Rollin' Age

2005年07月31日(日)
 珠玉のベタ(上)

 「−−で起訴された−−は−−日、社長など全役員を減給とする社内処分案を固めた。−−日、正式に発表する」

 先日、紙面に掲載された500文字程度のベタ記事。探さなければ見つけられない程度の扱い。ただ、その掲載にいたるまでには紆余曲折あり、これまで自分が書いた記事の中で、もっとも印象に残るものとなっている。

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 「君からは何か現状を変えようと努力する姿勢がまったく見えなかった。君に期待したのが間違いだった」。上司から届いたメールを読んで、固まった。最後通告。なんでこんなことになっちまったんだろう。事件は山場を越えて、終息しつつある。もはや、やれることはただ一つしかなかった。最後に残ってたのが、「社内処分案」。これを「取る」意外に、何もなかった。

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 発端は一ヶ月以上前。上司と2人で取材を担当している会社が、不祥事を起こした。正確に言うと、数年前に違法行為に手を染めていたのが発覚した。「そのうち明るみにでるぞ」と言われ続けた末に、ついに「弾けた」。社会部がバンバン書き出した。企業サイドの取材を担当する経済部としても、会社がどんな対応をするのか、役員は責任をどう取るのか、6月の株主総会をどう乗り切るつもりなのか、様々なことを追いかける必要が出ていた。

 携帯に着信。「午後から東京で会見がある。今、どこにいる」。「あー、ちょっと今、取材してて手を離せないんですけど・・・」。一番分かりやすい、目に見えた最初の失態が、それだった。代わりに上司が新幹線に飛び乗り、その場で原稿を書き、対処した。俺は職場に戻って、特にやれることもなし・・・。今なら正答が分かる。「俺が行きます」と言えばよかった。

 こういう事件の際に、何が求められていて、どう動いていいのかが分からなかった。新聞に載ってた記事を見逃していたとか、更には取材に寝坊したとかいう言い逃れようもない失態も続いて、ボロボロだった。途中から、上司は俺に何も指示を出さなくなった。何回か、「何かやりましょうか」と恐る恐る尋ねたけれど、返事は「・・・」。最終的に口もきいてもらえなくなった。

 第一報から約1ヶ月、捜査が進展し、関係者が起訴されることで、事件はひとまずの決着を迎えた。そして、6月の株主総会を迎える。経営陣がどんな釈明をするのか、株主はどんな質問をするのか、一波乱あるのかないのか・・・。そこがこの事件についての、最後の懸案となった。前日の夜、上司から、当日の動き方について指示するメールが届いた。そのメールの最後に、「君に期待したのが間違いだった」と書かれていた。

 ・・・頭を抱えた。


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