凪の日々
■引きこもり専業主婦の子育て愚痴日記■
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子連れの主婦には道を尋ねやすい。 まず子連れだと子供が小さければ小さいほどこの近辺の住民だと推測できる。 そう睨んで、私は道が分からない時などはまず子連れの主婦を探した。 大体それで外れたことは無かった。
現在、私がそのターゲットなわけで。
アユムを連れて道端にいたら、私達の前を通り過ぎた黒塗りのベンツが少し先に停まった。 運転席から降りてきた中年男性は私達めがけてつかつかと歩みより、やおら「○×女子高はこの辺ですか。」と聞いてきた。
この辺にある女子高といったら多分あそこだろう、と「この先の信号を左に曲がって突き当たりの信号を右、その次の信号を左に曲がってまっすぐです」と答えると「左ですね」とだけ復唱して去っていった。 いや、左っていうか、途中の右を省略したらじょしこうどころかどんどん街中を離れていってしまいには海岸線に出てしまうけど。 分かったのかしら。ちゃんと右にも曲がるんだけど。それとも私が右って言うの忘れたのかしら。大丈夫かしら。娘さんの受験の下見かしら。転勤とかでこっちにきたばかりとか。でもかたぎっぽく見えなかったけどまさかじょしこうで良からぬ事をたくらんでとか。いかんいかん人を見かけで判断しては。
気になって仕方なかった。 これからいつ道を聞かれてもちゃんと答えられるよう地図でも持ち歩こうか。 地図を見せて「現在地はここですね。目的地はここ。この信号を左に曲がって次の信号を右、次にこの信号を左です」と視覚にも叩きこんでやれば教える方も教わった方も完璧だろう。 なんて、色んな事をあれこれ考えてしまった。 ちゃんと女子高に辿り着けたんだろうか。あのおじさんは。 ってか、私に道を聞かないで。 たまたまこの駅前にいただけで、このあたりの住民じゃないの。ごめんね。
部屋の片隅に折り曲げられたメモ用紙が落ちていた。 表にエンピツで絵が書いてあるあたり、アイの落し物だろう。 誰かからもらった手紙かな?と広げて見ると、中にはへたくそなアイの字。
「がんばれ。 つぶれそうなじぶんへ。 みらいのじぶんより」
……えっと、誰がつぶれそうなんでしょ? なんの重みで? ってか、齢六歳の小1がなんの重さに耐えて日々を過ごしているわけ?
それにまったく思い当たる事がない私に問題があるとか? だって何もアイに過度の期待なんかしてないつもりだけど。 とりあえず今は自分の事を自分でやれるようになってくれと願っているだけで。 何も強制も強要もしてないつもりだけど。 私が気づいてないだけ? やっぱり私が原因?
なんか笑うしかないなぁ。ははは。 つぶれっちまってるのはこっちだよ。
暁
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