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いよいよ「8/2の真夏のガルデン&シュテル本気全開再登場祭〜イドロも居るヨ!」が迫って参りました。 それに先駆けて、彼らがチラリと顔を見せた17話も振り返っておきたいと。 ガルデンが登場するシーンから箇条書き。 ・ガルデンはパフの夫(候補者含む)と内通するのがお好きな様ですね ・受け取ったメモにはきっと「今夜いつもの店で」 ・と言うか重要なメモがそんな二つ折りの茶けた紙で良いのか ・シュテル垂直に飛びすぎ ・パッフィー人形欲しい(マジドーラコクピットにでも飾ってあったのか) ・ウィンディのソリッドの肩に掴まっている兵士は何がしたいのか ・怪我した兵士を介護している女性達は家族?恋人? ・「ウィンディ、ガルデンと会っていたって本当?」「はっきりと答えて!」 ・愛憎の修羅場 ・弁明するウィンディの口ぶりが「風俗店の女の子の名刺が背広のポケットから出てきて 妻に厳しく問い詰められている夫」みたい ・爆薬庫に仕掛けをしていた部下は、端役の割りに思いのほか美形 ・ギザルの部下とえらい違いだ ・リューナイトのお約束「部下は使えない奴ばかり」(もしくは裏切る) ・結局彼らは爆薬庫に何の用があったのか ・「力あるものに従うのが悪いか」 ・このウィンディ(魔物)はガルデンたんの力に惚れて部下になったという事で宜しいか ・魔物×ガルデン ・月心老けすぎ ・そして二人きりになった途端ツヤツヤになる作画 ・「嫌い、みんな嫌いよぉ!」 ・初めて見たときは此処でアデューがパッフィーを殴るのかと思った ・「パッフィーは俺が守って見せるから……!!」 ・王道勇者×姫 ・やはりラジオ版のあいつは名前と声が同じだけの赤の他人に違いないと確信 ・裂(not烈)岩十字で見事に敵を倒す爆烈丸に違和感 ・「目を覚ませウィンディ、あんたはガルデンに騙されてるんだ!」 「ウィンディ、こんな事もう止めろよ…パッフィーの気持ちも判ってやれよ!!」 ・魔物×ガルデン ・そして似た様な事をいずれサルトビに言われるとは夢にも思っていないアデュー ・というか、まるでボッタクリキャバ嬢に入れあげる同僚を諭しているみたいだ ・魔物化したソリッド、可愛くないですか ・赤い目がキュート、肩の爪が飛ぶギミックもクール ・「ウィンディなどこの世にはもう居らん…… とっくの昔に始末して、この体だけ俺様が奪ったのだ!」 ・誰だお前 ・「この体だけ」と強調しているのは「ウィンディはこんな魔物とはカケラも志を同じくしない、パッフィーが信じている通りの真の騎士でしたよ」というフォローか ・「でやああああ」→「うわあああ」 ・この間五秒(サルトビin爆烈丸) ・「偉大なるガルデン様の為に、お前にも消えて貰う!!」 ・魔物×ガルデン ・アデューが魔物に切りかかるシーン、描き下ろして欲しかった ・しかも股をぶった切られている様に見えて思わず悶絶(魔物が) ・マジドーラ×パッフィー ・何て愛憎乱れる回か とりあえずこの話はアデュパフ+ガルデン悪女スペシャルという事で宜しいか。 ――――― 昨夜(今朝)は台風吹き荒ぶ中風切嵐様とまたも素敵なお話を!!! この乾いた体にありがたく染み渡る、まるで萌え沸き出でる魔法の泉の様な熱いお話と策謀に、台風は益々その勢力を強め我が家では外に出したままだった重い椅子が倒れるという被害が出ました。 通常とは逆に西へ南へと動くそのひねくれっぷり、しつこく居座る陰険さ、連れて来る蒸し暑さなどと相俟って「まるで奴の様だ」とヒソヒソ言っておりました。 何だよ……そんなに深夜に盛り上がる類の夢と希望溢れるチャットが気に食わなかったのかよ!!(ネクストヒント:鬼畜・姫・24時間・調教) く、挫けるものか。 チャット大会も久々にまた行いたいですね……! 来週金曜(もしくは土曜)夜辺り如何でしょうか。 ――――― Starry Eyed Reality様からミラクルな頂きものを……!! 快く公開を許可して頂き更に感謝感激! いずれドンと見せびらかさせて頂きたく思います。ムッフー。
早速ですが本日の更新。 TOP絵変更。「惨劇5秒前」 目隠しをして、明らかに西瓜とは違うものを狙いながらブンブン釘バットを振り回すガルデン。しかも逃げても追いかけてくる。 それではまた後程。 ――――― 028:菜の花 いちめんのなのはな、という詩があったが。 正にそうとしか言い様の無い光景を眼前に、ガルデンは目を細めた。 個々は小さな太陽の様でいて……拡がる様は、まるで何もかもを包み込む黄金色の海。 優しい輝きは、白狼と呼ばれる強さを誇りながらも常に穏やかで、深く温かな心をもつ遠い日の仲間を―――そしてその言葉を思い出させた。 「菜の花のおひたしを作る時、だしをよく冷ましてからひたすと、色がとても綺麗に出るんですよ」 百年の間にもおひたしを作る機会はついぞ訪れなかったけれど、それでもこの花を見る度に彼の言葉を思い出したし、これからも思い出すのだろうとガルデンは思った。 幽かなる麦笛の音が、遠くで聞こえた気がした。 ――――― 「文字書きさんに100のお題」配布元:Project SIGN[ef]F様 ――――― あのエレガントな容姿に随一の実力を秘めながら、何故か家庭的な雰囲気が漂うグラチェスさんが大好きなのです。 ――――― 台風が来ております。 「ああ、アデューとガルデンの夫婦喧嘩にサルトビが巻き込まれたんだわ」とニヤニヤ出来る様な事態で済めば良いと思います。
