| 2009年10月26日(月) |
第十一回 活人拳講義録/実技 閂＝逆さ合掌二種 |
■再確認したこと
閂形の表現について、前回の講義で再確認したことがあった。それは閂形＝柔法技を表現するには、「�ヽ櫃韻訛Δ鮗腓防集修垢襦廖岫�掛けられる側を主に表現する」「��最終極まり形を主に表現する」「�な９臈�な表現にする」――以上を前提にすると分かりやりやすいと云うことだ。表現はイコール分類となる。歴史の記述法にも編年体と紀伝体があるように…関係ないか…。
―一同笑い―
例えば仕掛け技などは、我の手形・状態を述べ、彼の手形・状態を述べ、極めた形・状態を述べる。これは�い世諭�ただし私の考えでは、閂形は極めの形に条件があるので、ここらをどう表現するかだ。二指捕りを参考に柔法技要素を分類すると、�ー蠅鮓鮑垢垢襪�、交差しないか＝非交差 �⊇膽蠅�逆手か �９誕Δ�掌側か(科目表では内手首・外手首と表現) �ざ�曲か伸展か�テ眄�か外旋か ��掌屈＝殺すか背屈＝活かすか �Ъ楸�か橈屈か――以上となる。当然、要素は彼我が共有し、複合する場合がある。
しかし複雑なのは、交差させて握った場合、内旋外旋は彼我で反比例し、屈曲伸展では交差非交差に関係無く彼我で反比例の状態になる場合があるので、�，鉢△鷲集修�難しい。また�Δ如�我の手を殺して捕るのは、襟十字以外あまりないかな。送小手の一方の手をそうする人もいるね。我については、ほとんどが活かす＝合掌形がほとんどだね。また理論上、第三の握り方が発生する。
表現・分類は一筋縄では行かないということだ。各人見解も異なるし…でも誰かがやらなければ！と思っている。
■手首殺し形の分類
「先生のお話を聞いていると、とても難しそうで、答えが合っているか心配になりますが、まず合掌形を拡大解釈して逆さに合掌しますと、内旋形と外旋形にそれぞれ屈曲伸展を加え四系統になります。内旋形は逆さ合掌した片手をそのまま開き、さらに背中側に回して立てる方向の送小手と、当然送捕りと――」
――待て待て、まずは前回の教範中の技法（＝閂固め、閂送、片手閂投げ、両手閂投、閂内天秤、閂外天秤、押閂投内、押閂投外、閂片手投、送閂小手）で答えてごらん。
「それでは、逆さ合掌をそのまま開いた形の内旋伸展形は、閂固、閂送、片手閂投、閂内天秤、閂外天秤です」
――続けて答えを聞いてみよう！
「両手閂投、押閂投内を内旋屈曲形とします。外旋屈曲形は押閂投外で、閂片手投げは屈曲形でも進展形でも捕れます」
――うーーん、これは難しかったかな…。
話しを変えて、皆の中には中野先生の四道院講習会を受けた者がいるので記憶にあるだろう!? 先生は面白い捕り方をされたね。相手が左手で右手を寄抜形で握って来たのを、一旦、巻抜きしながら相手の背面に出、腕を肩の線まで上げ、次に左手の掛け手と抜き手の右手刀で極める形を示されたでしょう!? イメージ出来るかな。あの極め形が、閂と区別されるのではないかと考えている。
不思議なのだけど、脳裏に鮮明に映し出せる映像や言行がある。特に技なんて直ぐに出来る訳ないから、ある種禅の公案を映像で頂いたようで、ありがたいね。
■送小手の実験法
ちょっと実験してみよう！ まず相手に正座してもらい、自分は側面に正座する。相手の左手を我は左逆手のボウリング形掛け手をし、手首を殺しながら水平に上げる。皆の答えにある逆さ合掌伸展形だね、いいかい!? で、自分の左手を外旋させる。交差形なので相手は腕を内旋させられるね。一旦肩の線で指先を立てて止める。これも合掌しているね。やってごらん！
―実験法を行なう。大拳頭が効いているので正座している体勢が前に崩れかける。しかし、中には上手く行かない者がいる―
――効かない者は相手の小指球への効かしと、自分の手首の生かし方＝大拳頭への効かしが足りないからだ。で、この形ができたら、相手の親指と人指し指の間に右手刀を入れ、左手の攻めを補完するように大拳頭をますます攻めながら、左膝を開き、自分の左腰に持って来ると、相手を伏せ身に出来る。これが送小手で、手首・腕の三方向を攻める、単純に親指を攻める方向ではない。
―実験法が効きだす―
