V字経営研究所・酒井英之の4行日記 DiaryINDEX|past|will
茂木健一郎氏の『龍馬脳のススメ』の中に、「一番大事なこと。それは心の中に『北極星』を持つこと」とあった。いつも定位置にあって、どこに居ようがそこに向かえばどんな旅人も目的地にたどり着くことができる。同書の中では北極星を「ビジョンの座標ポイント」と表現していた。「誰にどうなって欲しいのか」「自分の仮想敵は何なのか」それが胸にドスンと落ちれば、環境がどう変わろうが怖くはない。
やり手の女性経営者からクリスマスカードを頂いた。そこには直筆で「指針が欲しいですね」と記されていた。もちろん新聞でもTVでもさまざまな指針が描かれている。が、いずれも評論家的過ぎて、当事者の感覚に乏しいものばかり。同じくコンサルタントが何を語っても、同じように評論家的に聞こえてしまうのだろう。指針を語れる人は、指針に従って歩んでいる人でなければならない。カードの経営者もそういう人の示す指針を望んでいるはずだ。
クリスマスイブにブランド物のセレクトショップに行く。当方は市場調査が目的だが、カップルの来場が目立つ。中にはどこかの工場から油まみれの作業着のまま零点していた人がいた。彼の横にお洒落した彼女。欲しい商品は最初から決まっていたのか、レジ前で楽しそうに会計をしていた。こんな現場感覚のまま立ち寄れて二人がハッピーになれる店はいいなあ…見ていて微笑ましくなった。
経営者セミナーなどでアンケートを実施する。皆さん「参考になった」「大変参考になった」などに○を付ける。講師はそれで評価されるが、そんな評価は錯覚でしかない。受講生はいい話を聞いて成長した気になっているに過ぎない。一番肝心なのは、「行動し、良い結果が出ること」。それ以外で成長も学びもあり得ないのだ。セミナー終了後「速く現場に帰って実践したい」。そう思わせて一流の講師だ。
20代の塾を経営者に話を聞いた。彼の塾は進学塾ではない。高校生に「問題意識」を持たせる塾である。設立の動機は、「以前は進学塾を経営していた。が、無理やり教え込んでも生徒はすぐに忘れてしまう。だから、もっと理解するとか腑に落ちるまで考えるとか、学ぶことが好きになるキッカケや楽しさを伝えるプログラムを提供したい」という。こんなホンモノの教育をしようとしている青年がいることに驚愕した。
名古屋市の北見賃金研究所の北見先生の『ズバリ!実在賃金』の講演CDを聞いた。リーマンショック前と後では、40歳の平均年収が約40万円下がっていた。40歳の管理職では約80万円の減給である。先生によると30歳で月給30万、50歳管理職年収700万の水準は今では高すぎるという。小泉改革以来、非正規社員を増やしたことで給与を抑制してきたこの国は、正社員の給与も抑制する方向に動いている。既に始まっている消費傾向の変化は今後も加速的に進むはずだ。
ある経営者と話していて「デフレから脱出できないですよ」と告げたらとても驚かれた。が、今年のベストセラー『デフレの正体』を読んでそのことを確信した。同書はデフレは「生産年齢人口の減少」が原因だという。そして自動車や建設など、わが国値崩れするほどの過剰生産している産業に依存するのを止め、アジア諸国にブランド品を高付加価値品を売れという。わが意を得たりの想いだった。
乳がんで乳房を摘出した女性のために再生乳房を提供している企業に勤める20代の女性社員に、なぜその会社を選んだのかを聞いた。彼女はこういった。「笑えない人がいる。その原因、理由を解決する仕事がしたい」。この発言にドキッとした。誰もが幸せそうに見える時代。どこに問題があるか見えている人は少ない。が、彼女の場合、仮想敵が明確でそれを行動に移せている。彼女は今後も軸のある人生を送ることができるだろう。
ベンチャー経営者の元で働いている20代の男性社員の話を聞いた。彼は元上場企業社員。が、今の社長に出会ったとき「この人についていって一人前になったら、たとえ会社が倒産しても自分は独り立ちできるだろう」と思い転職したという。これを聞いて単に「この人に付いて行こう!」より一歩先のレベルで考えていることに驚いた。経営者の考える人材育成は、最終的に「独り立ち」を前提とした水準でないといけないのだ。
某チェーン店の社長が語る渥美先生の言葉。「とにかく真似ろ。いい点も悪い点も一緒に真似ろ。それで、問題が発生したらひとつひとつ潰せ。そうしたら自分のものになる」。さらに「あるべき姿を数字で描け。その数字を実現するための無駄を見ろ!」。その人の元で学んだ経営者が胸に刻み、寄る辺としてきたこれらの言葉には、稀代の名コンサルタントが伝えたかった本質がここにある。
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