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オトナの恋愛考
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2016年08月03日(水) 永遠の夏

終わりのない夏だったら嬉しいのに、
などと思っていた十代の頃が懐かしいほど年々暑い夏が苦手になってきた。

でも、ひろとの距離、文字通り物理的な距離で遠くなってしまった今年の夏は
ちょっとせつなくさみしい季節になるはずだった。


7月の初旬に約半年ぶりに彼と距離500kmの中間で再会して
その時はこれが本当に最後だと思った。

理由はお互いの移動距離の長さを実感したこと。
いくつかのアクシデントがあってスムーズに会うまでに時間がかかって
顔を見た時にはすでにお互いに疲弊していたことに気付いてしまった。

彼がどう思ったかはわからないけど、
愛車を赴任先に持ってきていたことを知らなかった私は
私に逢うために愛車を高速で故障させ
新幹線の駅とは名ばかりの何もない田舎の駅前のカフェで
3時間近くも待たされた事ですっかり疲れてしまった。
そして久しぶりに逢ったのに不機嫌な表情のひろに落胆した事で
もう彼に逢うためにわざわざ2時間もかけてくることはないかもなと思った。

しかしそう思ってしまった私自身が彼の表情を冴えないものにしてしまったとしても
良い潮時かもしれないしそれはそれで仕方がない事なのだ。

ひろは私を乗せるために、特急ではなくわざわざ愛車で高速を飛ばして来たのに
途中で調子が悪くなりかなりの出費になってしまったことなど
ポツリポツリと彼らしくもなく愚痴っぽくなり
私は私で「事故じゃなくてよかった」と一応慰めながらもなんとなくシラけてしまい
車で来るつもりならちゃんと整備しておけば良いのになどと心の中で思ってしまった。
そんな心情が交差して、感動の再会とは言えない状況になってしまったけれど
彼が予約してくれたホテルに着いてから、やっと楽しい気分が戻ってホッとした。

会員制の湖畔のリゾートホテルだった。夕食はピアノの生演奏を聴きながら。
ディナータイムを過ぎてしまっていたので簡単なパスタコースだったけど
サラダもメインデッシュもドルチェもどれもこれも手抜きなしの
選りすぐりの材料を使った美味しいお料理でやっと私は機嫌が良くなった。
お部屋も窓から広がる琵琶湖も綺麗で、それから一晩中何度も愛し合った私たちは
次の日は彦根城へ行ったり、彼の車の様子を見にAudiのディーラーに寄ってみた。

車の故障は大したことがないと知り、ひろはホッとしたのか表情が明るくなった。
それから前の日に借りたレンタカーを返す時間が迫ってきていたので
わりと早めの時間に駅まで送ってもらった。

正直、次はいつ会えるかなんていう約束もせずに
駅で別れを告げる時もそれほど悲しくも寂しくもなかったこととか
けっして仲の良いとは言えない同居人のいる我が家に着いて
なんだかホッとしたのも事実なのだ。

それから1週間ほど彼からの連絡もなく私からもしなかったが
10日ほど経って突然メッセージがきた。

「うさぎに逢いたい」

逢いたいって言われても、忙しいはずのひろが
ちょっと逢いに来れるような簡単な距離じゃないことは
琵琶湖でお互いに気づいてしまったはずだった。
そして私から逢いに行く事はもうないかな、とあの日に確信した。

でも

 8月になったらまた逢いたい。

ひろはまるで私たちが今までと同じ程度の距離にいるように
今までと同じような感覚でいるようで少し驚いた。

でも

私は年老いた愛犬を理由に家を離れる事ができない、とそう告げた。
これで私と逢う事をひろが諦めたらそれまでの関係。そう覚悟を決めた嘘を言った。


 それなら来月逢いに行って良いかな
 9月も本社に出張があるから帰りに寄るよ
 毎回東京に出張の時はうさぎに逢いに行く


今年の春までより時間もお金も労力も2倍以上かかっても
毎月でも私に逢いたいと言ってくれた彼の気持ちが素直に嬉しかった。

来週ひろは今までのように変わらず私の住む町に来てくれる。
彼が逢いに来てくれるのならいつでも私は喜んで逢うだろう。


もうそれだけで今年の夏は永遠になった。
私たちの関係が終わってしまっても今年の夏は永遠になる。






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夢うさぎ |MAIL

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