何か気が付いたかな？
「…分かりません」
――肩を上げるまでの手の形と、肩の位置で立てながら回し下げる手の形は違うでしょう!? 昔、第三講堂で開祖が送小手をされたことがあったけど、とても不思議？な送小手で、「送小手なんか簡単なんだ」と言われて、ヒョイと、本当にヒョイと回し捕られたので、皆あっけにとられた。
でね今思うと、第一段階の腕を上げるまでが実は閂で、言い方を変えれば、閂と第二段階の非閂という複合構造が、例えば送小手であり、片手閂投なのではないか。要するに殺しの閂系統は、純粋にそのままの閂形＝閂固め等と、それからさらに攻め方を変える複合形＝片手閂投等があると類推する。すると話しが前回の講義に戻って、閂の定義が必要となってくる…。非常に複雑だね…。閂技の中には、非閂を含めた閂技があるのかもしれない…。開祖の逆小手のトン！も気になるね…。
■二種の逆さ合掌
つまり掌攻め＝逆さ合掌には二種あるとしなければいけない。
「先生の説明と実験法で、二種の逆さ合掌は分かりました。こうですね？」―逆さに合掌し、甲の小指側と大拳頭側を合わせる二形を示す―
――よろしい！では続けるよ。これも前回の講義で触れたけれども（＝従来の分類では入らなかった技も、ある角度を堺に閂形になると類推できる。切返小手と十字小手は、この点で閂とは言わないようだ）、片胸落と襟十字の比較はその典型で分かりやすい。胸落の極まり形と、逆小手、小手巻返等の極まり形＝合掌形＝基準線＝閂は、内旋と外旋の違いだけで、戻すと同じ手形になるでしょう!? 私はそう解釈する。
落とすというイメージは、むしろ十字小手、襟十字の非閂形の方がストンと落ちる。これは攻め方が異なるからで、十字小手、襟十字の二技が出来ないと、首絞守法十字投にステップアップ出来ない。たまに居るでしょう!? 投げた相手が手を離さず、さらに締められてバタバタしている人。 ―一同笑い― 非閂形で攻めないと手が離れにくい、ないし甘いから手が離れない。袖巻天秤で手が離れるのはこう攻めているからだよ。
「送肘攻も非閂形ですか？」
―― そうだね！ 多分、この形は手首系の本逆と表現できるだろう。純粋の閂形はどうも順逆を指すようだ。もちろん固めのように(急所を攻めて)痛くしたり、開祖の送小手のように順逆故に相手に気付かれないで逆を捕ることができたり、あるいは非閂形も含むのかもしれない、その場合はとても痛い…。以上で説明を止め宿題を解答すると、
�￥抔任蓮Р罎漏櫃閏蠅鮟膽蠅埜鮑垢靴楠拗兇瓠Ｈ爐脇眄�、伸展の閂形となる。
��閂送は：我は掛け手を順手で非交差し、直ちに左に持ち替える二連動作の閂攻め。彼は内旋、伸展の閂となる。
�Ｊ匱褊拇蠅蓮Р罎漏櫃閏蠅鮟膽蠅波鷂鮑垢掘�一方の手を丁字にして手首を打ち閂攻めを補完する。次、体を捌き、非閂形に内旋させ大拳頭を攻めながら投げる――。
以下は自分達で考えなさい。分類については改めて述べる。
【注意】本「書きたい放題」は気持ちの問題もあり、即日にアップします。ですので、当日中、あるいは翌日にかけ、表現の過不足を改める場合があります。印刷して読まれる場合は数日後にお願いします。表現が異なったまま残るのは、私にしてみれば不本意であります。よろしくご推察の程をお願いします。尚、月日、年月が経て訂正を行なった場合、0908○○と断って訂正するのでご了承下さい。
良いものを残したい、伝えたい、と念じております。
■先日、お会いした海外支部長Ｊ先生のＨＰに掲載された一文です。本日メールで知らせて頂きました。活人拳を理解して下さり大変嬉しいです。で、本講義の仕上げを早めました。人間は生きているのです…。
「(前略)It was a tremendous experience to listen to the fruits of his personal research on the deeper meaning of Shorinji Kempo kihon, especially as it related to Katsujin-ken (the fist that preserves or affirms life).
