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V字経営研究所・酒井英之の4行日記 DiaryINDEX|past|will
梅澤先生の講義を受けた後、挨拶に行き、ブラザー時代のお礼を伝えた。すると「あの酒井さんか?」と尋ねられたので「違います。『もう一人の酒井』と呼ばれている酒井です」と伝えた。すると先生は「そうだろうな。なぜ彼はあんなこと(会社に訴訟を起こす)をやったのか?」と首をひねった。その先生のつぶやきに、私は先生の「自己超越願望」を見た気がした。自己超越願望とは、第6段階の欲求で「自分をなくして世の中の役に立ちたい」と思う気持ち。先生の立ち振る舞いから、その境地にあることを強く感じた。
梅澤先生のMIP理論を聴きながら、自分は人生で2度MIP商品を開発した経験があると気が付いた。MIP商品とはMarket Initiating Productの略で私がかかわったのは1987年と2006年。ブラザー工業のP-touch(TEPRA)とSkyのSkySEA Client Viewで、いずれもゼロから生み出すところから築き上げた。人生で2回MIPを生み出した人はそうはないだろう。次のひとつを生み出すことを生業にする。これは、2つ生み出した者のミッションだと思った。
商品企画エンジン(株)の梅澤伸喜先生の講義を拝聴した。先生の講義は約30年ぶり。ブラザー工業時代に一度受けたのだが、その時は大したアウトプットが出なかった。ところが先生はこの30年間とても進化しておられた。特に、コンサルタントとして大成功しながら愛知学院大学に通われ、研究を重ねて経営学博士になられていた。その真理を突いた探求心を貫いた人間ならではの姿勢が講義から伝わってきた。それが、梅澤先生の近くにいることをとても気持ち良くしてくれた。
最近、新規事業開発コンサルの依頼が多い。多い理由は将来への危機感の強さだろう。強い商品が一つあれば中小企業は何十年と安泰だった。ところがマーケットとお客様がどんどん変わる。その中で商品の陳腐化が凄まじい勢いで進んでいる。また、後継者の高齢化がどんどん進んでいる。つまり、ビジネスモデルと後継者の2つの高齢化が進んでいるのだ。よって中小企業は後継者が主体となってベンチャーのように事業を起こさないといけなくなっている。明治大学のMBAで「ファミリービジネスアントレプレナーシップ」という講座を持たせていただいたことがあるが、今の時代、その必要性はますます高くなっている。
関学では大切な試合の前には、以下の【堂々と勝ち、堂々と負けよ】が朗読される。「いかなる闘いにもたじろぐな。偶然の利益は騎士的に潔く捨てよ。威張らず、誇りを持って勝て。言い訳せず、品位を持って負けよ。堂々と勝ち、堂々と負けよ。勝利より大切なのはこの態度なのだ。汝を打ち破りし者に最初の感激を、汝が打ち破りし者に感動を与えよ。堂々と勝ち、堂々と負けよ。汝の精神を汝の体を常に清潔に保て。そして汝自身の、汝のクラブの、汝の国の名誉を汚すことなかれ」。常にこんな精神で仕事に挑みたいものだ。
忖度地獄を生み出す大本は「わかっているだろう」の心理だ。この心理を衛藤信之先生は子供が「ママ、僕はスヌーピーのコップじゃないと牛乳飲まないって、わかっているだろう。なのになぜそれで牛乳出してくれないの?」という「甘え」と同じ甘えだといった。それをまだ口にすればいいが、不機嫌なまま口にしないと、親は何が不機嫌の源かわからず、雰囲気は最悪になっていく。思ったことを口にする自己開示ができること。「〇〇したい」と正直に言えること=「わかってよ」と甘えない構造が人間関係作りにはとても大切だ。だから人は宮川選手のように素直に謝れる人、お礼が言える人が好きなのだろう。
コンサルタントとして幾度もV字回復支援をしていると、このような忖度地獄を破壊してきたことに気が付いた。それを壊す方法はいつも同じ。それは忖度地獄にハマっている人に対し「それをしたところで今日と明日、何かが変わりますか?」と問うことだ。忖度地獄に陥った人は、「おかしい」と思いながら「やらざるをえない」と感じている。目先のことしか考えられていない一種の催眠状態だ。しかし、全体を見せて「今がいかに危機的か」がわかれば、「おかしい」と感じていた自分が実は正しかったことに気が付く。日大で言えば「勝利至上主義の監督=おかしい」と気付くよう、視点を変えてあげることが、催眠状態を解くカギである。
昨日の忖度地獄を打破するにはどうしたらよいか。「わかっているだろう」がまかり通る空気に対し「あなたはおかしい!」と堂々と主張することだ。が、そのリスクはとても大きい。日大のアメフト部でそれをすれば、選手たちは首になり、学校にいられなくなるかもしれない。そこに対し、「日大の常識は世間の非常識」と声を上げたのは世間だった。それによって当該選手は守られた。忖度地獄に陥った人を救うには「あなたはおかしい!」と堂々と主張し、空気を壊すことなのだ。
セラピストの講演を聞いた。人は空気に支配される生き物、という話だった。その支配のひとつが「わかっているだろう」だという。上司の「俺の言いたいこと、わかっているだろう」「何をそればいいかわかっているだろう」が、真綿のように部下の首を絞める。そして部下は、それを実行する。実行しないと「そんなこともわからないのか…もういい!」と言われるからだ。この忖度地獄に日大の選手も財務官僚もハマったのだろう。世に恐ろしいのは「君、わかっているだろう」のハッキリ言わずに支配する権力者の体質である。
経営者向けにセミナーを開催した。講義終了後、受講されたある経営者が私のところに来て、挨拶かたがた「是非一度工場見学に来てください」と言ってくださった。「うちみたいな会社でも商品開発は可能か見てください」がその趣旨だが、数年以上続いている会社は間違いなく他社にはない魅力を持っている。現場に行くと、現場でないと気付けないことが一杯ある。モノづくり現場が好きな私にとって、願ってもない喜び。今から楽しみだ。
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