タイからやってきた激生ムエタイアクション映画「マッハ!!!!!!!!」を観てきました。 とにかく凄かった。凄すぎた。一撃一撃が本当に痛そうで重そうなんですよ。あんなの喰らったら死ぬだろうなあと手に汗握ってしまうのですよ。 もう主人公のティンが強い強い。有り得ないほど強い。 凄いとしか言えないのがもどかしい。 そして問答無用。急所狙いまくりの殴りまくり。 棒術やトンファーでの攻撃がこんなに速く強く恐ろしく見えたのは初めてだよ。 あ……アクション映画の感想って難しいですね!!だって何処が良かったとか此処がカッコよかったとか、言葉で説明できないんだもの……!!凄いから見て下さいとしか言えないんだもの。(汗や血が飛び散り埃が舞う生々しいタイプのアクションが苦手な方にはお勧めできないかも知れませんが) なので此処からはアクション以外の話を。 見たのが吹き替え版だったのですが、ティンの声が結構若い感じ(LORのフロドの人だった筈)で、役者さんも顔も二重で目ぱっちりな童顔(?)さん、性格も「ど田舎町から仏像の為だけにはるばるバンコクにやってきた純朴で信心深い青年(ちょっと生真面目的天然ボケ入り気味。お人好しという訳ではない)」なので、その繰り出す技のえげつなさとのギャップが凄いったら。 鍛え上げられて艶光る褐色の肉体美も見事。後半でズボンの止め紐(ベルトならバックルの辺り)が映るシーンが有るのですが、スクリーン一杯に映し出された滑らかで硬そうな下腹に思わず拳を握り締めてしまいました。 褐色しなやか筋肉萌えの方(当サイトの、しかも此処を見てくださっている方の中にいらっしゃるのだろうか)はティン(や敵役サミン)の肉体だけでも見る価値ありですぞ。 後、ジョージも美味しい役所でした。 ヒロインの子は可愛いのですが、個人的には役どころと言うかキャラが……正直なところヒロインはティムで良いよと勝手に思ってしまいました。 いや……ティムの生真面目で純朴で礼儀正しくてストイックな性格とかね!容姿とかね!ダメージを受けた時の姿とかね!(特にノコギリ攻撃のアレ)あと、闘技場でコインがキラキラといっぱい降ってくるシーンとかね。先週観た「69」の、薔薇の花弁舞い落ちる中のヒロインを思い出してしまいました。(トニー・ジャーに謝れ) ストーリーに関しては、余りにシンプルで、何を書いてもネタバレになってしまいそうで恐ろしくて書けません。 ただ、予告編などで「仏像を取り戻す」だけの話だと思っていたので、エンディングにはちょっとグッときました。 これ、友達と見に行った方がより楽しめるかも知れません。 もしくはDVD出た後やTV放映された時に、皆でわいわいやりながら観るとか。 ともかく、見た後にはこう、拳に力が入ってしまったりする事請け合いの映画です。 打撃系アクション好き!!な方や格闘ゲーム(特にスト2系)好き!!な方に是非お勧め。 暑い夏こそ暑苦しく滾りまくった映画を!!! またいずれ、今度は字幕版を見に行きたいです。給料入ったらきっと行ってしまう。 後は「セイブ・ザ・ワールド」を見てみたい。キュートな親父スキーと致しましては!! ――――― 火曜日の雑記がUPされていなかった様なのでUPし直してみました。
毎日暑いですね。 そして忙しないですね。 この時期になると、アイス片手にはしゃぎながら道をゆくプール帰りの小学生達一人一人に「足元がお留守ですぞ」と言いながらスライディングしたくて堪らなくなるTALK-Gですこんばんは。 さて、今日陽炎たつ中を台所の隅に放置されていたほうれん草の如くしおしおとくたびれ果てて帰ってきますと、配達用の宛名シールをぺたりと貼られたア・ダンボール箱が居間のテーブルの上に。 家に居た母に聞きますと、なんでもそれは親父が通販で衝動買いしたやたら高い人形なのだとか。 高い人形?ついに親父もスーパードルフィーにでも手を出したかなどと思っていたのですが実際はそんな事は無く、学研・大人の科学シリーズのからくり人形だったのでした。 自分で組み立てるこのからくり人形、ふたつある内「大江戸からくり人形」(カタカタとお茶を運んでくるアレ)は組み立て所要時間は1時間半ほどという事なのですが。 帰宅後すぐ組み立て始めたにも拘らず、5時間経った今も完成には至っておりません。頑張れ親父。 しかし「科学の実験」というのは良いですな!! 