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V字経営研究所・酒井英之の4行日記 DiaryINDEX|past|will
シンコーメタリコンのクレドを紹介してもらった。「私たちが願う社会」というタイトルで、そこには大きく「日本を機械長寿の国に」と書かれている。この他に、「私たちのあり方=機械に未来を溶射する」「私たちの付加価値(行動指針)=ヒアリング力・プランニング力・現場力・納期対応力・サービス力」が定義されている。立石社長は社員たちがインタビューに答える形でプロに依頼して作ってもらったという。ある程度かっこいい文章の方が社員に響くという考え方だ。「私たちが願う社会」っていう切り口は素晴らしいと思う。どこの会社も、こんな形で自分たちの貢献を表現できたらみんな仕事が今よりずっと面白くなるんじゃないかと思う。
同社には毎年新卒が入社する。新人を会社に早く馴染ませるため、「入社前から家族だ」とうスローガンで、秋からインターンで来て仕事を体験したり、イベントにも参加してもらったりしている。入社後は新人は3ヶ月間かけて全ての部署を体験する。男性社員は営業事務の来客対応なども体験する。これを2周りやる。私は2周りやるのが素晴らしいと思った。一通り体験するだけでなくそれぞれの部署の苦労を一通り体験した後にもう一度体験することによってよく理解できるのではないかと思う 。この間、1年・2年前に入った先輩が担当チューターとしてついてマンツーマンで新人の育成をフォローし、相談しやすい環境を用いている。入社前から家族だと言われた新人は、同社に対しどんな印象を持つのだろう。きっと愛着愛情を覚えるのであろう。インターンやチューター制度を入れている会社は少なくない。こんなひと工夫を多くの会社で実践してほしいなと思った。
シンコーメタリコンは、社員旅行は毎年全員で海外に出かける。旅費は全て会社負担でお小遣いまで支給する。社長は「参加しない社員はクビだ」と言っている。この縛りは社労士さんから「まずいですよ」と言われているようだが、今はでクビにした社員はいない。昨年はベトナムのダナン。ここではホテルのプライベートビーチで運動会をやったと言う。今年はニューヨークに4泊6日。ミュージカルを見たり、ヤンキーススタジアムで野球観戦したり全員一緒に行動するというのがモットーだという。こんなスタイルの社員旅行がやりたくてもできない会社がほとんどであろう。原始的な全員参加型で、なおかつ憧れの場所に行ける会社が今もあることは、とても嬉しく思った。
社員の結婚記念日には、社員の奥さんまたはご主人に対して社長からお祝いのメッセージが届く。立石社長はその内容を一部披露してくれた。在職10年を超える男性社員の奥様宛ての手紙だ。「部下とのお付き合いのためにはお小遣いが必要ですが、そこでお小遣いをもう少し上げてあげていただけないだろうか」という内容。そこには、会社が彼にリーダーとして期待していること、社長がよく見ていること、さらに非常にユーモアに富む内容で、頂いた奥さんもまお小遣いを上げざるを得ない内容だった。これを一人一人に送り続ける社長の気配り力には誰もが頭が下がる。信頼される上司になりたいと語る人は大勢いるが、一人ひとりにスポットライトを当てられる社長は本当に信頼されていると思う。
社員の誕生日のお祝いの仕方も、シンコーメタリコンはユニークだ。誕生日には朝礼時に社長から社員に誕生日手当として、10万円が支給される。さらにその日には、社員の両親に社員と立石社長の2ショット写真及び手書きのメッセージが届く。書いてあることは「社員が日常どれだけ頑張っているか」。その葉書を読んだ両親は、自分の子供の活躍を社長がどれだけ認めてくれているかを知り、大変嬉しくなる。ご両親から届いたお礼のお手紙の数々も紹介されたが、両親から「お前はいい会社に入ったね」と言われること、社員の働きがいにもつながっている。社長からのマンツーマンのお祝いは社員数が86人だからこそできることかもしれないが、立石社長は130人まではやると語っていた。
働き方改革の第4は、「プライド作り」といってもいいであろう。技能の資格取得奨励とスーツ手当だ。同社は溶射の技術力で勝負する会社だ。そこで現場社員は「おうみ若者マイスター」や国家検定である「溶射技能士」、そして「現代の名工」「黄綬褒章」などの資格取得を支援している。実際に褒章受賞者が3人いて定年後もスーパーアドバイザーとして現場で指導しているのは驚きだ。資格手当は10万円。また身だしなみを整えるためにスーツ手当5万円が支給されている。この制度には過酷な職場で働く職人へのリスペクトと、職人としての誇りを大切にせよという立石社長のメッセージを感じた。
働き方改革の第3は、女性が育児休暇中に出勤する「育休出勤」だ。これは育休中の女子社員に、赤ちゃんを連れて月に1度出勤することを促すもの。女性社員の悩みの一つが、子供が熱を出した時に「本当は休みたい。が、『お休みをいただきたいです』となかなか言い出せない」ことがある。ところが、このように周囲がその赤ちゃんを実際に見知っていると、「どうぞどうぞお大事になさってください。代わりは私がやっておくね」と周囲が協力しやす環境ができる。すると、困った時にすぐ SOS を出せるようになり、結果的に自分だけが背負い追い込んだり、我慢することがなくなる。かつて、日本社会にはそんな共助の精神が根付いていた。育休出勤制度はそれを思い起こさせる素晴らしい制度だ。
働き方改革の第2は、男性が5日間の育児休暇をとらなければいけない「イクメンファイブ」である。一般的に育児は母親の仕事と考えられていて、その大変さを父親は正しく理解をしていない。そのことが母親の不満のもとになっている。それを避けるために父親も育児に携わる時間を義務付けている。同社は独身女性の社内恋愛結婚率50%。取得した男子社員は「社長、イクメンファイブは5日間で十分です」とこぼすぐらい育児の大変さがわかったという。こうした体験→気づきが良い家庭を築くのであろう。
「ドリームセブン」を決めた時、幹部社員が「一週間も休んだら職場が回りません」と反対したと言う。が、立石社長は「導入まで1年間猶予がある。それまでに誰もが一週間休んでも困らない環境を整えてほしいと、幹部に要求した。幹部社員も「誰もが7日間連続休暇が欲しいだろう」と思い、結果的に1年かけて多能工の育成に努めた。その結果、誰もが一週間休んでも困らない状態ができた。多能工が進まないという会社は多い。が、このように「社員自身にメリットが多くある」とわかる場合は、社員が自分から進んで「誰かの代わりが務まるようになろう」と考えるために自ずと多能工化が進む。 「ドリームセブン」は有給の取得推進と多能工化を同時に実現する素晴らしい制度だ。
シンコーメタリコンのさまざまな働き方改革の実例を聞いた。印象に残ったものをいくつか紹介する。第一は「ドリームセブン」と呼んでいる7日間連続休暇制度だ。これは全社員が取得が義務である。取得するときは、事前に休暇をどのように使うのかを会社に申請し、朝礼で全社員に伝え、取得後も7日間どうだったかを報告する義務がある。そうすることによって休んでる間、誰かが代わりを務める「共助」の精神を養ったり、人の趣味・私生活を理解することに役立っている。ただ取得の奨励ではなくお互いを知り、理解し、助け合う環境を生むという点で「ドリームセブン」は大変面白い制度だ。
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