せきねしんいちの観劇&稽古日記
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昼間、仕事をしながら、いわき総合高校の「あいだにあるもの」千穐楽のことが気になってしかたない。 今日も常磐線は全線ストップ。お客様は来れるんだろうか? 芝居は大丈夫だろうかと。 それでも、夜は「新・こころ」の稽古。 昨日までの女子ばかり9人に対して、今度は、男子ばかり9人(僕をのぞくと)。 終えてきたばかりの舞台とこれからの舞台。 二つがバラバラじゃなく、つながっているようにかんじられる。 忙しくていやになるというのじゃなく、ずっと芝居と一緒にいられることに感謝。
2008年02月23日(土) |
「あいだにあるもの」初日 |
9時から2年生と一緒にアップ。そして、昨日のゲネプロを踏まえてのダメだしと細かい手直し。午前中一杯かかってこれでいけるということを、確認する。 昼過ぎからは会場の準備。学校の玄関から、3Fにあるアトリエまで、受付から誘導から、大勢の系列の生徒が張り付いて、気持ちよく見てもらうことを考えてる。 開場、開演。 開演間際から外は嵐。上演中も雷と風の音がものすごかった。 芝居の出来はなんていったらいいだろう。もっとはじけられるよね?と思いながらの芝居。観客に押され気味だったかもしれない。でも、芝居としてはできあがってる。終演後、目を潤ませて帰るお客様が何人もいる。 片付けの後、ダメだし。僕は、今日帰らないといけないので、最後の話。 今日の昼間はとてもいい集中をしていたみんな。本番でももっともっとできるはず。一人でやろうとしないで、みんなでこの舞台を生きてほしいと話す。 嵐はまだ収まらない。常磐線が止まってしまったことが判明。いつ動くかは未定とのこと。 夜の予定のために東京に電話をかけたら、東京もものすごい風だそう。春一番ってこんなだったっけ? もう一泊かとあきらめていたら、高速バスが空いていた。ちょっとほっとする。 その後、アトリエで、今日は、僕のバースデーサプライズ。電気が急に消えて、ハッピーバースデーを歌ってもらう。こうして蝋燭を吹き消したのは何年ぶりだろう。 準備室で、二年生と一緒にケーキをいただく。いろいろおしゃべりしながら。 「あいだにあるもの」に登場する幽霊の名前の話も。今回、昔の芝居仲間というか、先輩の、ゆかりさんの名前を使わせてもらった。韓国に留学して、学生寮でオンドルの一酸化炭素中毒で亡くなった彼女の名前を。当時、ゆかりさんは30過ぎで、二十歳そこそこの僕からは、とっても年上に見えた。でも、僕はもう彼女のトシをとっくの昔に追い越してしまった。そんな話をみんなに。 時間が来たので、石井先生と一緒に学校をあとにする。 廊下で見送ってくれる二年生。 石井先生の車の中で、今回の授業、アトリエ公演のことなど、いろいろ話す。 いわき好間のバス停は電車が動かなくて困った人が数人。もっと混んでるかと思ったのだけれど。 石井先生と別れて、薄暗いバスの中。 暗い中、うとうとしながら、東京着。暗いままの移動は不思議な感覚。夢を見ていたような気持ち。
2008年02月22日(金) |
「あいだにあるもの」ゲネプロ |
今日は普通に授業がある日なので、初めて、自力でホテルから学校へ向かう。 いわきから内郷まで電車に乗って、内郷駅からいわき総合高校まで歩く。 演出の手直しに素直に答えてくれる生徒たち。すばらしい。 放課後は、ゲネプロに備えての準備の時間。 系列の三年生、そして一年生がみんな来て、手伝ってくれている。 僕は、三年生で照明担当のチバちゃん、同じく音響担当のカベちゃんに、いつものプロのスタッフにお願いするように、細かくダメだし。二人とも、「芝居心」をちゃんと持って、一緒に芝居を作ってくれている。感謝。 そして、ゲネプロ。 昨日より上演時間が5分弱伸びた。確かめながらやってた印象の舞台。 それでも、きっちり立ち上がった。 ここ数日の二年生の成長ぶりはすごい。先週来たときと、今日とでは、もう全然違うことになっている。集中をして、力を合わせて舞台をつくっていく。