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V字経営研究所・酒井英之の4行日記 DiaryINDEX|past|will
質疑応答に時間に、西精工の係長に参加者から次の質問が出た。「もっと昇進したいですか?」。「係長=給与は決して高くない」という認識から出た質問だ。これに対し、係長本人は「役職は単に役割。部長も課長も係長も単なる役割に過ぎない。部下育成の現場にいる今に充実感を持っているので、昇進のために仕事はしてないです」。100点満点の回答だが、これがさっと出てくるところに、自分で考え伝え、議論することを恐れず、納得するまで語り合う同社の社風を垣間見ることができた。
「成長して欲しいから評価をちゃんとする」。西精工の評価への目的意識に驚いた。西精工の評価は7段階の絶対評価。現在、一番下のD評価とC評価は0人だが、下から3番目のBC評価が5人いる。「BC評価者が5人いるのは会社が悪いからだ」と西社長は語。250人の中の5人である。「出来ない・やらない社員が悪い」で片付けそうなものだが、社長はBCを一生懸命育てて0人にしたいという。ここが0人になれば会社はもっと働きやすい場所になる。その社員育成意識に驚いた。
西精工の評価システムを教えていただいた。評価表には「何をするか」「ゴールの姿」「目標達成のための戦術」「結果」「評価」の欄がある。一般の会社と違うのは、「ゴールの姿」の中に「誰が喜ぶのか?」「そのために自分のどんな能力を高めるのか?」を記載させる欄があることだ。通常の企業だとここは数字のみとなる。誰が喜ぶかは、その先にある「目的」。目的を書かせているのは秀逸だ。
西社長は「うちはホワイト企業大賞をとったがホワイトではない」と笑う。残業も少なくない。残業が罪悪視されているが、「社員に負荷をかけるのはいい。問題は上司が負荷をかけた後、ちゃんと見守っているかどうか」だという。部下はリーダーが正しいかどうかではなく、自分を気にかけてくれるからついていくのだ。同社の現場は、一人ひとりが機械に張り付くスタイル。だから、日常のコミュニケーションは必然的に少なくなる。朝礼とか週報などどっかで濃密なコミュニケーション時間をとらないと、「見守り」ができない。だから1時間の朝礼が逆に生産性を上げるのだと気が付いた。
西精工の朝礼を見学した。毎日社長が書いたフィロソフィ(クレド)について話し合うミーティングで、社員約30名が参加している。この日のテーマは「『儲ける』とは貢献すること」だった。社長は「『儲ける』と言ったら何だか悪いようなイメージがあるが、決してそうではない。起業はしっかり儲けなければ誰も幸せにはできない」という京セラの稲盛会長の言葉を引用していた。社員はこれを自分ごとに置き換え、自分の言葉で自分の体験や自分の想いをその日くじ引きで決めたグループの仲間5人と語り合った。その後、各グループ代表が全員の前で出された意見を紹介した。これに対し、司会の係長が突っ込んだり認めたりして発表者はもちろん、全員の納得感を引き出していた。社長が向き合った問題と社員も同じように向き合い、考え、伝えてフィードバックを貰う。そうすることで価値観が揃いベクトルが合ってくる。クレドミーティングの理想を見ることができた。
西精工のミッションは「私たちは『高品質・高機能のパーツ・ナットの創造事業』を通じて、ものづくりを支え、人々の豊かな生活と幸福・社会の発展に貢献します」だ。以前は社是に「�‐錣某靴靴っ亮韻鮨箸防佞韻銅�け持つ職場の第一人者になりましょう �∪儷謀�に仕事に当たり失敗を恐れず常に責任を持ちつつことに当たれる人になりましょう �F盈宿�下ともに長所を認めましょう…」があった。社長はこの社是に違和感があったという。それは「こうあるべき」という「べき論」ばかりで、それをやった先が描かれていなかったから。仕事の目的は、社員が幸せになること。その視点が抜け落ちて、社員に要求ばかりしていた。故に今の行動指針は「�〇笋燭舛録佑反佑箸里佞譴△い斐�を大切にして、自己の人間力を高めます �∋笋燭舛浪�善・改革に努め、革新の技術で安全安心の製品を提供します」など、その先にどうなるが明記されている。こうした微妙な違いに敏感な西社長は本当に凄い。
西社長が着任した当時、社員は自分たちがやっている仕事に誇りを持っていなかったという。挨拶や5Sはおざなりで、製品が足元に落ちていたこともあった。その意識を変えるために社長は「私たちの製品は最高級車のレクサスに使われているんだぞ」と社内啓蒙活動をした。実は自動車部品会社では、自分たちの部品がどこにどのように使われているか知らない社員が多い。農業でも、自分たちが育てた野菜や肉がどこでどのように売られているのか知らない人が多い。これでは「お客様のために」と言ったところで気合は入らない。「モノの先にある幸せを見ないといかん」と言った松下幸之助の言葉を思い出した。
西精工のビジョンは「私たちは、人づくりを基点に『徳島から世界へファインパーツの極みを発信する』創造力・技術力ナンバーワン企業を目指します」だ。このビジョンを作るため、会社の沿革を振り返った。すると「こういう領域で勝負がしたい」という自分たちの強みが見えてきたという。さらに「徳島」という言葉が出てくる。西社長は「うちの会社を良くしたいと思っていない。徳島や日本を良くしたいと思っている。そう考えることで視野が広がる」という。レッドオーシャンにいたときはコストダウンのために中国進出も考えた同社だが、「徳島から」というひと言に同社の起点・原点への想いを感じる。
赤字事業を止めた後、社員と納得に向かって対話したがこれが大変だったという。「なぜ止めるのか?」「代わりに何をするのか?」。社員一人ひとりに本音で何を考えているのかレポートを書いてもらったという。西社長が選択したのは「強みのあるモノだけ作っていく」こと。ライバルが出てこないようなモノを作る。一番ライバルが出てこないのは複合製品。前後工程で8社が関わって作るモノは管理や品質保証などが面倒くさいからそれを担う。同社はそれら強みのある商品をファインパーツと命名した。ファインパーツの新製品は原則粗利40%以上。(少なくとも35%)。ファインパーツへの特化が経常利益10%以上経営の源だ。
西精工の物語は高付加価値化のための事業再編から始まった。西社長が赴任する20年以上前、同社はベアリング関連の製品も製造していた。が、過去20年間技術革新がない分野でレッドオーシャンだった。毎日のようにコストダウン会議を行っていた。原価計算をしたら20%が赤字でこれ以上ライバルに太刀打ちできず、赤字製品からの撤退を決めた。車メーカー大手4社のうち2社との取引を止め、売上の3割が減った。撤退の決断は経営者にとって最も難しい決断のひとつ。これができたのは、西社長が外から来たからだと自分で振り返る。生粋のたたき上げではできないことかもしれない。
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