I would like to express my sincere gratitude to Atsumi sensei for taking time from his busy schedule to come for this meeting.
Gassho 」
| 2009年10月16日(金) |
第十回 活人拳講義録/実技 閂をさらに探求する |
■閂の分類を試みる
皆、宿題（＝閂の掛け方を順手逆手、交差非交差、甲側掌側、内旋外旋で分類してみるとイイね。これは宿題としよう）はやって来たかな？
「先生に二指捕りを教えて頂いているので、理解に役立ちました」
「相撲では一指と二指を握るのは反則で、三指以上は特に規定が無いそうです」
――それなら、木の葉返しができるかもしれないね。 ―一同笑い― 相撲は大変興味深い。前にモンゴル人力士、朝昇竜だったかが、押受巻投げを掛けたのには驚いた。その時の掛け手は、相手の右腕に対して我の右手を拇指球に掛け、左手を手首に掛けて捻り投げた。まあ、掛けたか掴んだか分からないが、投げた本人も転んでいた。我の側から見ると、両掛け手が交差している。押受巻投げは二説あって、もう一方は交差しない捕り方がある。
関節技というのは大変な威力がある。これも以前、武蔵丸が誰かと対戦して、相手の上手で下手に天秤が掛かる形になったら、あの巨漢力士が自分から土俵の外に飛び出てしまった。なので、一指二指捕りが反則ということは、裏を返せば、武術として大変有効な技であるということになる。ただし、活人拳では相手を壊さない＝不害の立場なので、主に逆技を理解させる為に用いる。また、分類理解に大変役立つ。
■さて解答は？
「ハイ！ まず合掌からその手を自分の側に回します＝内旋させますと、上膊捕りや、さらに回すと切り返し小手などになり、反対に回す＝外旋させると、合掌逆小手、立合掌固め、合掌突き落としになります」
――彼の手腕の状態では正解なのだけれども…補足すると、進展形と屈曲形に分けるべきで、それが分類するということだ。その過程で発見が生まれる場合もあるだろう。
「でも先生、手首を活かした内旋伸展形ってありますか？」
――引落と…送閂小手…しか無いかな。送閂小手(091021訂正：と引落)は、生かしでも殺しでもない尺屈形とも言えるけど…。応用技はあるね。無銘技だね。例えば、巻抜に握って来たのを、この段階で内旋活かしだね。抜き様に崩しながら、もう一方の手を首に掛けて投げるとかがある。 ―実技を見せる― 達人は片手だけで投げるかもしれない。すると鈎手が重要となるが、今は置こう。まあ鈎手崩しは振り捨て表投げがあるけどね…。
「合掌＝手首活かし形は、内旋屈曲、内旋伸展、外旋屈曲、外旋伸展の四系統でよろしいですか？」
――そんな単純なモノではないなー。
「……」
――それと、内旋伸展形でも、天秤形はどうだろうね。上膊捕りを掛けて、相手が手を生かしたまま腕を伸ばす場合の天秤は…無いから引き落としか…。いや、逆引き天秤があったね。まあ最終形は手首が死ぬとは思うけど…。教範でどう分類されているか、問題意識を持つと俄然、興味深くなるでしょう!?(『教範/第二章 龍華拳 第一系』参照)。
■分類の先駆者
先駆者がおられて、身体運動的用語を用いられての分類を試みられたのは、『柔法の考察』を発表された松田欣一郎先生が最初と記憶する。この論文は本部資料として配布され、また月刊誌に掲載されたことがある。道場にある。まあ合掌形ということからの説明ではないがね。ちなみに手首を活かすのは身体運動的には掌屈。殺すのは背屈と云う(訂正091019：掌屈と背屈が逆でした)。
