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V字経営研究所・酒井英之の4行日記 DiaryINDEX|past|will
実は昨日の桃源郷は先週も来た。ただし、着いた途端に大雨が降りだし、竿を出すのを諦めてすごすごと帰った川だ。家から片道約4時間。竿が出せずに帰る虚しさは半端ない、でも橋の上から川を見て一目ぼれし、どうしても竿が出したくてもう一度来た。時間が無駄にならないよう経営のCDを10本積んで何本も聴いた。すべてが良い話ではないが、中には「そうだよね!」と膝を打つものがいくつもあった。鮎+CD。それも大きな収穫になった。
こんな桃源郷がこの世に残っていたのか…そう思ってガタガタ身震いした。子供の頃、自分が育った荘川。その荘川は何度か繰り返された大水と土砂、及び護岸工事の影響でいつしか全く違う川になってしまい、当時の面影はなくなった。そして、あんなに釣れた鮎はいつしか釣れなくなってしまった。ところが今日訪れた川は、当時の荘川の姿そっくりだった。そして、鮎も実によく釣れた…わざわざ訪ねて来て本当に良かった、懐かしさで涙がこぼれそうになった。こんな自然を維持してくれた皆さん、本当にありがとうございます!永遠にこの川が、この状態でありますように!
夏の甲子園を観ていて、どのチームもピンチになった時に深刻な顔をせず、逆に笑顔が多いことに驚いた。これは、監督が単に「笑え」と言っているだけでなく、実は監督が笑っているからであろう。もし、監督がベンチで「この野郎!」怒りを前面に出したり苦虫を嚙みつぶしたような顔をしていたら、選手にこんな顔ができるはずがない。企業も同じだ。上司が怒ってばかりでは社員は委縮するだけだ。今期の甲子園は土壇場で同点に追いついたり逆転するケースが相次いだが、「笑顔」がもたらすポジティブさが信じられないドラマの引き金になったのだろう。
飛騨職人学舎を立ち上げたときの同社のスピードは約半年。8月に「3月に間に合わせろ!」と指示し、それで間に合わせたという。カリキュラムは秋山木工というお手本があったとはいえ、高校を回っても生徒集めが大変だったという。社員は「開校準備には3年は必要」と言ったそうだが社長は「こんなものは走りながら考えてやるものだ」と一蹴した。完璧になるまで待って動かずに時代に乗り遅くれる人と、方向感だけ決めて走りながら考える人。飛騨職人学舎が飛騨産業の魅力のひとつになっていることから考えると、結果的に成功するのは後者だと思う。
地域の伝統を引き継ぎ、魅力的な商品開発と魅力的な人財育成を行う企業は、地域内部より地域外部から多くの人を集める…それが飛騨産業である。工場の平均年齢は30代半ばだが、今年も大卒者を20名雇い入れ、若返り中だという。さらに採用の70%は他府県からの応募者。また女性の希望者が多く、460人中126人が女性だという。こうした人口流入や、女性活躍の話を聞くと、地域の産業は、本当に地元を強くするのだと感心した。
飛騨産業のV字回復の秘訣は何といってもその商品力にある。木の節目が出ていたからと捨てていた材料を「もったいない」と感じた流通出身の岡田社長は、それまで欠点と思われた節目を「チャームポイント」だと考えた。そして業界の常識を覆す「節のある家具を作れ」と指示した。この奇想天外な商品開発は、多くの反発にあったものの、市場に出したところ大受け。同社にとって空前の大ヒットとなる。さらに工場にトヨタ生産方式を導入した。これにより、材料のムダ、人を活人化し手待ちんのムダをカットした。
飛騨産業の今の姿を築いたのは、外部から招聘された岡田社長だ。15年以上前、左前だった飛騨産業を建て直すために、問屋との取引を止めて小売り直接取引を開始。このとき問屋が行っていた価格破壊を止めるため、小売りの仕入れ価格引き上げを提案した。小売りは当然反発する。そこを頭を100回下げて説得せよ、と社長は言った。流通出身の社長ならではの指示だが、結果8割の取引先は直取引で値上げ要請を飲んでくれたという。古い家具流通が衰退し、ニトリやIKEAが進出する大転換期のこの決断と行動は凄いと思う。
飛騨産業の営業企画部長に、飛騨産業の歴史と現在、未来を語っていただいた。飛騨の匠は「縄文時代」から存在し、平安京の頃には寺社仏閣の建築に活躍したという。また、現在は周辺の杉材を圧縮材として加工した家具ができないか研究開発投資をしている。これは、パリ協定を遵守するための森林整備に貢献する取り組みだという。そうした流れを聴きながら、飛騨産業は単なる家具屋ではなく、「飛騨」という地域が持つ歴史と資源と、そこに住む人間の生き方に誇りを持ち、それを次の時代の引き継ぐ区ことを「引き受けている」存在のように思った。歴史も環境保全も匠の技もいずれも社会的な課題ばかりだ。それを「引き受ける覚悟」の強さと謙虚さが今、多くの人から強く必要とされる秘訣だと思った。
飛騨産業は、「飛騨職人学舎」という、木工職人養成学校も別法人で経営している。生徒は現在5名だが、彼らの教室を見学すると1年生3人が1人2分で自己紹介してくれた。彼らが語るのは、自分の出身、家族構成、入舎動機、人生の夢などである。これを2分で語るだけでも立派だが、彼らは毎日スケッチブックに両親への手紙を書いていた。日頃、電話禁止で連絡が取れないルールなので、このスケッチブックをご両親に送るのだという。恋愛禁止、スマホ禁止の中で人間を育成しようとする精神に感動した。
飛騨産業の工場はとてもよく清掃されていて、木片やおがくずひとつ落ちていない。これは1日4回清掃しているからだが、面白いのはその清掃時間。休み時間の前の5分を、音楽を流し清掃タイムとしていること。つまり「休む前に掃除する」という、人が年末の大掃除をするときと同じ心理を利用している。スタバの社長や長谷川仏壇の社長はこの工場を見学して、店舗で使用する家具や仏壇のOEMを決めたという。つまり、工場がショウルームとなり、営業マンの仕事は工場に連れてくればいい、ということ。社員の挨拶も実に気持ちよく、5Sの行き届いた工場はそれだけ魅力的なのだ。
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