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V字経営研究所・酒井英之の4行日記 DiaryINDEX|past|will
12日に東京商工会議所でセミナーの講師を務めた。すると受講生から以下のようなメールを頂いた。
トヨタのマークが青いクルマがある。はずかしながら先頃自分がユーザーになって始めて知った。ハイブリッド車は青色なのだ。同じエンブレムなのに、機能によって色が違う、という設定には心をくすぐる良い仕組みだ。私は柔道をやっていたが、帯の色の違いは黒帯になるまでは憧れであり、黒帯になってからは誇りだった。デザインは全く同じなのに、ちょっと色を変えて憧れを作る。そのモデルはオリンピックのメダルだが、色に憧れる気持ちは強い。今はノアに乗っているが、同じノアでもハイブリッドでないノアを見ると一種の優越感を浸ることができる。牛乳石鹸や赤箱・青箱で展開したり、アサヒビールが青や赤の発泡酒を出したことがあるけど、違いが分からない色分けよりも、どちらが優れているかが明確なので「いつかはハイブリッド」の憧れを創り、その普及を加速させることができる。その意味でも、上手い付加価値の出し方だなあ。
久しぶりにほめる達人「ほめ達」こと西村貴好先生の講演を聴く機会があった。相変わらずの機関銃の講話だが、聴いていてそのスケール感に圧倒された。彼の理想は自殺者の多い世の中=彼はそれを心の内戦と呼んでいるがそれを終わらせることだ。そのために、ジョハリの窓を開く人を増やしていくことにある。そして、それを加速度を付けて増加させていく仕組みを築いていた。ほめ達3級からほめ達インストラクターまで養成していく仕組みがそれである。それにチャレンジした人は、皆、ほめ達の考え方に共感した人たちだ。その中にはかつて自分自身がうつ病に悩んだ人もいる。ほめ達の考え方に救われた人が、今、それを普及させるように動いている…私にも、多くの人に伝えていきたいメソッドがいくつもある。しかし、それは私と出会った人に限られていて、極めて限定的だ。ほめ達の話を聴いて自分のスケールの小ささを実感した。そして、これではいかんな、と気づいた。
土曜日に紹介したチームにはもうひとつ、面白い小道具がある。ムンクの叫びをもじった「コウスケの叫び」だ。これはリーダーのコウスケさんがモデルになっていて、ムンクの叫びの絵ように、両手を頬に当てて「ヒュ〜」と叫んでいる、スイングスタンドだ。同チームの目標は、各個人が成約率20%を超えること。しかし、20%に至らないメンバーがいたらその人の机上に、この「コウスケの叫び」が未達成者の証として立つのである。担当者にして見れば「コウスケの叫び」があることは不名誉の極み。だから早く20%超えをしてこの「コウスケの叫び」スタンドを取り除きたいのである。同社にはこのようなスイングスタンドがいくつもある。もちろん、「あなたがNo.1」のような名誉なものもある。これがたくさん並んでいる人は壮観だ。このような小道具は、リーダーの声がけを容易にする。その声がけから、担当者はいろんなヒントや、やる気を得ることだろう。
昨日紹介したチームは、カベ新聞ならぬカメ新聞をチーム内で発行している。カメは作者のあだ名だ。内容はまじめだが、新聞下段に付きものの書籍広告欄はお笑いたっぷり。サブリーダーの武田さんをいじって以下のような雑誌のパロディとなっている。「武田とためしてガッテン/失敗は勲章特集号vol.7/定価100円(煮込み)/恥ずかしくて言葉に出せなかったが…『もしかして』を言えた体験記/「予兆」を感じる前に風を感じて…浜田省吾/武田の「モニタリング」日記/矢上流はしご酒放浪記…おすすめ居酒屋・スナック・立ち飲み屋を公開/お近くの書店にはありません」。おまけに管理職も「魔人ブウ原口」「レボリューション京子」など源氏名で登場。読みながらくすくす笑ってしまうが、本文には伝えたいことがバッチリわかりやすく書いてある。こんな良い雰囲気のチームの業績が低迷するはずがない。後はこのチームの雰囲気を残る2チームに伝播させていくだけだ。
