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2004年07月28日(水)
「スパイダーマン2」は80点

「スパイダーマン2」サム・ライミ監督 トビー・マグワイヤ キルスティン・ダンスト アルフレッド・モリーナ ジェームズ・フランコ
アメリカ人はどうしてこうも「正義」という言葉が好きなんだろう。そして、その言葉に対して今という時代ほど思い悩む事はないのだろう。スパイダーマンの悩みはそのまま現代アメリカ人の悩みでもある。でもやはりアメリカ人は「正義」を選ぶのである。今作はその「過程」の物語である。「正義は自分を犠牲にしなくてはならない。」メイ叔母さんのこの言葉が重要なのではない。その前の「子どもには正義(ヒーロー)が必要なのよ」という事実が大事なのだ。アメリカよ、悩め、悩め、もっと悩め。
しかして、正義を必要としない(はず)の日本でこの作品は果たして受けるだろうか。

ところでここの登場人物たちはみんな単純な人たちばかりなのだが、一人だけよく分からん人間がいる。あれだけ世間がスパイダーマンをヒーローとして認めつつある中で、どうして彼を、事実を無視してまで、悪役に仕立てようとするのか。デイリー・ビューグル紙の編集長は。



2004年07月26日(月)
「69」は80点 

「69」李相日監督 妻夫木聡 安藤政信 金井勇太  宮藤官九郎脚本 
大いに笑わせてもろた。まあ大体高校生ってもんは、きっかけさえつかめばこんなもんでしょう。
この数作のクドカン脚本の中では一番よかった。
「下妻物語」とテイストは似ているが、決定的に違うのは、
男が主人公か女が主人公かということ。
男の行動のきっかけはいつも社会(あるいは女)に対してであり、
男がいつも怖れているのは退学(失恋)であり、
そのために男は社会的な行動をする(連れだって動く)。
女は社会的に行動しない代わりに何も怖れるものはない(かもしれない)。
私は男であるから、「69」の男たちの気持ちはよく分かる。
金井勇太がいい味出しているのが収穫。
けれどもどっちを支持するかと言うと「下妻物語」なのである。

不満なのは後半があまりにも駆け足で進んだ事。
これによって、それまでリアルな物語だったのが、一挙にファンタジーになった。



2004年07月25日(日)
「エレファント」は60点

「エレファント」ガス・ヴァン・サント監督・脚本・編集
噂には聞いていたが、高校生達の退屈な日常、私は耐えきれず、途中意識が飛んでいました。よって正当な評価は出来ません。しかし約70%見たうちで何かを言わんとするなら、カンヌも格が落ちたなあ、という事です。



2004年07月24日(土)
『ブラザーフッド』は80点

『ブラザーフッド』カン・ジェギュ監督チャン・ドンゴン ウォンビン イ・ウンジュ コン・ヒョンジン チェ・ミンスク
大きな悲劇的な事件を描くとき、その事件の全貌を描くよりも、二人のキャラクターを中心に描いて、事件を背景として描くほうが、よりその事件の悲劇性が浮き上がる事がある。「タイタニック」はまさにそうやって成功した事例であるが、この作品もそれと同じような作品として長く記憶されるかもしれない。「タイタニック」でも二人の別れの場面では全然泣けずに他の場面で大泣きした私であるが、今回も「これでもか」という「泣き」の場面がうっとおしくて、それがマイナスではあるのだが、それにも増して、同じ民族通しの肉弾戦の「朝鮮戦争」という悲劇に時の経つのを忘れた。すごい戦争映画が出来あがった。
それにしても「プライベートライアン」をなんとか超えようとする意思は凄いものがある。良くも悪くもあの映画はそれ以降の戦争映画を変えてしまった、改めて歴史的な映画だったのだと再確認した。



2004年07月23日(金)
『ロスト・イン・トランスレーション』は60点

『ロスト・イン・トランスレーション』
 短評:たぶん題名から勝手に想像していたんだろうけど、
    二人はいつ東京の中で迷子になって、
    高級ホテルに戻れなくて、
    どこかのラブホテルに泊まる羽目に陥るのだろうか、
    とずーと待っていたら、
    いつの間にか終わっていた。
    別に本当に迷子にならなくても、
    きちんと心が迷子になればいいんだけど、
    私には単なる金持ちの迷いにしか思えなかった。
    そりゃああんなかわいい娘から
    相談されれば、親切にしてあげようと思うわな。
    中年男の悩みも別にたいしたものではない。
    今回各賞総なめにしたのも、
    結局映画関係のおじさんたちが、
    「あの大監督の娘のかわいい女の子だった彼女が
    とりあえずまともな作品を作ったのね。
    魂は震えないけど、よしよし、賞はあげるよ」
    という感じなのではないでしょうか。
 
ハリウッドスターのボブ・ハリス(ビル・マーレー)は、CM撮
影のために日本へやって来た。だが慣れない異国の地、コミニュケ
ーションがうまく取れない現地スタッフに戸惑い、神経をすり減ら
していく。そんなある日、やはり日本の生活に馴染めない若妻のシ
ャーロット(スカーレット・ヨハンソン)と出会う……。

