まれ日記

2013年06月23日(日) 雑色のあのお店

さすがに今日は日記を書かないといけないと思った。


昨日は午後から秘密バンドの練習があったので何年ぶりかで下北沢に行った。下北沢駅が地下鉄駅になっていてびっくりした。


練習後に品川に向かい、そこで妻子と合流。懐かしい雑色の居酒屋に行く予定になっていた。

京急で雑色駅へ。途中の京急蒲田駅も随分変わっていたし、到着した雑色駅ももう以前の面影はまったくなかったんだけど。


「お店、あいてるかなー」なんて心配しつつ雑色駅から歩いてお店に向かう。前回お盆に行った時は休業していたので。

のれんをくぐり、引き戸を開ける。「こんにちはー」って行ったら、マスターが「あれー?」って。随分驚いた様子だった。なので「ご無沙汰してますー」って言った。


今日は三人で来ましたー。みたいなことを言ったら、ママさんが来て、


「いやー会えてよかった。実は今日で店閉めるんですよ」と。


えっ。なんですか?( ´ ▽ ` )


なんですって???! Σ(゚д゚lll)


一瞬耳を疑った。
ママさんがイキサツを説明してくれた。


ママさんの親御さんが介護状態になってしまい、ママさんが店をやりながら6年間も介護生活を送っていたと。
そしてそんな生活も限界が来てママさんが体を壊してしまったと。
マスター一人で店を回すのも無理だし、バイトを雇ってまで経営するような店でもないと思ってる、っていうこととか。
再開できるかわからないけど、今後の状況次第ではまた再会できたらと思っている、など。


断腸の思いで、と言ってた。「だからお二人にはもう会えないと思ってたから、来てくれてうれしい」とも言ってくれた。「今日は最後の日だから、常連さんがみんな予約入れてくれてこれから満席になるんですよ」とマスターが言った。でも小上がりの手前側の席の予約は七時半からだから、と言って通してくれた。




なにこのマンガみたいな展開




と思わずつぶやいてしまった。




この居酒屋を知ってからもう9年になる。今回は2年ぶりに来ることができた。でもこれが最後になるなんて。そして閉店の日にたまたま来ることができるなんて。すごく残念でもあるんだけど、これは奇跡だな、とも思った。


二時間弱の短い時間だったけど、数々の懐かしいメニューを堪能。この店で過ごす最後の夜を楽しんだ。この店がなかったら今の僕らはいなかっただろう、というのは大げさでもなんでもなく真実だと思う。もう何十回通ったかわからない(おそらくは100回近い)が、いつも「いい店だな」と思うのだ。それがなくなってしまう、という実感は正直ないが喪失感はんぱない。人生の大事な一部をなくしてしまったという感覚。もっと来ていればよかったという後悔。

でも悲しみに打ちひしがれているわけではない。マスターやママさんには、またどこかで会える気がするのだ。ただの気のせい、であるとしても、その可能性が限りなく低いものであったとしても、でもそのおかげで大丈夫でいられる。そして最近、自分の周りにもいろんな変化があって、「もうあの頃とは違うんだよなあ」と思うことが増えて、そういうことに対しての耐性ができてきたのかも、と思ったり。


さようなら。ありがとう。またいつか。



さようなら。雑色で過ごした日々。懐かしいけど。でもこれで本当の意味で「卒業」です。ぼくらはこうやって、いろいろなものに別れを告げながら、前に進んでいくのです。


2013年6月22日。その日、そのお店はぼくのなかで完全に神格化され、伝説となりました。伝説はぼくのなかで、これからも生きていきます。懐かしい思い出たちとともに。


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mare

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