|
V字経営研究所・酒井英之の4行日記 DiaryINDEX|past|will
2月から7月までのV字回復の立役者たちに印象に残ったリーダーの言葉を聞いた。ある担当者は全体の中でも中心的役割を果たした企画課長の言葉に励まされたといった。その商品は確率的には顧客に100回提案して2回売れる商品だった。逆に言えば98回断られる商品だ。だから、断られることに慣れるまでは心が折れそうになる。そんなとき、その担当者に課長は「98回まで断られて当たり前。今まで何回断られたの?」と声をかける。担当者は「24回です」と応える。すると課長は「断られて悩む必要なんかないよ。後74回断られないといけないな〜」「楽しくやりましょう。真剣はいいが、深刻にならずにね」と笑う。この言葉に担当者の中のめげた気持ちが消えて、「がんばろう!」という気持ちが復活。そして、それから3回目の提案で、見事受注!そんな時、課長は「意外と早かったね」と声がけ。この明るさが、V字回復実現の礎になった。
2月から7月にかけてV字回復を果たしたクライアントを訪問。V字回復の立役者たちにその要因を尋ねた。彼らが口を揃えて言ったのは「座談会が良かった」ということ。座談会とは、複数のチームから同じ商品を担当する担当者を集めて毎週1〜2時間かけて行ったミーティングのこと。そこで商品が売れた時の成功事例と失敗事例を共有し、その違い何か。成功のポイントは何か。それを誰もができるようにするにはどうすればいいのかを話し合うのである。その中からキーワードが生まれ、このキーワードを用いることが大きな成果に繋がった。横のコミュニケ―ションが「やらなきゃいけない」というプレッシャーを「やり方がわかった!」に変え「やるしかない!」が生まれたのだ。V字回復時は上司と部下間の縦のコミュニケーションが重要なのは言うまでもない。そして、それ以上に同じ担当者同士の横のコミュニケ―ション(ワーキング・グループ)が重要だとわかった。
『プロフェッショナル』の星野佳路さんの回の中で、実に印象深い言葉が出てくる。それは星野社長に、茂木健一郎が「日本人はリスクをとることが苦手だという。なぜ、星野さんはそれができるのか?」と質問した時だ。星野社長は次のように応える。「リゾートの再生に入っていった時に、そこに残っている社員は、すごくお客様に喜んでほしいと思っていながら、それを達成する組織にいられなかった『取り残された人』たち。そこに対して当社が培ってきた組織文化やものの考え方を伝えることで、彼らがやる気を湧き起こして自分たちで自立して再生できるリゾートになっていけるなら、私たちにはそれを提供する使命がある。リゾートや旅館で働くスタッフは、基本的に人間の性格として、お客様に楽しんで喜んでほしいと思っている。私たちはそこを信じるのです」と応える。自分を信じてくれる人を人は信じるというが、信じる根拠がしっかりしている星野社長の姿勢に感銘を受けた。
『プロフェッショナル』に星野リゾートの星野社長が登場した回のDVDを観る。この一週間だけでも3回観たが、そのたびに泣いてしまう。泣いてしまうシーンは決まって伊豆の「いずみ荘」の皆さんが、自分たちで再生コンセプトである「熟年女性のマルチオケージョン温泉旅館」にたどり着き、その説明会を開いた時のシーン。その説明に納得し、その顧客を満足させるためだったら自分にもできる!と確信し、表情がみるみる明るくなるところだ。コンサルタントを20年もやってきているが、あのように劇的にBeforeとAfterが変わるシーンは、しょっちゅうあるものではない。それゆえに自分にとって宝物になっている思い出でもあるし、今取り組んでいる案件でも同じような結果を出したいと願う憧れでもある。何年たっても、「こうありたい」と思う憧れのシーン。だから泣いてしまうのだろう。
延暦寺での某社の管理職合宿研修で、大好きな最澄の言葉が記された根本中堂内の額を見た。そこには「国宝とはなにものぞ。宝とは道心なり。道心ある人を名付けて国宝と成す。一隅を照らす。此れ即ち国宝なり」。感銘を受けたので4つ目の座右銘とすることにした。座右銘はいくつあるのが適切かわからない。が、私は起業してからよく聞かれるようになり、自分でも強く意識するようになった。スポーツ選手が体幹を鍛えるように、自分がぶれないようにするためには、自分を支える教えが必要だと感じているからだ。他の3つは「経営とは人間の最も醜いエネルギーを美しい価値に変えることをいう」「人生送りバント」と「かごに乗る人、かつぐ人、そのまた草鞋を作る人。さて、あなたの生き方は?」。どれも自分のミッションとつながっていて、この生き方を大切にしたい。