私のクライアントは今、売上げを倍にするV字回復まっただ中。同社は3チームに分かれて主力商品の販売に一生懸命だ。その中のあるチームが、「売れたら記入していく成果表」を作成した。そして、その成果表に自分たちの源氏名を考えて書いた。曰く「ボンバー田中」「ブービー横田」「ズンバ青柳」「ライオネス桐生」など。実名と違いこんな名称だけで職場が明るくなる。そして、このメンバーで週に一度ミーティングをしている。このときには2つの決まりがある。ひとつは、お互いを源氏名で呼び合うこと。もうひとつは、このプロジェクトは「もしかして…なことはありませんか?」とお客様に語りかけることが成果に繋がる。そこで成功事例でも失敗事例でもメンバー間で共有できるように「今週の『もしかして』」というタイトルで自分の経験を話さなければならないことだ。源氏名+「今週の『もしかして』」。そうしたことが積み重なって同社は非常にいいムードになってきた。
サントリーの工場見学でハード的に最も驚いたのは、タンクの中に入ったことだった。ビールを寝かせておくためのタンクがあり、それが輪切りにされていて、その中に入ったのである。入ったからといって何がどう、ということはないのだが、タンクの中に入るというのは非日常的な体験。アサヒやキリンなどの工場見学をしたことがある身としては、ラインを見てもさして刺激になることはないが、このタンク体験にはちょっと感動した。
プレミアムモルツの開発物語を話してくれたマーケティング担当課長は、このビールをアートだと行った。ビールの原材料は農産物。そのため、天候によって性質が変わる。またビールを構成する要素は麦芽と酵母と水しかない。材料が少ないのでごまかしがきかない。そのため、醸造技師たちが毎日味を設計しているのだという。さらにプレモルは、「超達人の店」で飲むと泡や香りが良くてとても美味しいのだという。つまり、造る人や最後に注いでくれる人の「人手」が加わって、なお一層美味しくなるという。プレミアムとは、決してハードだけでできるものではなく、ハード+携わる人の心技体が重なってできるものなのだ。だからこそ後発が容易に追いつけないのだろう。マーケティング部の担当課長の話には、現場で頑張る醸造技師や超職人へのリスペクトが感じられた。最高峰のビールを提供する各部門がお互いをリスペクトするからこそ、強い商品が生まれるのだと感じた。
プレミアムモルツが作った市場は「プレミアムビール市場」だ。この企画を進めた2000年頃は、ビールが飲まれるビジネスシーンから家庭中心へとシフトした時代だった。このときキリンは家族や友人みんなで楽しむ安い第3のビールに力を入れ「のどごし生」を開発。逆にサントリーは一人で贅沢に楽しむ市場を狙った。それは今までにない市場。それをつくるときは、その商品やサービスがもたらす世界観や効果を事例で示すことが何よりも必要。そこでサントリーは「いつ、どのようにこのビールを飲むのが正しいプレミアムの味わい方なのか」をCM等を通して市場にシーン提案した。「頑張った自分へのご褒美」として金曜日はビールを飲む日にしたり、お客様をおもてなしする贈り物としてのシーンを展開した。そのシーンに憧れてこの市場は徐々に拡大。私も気分の良い時だけプレモルを飲むようになった。
サントリーのプレミアムモルツを作っている武蔵野工場を見学した。サントリーはビール業界で長らく4位に沈んでいたが、「世界最高峰のビールをつくる」をキャッチフレーズにプレミアムモルツを開発した。業界3位以下の会社は1位と競争するときに、1位との「差を埋める発想」をしてはいけない。本田技研がF1で勝てるクルマを作り、スギ薬局が調剤コーナーに力を入れ、ブラザーがプリンタの複合機を作ったように、いかにして1位と違いを出すか〜つまり、別の土俵で戦うことを考えないといけない。それがダイヤモンド麦芽を使った「プレミアムビール市場」だった。現在、従来からあるエビスとアサヒも参入して「酒を飲む楽しみ」を提供するプレミアムビール市場が展開されている。サントリーは発売直後こそシェアを落としたが、アサヒの試飲が一通り終わる頃にはシェアを回復した。先鞭をつけ、味のスタンダードをつくる企業の優位性が示された好事例だ。
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