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2005年07月04日(月)
「オー!マイDJ」は65点    

「オー!マイDJ」    
[監 督] キム・ジンミン [第1作]
[撮 影] イ・ドゥマン
[出 演] イ・ボムス     → サンヒョン
   イ・ウンジュ    → キョンウ
   ポン・テギュ    → サンギュ サンヒョンの弟


幼い頃にUFOを通して,世の中をたった一度だけ見たことがある先天的視覚障害キョンウが,UFOが出現したという旧把撥(クパバル)に引っ越してくる。家庭問題相談所に勤めるキョンウは,夜ごと旧把撥(クパバル)行最終バスに乗って退勤するが,そのバスには,いつも失恋の痛みを訴えるメッセージとこれを慰めるラジオ放送"パク・サンヒョンとティティパンパン"が流れる。その放送の正体は,バスの運転手サンヒョンが,夜ごと家で一人で録音した交通放送。サンヒョン一人でメッセージも書いてDJもする。

そんなある日,近所の路地で偶然に自分を助けてくれたサンヒョンに,キョンウは友だちになろうという唐突な提案をする。

イ・ウンジュが目が見えなくても見事に自立して生きているところに新しさが、ある。イ・ボムスの極私的放送も、なかなか面白い。

そもそも、韓国のバス運転手の運転のひどさは有名である。客のことより自分の都合を優先しているとしてか思えないところは確かにある。私もひどい目にあったことが一回ある。たとえば、絶対にバスストップにぴったりと止まらない。だから客は走りながらバスに乗るのである。それなら彼女のような障害者はどうなるというのか。ここが面白いところで、そういう障害者、お年寄りに気がつかずぴったり止まらなければ、バス運転手は相当の悪口を覚悟しなくてはならない。だから、韓国は弱いものが卑屈にならない。

これは、コメディである。イ・ウンジュはコメディもシリアスも、同時にこなすことの出来る正統派美人女優として売り出していた。ものすごい光る演技はまだであったが、あと一歩のところで一皮向けようとしていた。彼女の自殺はそういうところに大きな理由があるのではないかなあ、と今は思っている。
(05.06.27記入)



2005年07月03日(日)
「ミリオン・ダラー・ベイビー」は85点

「ミリオン・ダラー・ベイビー」クリントイーストウッド監督・主演・脚本・音楽
ヒラリー・スワンク モーガン・フリーマン

なんとも救いようのない映画。しかし、前半はむしろ明るい。この対比がすごい。
クリント渾身の演技。救いがないのはクリントである。確かにあれしか道はなかったのかもしれない。私でもそうしたかもしれない。いや、出来たかどうかは自信がないが。いや、してもしなくても後悔しながら死んでいったのには違いないだろう。モーガンが過去形で娘に父親のことを語っている以上、クリントは自殺したのだろうと見たほうがいいだろう。もちろんクリントが最期にあの店に立ち寄った以上は、スワンクは許してくれているという自信もあったのではあろう。神の救いを拒否したクリントはいったい人生の何を見たというのだろう。

人生にはいくつかの選択のときがある。インテリで、前途有望な男であったクリントにとっては、娘と決定的な「何か」があったとき、モーガンの試合を止めれなかったとき、スワンクの申し出を断りきれなかったとき、決定戦で反則を指示したとき。そのとき、決して間違った選択ではないように思えるのに、ずっと穏やかな幸せを願っていたのに、しだいしだいと反対の方向に行く。人生とはいったいなんなのだろう。またもう一度見てみなくてはならない。もう一度クリント渾身の演技を見ながら、その意味を考えなくてはならない。

ただ、スワンクの人生の選択は間違っていなかった。
(05.06.04記入)
(05.06.13一部訂正)
(05.06.23更に訂正)





