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2005年03月11日(金) ■ |
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DVD「太陽を盗んだ男」は75点 |
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太陽を盗んだ男」長谷川和彦監督 沢田研二 菅原文太 79年作品
一部ファンから熱狂的な評価がある作品。ビデオがなくて幻の作品だったが、いつの間にかDVDが出ていた。(2004年版)私この作品、リアルタイムで映画館で見ています。見ているはずでした。でも再見してみて、筋も細部もあまり覚えていないことに気がついた。特に後半部分はほとんど忘れていた。
中学の理科教師・城戸は原爆を手作りすることを決意。サラ金からの借入金と東海村から強奪したプルトニウムとを用いて、自宅安アパートの台所で原爆を作りあげる。そして、完成した原爆で城戸が国家に要求したことは…。 前半部分は緊迫感に満ちていて、非常に良い。ところが、菅原文太を交渉相手にして、「ナイター中継を続けさせろ」と言い出したあたりで、当時大学に入りたてだった私は「なんだこれは。しょぼい。」と思い、たぶん寝てしまったのだと思う。今から考えると、冒頭の天皇接見を求めるバスジャック犯の失敗と、何も要求するものが見つけられない若者が「太陽」をもってしまう構成はなかなかのものなのだが、あの当時はふがいないと思ったんでしょうね。作品公開から16年後、現実は映画を超えることになる。オウムの一連の事件は、原爆がサリンに変わってはいるが、非常によく似ている。ただし、長谷川監督の一個人の想像力では、単なる科学おたくの若者が、無差別殺人の一線を超えれるとは想像できなかったのだろうが、現実は、「集団の狂気」という力により、その一線をやすやすと越えてしまう。もう少し詳細にこの両者を比べてみたら面白いかもしれない。
さて、映画自体で見ると、沢田研二があまりにもかっこよい。教師、科学者、テロリスト、女装、敗残者、あらゆる姿がかっこよい。そういう意味では見事なエンターテイメント映画ではある。東京未明でのカーチェイスは、日本におけるぎりぎりの表現として、今見るとなかなか迫力があった。(CGを使わず、パトカーが次々と横転するのは、今ではもう見ることができないだろう)
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2005年03月10日(木) ■ |
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DVD「スパニッシュ・アパートメント」は70点 |
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「スパニッシュ・アパートメント」 フランス人がスペインへ、一年の留学生活。フランスに残してきた恋人との逢瀬。人妻への誘惑。レズ。愛すべきアパート仲間。混沌から青年が受け取ったものとは。というような映画。
決まりきった一流会社への就職が待っているのに、彼は昔からの夢だった作家への道にすすむのである。学生時代の「混沌」とはそれだけの力があるのだろう。彼の人生に幸いあれ。
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2005年03月09日(水) ■ |
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「セルラー」は80点 |
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「セルラー」デヴィッド・R・エリス監督 ラリー・コーエン原作 突然の誘拐。頼みは壊された電話。つながったのは、恋人から「あなたって自己チュウーで最低」と振られたばかしの若者。さて、彼はどうするのか。
とまあ、話は単純なんですが、これがまた面白い。性格設定、飽きさせない脚本、そして出演者たちの見事な演技。キム・ベイシンガーの泣き顔がすばらしい。クリス・エバンスが勢いに任せて無茶な行動をするけど、これが結果オーライになって、いい味出している。今回ジェイソン・ステイサムは悪役。でも役には見事にはまっている。そしてウィリアム・H・メイシーが儲け役。 「男ってのはやるときゃ、やるんだ」てか。という作品。短期間上映。お急ぎを。
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2005年03月08日(火) ■ |
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「レイ」は75点 |
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「レイ」監督製作脚本テイラー・ハックフォード ジェイミー・フォックス ケリー・ワシントン