少林寺拳法の技法分類に問題があると思えるのは、例えば、龍王拳があるのに、龍華拳第一系に、逆小手＝小手抜と巻小手＝内切抜が混在したり、「逆小手とは本質的に異なる」とお書きになっているのに小手投が入っていたりする。手首活かし形と殺し形の混在もだね。小手抜と内切抜は、腕の内外旋からすれば正反対の抜きだ。順手握りで小手抜形、逆手握りで内切抜りとは言える。手首が極まった形も、両技とも閂形であるね…。
ここいらと同じ疑問を、松田先生も感じられたのかもしれない。たしか剛法の分類上、整合性のないモノを「不規則動詞」と表現されていた。個人的には相当根深い問題と思っている。開祖ご存命中に再分類を成すべきだった。分類に踏み入ると、底無し沼に足を踏み入れたようになる。出題が間違ったかな？
―一同笑い―
■教範にある閂技法とさらなる閂技法の探求
閂の名の付く技法はどれくらいある？ 教範を見てよいから答えてごらん！
「閂固め、閂送、片手閂投げ、両手閂投、閂内天秤、閂外天秤、押閂投内、押閂投外、閂片手投げ、送閂小手です」
――なにか気付くことが無いかな？
「…分かりません」
――送閂小手の存在でしょう!? 教範には「又、別法として、手首を殺して捕る方法もある」と記述されているので、正規技法は活かして捕るのが明らかだ。すると他は全て殺して捕る、所謂閂で捕る技なので分からなくなる。閂という概念は捕る形を言うのか、捕られる形を言うのか、はたまた字義通り、手首関節に指が閂様に掛かる事を指すのか、しかしどうやら、活かし形も殺し形もあるという事だね。
見当は付いている。
送閂小手がそうなら、丁字捕もそうだし、上膊捕もそうだし、その反対が片胸落になり、従来の分類では入らなかった技法も、ある角度を堺に閂形になると類推できる。切返小手と十字小手は、この点で閂とは言わないようだ。なので最初の答えは、出題が「閂の掛け方」ということで、外旋屈曲形、外旋伸展は該当する技が無く、間違いということになる。単に合掌形＝手首活かし形なら、四系統で正解だ。まあ表現が分かり辛かった点は割り引こう。
正解は、活かし形の閂を教範通り分類すると、彼よりの順手、非交差、甲側、内旋巻抜の握りに対して、送り閂小手となる。出題には屈曲伸展が抜けていたので申し訳ない。で、概念を広げると前述通りとなる。加えて、送合掌は彼よりの順手と逆手、非交差、掌側、内旋と外旋、屈曲となるでしょう。実技で確認してごらん！ ―実技を行なう― 以上の要領で分類する。無銘技がずいぶんと出てくるでしょう！
「内受突の法形分類で、受け手要素が順逆、表裏、開対。攻撃が順突、逆突、差替順突きの三攻撃に対し、左右で24種あるようですね」
――非常に良い着想だ！ 次は殺し形を練習しよう。
【注意】本「書きたい放題」は気持ちの問題もあり、即日にアップします。ですので、当日中、あるいは翌日にかけ、表現の過不足を改める場合があります。印刷して読まれる場合は数日後にお願いします。表現が異なったまま残るのは、私にしてみれば不本意であります。よろしくご推察の程をお願いします。尚、月日、年月が経て訂正を行なった場合、0908○○と断って訂正するのでご了承下さい。
良いものを残したい、伝えたい、と念じております。
■ある日のブログより
（無題) 投稿者：今田三六 投稿日：2008年 6月18日(水)15時56分36秒