2005年07月02日(土)
「サイドウェイ」は80点

アレクサンダー・ペイン監督 ポール・ジアマッティ(マイルス) トーマス・ヘイデン・チャーチ(ジャック)ヴァージニア・マドセン(マヤ) サンドラ・オー

高校教師マイルスは大学時代の親友で、来週には結婚を控えているジャックと一週間のワイナリー訪問の旅に出る。マイルスは離婚の痛手から立ち直れない、ジャックはマリッジブルーに入っており、この旅をナンパの旅と決めている。果たして彼らに恋は生まれるのか……。

映画好きの人間はたいていは「おたく」がかかっている。そういう人間はたいていは女性を前に延々と薀蓄をたれて、こっぴどく振られたという経験は一度や二度は持っているのではないだろうか。そういう人間にとり、この作品はあまりにも「甘い」物語のように思える。あのマヤさんは「特別」である。あれほど薀蓄を語る男についていける女性は奇跡に近い。ほんとは彼の幸せを願いたい。けれども正直に願えない自分がいるのも事実。ただ、脚本は良くできている。終わったとき、90分かなと思ったら、130分の映画だったのね。話がこなれている証拠でしょう。

……というようなことを見た当日に書いてしばらく経つと、なんだかものすごくいい映画だったような気がしてきた。男の友情の物語として観たとき、近来まれに見る傑作かもしれない。……それからその後、女性から「マヤさんの気持ちは良く分かる」という意見も聞こえてきた。そうか、薀蓄たれただけが私の振られた原因ではないのか。やはり私の「全体」に原因があったのでしょう。(^^;)

ところで私カリフォルニアワインを長い間バカにしていました。新参者の安かろう、悪かろうワインだと思っていました。だからといって今度選ぶワインはカリフォルニアにはしません。ただ、ピノ・ノワールはもしかしたら選ぶかもしれない。
(05.06.01記入)
(05.06.04一部訂正)
(05.06.23更に訂正)



2005年07月01日(金)
DVD「海は見ていた」は65点

海は見ていた(2002)

江戸・深川の岡場所を舞台に、遊女たちの逞しくも哀しい生き様を描く、黒澤明の遺稿を映画化した人間ドラマ。監督は「日本の黒い夏 冤罪」の熊井啓。
清水美砂 シミズミサ(菊乃)
遠野凪子 トオノナギコ(お新)
永瀬正敏 ナガセマサトシ(良介 )
吉岡秀隆 ヨシオカヒデタカ(房之助 )
つみきみほ (お吉 )
監督 : 熊井啓 クマイケイ
原作 : 山本周五郎 ヤマモトシュウゴロウ
脚色 : 黒澤明 クロサワアキラ
撮影 : 奥原一男 オクハラカズオ
美術 : 木村威夫 キムラタケオ

悪くない話ではある。ただいくらすれていない遊女であったとしても、遠野凪子はあまりにも色気がない。水揚げすぐの身体ではないだろうに。だからあの泣き顔に共感できない。吉岡秀隆、つみきみほが案外よかった。
ついつい黒澤だったらと想わざるをえない。せん無いことではあるが。(05.06.13記入)






2005年06月30日(木)
「クローサー」は80点

「クローサー」
マイク・ニコルズ監督 ジュリア・ロバーツ ジュード・ロウ ナタリー・ポートマン クライヴ・オーウェン 主題歌「ブロウワーズ・ドーター」
男女四人が絡む恋愛模様。三角関係だと物語が収束するが、四角関係だと物語は拡散しないか、そんな心配は杞憂に終わった。確かに収束はしないが、見事に着地した。

一目惚れ、嫉妬、裏切り、誘惑、騙し、一途な恋、ウソ、誠実、身の引き際、泥仕合、さまざまな恋愛模様を見せてもらったが、ひとつ分かったのは、男と女どちらかが主導権を握ったほうが、思い通りの結末を得ることができる。そのためには「真実」やら「誠実」やらは必ずしも必要ではない。全てがそういい切れるかどうかは自信ないが、この映画の中では説得力があった。

恋は一般的に行って、出会い→駆け引きやらセックスやら愛の言葉やらのいろいろ→別れとなるが、この映画では真ん中の「いろいろ」を見事に省略している。だから役者は一瞬一瞬の表情が真剣だ。この省略の美が大変素晴らしい。