そのことが一人一人の表情を、きりっとした透明感のあるものに変えているようだ。 終演後、学校の近くでいやな事件があったということで、生徒達は早めに集団で下校。三年生のタムラくんが女子たちを駅まで送っていった。こういう気遣いもいいなあと思ってしまう。 その後、石井先生のバースデーサプライズ。三年生が石井先生を「ちょっと聞きたいことがあるんですけど・・」とアトリエに呼んで、暗転、ハッピーバースデーの合唱とろうそくがともったケーキの入場。石井先生がろうそくを吹き消して拍手。その後、みんなでケーキを一緒に食べた。僕もご相伴にあずかる。来週には卒業する三年生、後輩の舞台を一緒につくって、こういうイベントも企画してしまう。なんていい子たちなんだろう。 石井先生、谷代先生と食事に。いわき駅近くの「玉ノ湯」という創作料理のお店。「あいだにあるもの」のこと、今日の二年生の芝居のことなどなど。たくさんしゃべって、ホテルまで歩いて帰る。 明日は初日。さあ、どうなるだろう。
2008年02月21日(木) |
「あいだにあるもの」仕込み |
宇都宮線が止まって、振り替え輸送で東武線が激混みになり大幅に遅れた上、どこかの駅で非常停止ボタンが押されたとかで、電車が動かない。いらいら&ばたばたと駅を走り抜けたものの、もう少しというところで間に合わず、予定していたスーパーひたちに乗り損なう。1時間に一本なので、もう開き直って、落ち着くことにする。でも、申し訳ないことにはかわりがないのだけれど。 いつも使っていた教室が、見事に劇場になっている。 天井につくんじゃないかというくらい高い客席を組んで、舞台はフラットな床にパンチカーペットを敷いてある。このあいだまで木目のままだった10脚の椅子が、舞台のアクセントカラーのブルー、水色、白に塗り分けられてある。 ラストシーンとカーテンコールを照明、音響込みでつくっているところ。 数日ぶりで会うみんなは、きりっとしたひきしまった表情。 系列の三年生が何人も手伝いに来てくれている。去年、桃唄の舞台でみた彼ら。今日は、シンプルに「三年生」に見える。 午後からテクリハ、そして、通してみる。 約1時間30分。こんな芝居になったかと感慨深い。 演出としてべったりついていることができなかったのだけれど、石井先生が見事にこの芝居を立ち上げてくれている。 僕の台本は、今まで、全部僕が演出してきた。僕以外の人に演出をお願いするのは、実は初めてだ。おお、こうなるかとあちこちが、とてもおもしろい。 出来たところまでの通しを重ねてきてくれていて、後半の芝居がまだかたまっていないとのこと。 ダメだしの後、ラスト近くのいくつかのシーンの手直しをやろうとみんなに話す。 10時過ぎまで学校にいて、大人達は今日はそのまま解散。谷代先生にホテルまで送っていただく。
富士見丘小学校演劇授業。一時間目から四時間目まで。 朝、家を出るときに、もうすっかり明るくなっているのは、春が近いからなんだなあと思う。 去年は、発表が一月だったので、直前の練習は、まだ薄暗いうちに家を出ていた。 卒業公演「雪の降る日に」の稽古。 体育館での最初の稽古。寒い。 今日は、初めから終わりまでの場当たりというか、広い体育館を使って、どこで何をするかということの確認。 同時に、出演していないとき、自分はどこにいるんだろうということの確認。 健翔さん、青井さん、篠原さん、里沙ちゃん、それに僕、それから担任の長崎先生、甚野先生、馬場先生、平田さん、校長先生、副校長先生、それに音楽の畑先生と、大勢の大人が子供達と一緒に芝居を作っていく。 50人の子供達を相手に大声を出しながら、走り回る。何とかラストまでたどりつくことができて、ほっとする。 給食のカレーライスをいただきながら、講師陣は打ち合わせ。五年生が作ったというデザートのフルーツカクテルとチョコレート、クッキーも一緒に。 仕事先へ向かう電車で、宮校長先生と一緒になる。演劇授業について思うことをいろいろ話させていただく。 「新・こころ」稽古。 早瀬くんと組んでマッサージ。こういうことするのはいつ以来だろうと話す。