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2004年09月11日(土)
「69」は80点 

「69」李相日監督 妻夫木聡 安藤政信 金井勇太  宮藤官九郎脚本 
大いに笑わせてもろた。まあ大体高校生ってもんは、きっかけさえつかめばこんなもんでしょう。
この数作のクドカン脚本の中では一番よかった。
「下妻物語」とテイストは似ているが、決定的に違うのは、
男が主人公か女が主人公かということ。
男の行動のきっかけはいつも社会(あるいは女)に対してであり、
男がいつも怖れているのは退学(失恋)であり、
そのために男は社会的な行動をする(連れだって動く)。
女は社会的に行動しない代わりに何も怖れるものはない(かもしれない)。
私は男であるから、「69」の男たちの気持ちはよく分かる。
けれどもどっちを支持するかと言うと「下妻物語」なのである。

不満なのは後半があまりにも駆け足で進んだ事。
これによって、それまでリアルな物語だったのが、一挙にファンタジーになった。



2004年09月10日(金)
『リディック』は60点

『リディック』
 短評:一人のお尋ね者対宇宙最強の軍団。
    発想は悪くないんだけどね。
    スペースオペラなら、
    もう少し細部にこだわってほしんだよね。
    最初から突っ込みどころ満載では困ってしまう。
    ただ、昼は700度、夜はマイナス300度の星の描写は
    よかった。
    新人のキーラ役、アレクサ・タヴァロスも
    いかにも女豹という感じで
    よかった。
    後はもっとSFらしくしてね、という感じ。





2004年09月09日(木)
『シュレック2』は60点

『シュレック2』
 短評:毒がなくなりましたねえ。
    前作がヒットしたんで、
    ハングリー精神がなくなったんとちゃいますかあ。
    普通に盛り上がって普通に終わる。
    一番笑えたのはピノキオの鼻が伸びるところ。





2004年09月08日(水)
「青春18きっぷでたのしむ鉄道の旅」小学館文庫

「青春18きっぷでたのしむ鉄道の旅」小学館文庫
あてのない一人旅が好きな私なのだが、今まで青春18きっぷの使い方を全然知らなかった。この本はそういう「初心者」に関してはぴったりの本だろうと思う。おそらく鉄道マニアにとっては雑誌などですでに知っている事ばかりなのだろうな、と思いながら読んだ。

効果的な使い方、とくにきっぷ使用期間に出る特別列車「ムーンライト」シリーズの使い方など大変参考になった。夜の12時をまたいで使うときにはきっぷを途中まで買っておくなんて考えも着かなかった。今度はのんびり電車の旅もいいかもしれない。しっかり本も読めるし。

追記
8月7〜8日、青春18きっぷを使い、岡山県倉敷駅から新見まで伯備線、三次まで芸備線、そこで遺跡めぐりをして、広島まで行って泊まり、次の日は原爆資料館、頼山陽記念館、広島限定上映映画「父と暮らせば」などを見て、尾道で途中下車し「朱華園」で尾道ラーメンを食べ、倉敷に帰りました。後三日分ある。早く使い切らなければ(^^;)



2004年09月07日(火)
「遺書」幻冬舎文庫  verb

「遺書」幻冬舎文庫  verb
ここには五人の自殺した少年、青年たちの本物の遺書の文言と、自殺当日の再現と、あとに残された人々のルポと、残された人の手記が載っている。

ここでなにを言っても、彼らの個人的な経験に土足で乗りこんで、何事か言い放って帰っていくような行為の気がする。私にはなにも言うことが出来ない。ただ、もし自殺を思っているような人がこの作品を読んだとしたら、少しだけ世界が広がるかもしれない。



2004年09月06日(月)
『仮題・中学生殺人事件』創元推理文庫 辻真先

『仮題・中学生殺人事件』創元推理文庫 辻真先
「犯人は読者である。」その突飛な発想もさることながら、最初から犯人を明らかにするなんて「おいおい、大丈夫かあ」と思ってしまった。読者諸君、いくら発想がすごいからといって『本格』を期待していると肩すかしを食うであろう。



2004年09月05日(日)
「69」集英社文庫 村上龍

「69」集英社文庫 村上龍
「今までの32年間の人生の中で、三番目におもしろかった1969年はそのようにして始まった。僕たちは17才だった。」17才という年代は素晴らしいと思う。17才は思い切り時代の空気を吸う。安田講堂、佐世保闘争、バリケード封鎖、ラブ&ピース、フェスティバル、学生集会、サイモンアンドガーファンクル、ジャニスジョップリン、レディジェーン、…。しかし、17才は易々と時代を飛び越える。そして、17才は簡単に挫折する。ただ、17才はいつも楽しそうだ。そう、楽しくあれと願っていれば。