延暦寺での某社50人の管理職研修のテーマの一つが「イノベーションの発想法を学ぶこと」だった。と言っても、その場で発想法を伝えても次々画期的なアイデアが生まれるほど単純ではない。与えられた時間は2時間程度。そこで事前課題で次のようなものを出した。「過去1年くらいさかのぼってみてください。あなたの事業所に届いた意外な顧客からの意外なオファーは何かありませんか?」。これを一通り集めてみたら、実に面白いオファーが次々に見つかった。同社は大手企業の不動産利活用企業だが「社員から自分の土地を活用してほしい」「社屋の屋上を貸してほしい。太陽光をやりたい」「無線中継所の跡地を活用して霊園ができないか?」など。これらはイノベーションのヒントになるオファーばかり。ドラッガーが「予期せざるオファーにこそイノベーションのヒントがある」と言ったが、その通りやったら本当に出て来た。おかげで大満足の研修となった。
クライアントの管理職研修の講師で比叡山へ。近場ながら今まで一回も行ったことのない場所だった。登ってみてその急峻ぶりに驚いた。1000年ほど前にここに寺院を開いたという事実に驚いた。そしてここの僧兵が守り神のようにあがめられると同時に、強い存在になるのも分かった。鍛え抜かれないと生き残れないような環境なのだ。そして、その寺院を焼打ちにした織田信長のエネルギーを思って、さらに驚愕した。これは並のエネルギーでできることではない。怒りとか我欲とか完全に超越した、強烈な使命感によるものだろう。そのような歴史の中に身を置くと、自分の小ささが感じられた。自分が溶けて消えていくような感じ…そのように謙虚になれる場所はとても貴重。また来たいと思った。
雨続きで気が滅入る。私にとって夏の醍醐味は、鮎釣り。鮎が釣れることは勿論だが、それ以上に快感なのがこの照り付ける日差しの中で川に立ち、涼風に吹かれることだ。それが一番感じられるのはお盆明けの「残暑」の季節。それこそ自分が一番楽しみたいのに、川が増水。釣りはおろか、河原に降りることもできない。サザンの名曲『あきらめの夏』が何度頭の中をリフレインしたことか。その辛さを和らげようと、デスクトップの背景を変えることにした。それまでは、私がパネルディスカッションの司会をしていたときの写真だったが、アフリカ・ケニアで撮った雄大な大地の景色に変えた。すると、それだけで随分と気持ちが明るくなった。滅入るときは環境から変えるのが一番だ。
私のクライアントでは、近ごろオフィスからゴミ箱が消えたという。社員のデスクの近くには2〜3人でシェアするゴミ箱があるのが普通だ。そして事務処理をしながら出たゴミをそこに捨てる。しかし、誤って重要情報やお客様情報を捨ててしまわないとも限らない。そのため、社員は自分でゴミ収集用のビニール袋を持参。仕事中はそれに入れて、帰るときに部屋の外にあるゴミ箱の中に、それを捨てることにした。するとビニール袋からゴミ箱に移す時に誤って捨てたゴミに気が付くという。リスクは元から絶って改善する基本を見た。
ボランティアで参加しているNPO法人「岐阜立志教育フォーラム」の企画趣旨に感動した。現在、大卒者の若者を3つの悲劇が襲っている。「悲劇1.就職して3年以内に30%の若者が退社する」「悲劇2.大学にも行かない就職もしない新卒ニートが3万人以上もいる」「悲劇3.就職できないことを苦に自殺する若者が年間1000人以上もいる」。こうした悲劇を防ぐ方法のひとつとして子供たちに夢を描く機会をつくっているのがこのフォーラムだ。この運動に共感者が多いのは、このような社会問題を、数字を根拠に語り、対策を行動に移しているからだろう。真実を数字で伝えることは賛同者を増やす上でとても有効だ。そこで当社も設立趣旨を数字で伝えられるようにホームページを書き改めてみた。少々長文になるが、書いてみて、はじめて自分の肚にストンと落ちた。自分の中に重い錨を下ろしたような心境。ぶれない自分を作るためにも数字の根拠は必要なのだ。
|