最近、（相手の指を折らないよう工夫した)二指捕りを研究しています。一指捕り＝送り指返し、指捕り連行。四指捕り＝木の葉返し、木の葉送り、送り四指捕り、と少林寺拳法には指を攻める技があります。
以前、本掲示板に書いたスペッツナズの格闘技には、小指捕りがありました。指を捕る技は効果が高く、簡単なので、人造りには適していないかもしれません。でもまあ、興味があるのです。女子に護身術として教える価値が高いと思われます。
四指を捕ると返し技がありますが、二指だとその心配がありません。相手の指を折ることもありません。表裏、順手逆手、輪持ち交差持ち(←造語！)として、16形×左右で32形。変化形は…数え切れません…。
メモです 投稿者：今田三六 投稿日：2009年 2月 7日(土)15時59分16秒
◇個々の剛法法形を分類すると、順逆開対表裏がある。例えば内受突では、逆突、順突、差し替え順突に対して左右24法の形になる。
抜き技は上のような攻撃に対する一つ一つの技に名称を付けたモノと言える。例えば、寄り抜き(引き)と巻き抜き(外捻り)と二段抜き(上方捻り)と突き抜き(下方押さえ)であり、小手抜き(引き)であれば、内突き抜き(下方押さえ)である。
しかし、小手抜きと同じ握りである逆天秤の片手バージョン(上方捻り)には技の名前が無い＝小手抜き系には名称が少ない。内受突も名前が無くて済ましている。下受けには、下受け蹴りと下受け順蹴りがある…。
統一性が感じられない。教範は置き、別の角度からの分類法が必要であろう。
◇◇受けには腕刀・手刀の内旋と外旋が、龍王拳同様これまたある。捕技にもある。例えば、寄り抜き系はすべて外旋系であり、内旋系の小手抜きとは運動が異なる。それなのに、突き抜きの内外として一緒くた？にすると、混乱するのではあるまいか。寄り抜き系は内受けの運動と連動し、内受け系修練との相性が良いのである。
もう一つ、切り抜き内外である。外切り抜きを内旋(送小手の運動)させるのは問題無いとして、切り抜き内はどうであろう。私はやや内旋させた鈎手から外旋させて切り抜く。こうしないと、外旋させる巻き小手に連動しない。
これは諸手にも飛び火し、上手が交差系であるか非交差系であるかによって、初動運動が正反対になる。少林寺拳法の精妙さを増す為にも、思い切った分類が必要であろう。
| 2009年10月03日(土) |
第九回 活人拳講義録/実技 閂は合掌形の極致？ |
■合掌形の極小形について説明しよう。
「合掌の極小形ですか？」
――ようするに手指の形状のことだね。以前、中野先生が機関紙であったか、月刊誌であったか、閂固めの写真を見ていて深くため息をつかれたことがあった。それでお尋ねしたところ、「親指が逆でしょう!?」と言われた。固めた両親指が逆に重なっていていたんだ。少林寺拳法の技が精妙というのは、例えばこのような指の位置ひとつで、技の効果が増したり薄れたりするところにあるようで、先生から見れば大きな問題であったのかもしれない…。
「以前から疑問なのですが、なぜ逆に重ねてはいけないのですか？」
――この質問は意外な感じがする。今まで説明不足だったかな。いやいや、長い拳法人生の宿題として考えても良いかもしれないね。まあ、私なりの答えを言おう。昔開祖が、「ワシは閂が得意なのだ！」と話されたのを、当時、御付をしていた山門の同僚が聞き、先生はこう攻められた＝手の形状をこうされた、と教えてくれた(『教範/第四章 五花拳 第三系 白欄 片手閂投』参照)。当時も、その後道院長になってからも、理解するのに膨大な時間を要したが、これが合掌形で、質問の答えに大きく関わる。