言葉の響きがもう既にワクワクですな!! ガスバーナーでスチールウールを燃やしたり水素を燃やしたり勢い余って天井を焦がしたりした学生時代のあのときめきが、胸に押し寄せてきそうです。 ――――― *随分昔の話* コンコン ガチャ 「よ、ガルデン。何やってんだ、ベッドの上散らかして」 「あ、アデュー……」 「なんだ、また『エルドギア魔法科学実験セット』で遊んでたのか。 今度は何だ?……何々、『自立歩行が可能なロボット・リュー』? あー知ってる知ってる、これ、今、凄い人気だよな」 「こら、触るな!」 「何だよ、ちょっと見せてくれたって良いだろ」 「お前はがさつだから壊しそうだ。部品を何処かに失くすかも知れん」 「ガルデンだって不器用な癖にさあ……こないだだって実験セットの『簡易ワープゲート』作ろうとして爆発させてただろ」 「あっ……あれは、少し力加減が巧くいかなかっただけで……他は完璧だったのだ!!」 「後で見たらパーツがかなり余ってたって聞いたけどな」 「……誰から」 「お前の従妹から」 「ナビアーー!!!」 「怒って呼んだって来ないぜ、カッツェんとこにお呼ばれだってさっき出てったから」 「…………」 「玄関のとこで会ってさ、少し留守にするけどお前の事宜しくって」 「……余計な事を……」 「…………」 「……何をニヤニヤしている」 「いや、俺ってお前のパートナーとしてナビアにも認められてるんだなあって。 何つうのかな、家族公認、みたいな」 「たまたま其処に居たからそう言っただけだろう。 お前なら図々しくも我が家の構造にやたらと詳しいから、茶菓子をすすめる手間も省けるしな!」 「ひ、酷え言い草だな。自分でお茶淹れて自分で菓子出して自分で勝手に食えってのかよ」 「そうだ、私はやらんからな。お前は客ではない」 「そうだな、俺は客なんかじゃなくて、もっとこう、深くて甘い関係者だもんな。 こう……心も、体も……」 「……暑さで頭をやられたのか?」 「お前こそほっぺた真っ赤になってるぜ。普段は青白い癖に、こういう時はその長い耳の先っぽまで真っ赤になるんだよな、お前」 「……、………」 「わああ!!わ、判った、俺がふざけすぎた。 あ、謝るからその手のハンダごてを下ろせ!こっちに向けるな、な? そ、そうだ、なんか持ってきてやろうか!その分だとどうせお前、朝から実験セットに夢中で何も食ってないんだろ?ちょっと休憩しておやつにしようぜ、おやつ!丁度いい時間だしな!キッチン借りるぜ!!」 バタバタ、ガチャッ、バタン 「……ふん……」 コンコン、ガチャ 「お待たせー!」 「……ああ」 「何だよ、休憩しようって言ったのに、ずっと続けてたのか。 あんまり根詰めると却って巧くいかないぜ、体にも悪いしな」 「しかし、まだ半分も出来ていない……」 「そんな急がなくても、ゆっくり時間かけて楽しみながらやれば良いだろ。 ほらほら、さっさと片付ける」 「……うう……」 「そんな顔しなくても、取り上げたりなんかしないって。 傷付くよなあ、恋人が作ったおやつよりも科学実験セットの方が良いなんて……」 「そ、そういう訳では……」 「そうだよな、やっぱり俺の作ったおやつの方が良いよな! ガルデンならそう言ってくれると思ったぜ!」 「…………」 「溜息なんかついたって駄目だぜ、ちゃんと食べろよ。 ……ベッドじゃ手狭かな、テーブルの方行くか?」 「……いい。このまま此処で食べる」 「おう、じゃあとりあえずその科学セットはこっちに置いとくからな」 カチャカチャ 「これ、サンドイッチな。中身はハムとチーズときゅうり、卵焼きの四つ。 一口サイズだから、お前でも気軽につまめるだろ? で、こっちがフルーツの盛り合わせと、飲み物は紅茶な。夏バテにも良いらしいからな。 それから、棚に入ってたのをちょいと失敬してきたアップルパイを温めて、上にバニラアイスをこう、のっけてとろかして……どうだよこれ、溶け出したバターと林檎とアイスクリームが皿の上で綺麗に層になってるだろ?!」 「見れば判る」 「……そうだな」 「……お前の分は?」 「こんなに沢山、食べきれないだろお前。いっしょに食うから大丈夫」 「お前には足りないのでは?」 「や、作ってる間に結構つまみ食いしちまったからさ。 気にしないで良いよ。 それより、早く食べようぜ。どれが良い?」 「……言っておくが、自分で食べられるからな。 お前の手は借りんからな」 「ちぇー」 「……ガルデン、口元にクリームついてる」 「見え透いた嘘を言いながら顔を近づけてくるな。 お前など鼻の頭についているではないか」 「え、マジで?!」 「嘘だ」 「……………」 「ああ……何か腹いっぱいになったら……眠くなってきたな……」 「寝るならそちらのソファで寝ろ。 ……ベッドに入ってくるな!」 「あー、眠い眠い……むにゃむにゃ」 「目をぎらぎらさせながら何を言っているのだ貴様は!」 「いや、だってさあ……お前、放っといたらまたあの実験セットに没頭しちまいそうだし」 「それの何処が悪い……、…… ! ど、何処を触っている!!」 