V字経営研究所・酒井英之の4行日記 DiaryINDEX|past|will
銀行の研修所の講師控え室に、若い銀行員が訪ねてきた。3年前に教えた3人で、とりわけ威勢が良かったので覚えている。「また、研修やりたいです!」「どんな研修をやりたいの?」「講義を一方的に聴くのじゃなくて…」「考えて討論するような…」「他社の同世代が何を考えているとかそういう刺激があれば…」。早速人事部に提案してみたいが、彼らは自分で考えて主張するとこに飢えているようだ。
トヨタの某氏と飲む。「当社はモノづくりは間違いなく1位です。が、マーケティングは1位ではありません」と嘆く。聞くと、トヨタユーザーの大半が次もトヨタを買う。よって、リーピーを確保できれば、新規を獲らずとも売上げがキープできるという。ディーラーの営業レベルの低さの原因はここにあったのだ。ブランドが強いと、ブランド力に頼るため、独自のマーケティング力は育たなくなる。
某銀行の若手行員研修を行う。見ていると本当に金融マンに憧れている者と、ブランド品を買うかのごとく、企業名に憧れているだけの者がいる。それでも、その企業の特色に惚れ込んでいればいいが、子供がキャラクター付ソーセージを選ぶように、有名だからこっち!という程度の者もいて呆れ果てる。専門職能が求められる銀行員でモチベーションの違いは致命傷。転職するなら早い方がいい。
昨日の会社には、もうひとつホテルがある。国内外からの出張者を受け入れる施設で、シティホテル並の機能を有している。そしてどの部屋にも旬のフルーツがテーブルの皿の上に果物ナイフと共に置いてあり、自由に食べられるようになっている。このオマケだけで、部屋がフレッシュに見え、ハッピーな気分になるから不思議である。実際に食べなくとも、果物のあった部屋として記憶に残り続ける。
海外との取引が盛んな某社の合宿研修。夜、懇親会後に案内されたのは、山間の迎賓館だった。高級ホテル並の室内、数奇屋風のラウンジ、国定公園のせせらぎが聞こえる露天風呂。浴衣には同社のロゴマークが刷り込まれていて、昼間のビジネスとの乖離が大きく幻想的ですらあった。常務は「痺れるでしょう」と語っていたが、ここに連れてこられたら、お客様は同社のファンになってしまうだろう。
ベンチャーを大きな会社に育て上げた若き社長の話を聞いた。社長は、なかなか思うように行かなかった頃、列車のホームから線路を見ていたら、思わず線路に引き込まれそうになったという。線路が「おいで、おいで」と呼ぶのが聞こえたのだそうだ。私はそこまで追い詰められたことがない。まだまだ真剣味が足りないのだろう。それを過ぎないと本当の意味でハートに火が付かないのだろう。
独立している経営コンサルタントと一緒に研修をした。最後の成果発表会で受講生の一人に、相棒のコンサルタントが、「あなた、もしこの会社辞めたら是非ウチの事務所へ来てコンサルタントやってください」とコメントした。これを聞いた上司は、「他社の人から求められる。これぞ私が理想とする最高の人材」と褒め称えた。このひと言で、彼はこのチームのコンピテンシーモデルになった。
一ヶ月休みなしだった。こんなに働いて何になると考えているうちに、フィギュア・アーティストの集団である「海洋堂」で聞いた話を思い出した。同社では、商品を創るときに納期を設けない。時間の制約があると、ハートが失われると考えているからだ。ハートが無ければ世界に通用する良いものはできず、買ってもらえない。ハートが擦れるほどの忙しくすれば、良いものから遠去かるだけだ。
昨日の続き。本当の意味で「寒いときほど暖かい」といえるためには、まず相手が本当に寒いと感じているのかどうかを知らねばならず、また、本当に寒くなる前に防寒対策を提案できるよう、提案できなければならない。「寒いよぉ」と申告されてから動いたのでは、手遅れなことだってあるのだ。ニーズが顕在化してから付け焼刃的な対策を取るだけではソリューションとは言えない。
某銀行の経営者が長野県の観光用のポスターを見て「これだ!」と唸った。ポスターには「寒いときほど暖かい」。つまり、「困ったときほど信頼される存在になりたい」という自社の理念、理想を体現しているというのだ。銀行は昔から「雨が降るときに傘を貸さず、晴れた日に傘を貸す」と揶揄される業界だ。いち早く「寒いときほど暖かい」に体質転換できた銀行は生き残って行けるだろう。
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