先生の閂投げは何度か拝見している。改めて教範の写真を検証すると、掛け手の形状は手首をしっかり生かされた合掌そのもの。翻って、自身の合掌のロックが甘い人は、閂＝逆技の効かしも甘いのかもしれない。合掌は奥が深い。自分だけ正しい合掌をしてもダメ。自他共に正しい合掌を行なって拝み合うのが理想形で、技もそうだ。閂の基準線とは言わないが然り。逆小手の基準線も然り。活人拳では合掌形ということになる。。
閂の掛け手＝合掌形＝基準線を順手逆手、交差非交差、甲側掌側、内旋外旋、活かし殺しで分類してみるとイイ。これは宿題としよう！
■合掌の意味すること
相手の左手を閂固めで捕るとして、我の左手は四指を曲げて母指球に掛ける。この時、どのような手の形状が具合が良いか、やってごらん。
―固めを行ないながら、お互いの手の観察する―
――合掌ということで何か気付かないかな？
「……？」
――合掌というのは手の掌を大きく広げている形でしょう!? だけど、何人か左手の四指を曲げるのは良いが掛け手が深過ぎて、掌が小さくなっている。むしろ熊手のように指と掌が反り返る様に掛ける。つまりどういうこと？
「掛け手は浅くすると言うことですか？」
――そう！で、右手は左手指の浅い掛かりを補完する。その際の右手の形状は、三指を掛けて親指と人差し指を張る＝鉄砲のような形と、四指を掛け親指を立てる形がある。どちらが正しいかは置いて、ここで指の機能解剖的な説明をしよう。まっ、専門家ではないので割り引いて欲しい。
親指と小指は対立筋と言い、片方が曲がれば片方は伸びる。逆に言えば、片方が伸びれば片方は曲がる関係にある。例えば、ティーカップを小指を立てて飲む人がいる。若い女性はイヤラシイ！などと言うが、実は自然な身体の動きなんだ。 ―一同笑い― また、赤ちゃんがモノを握る時、親指を立てるのも同様。新入門に正拳を握らせても、別な動作を加えると親指が立ってしまう事がある。後輩指導をおろそかにしてはいけない。人間の自然な動作や反応を、彼等や少年部から学ぶことが出来る。
■多角的視点
「私はボウリングをするんですが、球を掴むのに親指、中指、薬指と曲げ、人差し指、小指を伸ばすのも、何か関係がありますか？」
――他分野との共通点や関連性を考えることは大切な視点だ。ボウリングで人差し指を立てるのは手首を固定させる為。中指と薬指の穴はカーブを出しやすくする為。親指の掴みで安定させ、対立筋である小指を広げ、結果、掌を大きくして重い球体を支えやすくするのだろう。良く考えられているね。
曲げると伸びるという関係以外に、親指が開けば小指も開く。古来からこの手の形状で身近な寸法を測ったのだろう。残り三指を曲げても同じかな。この形で手を振ると電話のサインだね。影絵の狐の形はボウリング形か。親指と人差し指を付けるＯＫサインは、機能解剖的にやり易い形だからだろう。親指を立てるグッドのサインもだ。五指を全部伸ばして指先を付ける少林寺拳法の鳥手もやり易い。しかしこの機能解剖的意味は分からない。小指を立てるのが彼女を指すのは分かる。―一同笑い―
話しはそれるけど、ボディランゲージは、やはり欧米が得意なのかな。日本で両人差し指をコメカミ辺りに立てると怒りを表すが、欧米ではサターンの意なのだそうだ。陰陽道とか真言密教に宇宙と会話できるという独特な手の形状があるらしいが、研究すると面白いだろうね。もっとも我々は合掌と結手という法形で、すでに実行している。ともかく、色々な形状を確認してごらん！
―皆それぞれ手指の形状を作り始める―