特に、特に、ナタリー・ポートマン、彼女はエクセレント、ビューティフル、ワンダフル、イヤー良かった。あの涙、オーウェンを後ずさりさせたあの目、惜しげもなく晒したあの身体、猫背で眠るときなんて髪型もそうだけど、まるで「レオン」のマチルダだ。彼女の大ファンとして、ゴールデン受賞は当然だったとみんなに声を大にして言いたい。いまだあの最初と最後の音楽が耳についてはなれない。「cant take mind I love you ……」(違っていたらごめんなさい。)

やがてそのあと少し感想が変わった。やはり「誠実」は必要である。しかし、それは丸裸の自分をさらけ出すという意味の「誠実」である。そうでなくては「出会い」はあっても「別れ」は必然なのだ。今は結婚しても簡単に離婚できる時代だ。誘惑して騙しても、いつまでもウソを突き通すことは出来ないだろう。
(05.06.04記入)
(05.06.08一部訂正)



2005年06月29日(水)
DVD「g@me」は50点


藤木直人 仲間由紀恵
原作は、「男のほうがなぜ途中でゲームのからくりを見破れなかったのか」ということに不満を覚えたのであるが、映画になるとその欠点はそのまま。しかも、映画によくあるラストを少し変えてみました、になっていて、まさにゲーム感覚そのままの作品になってしまった。まあ、アイドル映画ですね。



2005年06月28日(火)
DVD「浮気な家族」は65点

[監 督] イム・サンス [第3作]
[撮影監督] キム・ウヒョン
[出 演] ムン・ソリ     → ウン・ホジョン
   ファン・ジョンミン → チュ・ヨンジャク(周映作) ホジョンの夫
   ユン・ヨジョン   → ホン・ビョンハン ヨンジャクの母
   キム・インムン   → チュ・チャングン ヨンジャクの父
   ポン・テギュ    → シン・ジウン 高校生
   ペク・チョンニム  → キム・ヨン ヨンジャクの浮気相手
   ソン・ジル     → ソン・ジル 郵便配達夫
韓国の不倫物語。「ハッピィ・エンド」よりこっちのほうの女はよっぽど強い。たった数年で韓国の社会はそれほどにも変わったのだとも、韓国なら言える。あそこはそれほど変化している。゜

ムン・ソリはこれで各女優賞を総なめしたが、私はそれほどとは思えなかった。それは、そういうタイプの女性を日本映画で有り余るほど見ているせいかもしれない。

後半の急転直下の悲劇はさすがというか、やはりというか、韓国映画。
(05.06.13記入)



2005年06月27日(月)
「故郷の香り」は75点


監督 : フォ・ジェンチイ
原作 : モォ・イエン
出演 : グオ・シャオドン
リー・ジア
香川照之
中国南部、山谷の小さな村。田んぼが広がり、豆やいろんな野菜を合間に植え、アヒルを飼ってくらす。時々やってくる省立演劇団や、祭りの踊りや歌、そして村にひとつだけあるシュウセン(ブランコ)が数少ない娯楽だ。「シュウセンはなぜシュウセンというの?」おさな馴染みの女性は急に美しく育った。それが青年の初恋に変わるのは当然だ。彼女は、自らの演劇の望みを果たすべく村にやってきた省立演劇団の青年に恋をする。そして青年も彼女も失恋するのである。