「やっぱり俺は金属板やネジよりも、お前の肌の方が好きだな」 「そんな事は訊いておらん! え、ええい止めんか!離せ!!誰か帰ってきたらどうするつもりだ!?」 「誰も帰ってこないって。ナビアが言ってたぜ、皆暫く留守にしてるんだろ。 だから俺にお前の事『宜しく』って言ったんだろう」 「……〜〜〜」 「また真っ赤になってるぜ。 気難しいハイエルフ連中の中で、いっとう判り易いよな、お前って」 「………、……」 「そんな固くならなくても。俺が怖い事しないの知ってるだろ。 な。いつもと一緒だって」 「……。………」 「ほら、ちゃんとこっち向いてみろよ……」 ・ ・ ・ ……かち、かちゃ、…パチン 「……ん……何やってんだ、ガルデン」 「……起こしてしまったか」 「……何だよ、また実験セットやってたのか。 隣に愛しい男が寝てるってのに、つれないなあ」 カチ、カチ、パキン 「なあ……それってそんなに良いもんか?」 「…………」 「つうかさ、お前が作ってるのって、『リュー』シリーズん中でも組み立てが結構難しいやつじゃなかったっけ?ギミックが結構沢山あって、回路系統がややこしくてさ」 「…………」 「手先の器用なサルトビやヒッテルにも手伝って貰ったら、もっと楽に組み上がるんじゃ……」 カチ…… 「……駄目なのだ、これは……」 「え?」 「これだけは、私ひとりで組み立てないと」 「……なんで」 「そんな気分なのだ。本当は私は余り『リュー』には興味は無かった。 けれど、これだけは私が自分だけの力で組み立てないといけない気がするのだ」 ……ぱき、ぱき、カチャ ――――― そうして出来上がったのがシュテルだとか、そんな話。 主題がボケてしまっていますが。ああ。 以前何処かで書いた気がしますが、リューというものが本当は「神様」がホビーとして作ったプラモデルみたいなもので、それを人間たちが勝手に有り難がっている、とか、そんなだと良いなあと思いました。 もしくは病気がちでいつもベッドの上のハイエルフが、自由への憧れや自分の大事なものを守って欲しいと言う思いを込めて作った人形が魂を得た、みたいな。大映の大魔神ですか。 後、ガルデンの一族とナビアの一族に何か血縁みたいなのが有っても良いなあと妄想しています。 特殊能力を持つエルフ萌え。
幽世(かくりよ)に棲まう魂が、嘗て暮らしていた現世(うつしよ)に還ってくる事が有る。 それも儀式などで強制的に呼び戻されるのでなく、自主的にお里帰りする事が、だ。 ……言ってしまえば何のことは無い、お盆だとかハロウィンだとか、そういったイベントに合わせてひょいと愛しい子らや世を見に顔を出すだけの話であるが。 「此処百年のこの国は、文化も宗教も浅く広く交じり合い薄まって、しかしその根本の『タマシイへの漠然とした畏怖の念』は、昔のまま根深く人々の心に残ってある。 厳粛な宗教国家に比して、イージーでフランク、且つポエティックな神秘思想が息づく、この幽世の者にとっては居心地の良い雰囲気が蔓延しているのだ。 いや、実に結構、結構」 幾つかのエリアに分かれた幽世の、中でも最も混沌とした、ちょいと一筋縄ではいかぬ変わりモノどもが暮らす領域。 其処を統べる銀髪の君主は、神秘な世界に余りに似合わぬド真っ赤なソファにどんと掛け、畏れ多くも「上」から賜った神託台に行儀悪くも足を投げ出し、大人っぽいと言うには余りにやんちゃ、子供じみたと言うには余りにワルい笑みを浮かべてそう言った。 隣に侍る、ゆるく波打つ黒髪と凛とした目が美しい聖女は、くすりとたおやかに笑ってこう続ける。 「昔からこの国は剣神・六柱神のみならず、八百万の神々が集い群れるというところ。 他国の宗教観を取り入れ、自らのものにしてしまうのにも、さしたる抵抗は無かったのでしょう」 二人が指差し「この国」と言うは、眼下に広がる大きな湖。 「神々のレンズ」と呼ばれるソレには、今日も現世のあちこちの様子が、ほわんほわんと現れては消えしている。 その中に、件の「この国」の光景が混じっていた。 ミストから電気を取り出す技術の開発と産業革命を経て、ヒトと電化製品と車がごった返す街。 昔ながらの技術と現代の工具を使ってやぐらを組んでいる田舎の広場、水着の姐ちゃんが眩しい海やプール。 それらのどれもに、レンズを通しても伝わる様な熱気が立ち込めていて。 「賑やかな事だ」 君主は目を細め、さっと手を振ってなにがしかの術を用い、レンズ全体で「この国」を映し出した。 「太陽は一年のうち最も大地に近く、その強すぎる光にもこの国のヒトは図太く恵みを見出し、男女の別無くのべつ幕無しに恋よ遊びよと浮かれている。 この光景を見ているとな、短い生涯に己がゲノムを残さんと、割れんばかりに喧しく鳴くセミ共を思い出してな。至極心が浮き立つのだ。 それに、光が濃い分闇も濃いしな。盆とやらもある。