた三谷さんが、衣装のまま、舞台の床面に葉っぱを一枚一枚書いている姿を見た。 その時のことをまざまざと思い出した。 あれから20年経っても、同じ情熱とひたむきさで舞台に向かっている三谷さんは、なんて素敵なんだろう。 ご一緒するのはもちろん初めて。 いい芝居になりそうな予感がいっぱい。 一度、読み合わせをして、今日はおしまい。 僕の役は劇場の支配人。「狂人教育」の祖母とは全然違う。2つの人物が自分の中にいる不思議な気持ち。 その後、劇団の倉庫で衣装とかつらをピックアップ。 必要なものを持って、外に出たら、まみぃとばったり。 「新・こころ」の着物を片付けに着たのだそう。 それにしても、こんなふうに会うなんて。 舞台の本番が近くなると、こんなふうに誰かとばったり会うことが多くなるのはなんでだろう? 昨日も、去年の「劇読み!」でご一緒した遠藤さんと駅で会ったんだった。 初日がもう近いんだなあと実感する、不思議な感覚。
「狂人教育」の稽古。 持って行ったかつらが大丈夫ということでほっとする。 衣装、メークありで、通してみる。 通しの途中で、ふと気がつく。 この頃の僕は、「正しくやろう」としてばかりで、その瞬間、瞬間を楽しむことを忘れてるんじゃないだろうか。 場面を終えて、稽古場の隅で息を整えている短い時間に、そんなことを思って、愕然とする。 この数日、僕は何をしてたんだろうかと。 その後の場面は、とにかくその場でちゃんと生きることを考える、もとい、生きてみようとしてみた。 昨日までのもやもやした気持ちがうそのような、楽しい時間が僕の体を通りすぎていった。 そうだよ、こうじゃなきゃいけないんだ。 丸尾丸さんには、「かつらをつけて、盛り上がってたね」と言ってもらう。 うん、それもあったかもしれない。 体はへとへとだけれど、だいじょうぶ、楽しんでやれる。 自信を取り戻した。
「新・こころ」に出演してくれた岸本啓孝さんが、フライングステージの劇団員になった。 月曜に話をして、劇団の面々とやりとりをして、これからどうぞよろしく、ということになった。 フライングステージの公演の予定は、まだはっきりとは決まっていないのだけれど、7月に予定している公開ワークショップが、一緒にやる芝居になりそうだ。 稽古は、今日もダンスでいっぱいいっぱいになる。 その後、通してみたのだけれど、なんだかうまくいかない気持ちが僕の中にある。 どうしたらいいんだろう。 丸尾丸さんの演出意図もよくわかっているはずなのだけれど、体がうまく乗ってこない。どうしよう。 家に帰ると、猫はすっかり元気だ。 岸本くんに、昔の台本を送った。 今から、十何年も前に書いた台本。なつかしく読み返す。 芝居に対する新鮮なわくわくする気持ちが薄れてきたんだろうか?なんてことも考える。
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