単純に開手の方が目一杯開きやすいでしょう!? ただし鈎手の場合、指が反る感じではなくて、手掌を円やかにする感じ。合気道に、もう少し掌を窪ませた朝顔という手形があるらしい。思うところがあるが他流のことなので避ける。
合掌の変化形である掛け手は手刀を基本とし、�，気蕕房蠅魍�く鈎手形(掛け手様に四部位の使用が可能)��二指屈曲形��三指屈曲形�せ融惷�曲形�ジ淹惷�曲形�Δ修梁召�あり、それぞれが技に対応して、深浅、手首の角度、反る丸める、曲げる伸ばす、の要素が加わって変化する。一技の中に、掛け手が素早くニ連変化する場合もある。例えば、小手投げ、押さえ閂投げがそう！―手形で示す―
■逆技は全てが合掌形？
話しが戻って、なぜ閂固めの指の重ねが逆ではいけないか、分かったかな。
「…分かりません」
――ではヒントを与えよう。合掌の意味とはなんだったかな？ それとボウリングの説明で言った、小指が対立筋によってあの形になるのはどういう意味があったかな？
「分かりました！(相手の左手を固めるとして)自分の左親指を開いて掌を大きくする為に、右親指の内側にしてはいけないのです」
――正解だね。補足すると、位置が逆になると、本来は左親指が開くよう操作する為、内側にあると右手の補完操作に反することになる。また閂固めをする場合、手首の急所＝陽谷を攻める人がいるが、掛け手本来の意味である（合）掌攻めを損なうので、私はさせない。掌が狭まるのは合掌形ではないんだよ。まあテーマが異なれば別だ。しかし開祖の閂攻めは、掌を広げた明らかな大拳頭攻めなんだ。ただし単純にそれだけでは無い。中野先生も閂は得意で、開祖の直伝なのだろう。先生の片手閂投はとても痛い！以前、先生にこの技の写真を何枚も撮らせて頂いたことがある。見事な技に感動したのと、資料にもなって合掌形を確信した。
■開祖の大拳頭攻め
開祖の大拳頭攻めを述べておこう。まだ第一修練道場しかない時代＝昭和44年頃だったかな、指導者講習会に参加した時の話。参加者が大勢で本山に収まりきれず、多度津中学の講堂に移動して実技の練習をしていた。すると開祖が現れ、田原先生を相手に逆小手の指導を始められ、こう言われた。
「皆の逆小手は99％できているのに、最後の1％で失敗している」
と、倒れる寸前ギリギリのところ＝逆小手の基準線で止め、
「いいか、このように極まれば、あとは指一本で倒れる！」と、相手の大拳頭を人差し指で軽くトン！と叩いて倒された。会場がオー！と沸いたね。この位置＝大拳頭と、軽く叩いた方向＝角度が閂のコツなのだろう！冒頭、同僚に教えてもらった開祖の攻め方＝掛け手の形と符合する。
ともかく掌を張り、我の手首を生かし、彼の手首を順逆たる閂形に殺し、大拳頭を攻める。捕りでも殺しでも、形状こそ異なるが逆技とは、「彼我の手が合掌している形」と映る。
言葉では分からないだろうから、閂固めの実技を行ない、合掌の精妙形を確認しよう！
「ハイ！」
【注意】本「書きたい放題」は気持ちの問題もあり、即日にアップします。ですので、当日中、あるいは翌日にかけ、表現の過不足を改める場合があります。印刷して読まれる場合は数日後にお願いします。表現が異なったまま残るのは、私にしてみれば不本意であります。よろしくご推察の程をお願いします。尚、月日、年月が経て訂正を行なった場合、0908○○と断って訂正するのでご了承下さい。
良いものを残したい、伝えたい、と念じております。
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