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2005年01月19日(水)
DVD「24」

DVD「24」
第1シーズンの1巻、2巻目までを観た。いろんな人が「ハマッテシマッタ」と言っていたので、眉に唾を付けて見させてもらった。

大統領予備選当日、深夜0時からの24時間の物語。大統領候補暗殺の情報を得たCTU(テロ対策室)のジャックは、同時に自分のCTUの中にスパイがいるという情報をえる。そうこうするうちに敵側は上司の暗殺、ジャックの娘の拉致、という手を次々と打ってくる。だいたいここまでが五時間分の内容。

全ては同時進行形式でつくられる。ときどき現れる「03:47:54」などの時を表わす文字が、その場にいるかのような臨場感をかきたてる。もちろんCMにはいる前にこの時を告げる文字がよく響く低音で現れ、約4分後CMが終るとこの文字がこのシリーズの最大の主人公であるがの如く低音で現れる。だから、この番組の間、三回のCM時間の約12分はどこにも映像として映っていないと言う奇妙な24時間になっている。やがては誰かが「完全版」なるものをつくるかもしれない。今の勢いならきっと売れるだろう。分割映像は効果的に使われていると思う。必ず、58分ごろになると衝撃的な展開が出てくると言うのも、オーソドックスながら上手い作り方である。それと23:30くらいに最大のクライマックスが来るのだろうと予想できるだけに「次ぎから次ぎへとレンタルしたくなる」という気持ちは非常によく分かる。「あんなに疑っていたのに、こんなに簡単にこいつを信じていいのか」というようなところ、つまりは心理部分の描きこみが足りないため、不満はあるが、要は一冊800円くらいのエンターテイメントポリテック小説3巻分くらい読んでいく行為と似ている。レンタル料金とほぼ同じですね。読んだ後なにも残らないが、暇潰しには最高と言う種類の映像作品ではある。





あまり面白くなさそうなことを書いてしまいしたが、
実は約5日の間に全部見てしまいした(^^;)
昨日などは四巻借りてそれでも足りずに三巻借りてしまうというバカさかげん。
だって最後が気になるんだもん。
暇があったのがいけないんですな。

本屋に寄ったらノベライズ本がなんと各600円3冊でありました。
脚本とト書きをそのまま写したようなひどいものです。
私でもかけるわ、あれじゃ。

ネタバレ警報  ネタバレ警報(ヒント程度ですが)


誰が裏切り者とか、予想したい気持ちは分かりますが、
それは無駄というものです。
最終巻では特典映像がついているのですが、
そこでは重要な裏切り者の役者には、
直前になって「あんたやっぱりスパイよ」と教えたそうです。
まったく誰が裏切っても仕方ないのがCTUの仕組みではあるのですが。
あとところどころ、どこから情報得てきたんだ、と随所にあります。
心理描写の弱いことと含めて、脚本は決して完璧ではない。
あくまで暇つぶし用の作品であることは間違いない。

誰が生き残るの?
とか、気になってしまうのは仕方ない。
11巻見てしまうのは仕方ない。
ただ、まずは一巻かりて冷却期間を置くことを薦めます。
二巻目以降を借りると私と同じ轍を踏みますぜ。

ああ、今日にも第二シーズンを借りてしまいそうで怖い。



2005年01月18日(火)
DVD「吠える犬は噛まない」は75点

DVD「吠える犬は噛まない」
韓国映画の中では珍しいタイプの作品だと思う。次ぎから次ぎへと事件がおきるというわけでも無し、悲劇というわけでもない。一応喜劇の部類に入るのかもしれないが、そんなに笑えない。本国ではどうだったんだろう。しかも、もう終りかなと思っていると、なかなか終らない。では面白くないかというとそうではない。いや、むしろ面白い。

「気持ち」というのは、どうしてこうもすれ違うのだろう。「気持ち」に気が付いていながら、どうして気が付かない振りをするのだろう。ときには、それが哀しい出来事を生み、時にはそれが人を励ます。

犬好きには、たまらなく、不快な作品。



2005年01月17日(月)
「誰にでも秘密がある」は60点

「誰にでも秘密がある」チャン・ヒョンス監督 イ・ビョンホン チェ・ジウ
終ったとき、タイトルトラックにボーナス映像があるにもかかわらず、少なくない女性が席をたった。もう一方では「良かったわねえ」という感想も聞こえた。要するにそういう映画である。

