|
V字経営研究所・酒井英之の4行日記 DiaryINDEX|past|will
企業の存在意義は、世の中に新しい価値を生み出して世の中の人々に喜んでもらうことにある。したがって大事なのは「価値づくり戦略」。価値を生むのが目的なのだから。技術は「槍にするか、鉄砲にするか」だから戦術。ゆえに技術戦略という言葉もおかしい。商品戦略というのもおかしい。「価値戦略−技術戦術−商品計画」が正しい。
中央大学大学院の小林教授のイノベーションの講義が好きだ。先生の講義CD『イノベーションなき企業は必ず滅びる(日本経営合理化協会)』から気になった点を記載する。本田宗一郎は次のように言ったという。「ホンダ技術研究祖は技術を研究する所じゃない、ここは人間の心を研究するところだ。10年、20年先のお客様が求める価値が見つかったら、手段である技術を使って達成するんだ。新価値づくりが目的で、技術は手段。技術・技術なんて言っていてはいけない。企業が取り組みべきは「価値づくり」だ。
某大手企業の研修で、社員が理念を共有しベクトルを合わせて進むことの大切さを説いた。するとある受講生が「会社が大きすぎて、価値観もバラバラだから無理ではないか」と語った。確かに現状そういう側面はあるが、問題は「だからできない」と思うのか、「それでもできるようになる」と思うかだ。その受講生には自責と他責の話をした。「他責で考えているうちは何も変わらないよ」と伝えたら、彼はすぐに自分の過ちに気が付き、研修終了後わざわざ挨拶に来てくれた。その素直さが嬉しかった。
未来工業は5年に一度海外への社員旅行を実施していることでも有名だが、パネルを見て驚いた。数人のグループに分かれてイタリアの好きな街、都市に行く。そこで想い想いの写真を撮る。その写真の社内コンテストが行われ、上位者には賞品が贈られる。その1位は「子会社の社長になる権利」。2位は「1か月休暇する権利」など、通常の会社では考えられないことばかりだ。企画したのは全員社員たち自身(委員会)だという。学園祭のようなボトムアップのノリを社内で実現していることに感動した。
未来工業には制服はない。枠にはめようとすると新しい発想が出ないと考えるからだ。パートやアルバイトはおらず、全員正社員だ。パートやアルバイトの待遇では「やる気は出ない」から。定年は71歳の誕生日の前日。60歳での時点での給与を71歳の前日まで据え置く。ベテランでも信頼しているから大丈夫だという。残業は禁止。よく「ワークライフバランス」というが同社は「ライフワークバランス」という言葉を徹底している。人生が先にあって、その中に労働がある。労働時間をできるだけ短くすることが人生を充実させることになると考えているからだ。社内のクラブが70以上もあるもの休みが多いこと、クラブ活動への補助人が1万円/人出ていることの効果だろう。働き方改革のお手本がここにある。
未来工業でいただいた社内報を読んで感動した。社長の年頭挨拶に、「機械を修理して使うのは素晴らしい。しかし、機械を大事にするあまり修理に時間がかかり、生産性が落ちるようなら問題だ。今年は利益が出ている年。手間のかかる機械を使って遅れや残業を生むくらいなら、新しい機械を買うことも検討して欲しい」との一文があった。このような意見が社長から出るということは「節約=文化」「機械管理は現場に任されている」証だろう。コストカットの前に業務カットを考える姿勢に感動した。
未来工業には提案制度でideaを吸い上げる仕組みがある。提案制度は何を出しても1件500円で、その数年間5000件。内容はヘルシーメニューの要望でも、「工場にお化けが出るという噂があるのでお祓いをしてほしい」でも何でも良い。出された提案をいちいち公表はしない。他を見るとそれに縛られてしまうから。上司が提案内容に関して実施の判断し、必ずフィードバックコメントを返すという。また改善を実施した場所には「誰の提案か」がわかるシールを貼っている。これは本人への心の報酬だろう。
未来工業は「やる気を引き出す」ために、成果主義はとっていない。成果主義で他人と差ができることがやる気を失うと考えている。また、営業マンには目標値はあるがノルマはないという。ノルマがあると営業マンは数字を作るために問屋ばかり行くようになり、その先の末端のお客様の所に行かなくなってしまう。が、同社は「商品はお客様に作っていただいている」と考えている。営業マンの仕事は、魅力的な商品を創るための現場情報の収集。それには、数字を作る活動より、営業マンを末端のお客様の所まで行く活動が必要だ。だから、ノルマを作らない。なんとも利に叶った考え方に驚いた。
未来工業のように権限移譲をすると「もし、失敗したら…」どうするのか?との疑念がわく。それに対し同社は「失敗したら元に戻せばいい」「小さな失敗は、自分が考えてやったのだから、褒めてやればいい」とおおらかだ。また、大きな失敗をしたら…との意見もあるが、失敗をしてそこから生まれる損害よりも、挑戦から生まれる利益のほうを重視しているという。失敗経験は必ず次に生きる。そのような経験が多く共有されているからこそ定着する素晴らしい考えだ。
未来工業は社員のやる気を引き出すことを徹底してやっている。「やる気以外はいらない」という。その方法の一つが「ホウレンソウ禁止」だ。ホウレンソウ禁止とは「仕事は部下に任せろ」の意味。部下は仕事を任され、自分の裁量の範囲が大きいと思ったようにやれる。思いついたようにやれる。それにより効率が上がり、新しい成果が生まれる。成功体験により「嬉しい」「面白い」「してやったり!」という気持ちが強くなる。「ホウレンソウ禁止」は権限移譲の裏返し。総務の担当者は「極端に言わないと浸透しない。実際には3日に一度くらいは報告しています」というが、「ホウレンソウ禁止」という言葉の威力は大きい。
|