それにかこつけた祭もあるし、花火も上がる」 そうでなくとも幽世のモノには、先程言った通り過ごし易い国であるのだし。 いまわの際にぱーっと一花咲かせて…咲かせ過ぎて「問題児」と判じられ此処に放り込まれた型破り上等の連中にとっては、ちょいとはじけるひと夏のヴァカンスに最適という訳だ。 「もう既に、『帰省』願いも随分受理しましたね」 言ってみれば「出国手続き」の様なものだが、それを受け付けた際の大変な混雑や騒動を思い出したのか、聖女はくすくすと笑って君主を見た。黙っていると凛として近付き難い雰囲気だが、笑うと中々どうして、ウブな者ならどきりとくるほど可愛らしくあどけない。 「彼ら彼女らの喜びようと言ったら……受入先の現世に住まう者と、それを統べる者は大変でしょうけれど」 「自らの手に負えぬ、と我等を此処に放り込んでおいて、大変も何も無いものだ。 『生きる』悦びで伸ばした羽に、打たれて失墜せぬ様せいぜい気張っているが良いさ。 そうでなくとも今の現世には、彼奴等『神々』の権威と後光は通用し辛くなっているのだから」 羽は伸ばせる、彼奴等には吠え面かかせられる、この領域の面倒を見ている私やお前や硝子の目の女神も問題児どもの世話から解放されて、全く夏と言うのはまことに結構なもの、と、ソファの上で猫の様に伸びをして。 「……時に其処の黒い騎士よ、お前は現世には戻らんのか」 ふいと湖の脇に視線と言葉を投げかける。 其処でもう長い間ずっと三角座りをして湖を見ていた黒い機械の巨人は、暫く黙って固まっていたが。 「そうやっていつも鬱々としているお前も、他の者と同じく浮かれて里帰りしてくれれば、私の夏は更に有意義なものとなるのだがな」 ここまで言われて漸く、 「己には帰る場所など在りませぬ」 陰々滅々とした声で返事をした。 はあ、と溜息をつく君主。 「お前、何を拗ねている。 此方に来た時から鬱陶しい奴だとは思っていたが、よもや夏の眩しさを目の当たりにしてまでそういじけられるとは思わなんだ。さしもの私もうんざりとしてくるわ」 「いじけてなどおりませぬ」 「嘘をつくな。この私にそんな虚言をほざくのは、この領域では貴様ぐらいのものよ。 ……大体なんだ、日がな一日湖を眺め、望郷の思いなど募らせるなら兎も角うじうじと項垂れおって。私のを見習え、こいつはこの幽世でも実に楽しげに『生』を謳歌しているではないか」 辛辣に言う彼の背後には、これまた黒くしかもやたら滅多にトゲトゲとした機械の巨人が恭しく侍り、手にした(ヒトにとっては)大きな扇をゆったりと煽いで、彼へと涼しい風を送っている。 ……そんなものが無くとも此処は常に、すまう者それぞれが快いと感じる状態に保たれているのだが、まあ雰囲気というやつなのだろう。トゲトゲの巨人はこの状態に、確かに悦に入り満足しきっている様子だった。 見習えと言われた方はそれをちらりと見、溜息をつかんばかりの白けた声で 「孤独や無力感を忘れたモノは幸せですなあ……」 と呟いた。 ひくり、と頬を引き攣らせた君主が何処からとも無く禍々しい力を放つ魔槍を手に召喚し、それに気付いたトゲトゲが慌てて止めようとしたりしているのを他所に、聖女は笑みをおさめて首を傾げる。 「どうして貴方に『帰る場所』が無いのですか」 「…………」 何処までも深い色の瞳に見つめられ、騎士は再び沈黙し、湖に視線をやった。 映し出されるとりどりの景色。 「この国の何処かに、貴方の大切なひとが今も暮らしているのでしょう?」 騎士の傍に歩み寄った聖女は、そのましろい衣を揺らして水面を指す。 もう聞きたくないとばかりに騎士は顔を背けるが、聖女は構わず言葉を続けた。 「貴方には見えているのでしょう、それが雑踏の中でも夜闇の中でも」 「止めて下さい……」 「たったひとりの、貴方の大切なひとが」 「……止めて下さい!!」 苛立ちと共に爆発的に膨れ上がった「力」を向けられ、しかし聖女は一歩も退かずその目も逸らさず立っている。 ……「力」はいつの間にやら聖女の右に立った君主の手に絡め取られ、彼に食われて消えた。 「馬鹿だ、本当に貴様は馬鹿だ。しかもガキだ。どうしようもない」 呆れきって君主は言う。 「『闇黒の君主』と『沈黙の聖女』に刃向かう奴など、聞いた事も見た事も無いわ」 畏れ多いとかそういう理由からではなく、全くもって赤子が大の大人に挑む様なものだからと、この幽世ではまず最初に誰もが思い知る揺るがない理(ことわり)。 ……それに真正面から反駁した騎士は、項垂れて拳を握る。 「……そうです、己は馬鹿です、どうしようもない馬鹿です。 無力で、何も出来なくて……それだからあの方を残してこの幽世に…… だのに、どうして今更のこのこと顔を出したりなど……」 「要約すると『自分の都合でかなり長い間会っていないから顔をあわせ辛い』という事か。 判るぞその気持ちは。ランパブやピンサロなぞでも、馴染みであればある程、一ヶ月足が遠のいた程度で行き辛くなるものなあ」 「下品な例えをしないで下さいッッ!!!」 