なるほど音楽と演技はすばらしい。ジェイミーフォックスのアカデミー主演男優賞を私は確信しました。また話もテンポよくすすみ、音楽の使われ方もなんとなく話とあっているので退屈することがなかった。それだけでもたいしたものなのだが、でもそれだけ。少年時代の音楽に対する想い、それがないから、最終版妻の鋭い一言へのドラマが分からない。
つまりこれは、一人の盲目の天才音楽家が、幼少時のトラウマや、それによる薬漬け、女癖を克服しながら、「音楽を追い求めた」半生記として描かれている。しかし、レイの内心は結局音楽を通してしかわからないようになっており、描き不足としか思えない。
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2005年03月07日(月) ■ |
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「ボーン・スプレマシー」は70点 |
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「ボーン・スプレマシー」ポール・グリーングラス監督 マット・ディモン フランカ・ポテンテ 正統なCIA映画。今回彼は追われる身から追う身へ。最高レベルのスパイの技術と体力と知識でもって、先手先手を打っていくボーンがかっこいい。退屈しなかった。 しかも今回彼は正当防衛で一人しか殺さなかった。これもスマートでよい。結局死んだ恋人マリーの「良心」が殺人マシーンになっていた彼の心を癒したということなのだろう。最後のロシアの娘への告白が胸を打つ。
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2005年03月06日(日) ■ |
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ビデオ「ハッピー・エンド」は75点 |
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「ハッピー・エンド」チョン・ジウ監督 チェ・ミンスク チョン・ドヨン チュ・ジンモ 妻の不倫によるぞっとする異常な進行を描いた痴情劇。チョン・ドヨンの果敢なベッドシーンで注目され,興行的にも成功した作品らしい。99年作品。
チェ・ミンスクはいわずと知れた名優。今回はリストラされ、英語学院長の妻の稼ぎに頼って主夫したりのんびりしたりしている役。なんと今回彼は一度も無精ひげを生やさず、わりとふくよかな顔で、「オールドボーイ」の冒頭のサラリーマンの泥酔していないときの顔のまま通す。しかし、やはり彼でなくてはできない役ではあったろうと思う。妻の不倫相手の優男は「武士ムサ」で李王朝の将軍役を務めたチュ・ジンモ。昔の恋人であった妻と不倫を重ね、やがて自分を見失っていく。そしてチョン・ドヨン。「私にも妻がいたらいいのに」とは全く印象が違う役。責任ある仕事をバリバリこなし、夫がリストラされる前までは家事も完璧にこなし、赤ん坊も生まれたばかし、あまりにも忙しい生活の中でふと昔の恋人と逢瀬を楽しむ妻の役を見事にこなしている。冒頭、延々五分ばかしの大胆なベッドシーンがあり、これが当時相当衝撃的だったらしい。しかし、これがあるからこそ、チョン・ドヨンは満たされぬ妻の役を見事に現したのだろうと思う。この作品で妻は異常に不倫がばれるのを恐れるのですが、これは韓国特有の事情があります。韓国では実は(有名無実化しているみたいですが)まだ姦通罪という法律が活きているのです。だから不倫が公になることは彼女の社会的生命が絶たれることを意味していたのでしょう。韓国題名もそのまま邦題。皮肉な題名ではある。私、今まで韓国の女優でファンはいなかったのですが、この作品でチョン・ドヨンのファンになりました。ヨンさまが出ているので「スキャンダル」は未見なのですが、彼女が出演しているのでこの作品も見るつもりです。
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2005年03月05日(土) ■ |
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DVD「私にも妻がいたらいいのに」は80点 |
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「私にも妻がいたらいいのに」パク・フンシク監督 ソル・ギョング チョン・ドヨン アパート団地内の小さな銀行員と、銀行の真向かいにある補習塾の講師の、すれ違いの恋の行方。
