V字経営研究所・酒井英之の4行日記 DiaryINDEX|past|will
某金融機関の次期支店長を養成している講座で、1日に28人もの受講生と個別面談をする。私の手元には、彼らが書いた2011年4月1日の「未来日記」。各店の目標達成に向けてこれから起こる出来事を、さも実際に起きたように過去形で書かせるのである。その日記を題材に「具体的にはどうするの?」「できないとしたらどういうとき?」「その問題はどうやって解消するの?」と少々意地悪な質問をしていく。一種のイメージトレーニングだが、Happy endを前提にしているだけに楽しい。28人はあっという間だった。
御殿場にある某社の研修施設に泊り込みで研修の講師をする。この研修施設からよく富士山が見える。研修所の所長は、「毎日見ても飽きないねえ」という。私もここに何度も来ているが、富士山はそのたびに違う表情をする。毎日変わらずにそこにあり、見てて飽きないもの。見えない日はとても寂しく、見えた日はそれだけで気持ちよくさせてくれるし、安心もさせてくれる。そんな存在は滅多にない。
岡崎市のまるや八丁味噌の隣には、カクキューという同業の八丁味噌の会社がある。両者はライバル同士だが、お互いの足を引っ張り合いではなく「あいつのここには敵わない」「あいつのここが凄い」と褒め合う戦いをしよう!そして、岡崎に財産を残す戦いをしよう!と誓い合っているという。自分だけ良くなることを考えていてはいけない時代。大儀のためにお互いを高め、助ける生き方がしたいのだ。
まるや八丁味噌の浅井社長が懇意にしているのが、サムライプロジェクトの安藤竜二さん。彼は地方の逸品を発掘し「サムロック(サムライ+ロック)」ブランドで統一し、世に送り出す仕掛け人だ。統一ブランドを持たせることで伝統の逸品がメディアの目に留まり、報道される。それが伝統を受け継ぐ職人のモチベーションアップに繋がる。浅井社長は「味噌の価値をわかってくれる人とどうやって出会うか。それを手伝ってくれるのが安藤さん」「応援してもらったから彼を応援したい」と紹介してくれた。地方をよくするために命懸けの人に出会えて幸せだった。
岡崎市でまるや八丁味噌の浅井社長の話を聞いた。同社の味噌は地元産の大豆にこだわり、昔ながらの製法で作る。見込生産はせず、オーダーがあればそのオーダー分を樽から掬って売る。そのため、100g当の値段は一般の味噌に比べ10倍以上もする。が、「その価値をわかってくれる人と付き合えばいい」という。同社の商品は海外にも輸出されているが、価値観の共有に国境は関係ないと改めて認識した。
オフィス・ファニチャーメーカーの社長と話す。社長はi-padは大変な脅威だという。なぜなら書籍の電子化は、書籍ラックの必要性を消してしまうからだ。また、クラウドコンピューティングも大変な脅威だという。なぜなら、自分たちが市場としてきたオフィスの有り様を変えてしまうからだ。それを聞きながら変化に敏感な人は、早い段階から対応策を考えているものだと感心した。彼には既に始まっている未来が見えているのだ。
某建築会社の会長と話す。会長の話の節々に「儲けさせていただいている」という言葉が出てくる。「儲けは必要だ」というが、「いかに儲けるか」とはいわない。会長曰く「儲けさせていただいている=納得していただいている」ということ。単に「儲けよ」と言っていたらそれは「むしり取るみたい」。少しの違いだが、会長には明確な区別があるのだ。それを聞きながら同社の売り物は住宅ではなく「納得感」だと感じた。
サムライブルーにマスコミから出演依頼が殺到しているという。しかし、本田はすべて断ったというし、他の選手も次に備えて準備を始めた。アスリートはマスコミに出てチヤホヤされても何もいいことがない。NHKにインタビュー出演した長友選手が次なる課題を「自分づくり」、阿部選手が「阿部づくり」と応えていたが、なんと素晴らしい姿勢だろう!現状に満足せず、彼らにしかわからない「世界と触れて感じた差」を埋めて理想に近づく努力に時間を使って欲しいと思う。
サムライブルーの選手たちを見ていると「侍の顔」をしているな、長谷部は腕組んで歩いたら竜馬になりそうだし、川島は中岡慎太郎に似ている。本田は高杉、遠藤は桂のような顔をしているし、長友は西郷を思わせるような目をしている。松井も駒野も大久保も志士と呼ぶのに相応しい顔つき。弱くなったと言われた日本男子だが、まだまだ頼もしい若者がいる。そう感じられて嬉しくなった。
「結果がすべてなんだ、なんて言うのよ…どう思う…」。電車の中で隣にいたOL同士の会話が聞こえてきた。どうやら彼女たちの上司が昨日のPK戦で負けた日本をそのように評しているらしい。このOL達はこんな考え方の上司を嫌悪している雰囲気がありありと伝わってきた。昨年9月13日のこの日記に書いた「最後まで勝ち残ったものが、必ずしも憧れや尊敬の対象ではない。人は「負ける一瞬までどう戦ったか」を見、そこに共感する」。そんな上司の下でないと誰も最高のパフォーマンスを発揮できないだろう。
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