長くなりそうなモノローグ(セピア色の回想シーンつき)をばっさり切り落とした君主に、騎士はブルブル震えながら握り拳を固めていたが。 「……けれど、会いたくない訳ではないのでしょう。 この湖からいつも心配そうに『あの方』の様子を見ているくらいなのですから」 聖女に言われ、またかくりと項垂れる。 「……あの方は毎日幸福そうに暮らしておられます。 時折寂しそうな顔もされますが……それでも穏やかに、血と剣戟から離れてゆったりと…… ……己は所詮、戦以外の役には立たぬモノです。 今の平和な現世には必要有りませぬ。今の幸せそうなあの方にも……」 「貴様はマイナス何ルクスだ。湿っぽくてカビも生えるわ」 嫌そうに眉を寄せる君主を制し、聖女は騎士に、まるで愛し子のお遊戯を見る母親の如く微笑んだ。 「必要でなければ、会いに行ってはいけないのでしょうか」 「………」 「余り難しく考えず、その『幸せそう』な姿を見に行くだけでも構わないではありませんか。 急に顔をあわせるのが辛いと言うのでしたら、こうして……」 その細い腕をゆるりと挙げる聖女。瞬間、光で出来た幾つもの魔術文字が、リボンの様に彼女を取り巻く。 現世では既に失われて久しい、力ある記号の意味ある羅列…… 光の帯は一旦解けると、彼女が差し伸べた手の先、黒い騎士の巨体をふわりと囲った。 「こ、これは……」 「貴方の魂だけを純粋に取り出す術です。……この幽世において必要上纏っている『物質(マテリアル)の意識』を脱がせる術と言った方が良いかも知れませんね」 狼狽える騎士に、聖女は何でも無い事の様に言う。 「貴方はこれから正真正銘の『タマシイ』のみの存在になります。 現世では誰にも貴方の姿は見えません。勿論貴方の大事なひとにも」 「…………」 「何もかもを見通せても絶望的な隔たりが存在するこの湖からだけでなく…… 『あの方』と同じ世界で同じものを見、彼が本当に幸せなのかどうか、感じてきなさい。 そしてそれが余りに辛いのなら、すぐに戻ってきなさい。 『シュテル』」 柔らかな声と共に、真名を呼ばれた騎士の体から赤い輝きが染み出してくる。 それは掌に載るほどの光球となり、中空にふわりと浮かんだ。 同時に騎士の体は、輝きと同じ色の目の光と、五体の力を失う。 「お前は闇の他に、無機物や雷と相性が良い」 君主が光球を突付きながら言った。 「今の現世に溢れる電化製品に宿って魔力を吸収するなりすれば、そう魂を磨り減らすことは無いであろう」 ある程度ならば宿ったモノを操る事も出来るし、と続けて彼は、ぴしりと光球を弾く。 「早く行け」 その、ぶっきらぼうな言葉と聖女の穏やかな瞳に後押しされたのか、赤い光球は暫しうろうろと彷徨った挙句、結局現世への道である湖へちょぽんと飛び込んだ。 ……融ける様に消えるそれを眺め、 「沈黙の聖女が秘技中の秘技たる解放の言霊を使うか」 君主が肩を竦める。 「随分甘やかすものだ」 「私にとって彼は……彼ら機械の巨人は、全て命を分けあった子供の様なものです。 ……それに、大事なひとを待つ辛さと待たせる苦しさは、判っているつもりですから」 「ふん、我侭で後ろ向きで手の掛かる子を持つと大変だな」 君主の皮肉にさえ、騎士へのものと変わらぬ眼差しを向ける聖女。 彼女に「貴方こそ何故、他の者に求める様な『出領許可申請』をさせず彼を行かせたのですか」と問われた君主は、 「……奴の主は私にとっても代わりの無い者だ、奴だけがあれを好いている訳ではないと言うに」 それだけ呟き、拗ねた様に唇尖らせ足元の石を蹴って、聖女を「貴方が一番手の掛かる子供ですね」と笑わせた。 ――――― 本当は昨日の「お題27・電光掲示板」の前半部分だったのですが、主題以外の部分が長すぎるという事でカット。 別にこうしてUPしてみました。(貧乏性) ガルデン(漫画)やソフィーは、その生き様や能力が余りに特殊すぎる為、この世での生を終えた後は何か隔離スペースに放りこまれていそうな気が。 で、其処の支配者になるのですきっと。 そしてガルソフィ。(何てカップリングだ) ガルデン(漫画版)はソフィーとも結構相性がいいのではないかと思うのですが如何か。いや、露出しているメディアが違っている時点で接点ゼロの二人ではありますが。 しかしこう、「全てのリューの上に君臨し、そのエネルギーを束ねる能力を持つ闇の君主」と「リューに生命を与え、また奪う力を持つ沈黙の聖女」という組み合わせは非常に麗しいのではないかと。 これに「リューの声を聞き、力を与える事が出来る救世の女神」(ナビア)が加われば大変な事に。 この三人は自分の血筋や能力の所為で色々と辛い思いや苦労をした面まで一緒なので、案外気が合うのではないかと勝手に思っています。 「ガルデン様!」「ソフィー様!」「ナビア様!」とか呼ぶ連中がもれなく一人ずつついてくる辺りも同じだしね!(イドロ・ミズキ・旅の僧。全員僧侶だ) ――――― NHKの動物番組を見ていて、「朝子供ラッコが目を覚ますと、いつも傍にいたお母さんの姿がありません」というシーンが。 