韓国映画にありがちな大どんでん返しや、衝撃的な設定があるわけではなく、純情な二人の平凡な恋を描いている。この映画の面白みは、その二人が両者とも曲者俳優が演じているというところだろう。銀行員は今や韓国隋一の「演技派」になったソル・ギョング。大人しく真面目でとてつもなく優しい29歳の青年を演じていて、私はソル・ギョング主演「ペパーミントキャンデー」で最後に登場する光州事件以前の青年が悲劇に遭遇しなかったらこういう青年になったのではないかと想い、それだけで愛おしくなった。塾の講師も優しく不器用な可愛い女性である。ところがそれを演じているチョン・ドヨンのそれまでの作品は「ハッピィ・エンド」「スキャンダル」で、ともに濡れ場を演じている大人の女性らしい。特に「ハッピィ・エンド」では不倫妻を大胆に演じていて、その年の各女優賞を受賞している。この作品では賞をとらなかったみたいだが、私はこの作品の彼女も充分魅力的であった。ひとつ韓国映画らしいのは小道具の使い方が非常にうまいというところである。飴、銀行の監視カメラ、手品、等々、だから一つ一つのエピソードが活きている。思いがけずいい作品に出会った。ツタヤの「韓流」コーナーにあるかもしれない。機会があればお勧めします。
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2005年03月04日(金) ■ |
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「ビビンバの国の女性たち」伊藤順子 |
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「ビビンバの国の女性たち」講談社文庫 伊藤順子 世はまだ『韓流ブーム』である。そもそも日本人はたった一時間半(飛行時間)でいけるお隣の国のことを知らな過ぎた。韓国の民主化が成功して約20年、ソウルオリンピック、02年W杯を経て、もはや韓国を知るということは本格的なキムチやビビンバを食べることのみを意味しないという状態にここ至ったのである。今はきっと『知恵熱』状態。成熟した関係はこれから始まる。
さて、この本はそう言う時代の軽い読み物である。日本の週刊誌で言えば「週刊新潮」あたりの《街角風俗最前線レポート》といったところであろうか。例えば、韓国のキャバレーは中年男女の合コンの場所、この国では姦通罪がまだ生きている、平均セックス時間は19分、しかし質より量を求める傾向、etc。まだ日本に届いていない下世話な話が満載で、トータル的に韓国のことを知る上で読んでおいてもいいだろうという程度の本である。ただ、まだまだこの手の記事が少ないので、かんで含めるような丁寧な解説がつく。また、「週刊」ではなく「月刊」の連載をまとめたものだから、古くは5年前のレポートが載っている。そのあたりは気をつけないといけないだろう。
筆者の態度は案外まじめで、冒頭この情報が著者の体験した韓国の一段面であることを断っている。だからこそ、私はこれで韓国の風俗を知ったつもりにはならないが、事実としては信頼するつもりでいる。
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2005年03月03日(木) ■ |
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「映画の英語がわかる本」斎藤兼司 |
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「映画の英語がわかる本」小学館文庫 斎藤兼司 映画が大好きで年間100作以上観る私であるが、どうしても字幕にたよってしまう私が居る。これだけ映画を観ているのだから、洋画を観ている間だけでもヒヤリングの練習になれば飛躍的に英語の実力が増すはず。という軽い気持ちで買ったのがこの本である。
結果。半分まで読んで『映画の英語がわかる』には私は10年早い、と思った。ここに書かれてあるのは正論です。ネイティブの話す英語がわかるようになるには、まさにボキャブリーにしても聞き取り力にしても、まさにネイティブと同じくらいの実力を持たなくてはならない。すなわちその道は『映画の英語がわかる』道ではなく、『100%英語がわかる』道である。当然茨の道です。いつかはこのような勉強をしてみたいものだ。ここには金をかけないで英語教材を作る方法をたくさん紹介している。その方法は英語だけではなく、韓国語でも使えるだろう。そう言う意味では参考になった。
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2005年03月02日(水) ■ |
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「中原中也詩集 在りし日の歌」角川文庫 |
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「中原中也詩集 在りし日の歌」角川文庫 二泊三日の韓国旅行をして帰ったその日、一番『日本』を感じたのは、三日ぶりに見る風景でもなければ賑やかしいTVでもなかった。喫茶店で開いた中也の詩集であった。
「森の中では死んだ子が/蛍のようにしゃがんでる」ハングル文字の洪水の中から生還してきて、そういう一見なんでもない口語体の詩句に出逢ったとき「ああ私は日本人だ」と感じた。「日本語として理解するより先に、私には悲しみが見える。」
「とにかく私は苦労して来た。/苦労して来たことであった!」(わが半生)中也独特のリズムが静かに私の心を潤す。
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