岸部・・・?
目次|前の日|次の日
3歳もしくは4歳くらいの頃、スーパーカーのラジコンを買い与えられ、 思いがけない贅沢に僕は寝る間も惜しんでラジコン操作に熱中した。
そんな平和なとある日、当時僕が悪魔兄弟と密かに称して恐れおののいていたいとこ軍団がやって来た。
その悪魔兄弟は男だけの4人兄弟で、性格は全員が争うように粗野で猛々しく、しかも年齢は末弟が5歳ぐらいで僕と絶妙に近く、現実的に恐ろしい。 上から下まで力で統制されていて、当時の僕には山賊か何かなんじゃないかと姿を見ただけでも身震いのする存在だった。
悪魔兄弟は抜け目なく真っ先におれのラジコンに目をつけ、 所有権という概念を知らないのか所有権の確認もしないまま、 もしくはわかっていながら平然と無視をして、 勝手に兄弟間で所有権争いを始め、 結局、兄弟間の秩序により長男次男を中心に嬉々として遊び始めた。
この時点では、僕は大人の誰かが見つけ次第きっと所有権の概念を教え、そういった秩序を正してくれるはずだという期待を抱いており、実際その通りになった。
しかし、僕の持ち物だと大人に教えられたにも関わらず、悪魔兄弟はああそうかといった程度で、大人の前で形式的に確認をしただけだった。
一人息子として甘やかされて育った僕は全くわけがわからないまま なんとなく悪魔兄弟の末弟として位置付けられている雰囲気に気付き、 納得はいかないがとにかく一員なわけだし、悪いようにはされないだろう というクソ甘い期待をまだ持っていた。
ところが、悪魔兄弟は華麗なフォルムやドライビングテクニックを楽しむという趣向が毛頭ないらしく、とにかくワイルドさだけを追求していて、 考えられないような悪路を走らせたがったり、何かに激突させたがったりした。 特に一番凶悪な次男のそういった意見は何故かすぐに採用された。
「モア・ワイルド」をモットーとした悪魔兄弟は、 ついに階段の上から下まで走らせてみる(落としてみる)という暴挙に出た。 3歳児の僕には想像力がなく、初走は「見」に徹した。
結果を見届けた僕はコトの重大さに気付き、 大興奮の悪魔兄弟とは対照的に、涙ながらにニ走目を拒んだ。
ウィ…ウィン…と、車はすでにヨチヨチ走行になっているのにも関わらず、 末弟の涙の訴えを軽く制止し、悪魔兄弟はまた階段から落とすという。
きっとどこかで大人達が解決してくれるという甘い甘い期待は見事に裏切られ、スーパーカーは見事に大破した。
大人達がその事実を知れば向こうが弁償ぐらいはするだろうと思いきや、 洗礼を受けたな、ぐらいで済まされ、悪魔兄弟は笑って帰って行った。
|