何故としら 隣の寝息悲しくて 重き身体の微か寝返る 眠られぬ 眠気と戦ふ此(こ)の一月(いちげつ) 身重き今宵も唯(ただ)一途歌(か)す 歌詠むハ「君の何と」と問われしも 生とも死とも何せらんや 欲せ(ほっせ)しは何と知らるば眠らるか 考えし事すら意味も成さぬよな 氷解け 一雫受け喉潤む そんな緩やか時の眠りを 横で寝し 君の寝息が休まりて 嫉妬が消える和き(やわき)が欲しい ***** ***
毎日を時も数えぬ眠りにて 付き添ふ君の眠き目に謝(しゃ) 小さ銭一枚二枚と数えりて 米粒啄(つい)ばむ 二人ぼっち 粉捏(こ)ねて 祷り(いのり)いて 膨らみに嬉し 今宵も生きる トンボ珠(だま)夢を叶えよ 豆になれ 一口でもの緑食わせよ ***** ***
実父(ちち)の死に逢えず終りし一生も、○○の死に逢わぬ一生とも言ふ ***** ***
幼き日 楽し日々の思い出は実は欠片も無く在りなむ ○○母の思い出の欠片 記憶から無くなりてるに歌を書けようか? 見栄えだけ親になりしし○○母は未だごっこの夢を語りし ごっこから抜け出したる 娘とは裏切り者の誹りに薄笑い 命尽きる 癌なる○○は縁尽きて 独り寂しく暗病室(あんやまむろ)で 一本の絆で結ふ 親子へと夢に願えど夢のまま。 交わらぬ 血に負け到る(いたる)養ひ(やしなひ)縁 共の想ひは何も叶わず 欲喰いて欲を欲する養母盾 ○○との糸もすでに切れたろ! ○○=“ようちち”を漢字で書いてください。 ***** ***
「生きる」文字 書こうと筆を置きすれば 死の言霊が 手を誘ふ何? 死神よ 少しの間 閻魔まで遠くの時を○○に与え給(たま)へ 生くる間(ま)は苦しみ ○○に与え給(た)へ 壮絶な生(せい)味わせ給(たま)へ 死の時ハ直々(ひたひた)となり近づきを。思ふ傍より数うる妻とは 生くろうと 小さき望み 縋ろうも 死時数えて 金数えし妻 財産を皮算用(かわざんよう)妻 夫の癌 死の宣告こそ縁の切れ端 訊(き)けぬ技 親ごっこの行く果ては夫婦ごっこで愛無き死 ※○○=“ようちち”を漢字で書いてください。 ***** ***
消え失せよ! 記憶押し込めし恐怖なぞ 負けじ魂 我に宿せよ 記憶消せ 記憶なぞ要らぬ解き止ませ 今のみ生きて、其(そ) 乗り越せよ もう心見詰めすぎづ安らがす。ここに抱き締め腕が優しや 言霊の穏やか誘われ我還(かえ)つ 己(み)も書き殴し己(み)を収めす 有り難き。君の静かせ笑み心 我を戻す時(ごと)静々流る 一輪の黄花様(よう)笑む 辛き身に笑みのみ救ふ。一途を知れと ***** ***
記憶無し 恐怖と向かふ恐ろしさ 唯(ただ) 夢に逃げたし 目の前の君に縋(すが)りて恐怖越え 清(すが)しく死の日を笑み迎えたき ***** ***
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