きゅーきゅー鳴きながら必死でお母さんを探す仔ラッコの姿に、思わず小さい頃のガルデンを見てしまい、不肖TALK-G思わず目頭が熱くなってしまいました。ああ。(すごいバカ) 個人的には、TV版のガルデンのお母さんは凄い強い上に美しく母性愛に溢れた典型的な「グレートマザー」で(それはもう、ガルデンにマザコンの気があっても仕方ないくらい)、漫画版のガルママは自分の息子を恋愛の対称にしてしまう様なひとであったらいいなあと何となく考えています。アグリピーナ的(またの名をTVイドロ的)なひとでも良いですが……!! TV版は愛情一杯に育てられたからあんなので、漫画版は健全とは言えない家庭環境におかれていたからあんなんなのだとか。 TVのガルデンは、ラジオ版などで補完してみるに結局、自分の血の全てを受け入れた様ですが(「俺は邪竜族とアースティアのハーフだ、その二つの世界を魔族などに奪われたくないだけだ」とかなんとか言っているシーンがあるのです……郷土愛?)、漫画版のガルデンは両親の血(エルフと邪竜族)をも否定しているのがなんとも興味深いです。 とりあえずTVのガルママはホットケーキの匂い、漫画版は香水とアルコールの匂いという事で…… ――――― 金曜日の更新、結局出来なくて申し訳ありませんでした。ウウー。
生きているものの世界たる現世と、そうでないものの領域たる幽世。 其処に流れる時間はそれぞれ異なっている。 幽世から現世へと魂のみの存在となって舞い戻ったシュテルは、その「時間差」に言葉を失った。 幾ら幽世から現世の様子を見られるといっても、己が感覚で量り得るものには限界がある。 この空気や音、広がる光景などを、仲介無しで感じて初めて知るものもあるのだ。 昔は無かった高層建築物、大地を覆う化学物質の皮膜、其処を這い回る沢山の機械の箱や馬、それより更に多い人、人、人。溢れる騒音と熱気。 早くも疲労を覚えたシュテルは、しかしその混雑の中に昔と変わらぬものを見つけ、無い筈の目を見開いた。 強すぎる陽光を避け、硝子と金属で出来た四角いビルの影の中で、ぼうと立っている青年。 (……ガルデン様……) 急にこの世とあの世に別たれ、以来、彼を置き去りにしてしまった己が力不足を恥じ、悔やんで、それゆえ他の連中がする様に気軽に「会いに行く」事も出来ず。 それでも想いを断ち切れず、ただただ幽世から見守っていた、シュテルの大事な主。 ……実に実に久し振りにこの「目」で間近に見た彼は、相変わらず美しく、涼やかで、そして何処か寂しげだった。 027:電光掲示板 (…………) シュテルは一瞬躊躇ってから、その傍にふわふわと近付く。 ガルデンは気付く様子も無い……現世の者には、今の魂だけであるシュテルは見えないのだから、当たり前だが。 安堵した様な、寂しい様な、複雑な心境になりながら、そっとその表情を伺ってみる…… ……その翠の目はしんと深く静まり、あくまで穏やかな、しかし曖昧な光を宿している。 喜怒哀楽がはっきりとしていた頃……共に在った頃からすれば、酷く大人びた様な眼差し。 ……数万年を生きた竜のそれに似ていた。 シュテルを失った後、ガルデンはそれまでの長い人生と同じく、様々な動乱や苦難に巻き込まれ続けた。 しかしそのどれもを、彼は自分ひとりの力で解決して見せた―――――そうせざるを得なかった。 彼はいつもひとりだった。強すぎる力と近付き難い雰囲気、付いて回る「闇の騎士」「魔法剣士」の名がそうさせたのだろうか。 ……いや、その力や字(あざな)が他者から忘れられても、彼はひとりでい続けた。 彼が頼りにする程近しい人物というのは、長い長い時間の中でも殆ど現れなかった。 たまに現れても、皆ガルデンより先に死んだ。 やがて訪れた平和な時代。 リューも剣も魔法も無い「今」のはじまり。 戦から解放され、平凡な日常に身を移したこの頃から彼は、こんな表情をする様になった。 激しい怒りも悲しみも、苦悩も無い。 ただ穏やかで、少し寂しそうな、曖昧な表情。 それは幽世のシュテルにしてみれば、けして悪い様には見えなかった。 寧ろ嘗ての、苦悩や悲しみ、怒りに溺れそうな姿に比べれば、幸福そうにすら見えた。 見えていた。 今此処にシュテルが在る理由だって、その幸福な顔見たさに拠るものだった。 が。 (……………) こうして間近に主を見詰め、シュテルは (そういえばこんな顔をされるようになって以来、ガルデン様は余り笑っていらっしゃらない) と唐突に気付いた。 昔の彼はよく怒り、同時によく笑うひとだった。 それより少し後の彼は、苦悩と悲しみを胸に宿しながらも、時折はっとする様な微笑みを浮かべる事があった。 その笑みは、紛れも例外も無く幸せそうな笑みだった。 今の彼は怒りも嘆きも苦悩も見せず、代わりに笑う事も無い。 笑ってもそれはゆるく曖昧な笑みで、本当の「笑顔」とはどうにも認識し難かったのだ。 