えっ、それじゃ分からない?まあジゴロ養成映画といおうか、ジゴロ対策映画といおうか。私なんか。チェ・ジウパート変わりと面白かったし、最後に提示された秘密を解くという楽しみも残ったのではあるが、それ以前の彼の「秘密」があまりにも人をバカにしているので、私にとっては「許せない」作品ではある。といっておこう。



2005年01月16日(日)
「キャット・ウーマン」は65点

「キャット・ウーマン」ピトフ監督 ハル・ベリー シャロン・ストーン
化粧品会社に勤務するペイシャスは、有能なデザイナーではあるが、仕事に情熱が持てないでいる。ある事で会社の秘密を知り、殺されるが、それから彼女はキャットウーマンとして生まれ変わり…。

前半部分の長髪のときのハル・ベリーがよかった。などといえば、世の女性から総スカンを食うかしら。いやいや、女性の二重性を認めていないわけではないんですよ。それどころか、三重性も、四重性も認めましょう。積極的に!でもやっぱり鞭もって、Sの彼女はどうも苦手であって…。あっ、でも、女性が「自由」な事はいい事ですよ、たぶん。(いったい誰に向っていっているのやら^^;)



2005年01月15日(土)
「風水と天皇陵」北村多加史

「風水と天皇陵」講談社現代新書 北村多加史
著者によると、奈良や京都にある天皇陵の多くは風水の思想によりその設定場所を決めているということである。著者によれば「風水とはいかにして自然の循環になじませるか、エコロジーの発想を持つ思想であった」らしい。けっして、いかがわしい占いではないとの事である。この辺り著者の記述はずいぶんと慎重である。ことが天皇に関わるだけに世の反発を警戒しているのであろう。しかし書いている事は随分具体的科学的であるように私には思えた。天皇陵への風水の影響は遅くて6世紀、7世紀の飛鳥時代にはそのその影響の多くを見て取れるという。著者の素晴らしいのはその知識を本から得るのではなく、実際に発祥の地の中国の墓を見て回り、日本の土地を歩きとおして確信しているところにある。後半はほとんど、風水の観点から見た天皇陵踏破ガイドブックである。私はまだこの本を片手に歩きまわってはいないので、100%本当だったというわけにはいかないが、ほぼそうだろうと思う。
私はこれまでいろんな古墳や弥生の墓を見て回ったが、ひとつわかるのは、その土地を選定するのは全て理由があるという事だ。自分の国を見渡す事ができる。あるいは神の山の尾根の先端につくる、という例をつぶさに見てきた。我々の祖先が当時の最先端の知識であった風水思想を取り入れなかったと思うほうがおかしい。むしろ、私は6世紀に入ってきたという説に疑問を持つ。吉備の国の最大の規模を持つ造山古墳(5世紀)の立地が、この本による「谷奥部突出型」に当たるのではないか、と強く思うからである。ぜひ、著者の立地調査を希望する。



2005年01月14日(金)
「アルバイト探偵 調毒師を探せ」大沢在昌

「アルバイト探偵 調毒師を探せ」講談社文庫 大沢在昌
シリーズ第2弾。このシリーズは高校生冴木隆の一人語りで語られているので、リュウ君の心情は全て分かるのだと思っている人がいたら、最終話の「アルバイト行商人」で大間違いである事に気が付くだろう。この章で冴木親子の秘密が明かになるのであるが、秘密を知ったリュウ君の心情は(いろんな感情がうずまいたに違いないが)一切語られていない。つまりこの小説の「地」の文はリュウ君の「心情」が語られているのではなく、リュウ君の語りたいことが語られているに過ぎないのである。つまりこの小説、随分軽い読み物ではあるが、やはりハードボイルドなのである。主人公は人一倍饒舌ではあるが、いちばん大事な事は語らない。だからしきりにこ「この不良親父は」とか、「ヤクザ親父」とか言われている彼の「親父」に対する感情は、「地」の文とはそうとう違うだろうという事も推察されるのではある。私でなくても分かるとは思うが、リュウ君、この親父の事を男として、仕事仲間として、そして「肉親」として尊敬し、愛している事がいろんなところから見え隠れする。それを親父にも読者にも照れて言わない所がまた「可愛い」のではある。



2005年01月13日(木)
「大極宮3」大沢在昌、京極夏彦 宮部みゆき

「大極宮3」角川文庫 大沢在昌、京極夏彦 宮部みゆき
もうこの時期の恒例行事になった感のある、三人が所属するオフィスが編集した「大極宮」の第三弾。今回は文字列が横組になり、さらにHPぽくなりました。なんか年一回発行されるファンクラブの会報みたいなノリなのでつい買っちゃうんですよね。