いつも僕は、一人奇数で外れることが多くて、この手のウォームアップには参加しないでいた。病み上がりの身体が、気持ちよくほぐれていくのがわかる。声の調子が全然違うものになっていくのに気がついた。 キャストが全員揃った。10人の男たち。ほんとうにいろいろな人に集まってもらった。昨日の続きの場面をそれぞれ稽古。 えんちゃんとまちゃの場面、引き続き、微妙なやりとりの中にダイナミックな強さを。芝居全体の要になるシーン。ていねいにつくりこむ。 僕が演じる奥さんが登場する場面を、岸本さんに代役をお願いして前から見てみる。男たちのやりとり、ぐーんとばかばかしくなった。 後から登場する女学生、節子役の柳内さんが、登場する前、場面を見ながら「男ってバカだなあと思った」と言っていた。そうそう、それでいい。 帰り、明日から3日間稽古がないのでということもあって、軽く飲みに行く。あちこちの現場で一緒だった面々が、こうして集まっているということが、とてもうれしく、おもしろい。 さっくり切り上げて駅に向かう。と、駅のホームで「Tea for two」で一緒だった成田さんに声をかけられる。「聞いたことがある声だなあと思って」と。長い帰り道をおしゃべりしながら。 今回の座組のみんなとは違う距離感でしゃべっている自分がおかしい。「新・こころ」のみんなが遠いというわけではないのだけれど、すっと近くにいられるかんじ。なんだろうこれはと思うが、そういう芝居だったんだなあと今さら気がつく。 明日からは、いわき総合高校の最後の授業。というか、アトリエ公演「あいだにあるもの」の仕込み、ゲネ、初日の三日間。
まだ熱が下がらない。頭痛と喉の痛みと気持ちの悪さ。いつもなら、この時期は花粉が来ていそうなのだけれど、一月にひとしきりやられたあとは、どうしたのか、まだつらくてたまらんというふうにはなっていない。 原作の先生とKの場面、といっても原作にはない、先生がKに自分の下宿に引っ越して来ないかと話しに行く場面。 何でもない会話を二人の距離と向き合い方をていねいに積み上げていってもらう。 漱石の文体、明治の言葉をうわっつらでしゃべるだけでなく、その裏側にある、生きた心を演じてほしい。 稽古にこなかったマチャのところに、心配した遠藤くんが来るというエチュードをやってもらう。生き生きとした場面が生まれた。つまりは、そういうことだよと話して、もう一度、明治へ。 今度、生まれた場面は、ちゃんと血の通ったものになった。なんでもない、近さ、遠さがスリリングで、そして色っぽいものになった。 オープニングの現代の海の場面。二人の力関係を確認してもらう。客席は意識しなくていいから、海辺で話すってどういうことだろうねと。 昨日に続いての引っ越しの場面。それぞれのキャラクターが際だってきた。僕が演じる奥さんは、まずはいろいろやって、空気をかきまぜてみる役どころ。
今日から鶴丸くんが参加。 マミィが買ってきてくれた女学生用の色無地とえび茶の袴を、柳内さんに着てみてもらう。 今回の「新・こころ」は、男たちの愛と友情のお話だけれど、それと対極に、女学生もいるという構造だ。明治ならではの雰囲気、「はいからさんが通る」の紅緒のような女学生を柳内さんに演じてもらう。 稽古は、初めましての鶴丸くんをまじえて、自己紹介の時間から初めて、シアターゲームでアップ。その後、大勢が登場する場面をつくっていく。 鶴丸くんは、今日が初めての稽古なのに、ばたばたと登場してもらう役を演じてもらった。 違う現場で一緒だった俳優さんたちが、こうして一つの芝居をしているというかんじがとても楽しい。 稽古のあと、みんなで飲み!というのを失礼する。 まだ熱が下がらない。帰りの電車の中、パワーストーンのお店をやっている早瀬くんに、元気が出る石って何?と質問する。 ふだんはあまり頼りにしないこの手の力だけれど、今はもう何にでもすがりたい。家に帰って、置きっぱなしにしていたラピスラズリを磨いたりしてみる。
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