V字経営研究所・酒井英之の4行日記 DiaryINDEX|past|will
私のクライアントが好業績なのは、おそらく私が「ビジョン開発」と「人を育てる」ことをお手伝いしているからであろう。そうした会社はコロナ禍のようなピンチの時も、自らが目指す方向を見失わず、新しいことにどんどんチャレンジする。そのことを厭わない社員が大勢育っている。なぜ育っているかと言えば、日頃から次世代を強くすることにコストを惜しんでいないからだ。そうしたことが、史上最高益につながっているのだと思う。
「それは偶然じゃないですよ」。毎月訪問しているクライアントに「酒井さんの他のクライアントは、今どんな状況ありますか?」と尋ねられた。「幸い、私は外食産業や旅館業などのクライアントがいないため、コロナの影響を受けている会社はほぼありません。中には史上最高益を更新している会社が何社もあります。よって私の仕事への影響もほとんどなく、大変ありがたいことです」と答えた。すると「善因善果」を信じる社長から冒頭のように言ってもらえたのだ。そこで何が影響しているのか考えてみた。
3月末の決算はほぼ前年並みの数字で終わった。コロナ禍の影響で20年4-6月の仕事がほぼなくなったにも関わらずそれを後半でリカバリーできた。この間予定していた研修やプロジェクトが延期にはなったが、中止にならなかったことが大きかった。コロナ禍にもかかわらず「人財育成を諦めない」人たちの執念や、ビジョン実現に向けた熱い想いに支えられてこそ。お世話になった皆様に心から感謝したい。
第3は、事業承継、後継者育成、ファミリービジネス分野への主要事業のシフトである。これまでの弊社は幹部社員育成をメインの事業分野に据えてきた。この分野は継続するものの、このニーズは規模が大きな会社に限られる。小さな会社の困り事は会社の成長(売上げ&利益の拡大)だ。それに応えるべく、自分から「100年続く経営承継研究会」の発足や「ほんとうの事業承継」の執筆を仕掛けたことで、後継者育成のニーズに応えていく必要があると感じた。
第2は、多数のYoutuberの出現で、PCから得られる知識情報量が多くなり、コンサルティングに求められることが変質したことだ。知識だけならいくらでも簡単に手に入る。読者が「この本にこんなことが書いてあった」と、著作権侵害もいいところで紹介している。ゆえに知識情報の提供に全く価値はない。価値あるのは付与ではなく「課題の特定と課題解決策の引き出し」だけ。その本質が見えた1年だった。
「コロナの闇は、自分に何を気づかせたのか?」改めて3つ整理しておこうと思う。第一はビジネススタイルのチェンジである。それまで東奔西走するのが自分のスタイルだった。出張は年間100日にも及んでいた。それが、ほとんど出張をしなくても、zoomなどのツールを使って仕事を進めることができるようになった。リアル以外の可能性に気が付いた1年だった。
成功体験その7。今年は久しぶりに経営者向けの講演会が多い年だった。全員が危機意識を持っている時に呼ばれるのは、2000年以降一貫した私の特徴だ。世の中が安定しているときは辛い講演会も、ピンチの時にこうして呼ばれるのは大変にありがたい。その中でビジョンのある会社とそうじゃない会社の違いが浮き彫りになった1年でもあった。ビジョンを作った会社はこんな状況でも逞しく前に進んでいる。自分が進むべき方向性が明示されていることは、経営者をぶれさせない、貴重な軸なのだ。
成功体験その6。アフターフォローの重要性である。「人はフィードバックで育つ」というのを、その昔土井英司先生に教えていただいた。土井先生に教えていただいたことはほとんど忘れてしまったが、これだけは自分の中でずっと残っていて、信条になっている。それを仕組み化した研修商品を開発したが、受講生一人一人の成長は手に取るようにわかった。安く大量に供給する E ラーニングが多い中で、反骨精神のような商品が出来上がった。地味でも丁寧に売っていこうと思う。
成功体験その5。たったひとつのキーワードを全員が共有することで、会社の雰囲気がガラリと変わることを目の当たりにした。これまで何度もビジョンを作ってきたが、そのビジョンに向けて全社が一体になれる会社となかなかそれに時間のかかる会社がある。その違いが何かよくわからなかったが、簡単なことだった。ビジョンがキーワードとして全員に落ちるか、経営者だけに留まるかの違いである。全員が共感し共有するようなキーワードを探すことはブランディングの基本だと分かった。
成功体験その4。今年は要所要所でコミュニケーションタイプの違いを有効活用した。コンサルタントの仕事の重要なところは、人に自分から動いてもらうことである。それには慌てずゆっくりとその人と向き合うことが大事だが、苦手だと感じる人ほどこのソーシャルタイプを活用してコミュニケーションすることを心がけた。そうしたところ、皆自分から進んで動いてくれるようになり、結果的に大きな成果を得ることができた。
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