今回の目玉はロング座談会ではなく、不連続「連載」掌小説の「罪と罰」。第110回を大沢在昌が書き、第120回を宮部みゆきが書き、第130回を京極夏彦が書いている。微妙に繋がっているようで、それぞれが個性豊かに描いていて、面白い。また宮部のお勧め下町案内というコーナーで、清澄庭園が「夢にも思わない」の舞台になった白川庭園のモデルになったと書いているところや、京極夏彦の「こだわりの書斎」の写真など、興味深い記事もあった。



2005年01月12日(水)
「ネオデビルマン」講談社漫画文庫 

「ネオデビルマン」講談社漫画文庫 
今年は実写版「デビルマン」という映画の「イベント」があった。内容的には今年100作近く見た映画の中で、名誉あるワーストをあげたいような作品であった。原作とは違う物語になるのは良いとしても、テーマは全て中途半端に終って、役者も学芸会並の演技で、もうどこにも良いところが無いような作品であった。もっともそういう悪口は総合芸術である映画だからいえる事であって、これが漫画の短編ならよくぞそういう切り口で描いたと、そのことのみで誉めるべきであったろう。

この各漫画家のデビルマンに捧げる短編集を見てみると、あの映画で描こうとした事が、ここでは何人もの現役漫画家が変奏曲のように描いている事に気が付く。突然隣の人間がデーモンに乗っ取られていくとどういうことが起こるのか、自分がデビルマンとしての使命に目覚めるまでを描く短編、怒りで理性を無くし自らデーモンになるまでを描く短編、デーモン化現象で混乱していく社会を描く短編、その中でしたたかに生きる人間を描く短編、実に面白い読み物であるし、各作家のデビルマンへの愛が感じられて嬉しかった。特に、江川達也、石川賢、三山のぼる、とり・みき、岩明均、高寺彰彦、黒田硫黄の短編は傑作だった。



2005年01月11日(火)
「諸星大二郎自選短編集彼方より」集英社文庫

「諸星大二郎自選短編集彼方より」集英社文庫
諸星大二郎が74年に第七回手塚賞を「生物都市」で受賞して以来、すでに30年たった。この作品は、今読んでも全然色あせていない。いや、PCを管理しているのか、管理させられているのか分からなくなっているような現代、至る所で監視カメラが作動している現代、ここで語られた問題意識はいよいよと切実になってきている。機械と一体になった青年が呟く言葉「夢のようだ…新しい世界がくる…理想世界が…」。
不思議世界への入り口を叙情豊かに描いた近年の傑作「ぼくとフリオと校庭で」。読みたいと思いながらなかなか出会えなかった不条理ギャグ漫画の傑作「ど次元世界物語」。「ヨシコちゃんと首たち」「桃源記」「砂の巨人」は単行本未収録の作品である。
「自選」のためか、なかなか素晴らしいセレクトである。装丁も素晴らしい。この表紙の絵からだけでもいくつもの「物語」が立ちあがるような気がする。



2005年01月10日(月)
「桃太郎の運命」鳥越信

「桃太郎の運命」ミネルヴァ書房 鳥越信
民話の中で育ってきた桃太郎が、明治になり、出版物として新たな生命をえる。時には神話世界へ。時には大正ロマンへ。時にはプロレタリア児童文学の中へ。そして戦争に利用され、侵略の子として。様々に描かれる。

やはり考えさせられたのは、侵略の子として外征し、世界制覇をする彼である。1940年代、良心的と言われた作家が、侵略性むき出しの桃太郎を描いている。あるいは、手塚治虫も何回も観たはずの日本初の長編アニメ「桃太郎の荒鷲」(真珠湾攻撃のパロディ映画でもある)の中に、少しだけヒューマンな部分を挿入していたのは、映画製作人たちの微かな抵抗であったのか。

巻末に桃太郎関係の絵本、童謡、詩編、戯曲、脚本、漫画の膨大な一覧表がある。気が付くのは、戦後に入ってからの桃太郎関係の本の種類の多さだ。私たちは現在、当初の民衆の夢から発した桃太郎の話に自由に出会える。これはやはり幸せな事なのだろう。

この表を見て一つ欠落しているのは、裏「桃太郎」というべき「温羅伝説」が入っていないということだ。岡山県では有名である。桃太郎の退治させられた鬼はじつは郷土の英雄だったのである。なにしろ岡山には「鬼の城(きのじょう)」が考古学発掘をもとに再現してある。確か戯曲にもなっているはず。ぜひ一覧表の中に入れて欲しい。