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V字経営研究所・酒井英之の4行日記 DiaryINDEX|past|will
ISOWAの転職率は3/300という低さだ。ただし社長が理想としているのは、辞めない会社ではなくて、「本当に入ってもらいたい社員だけに入ってもらう会社を目指したい」と入り口で選別したい考えだ。逆に言えば「入ってもらいたくない社員のいない会社=無理やりとるようなことはしない。数合わせの採用をしない」。入り口での説明不足、動機づけ不足は後々まで尾を引く。レクサス星ヶ丘の社長のように「経営理念に賛同していますか?」「ここに向かって仕事をしています」と聴いて確かめることが良い社風づくりの基本だ。
ISOWA社長は、氷山理論の見えている部分には技術や製品、サービスがあるが、社長はそれらを生み出すことはできないという。できるのはその下の見えない考え方の部分。考え方を「実体験・思い・思考」などを元に「言葉・文字」のメッセージにして伝える。社員はそれを「意味付けして解釈し、実行行動に移す」。このとき、メッセージが一方的になったり、権威や権限で引っ張らないようにすり。お互いに理解できるまで対話する。そうすることで、一体感が出てくる。一方通行は、主体性の発揮を妨げる。
社長は氷山の見えない部分である「働く理由の共有」の「働く理由」について何も伝えられていないと感じていた。そこで「私はISOWAで何のために働きたいのか?」を必死で考えたという。出た結論が「社長でも本音はお客様より家族。大切な家族のために働きたい」。そこで「自分と自分の愛する家族のために働ける、世界一社風のいい会社」を経営理念にした。「自分と自分の愛する家族のために働ける」環境とは、まず「社員が自分は会社に大切にされている」と実感すること。次に「お客様のために一生懸命働ける」こと。それによって、はじめて「家族のために働ける」環境が整う。この考え方を自分の寄り処としている。
そこで「社員の想いをざっくばらんに言い合える場」をつくろうと思い、仲間に声をかけた。すると社員の反応は「何でやらにゃいかんのだ」と理解がない。結果的に「やりたい人だけ」が集まった。そして、不満ばかりをぶちまけた。が、そのうち「会社に文句ばかり言っても仕方ないので、自分たちでやろうと言い出した。そして、指示命令なしで、自分たちの創意工夫でリードタイムを35%も短縮した。それが自信となって、社風改革がスタートしたという。この変革は、私はクライアント先でよく体験している。不満をぶちまけ、それを「あなたの気持ち、想いはわかった」と受け止めてもらうと、承認された嬉しさから人のモチベーションは上がる。そして、自主的に取り組んで答えが出ると、人は「仕事って面白いっ!」て思うのだ。
社長は社員のために良かれと思って、他社の成功事例などを聴いては、様々な制度や仕組みを作ってみた。しかし、現場社員は何もやってくれない。正直、社員を嫌いになりかけたという。が、風土改革のセミナーを受けに行って、そこに来ていた大企業の人と話をして考えが変わったという。まず、大企業も同じ現象に悩んでいた。また、会社を思って悩んでいる人は、自分以外にもいることがわかった。さらに現場が何もやってくれないのは「うちの上司は自分たちへの理解がない」と感じていることが原因だとわかった。そこで帰社後早速、「思っていることをざっくばらんに言い合える場」をつくってみた。
ISOWA社長は、会社を良くするものは何かという問いに対して、氷山の一角理論で説明してくれた。見えている部分が「企業の規模、知名度、制度、福利厚生など」。しかしそれだけは企業は良くならない。見えていない部分の、「世代や部署を超えた関係性づくり」が欠かせないという。その関係性を築くものは「働く理由」の共有。同じものを目指して、同じ価値観で働くこと。聴きながらそれこそが一番大事だと納得した。
製造係の人は、「自分語り」で次のように話してくれた。「130mの機械の据え付けを担当した。他社の機械と連携する部分もあり、自分たちの機械だけでなく、ライン全体のバランスをとり、他社の機械との壁をなくすことが一番大事だった」。そして、「「やりがい」と「やってやろう」をくれる会社に感謝している」と言った。それを聞きながら、同社の社員は絶対に手を抜かないだろう。そして自分のクライアントの社長たちが、もし同じことを言われたらどれほど喜ぶだろうかと思った。
調達係の人は、残業をなくし休みを取りやすくするために、1人が調達先を10社づつ担当していたのを2人で20社を共有して見るようにしたという。その人にしかわからない業務をなくすようにしたのだが「できる・できない」ではなく、「やる・やらない」で考え「やる」と決めたら「どうしたらやり切れる」かを考えた結果だという。主語を自分にして語らせる主体性が同社を明るく前向きにしている。
「日本で一番大切にしたい会社大賞」の審査員特別賞を受賞した段ボール製造機器メーカーのISOWAの工場内を見学した。各所で説明してくれるのは、20代〜30代くらいの若手の担当者たち。彼らは業務の概要を話した後、『思いが満ちたものづくり・自分語り』をしてくれた。業務の紹介が客観的な話であるのに対し、「自分語り」は主語を自分にし、自分が日々どんな思いでこの職場で働いているか、という主観的な発言だ。
ISOWAが自社の存在感を伝える言葉がある。同社がつくる段ボール製造機は、それがないと段ボールができない。だから物流ができない。よって同社は自分たちが物流の最上流工程にいると位置づけて「ISOWAが止まると世界が止まる」。シンプルだが、その通りで「社会的責任感」が感じられる力強い良い言葉だと思った。同時に流通業であれば、どの企業にもこれは言えるのではないかと思う。
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