V字経営研究所・酒井英之の4行日記 DiaryINDEX|past|will
某社社長に、土地活用の調査結果を報告する。この社長はただ「ふむふむ」と聞いているだけではない。私に依頼した段階で、頭の中にいくつかの仮説がある。そして私の調査結果を聞きながら、様々な仮説を切り捨てていく。報告が終わった後「これとこれをすればいいんだな」と言って、次のアクションを部下にすぐさま指示していた。よくなる会社はこのように次の一手が断続的に打てるのだ。
東京や大阪の駅周辺は、なんでこんなに?と思うほどの人の数。その多さに閉口しつつ歩く田舎者が、ホッとするのが駅の「ミルクスタンド」。パンと牛乳を売るスタンドで、おのぼりさんにはちょっとした憩いの場だ。今では東京・大阪でしかみかけないが、絞りたてフレッシュジュースなども出している。摂取物がサプリメントかしていく中で、ミルクスタンドはそのままの姿であって欲しい。
行列の出来る店として有名な蕎麦屋。帰り際、店主が並ぶ客を相手に語る蕎麦の講釈を耳にした。ただその講釈は第三者に対する批判だった。「あいつは本当の料理が分かっていない…」など。聞いて気持ちのよいものでない。また私の車が駐車場から出しにくくなっていたので他の車を動かすようお願いしたら、この店主、「これくらいは出せるでしょう」。客にこんな口を聞くとは、あきれて二度と行くまい。
某社で営業マンのコーチングを行う。攻略先にソリューションを提案し、大きな受注を得ようとする試みだ。私はまず「いつプレゼンしたいの?」と聞き、その時期を決める。次に「その日使う企画書には何と書いてあるの?」「費用対効果?効果はどう示すの?」「それって費用とどうやって比べるの?」「だったらその情報を今から集めなきゃ」「ハイ、それを聞きにヒヤリング行ってきて」。これで動機付ける。
管理者から「どんなときに叱ったらいいのかわからない」という質問をよく受ける。私は「これだけは許せない」という基準をひとつ決めておいて、それに触れたときに叱ればいい思う。「報告がないときは叱る」「できなかった言い訳を並べるときは叱る」「目標未達のときに叱る」など。逆にこうした基準がなく怒らない人は、真剣にマネジメントしていないといえよう。組織のマネジメントにルールは必要なのだ。
日経にあった楽天の社長の言葉。「デジタルで伝わるのは会った時に伝わることの10分の1」。同社は週に一度、全社員を集めた60分のミーティングを開く。1分でも遅刻したら入場できない。このまっとうな感覚と厳しさがあるから数あるITベンチャーの中でも生き抜いたのだろう。メールコミュニケーションが随分増えたが、昔の薬師丸ひろ子のCM「一番良いことは会うことです」を実践したい。
熊野古道が世界遺産に認定された。地元ではあの古道を守るために申請したという。逆に言えばそうした『外圧』がない限り、この国は自然や歴史・伝統を守ることはできないのだ。現に、富士山はその汚さゆえに世界遺産として認められなかった。あれだけの霊峰を頂きながら、目先の経済ばかり優先する愚か者だと笑われたようなもの。熊野古道は喜ばしいが富士山認定不可も同重く受け止めたい。
引退する経営者にマネジメントの極意を聞いた。「思考は高く、目線は低く」だという。思考は高くは、高所から物事を俯瞰しつつ意思決定するという意味。未来や全体のバランスを見ながら決める。一方目線は低くは、常に現場を見て情報を得るという意味。この人はいつも部屋のドアの横に座っていたが、そこが一番みんなの動きが見えたからだ。愛された経営者はいつも座る場所も違うのだ。
某回転寿司で食事をする。回るテーブルの中に入っている職人は3人。ところが、3人が3人とも同じ方向を向いて握っている。そのため座る場所によっては、3人が背中を向けて立つことに。私が座った席は3人の尻しか見えない。寿司は顔見て注文したいのに…。おまけにこの寿司屋、元気がない。「イラッシャマセッ!」「○○一丁!」の声が小さく威勢がない。味は良いだけにこの環境は残念だ。
『釣りキチ三平クラシック』を毎回楽しんで読んでいる。その中に著者矢口高雄氏の生い立ちが書かれていて、氏がデビュー間もない頃に『盗作者』よばわりされたくだりがあった。普通、自伝を書くときはこのような事故の存在は隠すだろう。ところがその事実を公開してくれるために、執筆も生業にしている私は他山の石とすることができる。後輩を意識しての筆。その勇気と愛に敬意を評したい。
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