青年は大学に行って田舎に残してきた恋人のことを次第と疎ましくなる、というまるで『木綿のハンカチーフ』そのままの設定でありきたりではある。自然は美しいが新鮮さはない。家の創りが土や石であったり、運河が発達していて、水がきれいだということ以外は今だ残っている、そして40年前までにはまだどこにも残っていた日本の田舎とどこも変わらない。しかし、わざわざこのように田舎を美しく撮った日本映画はあまりないかもしれない。ひとつは中国の技術が優れているのだろう。色と光への感覚の鋭さ。ひとつは、都会では今急速にこういう自然がなくなっているのだろう。中国の人たちはそのことに人一番敏感なのかもしれない。日本では敏感ではなかった。だから昭和三十年代にそういう自然を撮った監督はいない。40年代に唯一山田洋次が撮ったに過ぎない。しかし、中国は広い。日本のようにたった50年で全国くまなく景色が変わるということはないだろう。ただし上海や北京の都会は10年で一変した。そのスピードは日本よりはるかに速かった。このアンパランスが中国でもある。青年が少女のことを忘れたのは、それはつまり恋だけではないのである。青年は最後につぶやく。「ヌーバだけがヌアンのこととをずっと愛していた。それはつまり彼女が幸せだったということだ。」ヌーバ役の香川照明は素晴らしかった。

青年の都会のお土産である飴の包み紙を、水のはいった瓶に入れて、その「色を楽しむ」という遊びを彼女の子供が発明する。大変新鮮であった。
(05.06.07記入)



2005年06月26日(日)
DVD「深呼吸の必要」は80点


DVD「深呼吸の必要」
監督: 篠原哲雄
出演: 香里奈/谷原章介/
成宮寛貴/金子さやか/
久遠さやか/長澤まさみ/
大森南朋/北村三郎/
吉田妙子

評判の作品をやっと見ることができた。
仕事の愉しさ、を描いた作品として、画期的。
一面のサトウキビ畑。それがしだいと刈られていく描写は非常に分かりやすい。
恋愛エピソードはわざと入れない。登場人物たちの過去の物語は最低必要限度に絞る。
そういう約束事の下に、新たな仕事の大変さ、チームワークの大切さ、動機、そしてムリ、そしてどうしても大切なのが目的を達成すること。人生では目的を達成することはまれである。しかし、仕事では達成しないと大変つらいし、多くは達成する。やり遂げたあとの仕事というのは格別だ。それを思い出してくれる映画である。この映画が優秀なのは、それなのに一方では「どうってことないさあ」という正反対の事を描いているということだ。その二つのことは相対立することなのか、いやしないのだということを微妙な描写で描いている。

つくづく「沖縄」とはすごいと思う。
(05.06.05記入)



2005年06月25日(土)
DVD「爆烈野球団!」は70点

「爆烈野球団!」   レンタル開始!
[脚 本] キム・ヒョンソク
[監 督] キム・ヒョンソク [第1作]
[撮 影] パク・ヒョンチョル
[出 演] ソン・ガンホ    → イ・ホチャン     4番打者
   キム・ヘス     → ミン・ジョンニム   監督
   キム・ジュヒョク  → オ・デヒョン     ピッチャー 独立闘士
   ファン・ジョンミン → リュ・グァンテ    捕手
   イ・デヨン     → マ・ソンハン     1塁手   サンノム 
   キム・イルウン   → チョン・ビョンファン 3塁手   オリジナル両班
1905年,朝鮮に初めて野球が入ってきた頃を描いたコメデイ

もっと滑稽無等な話かと思っていたら、1900年代の朝鮮ソウルの風景がきちんと再現されているし、野球の試合の描き方もそんなにひどくはない。今問題になっている1905年乙巳条約(日韓条約)を背景として「日本帝国主義」も、伊武雅刀、鈴木一真(野村ひでおというのはひどい名前だが)を登場させてもんきり型ではない描かれ方をしている。案外史実に忠実であった。基本はコメディである。韓国の映画館での「爆笑」が聞こえてきそうだ。
日本での公開はされたのだろうか。こういう映画はもっと堂々と公開すべきだ。いい映画じゃないか。そして日本の原爆映画も韓国で公開すべきだ。韓国では、日本は核兵器を当然持っていると思っている人が多いらしい。日本人が何を大切にして、韓国人が何を大切にしているのか、映画を通してもっと交流すべきだと思う。
ソン・ガンホの最後の笑顔がいい。
(05.05.27記入)