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V字経営研究所・酒井英之の4行日記 DiaryINDEX|past|will
人事評価は真っ当な会社ならどこでも整備しているものだ。ところが、ほとんどの会社が相対評価で、頑張っているけど高く評価できない人がいることに悩んでいる。相対評価をするぐらいだったら人事制度などない方が良いのではないかと思うのだが、それを実践しているのが医療法人「かがやき」だ。市橋院長は、評価制度は知識労働者には向かないのではないかと言う。その根拠として3つの理由を上げている。明日以降に詳しく解説する。
名著『ビジョナリーカンパニー2』の中で、経営にとって最も大事なことは「誰をバスに乗せるのかだ」と述べている。「価値観の合わない人を会社に入れないことが大事だ」という意味だ。その点、医療法人「かがやき」の採用の仕方は独特だ。採用されるのは、すでに勤務しているすべてのメンバーから承認された候補者だけ。一人でも反対意見があれば、採用されない。つまり、すべてのスタッフに拒否権があるのだ。これには、どれだけ忙しくても、「頭数合わせで採用をしない」強い意志が必要だ。あえて売上目標を作らないからこそ採用を焦る必要もないのだ。理事長が連れてきた人材でも、拒否権が発動されて入社に至らなかったこともあるそうだ。
医療法人「かがやき」は理念しかない会社だから、一般の法人に見られるような売上目標はない。人事評価制度もない。それは市橋理事長がリカルドセムラーの『奇跡の経営』を読んで二つの仮説を立て、それを確かめるように経営しているからだ。第一は「人は完全に満ち足りた状態であれば。自分の仕事を天職として働けるのではないか」というもの。第二は、「管理のいらない自律的な人材が集まれば、ルールは最低限で良いのではないか」というものだ。そしてこれを確かめるように新しい組織の形態を追求している。
医療法人「かがやき」の経営スタイルは独特だ。平田さんは大いなる社会実験だと言う。というのもこの医療法人、実は「理念」しかない。その理念とは、「希望する在宅生活を安心して送れるように支援します」だ。一見平凡な理念だが、実は奥が深い。「希望」と「安心」はトレードオフの関係にあることが多く、両立することが難しいからだ。例えば病気の患者さんが旅行に行きたいと言う。それは「希望」だ。が、旅行中に病気が悪化してしまうリスクがある。そうした矛盾を同時に実現する方法を考える。それが「かがやき」のプロフェッショナルの仕事なのだ。
まず目を引くのは木造の大変温かみのある建物だ。「かがやきロッジ」と呼ばれるこの建物は、平田さんによると、設計士に「200年続く建物を作ってほしい」と依頼したという。人生100年時代に、50年で建て替える建物には何の価値もない。少なくとも200年から300年先まで考えた上で、今の自分達はどうあるべきなのか考えるべきなのだ。200年構想で考えるとものさしが変わると言う。「まだたった2年しかたっていない」「あと198年かけて成果を出せばいい」と考えると、すごく楽になったと言う。短期の時間軸で考えるから気持ちが焦るし、落ち込む。どれくらいの時間軸で物事を考えるかはとても重要なことだ。
ホワイト企業大賞を受賞した在宅医療専門の「医療法人かがやき」を見学させていただいた。ホワイト企業大賞の授賞式に参加していたら、あまりに岐阜の私の家の近くの会社が受賞するのでとても驚いた。「かがやき」は東海総研時代に、よく私のことを取材してくれて記事を書いてくれた平田節子さんから「今勤めているところは大変面白いので一度来てください」と何度も誘われていた岐阜県羽島郡岐南町にある法人だ。ホワイト企業大賞の授賞式の会場で平田さんと、院長で理事長の市橋さんにご挨拶させていただいた。そして、すぐ足を運んだ。
トコロのクレド第12条に「お客様対応」があり、そこにはこう書かれている。「予約のお客様がお見えになるときは、ウエルカムボードを準備し、お名前を呼んでお迎えします。おかえりの時は、全員で感謝の気持ちを伝え、担当者の車が見えなくなるまでお見送りをします」。私たちが見学を終え、帰るとき事務所の脇を抜ける。その時も全員が立って「ありがとうございました」と感謝の言葉をくれる。さらに玄関の外まで出てきて、門から車が出やすいように誘導してくれて、見えなくなるまで手を振ってくれる。それが、書いてあるからやるのやらされ感ではなくて、皆さん嬉しそうなのだ。そうした一つ一つの動作が信頼を作り、「同じ買うならトコロから買ってみよう」という差別化になっている。今回もまたトコロの皆さんに人間力の大切さに気付かせていただいた。トコロの皆さん、本当にありがとうございました。
見学した無敵経営研究会のメンバーから、次のような質問が出た。「貴社を誇りに思うところはどのような点ですか?そして今は何を課題と感じていますか」。この問いに対し、4人のトコロの社員が答えてくれた。誇りに思う点はまちまちだったが、課題が4人とも同じだったので驚いた。逆に言えば、それだけ大事にしたいことが同じだということだ。みんなが同じ課題を感じていれば、その課題が放置されることはない。解決策を見つけるのも早いはずだ。課題がない会社はない。ただ、課題が共有できている会社は少ない。こうした危機意識が同社をさらに強くするだろう。
トコロの見学時には、いつもペットボトルが机の上に置いてある。そのペットボトルには手書きでメッセージが書かれたカードがぶら下がっている。一般にネックレスと呼ばれるものだ。今回私のペットボトルには次のようなメッセージが書かれていた。「酒井先生、この度も弊社を見学先に選んでいただきありがとうございます。今回は以前よりもより深いお話ができればと思っています。どうぞよろしくお願いします」。書いたのは「おもてなしプロジェクト」の責任者だ。この「深い話」というところが随分プレッシャーになった。 「貴社は素晴らしい」とこれまで何度も言ってきた。が、それよりさらに深い部分を見て感じて欲しい、そこのところの話しがしたいということだ。私の眼力が問われているわけだ。そしてそれを知りたがるこの社員の学ぶ姿勢にとても感動した。
トコロは見学の後に必ず見学者にアンケートをとる。その中に「私たちをほめてください」と言う欄と、「私たちに愛のムチをください」という欄がある。愛の鞭は「見学をしてもう少しこうした方がいいですよ」と指摘のことだ。外部の目から自分たちがどのように見えているのかを知り、その気づきを成長の糧にしようという姿勢である。自分たちはそれなりに努力を重ねている自信と、もっともっと良くしようという向上心が、「愛の鞭を下さい」という謙虚な姿勢を生んでいる。
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