ほとんどが村上龍の体験に根ざしているという。「バリ封」にしても、そのため停学を食らった事も、コンサート、映画上映、その他もろもろを混ぜた「朝たち祭」というフェスティバルを企画した事も、脚色は少しはあるかもしれないが、事実である。けれども別に驚くに値はしない。私の知りあいの高校生は大きな集会ぐらいなら簡単にやってのける。エネルギーだけなら有り余っている、のだから。

村上龍にしては楽しい物語であった.頭がよくて調子がよくて、思想はないけど、楽しい事は大好きな主人公、ケン。主人公に付いて行けずに、でも彼らから離れられない岩瀬。あるいは主人公の頭の働きに付いて行きながら、もっと真面目に対処しようとするアダマ、あるいは「テレビなんかでさ、よう学生のデモとかバリケードとかあるやろ?うち、全然違う世界て思うばってん、分かるごたる気もする」という罪な言葉を呟き主人公を「その気」にさせてしまうメリージェーン。読者はおそらく登場人物たちの誰か一人に自分を発見するだろう.。(私の場合は岩瀬だった。残念ながら。)



2004年09月04日(土)
『ガニメデの優しい巨人』創元SF文庫 J.P.ホーガン

『ガニメデの優しい巨人』創元SF文庫 J.P.ホーガン
シリーズ二巻目に至り、謎は新たに進化する。ミステリの分野で言えば、『彼は何者か』から『彼はなぜそうしたのか』に移っていく。一巻目で曖昧なままに終ったガニメアンの正体が明かにされ、彼らがなぜ『優しい』のか解明される。それはすなわち、我々人類が『優しくない』ことの裏返しでもあるのだった。前作は5万年間の謎をとく事が主流であったが、今度の謎は2500万年間である。およそSF史上もっとも平和的な「ファースト・コンタクト」も描かれる(たぶん)。

今回の発想によく似た日本のSFを私は以前に読んでいた。半村良の『妖星伝』である。テイストはずいぶんと違うが、『地球という惑星は生物がお互い殺しあうところに特徴がある』という発想は同じである。どちらも同時期の刊行。『妖星伝』の場合はこの地球の未来に対してかなり悲観的なラストであった。果たして、ホーガンはどう決着を着けるのだろう。彼はかなり楽天的なようである。先が楽しみだ。



2004年09月03日(金)
「夜這いの民俗学・夜這いの性愛論」ちくま学芸文庫 赤松啓介

「夜這いの民俗学・夜這いの性愛論」ちくま学芸文庫 赤松啓介
単行本のときはなかなか気恥ずかしくて買えなかったし、結構な値段だったのでつい遠慮していたのだが、文庫本になるとなぜか気軽に買えた。なかなかの良書であった。

赤松啓介の語りはなかなかの名調子で、読み物としても面白い。一方学術書としては、明治から昭和にかけての村の夜這い民俗事例の再現のみでなく、都市商業地域の性習慣も扱っており、貴重な証言だと思う。赤松啓介の民俗事例を科学的に検証するのはいまではおそらく不可能であろう。民俗事例だと意識しながら話を聞いていたのはおそらく日本では彼一人しかいなかったのだから。しかし彼が悪いのではない。その方面を「無視」した柳田民俗学が悪いのである。赤松啓介は歴史の中に伝説として埋もれたかもしれない民俗事例を「それはあった」と言い切るだけの話として自ら体験しながら採取した事、それだけで彼の価値は大きい。

ただ、惜しい。あと5人ほど赤松啓介がいたらなあ、と切に思う。性民俗に溶け込める庶民性と、民俗学という科学的知識を持った知性を併せ持った人があと数人いたなら、「夜這い」から現代の「若者のセックス観」に至る道筋を歴史的にたどる事が出来たろうに。「今の若もんの性は乱れきっとる」などというもっともらしい意見に対して、説得力のある反論も出来たろうに、と思う。



2004年09月02日(木)
「都の子」集英社文庫 江国香織

「都の子」集英社文庫 江国香織
「女性」という「謎の存在」に対して挑戦するような気持ちで読んでいった本である。

以下は印象に残った部分です。ーー母の箪笥に対する特別な想い、そして今も大事なものをしまい込んでいるということ。空港が好きで、そこで傍観者としてなんの役割もなくただ立っているのが気持ちいいという感覚。雨の日のカエルへの想い。階段が好き、なぜなら「一人になれる」から。冬の夜道を歩いていると、時々一本のろうそくになっているような気持ちになる、満ち足りた気持ちで。アメリカの冬、みんなどこかで冷静に、澄んだ孤独を抱えていたし、他人の孤独に対する距離の取り方も知っていた。泣いた赤おに、青おにの友情なんかこれっぽっちも感じなかった、むしろ青おにに裏切られた気持ちがした。

どうしてこの女性はこんなにも孤独を愛するのだろう。そうしてそういう女性の「感覚」をどうして多くの女性が「共感」するのだろう。私も確かに孤独を愛する事がある。しかしこの「孤独」とは明かに違う。どうちがうのか。今はとても言葉では言えない。