『ヴァージン・スーサイズ』で父親譲りの才能を発揮し、世界中の
注目を浴びたソフィア・コッポラ。彼女の新作は東京を舞台にした
異邦人たちの切なく、ハートウォーミングなラブ・ストーリー。本
年度のアカデミー賞最優秀脚本賞をはじめとして、ゴールデン・グ
ローブ賞等々の主要映画賞を総なめにした話題作。


シネマライズほか、全国順次ロードショー公開
 
 
 公開日=4月17日
 製作国=アメリカ/日本
 配給=東北新社/ファントム・フィルム
 上映時間=1時間42分






2004年07月22日(木)
『ドーン・オブ・ザ・デッド』は60点

『ドーン・オブ・ザ・デッド』

 短評:疲れた〜というのが正直な感想。
    突然クライマックスから始ったみたいな筋書き。
    この世界はどうなっているのだ、
    と、どきどきしていたら
    それ以上話は進まず、
    何でも揃っているデパートでの話になる。
    まあ、そういう話なんだと気がついたのは半分ぐらい進んでから。
    そうか、ゾンビ射撃を使ったゲームをしようと
    人の死とは何か、なんて深刻に考えるような作品ではないのだ。
    これはゲームなのだ、
    ゲームを一切しない私にとってはかえって新鮮。
    でも疲れた〜
    途中席を立った人が何人かいたけど、
    あのエンドロール、さすがに誰も席を立たなかったですね。
    (04.06)






2004年07月21日(水)
『世界の中心で、愛をさけぶ』は55点

『世界の中心で、愛をさけぶ』
 短評:思ったとおりだめ映画でしたね。
    どうして亜紀と朔太郎との恋愛話に絞らなかったのだろう。
    若い二人では客を呼べないから、という製作側の判断で
    余分に40分ほど時間を無駄にしたとしか思えない。
    
    長澤まさみ、偶然にもデビュー作の「クロスファイア」から
    見てきたのだが、この作品奇跡のように存在感が出ている。
    前作の「ロボコン」と比べると月とすっぽん。
    若いというのはいいことだ。
    ちょっと見ぬ間に飛躍する。




2004年07月20日(火)
『シルミド』は65点

『シルミド』
『男の友情』扱えば、
韓国ほどうまく描く国はないだろうという
昨今なので、
さすがにうまく作ってあり、
それなりに退屈せずに見ることが出来る。
ただ、個人的には最終版の作り方は気に入らなかった。
ほとんどの人はこのあたりで泣いていたみたいなので、
私だけかもしれませんが



2004年07月19日(月)
『デイ・アフター・トゥモロー』は70点

『デイ・アフター・トゥモロー』
いやー、突っ込みどころ満載ですね。
ところが変に感動するのです。
感動というより恐怖といったほうがいいのでしょうか。
こんなことは絵空事だ、
だってあれも科学的ではないし、
この人たちの行動も不自然だ、と思うことは思うのですが、
ふと空を見上げるとこの天候不順、
本当に絵空事なんだろうか……。と(^^;)
たぶん大統領選挙がらみの映画なんだろうけど、
日本人のほうにもっとインパクトがあったりして……。
ともかく心動かされました。





2004年07月18日(日)
「戦争が遺したもの」新曜社 鶴見俊輔 上野千鶴子 小熊英二

「戦争が遺したもの」新曜社 鶴見俊輔 上野千鶴子 小熊英二
今年前半期では、この本がベストワンである。
鶴見俊輔の得がたいキャラクターと数奇な運命。そして戦争がいかに日本の知識人に大きな影響を与えていたかということ。「従軍慰安婦」問題、「思想の科学」創刊、60年安保、ベ平連、等々で語られる「秘話」。丸山真男、竹内好、桑原武夫、都留重人、鶴見和子、鶴見良行、武谷三男、谷川雁、藤田省三、小田実、吉本隆明、等々の豊富な人間関係。鶴見俊輔評伝でもあり戦後日本思想史にもなっている。
しかしそれだけではない。聞き手の二人が単なる聞き手になっていない。「一日目」の最終近く、上野千鶴子は自らの運動の責任を背負うかのごとく鶴見の「従軍慰安婦」保証問題への関わりを「追い詰めて」行く。こんな対談は初めて読んだ。小熊英二も所々で鶴見の「これはヤクザの仁義なんだよ」という一種の決まり文句に鋭く突っ込んでいく。全然慣れあいでは無い。だからこそ臨場感溢れる「戦後の再現」が実現できている。そこまで突っ込んでも読後感がすがすがしいのは二人が間違い無くこの戦後の日本を代表する思想家を尊敬している事が随所に見られるからである。私もこの本を読んで鶴見俊輔が単なるプラグマティズムを輸入した知識人だったという印象を変更した。もっと複雑で魅力的な編集者であり、行動家であり、日本の戦後に大きな影響を与えた人物なのである。
唯一困ったなあ、と思ったのは、この本を読むとどうしてもあの分厚くて高い小熊英二の「〈民主〉と〈愛国〉」を読みたくなること。(04.05)