近所のイオンの食品売り場に長蛇の列。並んでいる人は皆ミネラルウォータの空ボトルを2本持っている。イオンカードを使えば、自販機からミネラルウォータを只で汲むことができるのだ。市販品を買えば200円×2本=400円もかかるのだから、人が並ぶはずである。ミネラルウォータは欲しいけど、なるだけ金を掛けたくないもの。スーパーでは到底太刀打ちできない恐れ入った差別化戦略だ。
和装品メーカーの社長の話。ラストサムライを見て気付いたことに「侍の子の躾の良さを欧米人はどのように見たか」「昔の日本女性の我慢強さと清純さ、控えめな点をどのように考えるか」「家では靴を脱ぐ方が清潔で文化的であることを欧米人は映画を見て悟っただろう」。いずれも日本人には当たり前すぎて見逃していたことばかり。和文化の継承者は、異国人の立場で和文化を捉える目を養っている。
元銀行員が独立して事業を起こした。リゾートマンションを超破格値でいくつか買取り、自分で会員を募ってリゾートトラストを経営しているのだ。彼は「今時リゾートマンションを買うと変人扱いされる。が、負債ではなく運用すべき資本(元手)と考えればいい」と、このビジネスに賭けている。おかげで私も会員になり格安利用できるが、仕入れも販売も銀行員時代に培った人脈が生きている。
春場所13日目、12連勝同士の千代大海−朝赤龍戦は歴史に残る熱戦だった。大関対平幕とは思えぬボクシングのような激しい突き押しに手に汗握った。朝赤龍が土俵下に飛び出したとき、千代大海が「なかなかやるじゃねえか。楽しかったぜ」というように、楽しそうな顔をして朝赤龍の背中を押した。いい試合をしたときに味わう、勝敗を超えた爽快感。日本人はその感覚をとても大切にしている。
『8時だよ!!全員集合』は16年間続いた。毎週の連載が辛いように、16年も毎週が続くのは辛かっただろう。マンネリと揶揄されてもそれだけ長く愛されたことが凄いのだ。PTAからは「大人が見せたくない番組No.1」と評されたが、当時の叔母の言葉が忘れられない。「悔しいけど、私たち親には絶対にここまで子供を笑わせることはできない」。ドリフにはその確かな技術とプロ魂があったのだ。
いかりやさんが逝った。告別式や追悼番組ではドリフターズのメンバーが出て、またなつかしいVTRも流れた。確かに今の40歳以上には長介=ドリフターズだったのだろう。しかし30代以下にとっては俳優・あるいは声優の方が馴染みがあるのではないか。それだけ年齢と業歴に応じて自分を変化させ、その都度一流であり続けたからだ。世代別に別の知られ方をすること一番格好良い生き方だ。
最近お会いした経営者たちが口々に「『ラストサムライ』はいいですよ、お勧めです」というものだから、観に行った。素晴らしかった。米国人の映画が正確に武士道を描いている。米国人はなぜ今、日本の精神を取り上げ、それを描こうとしたのだろう。完璧を目指して働き続け、敗者に礼を尽くし、刀に魂を捧げる日本人。武力制圧に頼るだけの米国人は「日本には見習うべき点が多い」と思っているか。
TVの仕事で万博会場の建設を視察した。現地に行くまで「万博なんて」と思っていたが、百聞は一見に如かずだ。見たら本当にワクワクしてきた。目玉は冷凍土漬けになったマンモス。父は「新幹線に乗せてやる。そして月の石を見せてやる」と言って私を大阪万博に連れて行ってくれたが、どうやら私は「リニアモーターカーに乗せてやる。そしてマンモスを見せてやる」と子供に言うことになりそうだ。
親会社のリストラ余波で、上場寸前の会社を解体させられた元常務。転進先は小さな会社の社長。当時仕事でお世話になっていた私は御礼を込めて15年前に自分が考案した商品を贈った。先日、しばらくぶりにその社長にお会いした。するとその商品に「初心に帰れ」というメッセージを読み取り励まされたという。そんなつもりはなかったが、新たな門出に少しでも役に立てたことを素直に喜びたい。
『実はこうやって皆さんの前で話をすることは、私にとっても初めての挑戦なんです。どこまでやれるか自分を試してみたいという思いもあり今回の機会をお引き受けしました』。ある中小企業の社長に、某一流企業の若手社員研修での講師をお願いした。その登壇の第一声がこれ。頼まれ事に対する腹の括り方、そして固め歳を重ねても、なお瑞々しさを保つ一挑戦者としての気概に圧倒された。