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V字経営研究所・酒井英之の4行日記 DiaryINDEX|past|will
高橋ふとん店での説明会場の机上には、手書きのメッセージカードが置かれて次のように書かれていた。「本日は遠方よりお越しくださいましてありがとうございます。こおろばかりのものですがどうぞお召し上がりくださいませ」。その横には、小さなビニール袋に入ったお菓子の詰め合わせが置かれていた。お菓子は全部で3種類あり、いずれも徳島県の銘菓であった。そのうちのひとつは有限会社鳳月坊の「鳴門っ娘」で、帰りに食べてみたら、これが超美味しかった。私たち県外からの来訪者に徳島のを知っていただこうとする郷土愛を素晴らしいと感じた。
部門内交流→前後工程交流→部門間を超える交流を促すために、高橋ふとん店にはハッピーファミリーの仕組みがある。ハッピーファミリーとは食事会などを通じて、社内での部署を超えて人間関係を築き、大家族的企業文化を構築するもの。具体的には総務部が割り振った部署を超えたメンバーで年間3回、ランチバイキングなどの食事会を開催。高橋社長も参加する。全社では100万円以上の経費がかかるが毎年続けているという。社長に「家族の範囲はどこまで?」と質問したら「親戚・家族と考える範囲が家族」との答えだった。
高橋社長は「仲の良い」「明るい」企業文化を創造することために、様々な工夫をしていた。まず、部署ごとで仲良くなるように自由に使えるお金を10万円ずつ与えた。これを2−3年続けた。次に「前工程への感謝、後工程へのおもいやり」を徹底しようと、前工程の仕事を覚える仕組みをつくった。店舗の人がPOPをつくる担当者のところでPOPのつくり方を学ぶ。すると「このPOPは苦労して作ってくれたのだからしっかりお客様に伝わるようにしよう」と考える。POPをつくる人も、後工程である店舗の人と接することで「あの人が使うのだからしっかり作ろう」と考える。高橋社長は「効率とは(前工程の)おもいやり」と語るが、そうした気持ちが効率を上げるのだ。先に部門内を仲良く。次に部門間交流を盛んに。全社イベントや全社共有のDVD作成など、時間をかけてお互いを知り助け合う企業文化を築いていた。
高橋ふとん店のサンクスカードは少し変わっていた。厳密にはサンクスカードではなく、サンクスメモ付きお菓子だ。社内にはたくさんの種類のお菓子がストックされている。「ありがとう」を伝えたい人がいたら、シール状のメモに感謝の言葉を書く。それをお菓子に貼って、感謝を伝えたい相手のメールボックスならぬお菓子ボックスに入れる。そのため、もらう人のボックスは3つくらいのお菓子が入っていた。単に手紙を贈るよりもお菓子を贈るのはテレがなくていいかもしれない…この工夫に感心した。
高橋ふとん店は売上を追求していない。高橋社長は「売上を追求しないから生き残ってこられた。」と語る。同社はピーク時に比べて現在15%ほど売上げがダウンしている。もし売上げを追いかけていたら、ニトリのような本業以外の会社が多く参入してくるこの業界で、無理やり拡大路線を追求すれば、消耗戦に巻き込まれ、会社は争いごとばかりになる。それより社員が幸せになれる会社を目指す。そうすれば会社は存続する。売上はそこそこで社員と楽しい人生を送れる。この考え方に、戦略格差より理念格差と言われる時代の本質を見た。
高橋ふとん店は2000年から毎年大卒者を採用するようになった。当初は11人採用しても9人が辞めてしまうような会社だった。社員に辞められるたびに高橋社長は全人格を否定された気持ちになった。定着率を上げるにはどうすればよいか、高橋社長は悩んだ結果、社員教育で一人ひとりに寄り添うことが大事だと気付いた。特に入社2年目の社員を誰もサポートしていなくて、彼らは一人前扱いされることに不安を感じていた。そこで研修期間を12か月から18か月まで延長。「××しかできない」ではなく「○○ができるようになった!」と認めるようにした。また、教える側が「がんばれ!」と励ますのではなく「大丈夫だよ!」と共感するようにした。そうしたところ定着率が飛躍的に向上した。同社の社是の第一条には「人を育てることが最大の社会貢献と考え、共育を会社の根本とします」とある。こうして人を育てることが同社の社会貢献なのだ。
高橋ふとん店は理念型経営企業だ。会社のマークにはいくつもの笑顔が描かれている。同社のクレドカードのコピーをいただいたが、そこにはこう書かれていた。「我々は笑顔創出企業です! 笑顔は我々にとって最も大切な価値の一つです。笑顔はお客様を含めた他人のためにするのではなく自分がいつもハッピーでいるために必要なのです」。そしては「我々は一致協力して笑顔のあふれる明るい社会を創ります」。そしてコーポレートスローガンは「快眠でくらしに笑顔と夢をそえる」。ここまで笑顔・笑顔で推す会社は珍しい。逆に言えばそれだけ笑顔の価値を知り、大切にしているということだ。
人が寝具を買い替えるときは、生活上大きな変化が訪れたとき。新生活に合わせて毎日を変えるには、どんなベッドで寝て、どんな目覚め方をするか、誰だって大事にしたいと思う。その点、高橋ふとん店川内店のサービスは充実していた。例えば、高橋ふとん店川内店のマットレス売り場にはいくつもの機能性マットレスが展示されていた。シングルベッドがすべて2つずつ並んで置かれていた。2つずつ並んでいるのは、タダ寝転がるだけでなく、そこでゴロゴロと回転するためだ。人は機能的と言われる布団に乗ると転がりたくなる。その心理を捉えた展示の仕方に感心した。
高橋ふとん店の基幹店である川内店を見学した。わが国最大級の店舗で印象に残った第一はシーツの展示法。通常布団シーツはパッケージ化されているのを置いているだけ。これだと広げたときにどうなるか、写真からイメージするしかない。それをカーテン売り場のカーテンのように上から吊るして全体を見せていた。こうした展示の工夫が消費者に嬉しかった。タオルコーナーの充実ぶりにも驚いた。高級タオルを欲しいと思っても実際に触って買うことができないケースがほとんどだ。それを肌で確かめて選べるようになっていて感激した。
楽天で寝具通販No.1サイトである『こだわり安眠館』を運営する徳島市の高橋ふとん店を無敵経営研究会訪問した。そこで高橋社長からふとん店の歴史を教えていただいた。その昔寝具は家で仕立てて作るものだった。着物や家具などと同様に庶民の財産であり、財産分けの対象になった。それが既製品を買うスタイルになり見栄の象徴になった。家具や宝石と同じでブライダル産業の一貫で業界は大きくなり、平成元年には全国に21000件あった。が、庶民は人々は使わない布団は持っていても意味がないことに気付き全国3000店まで店舗数は減少。4℃は宝石でなくアクセサリーで指示されているが、同じように布団は今や財産ではなく、健康に繋がる商品として支持されている。「存在価値」を変えることが必要とされ続ける秘訣なのだ。
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