ガルデンはふわふわ彷徨うシュテルにも相変わらず気付かず、金属の壁を背に、忙しく行き交う人々の中ただ空を見ている。 ……正確には、この辺りで空に一番近い、向かいのビルの最上階を見ている。 夏の太陽を、張り巡らされたガラスでいっそ涼しげに見えるほど綺麗に散らしている其処には、横に長い大きな電光掲示板が設置してある。 此処からなら眩しさや暗さに影響されず、くっきり文字が読み取れる掲示板だ。 日々の事件や出来事、お知らせ、株価、天気予報に星座別の今日の運勢に防犯の呼びかけなどなど、引っ切り無しにするすると流れてきては消えてゆく。 それをただ、彼は曖昧な表情でぼうと飽きもせず見詰めている。 幽世から眺めていただけならば、これを「穏やかで平和な彼の日常」のひとつとして捉え、「自分が居らずとも彼の方は幸せでいらっしゃる」と思えたのだろうが。 ……シュテルが彼を見つけてからもう随分時間が経った。 が、彼はいっかな其処から動こうとはしない。 周りの待ち合わせと思しき人々は、次々約束した相手を得て雑踏に紛れていくと言うのに、彼だけが其処で変わらず佇んでいる。 何故かは知らない。誰かを待っているのかもしれないが、確たる事は判らない。 ……幽世からただ「彼は幸福だ」という想像越しに見ていただけでは、詳しい事情など判る筈も無かった。 (わたしは何をしに来たのだろう―――――) シュテルは主と共に電光掲示板を眺めながら思った。 (わたしはただ、この方の幸せな顔を見に来ただけなのに) けれど、主はシュテルが思っていたほど幸せそうには見えなかった。 色んな幸せの形があるのだから、不幸だと断言は出来ないが。 幸せだと信じる事も出来なかった。 今の主には、シュテルの知っている「幸せな笑顔」が無い――――― 「―――――」 ガルデンは、掲示板に流れる十数回目の天気予報を黙読しながら、周囲に散らばる日差しと影で今が何時かを把握する。此処で待ち合わせしようと「相手」に言われた約束の時間から、既に1時間半過ぎていた。 ……何か有ったのかも知れないし、何も無かったのかも知れない。すっぽかされたのかも知れない。 約束にも待つのにもその結果にも慣れているから、ただただぼうと待つ。 どんな事態も予想できるから、期待も心配もせずに、待ち続ける。 だって、他にする事が無い。 今の平和な世界には、自分に出来る事は沢山あったけれど、しないといけない事は余り無かった。 それが良い事なのか如何なのかは判らない。悲しむべきか喜ぶべきかも判らない。 ……それが良い事なのか如何かは判らない。 <12星座別・今日の運勢> 掲示板に流れてきた文字列。これももう暗唱出来るほど繰り返し見ている。 今の時代で言う自分の星座は、健康運も金運も恋愛運も一番低い数値だった。 曰く、この星座のひとは今日から暫く絶不調、スランプから抜け出すまで相当掛かる、とか…… ラッキーアイテムは携帯電話、けど自分は携帯を持っていない…… 「あ……」 表示されたその結果に、ガルデンは思わず小さな声を上げた。 最下位だった数値全てが最高になっている。 ラッキーポイントは…… 「銀髪と翠の目……?」 先程まで表示していたのと全く違う上、何だか余りにピンポイントなアドバイスに、その翠の目を瞬くガルデン。 予想も出来ない事というのは久し振りで、どう反応したら良いのか判らない。 星詠みも居ない時代のこんな占い、如何でも良い事に違いないのに…… でも。 「……そんな無理矢理に褒めなくても」 流れるメッセージを見ている内に、ガルデンはつい呟いてしまった。 曰く、この星座のひとは元々優れているのに加え運勢も好調、特に銀髪に翠の目を持つひとは何をやっても巧くいく。 ……銀髪に翠の目なんて、まさか自分の事では無いのだろうけど、それでも何だかくすぐったい気分になって。 気が付けば、何につけても自分を褒めてくれた彼の事を思い出していた。 大きくて強面で、強くて厳しくて合理主義者で何でも出来て。 なのにどうしてか自分には、とても甘くて優しくて不器用で口下手だった彼――― (…………) 俯き、他人には判らない程小さな笑いを浮かべたガルデンに、シュテルはほうと見惚れた。 それはシュテルの切望する「幸せそうな笑み」と違い、どう見ても「おかしなものを見たり思い出したりした為の発作的な笑い」だったが、……しかも、やはり何処か寂しそうではあったが、正真正銘、感情のこもった笑顔に違いなかった。 もう長い間見ていなかったその表情の愛らしい事きれいな事。 「魂」である事を利用して電光掲示板のロムに侵入し、内容を改ざんした苦労もこれで報われる。 報われると言うかお釣りがくるくらいだ。 ……最初は、こんな平和な世界に戦の道具である自分の居場所は無いと思っていたけれど。 (ガルデン様が笑って下さるのなら、このまま道化になってしまおうか) 今ではこんな考えすら浮かぶ。 舞い上がりすぎだと思うくらい、もっとこの方の笑顔を見たい、という気持ちが沸々と込み上げてくる。 無力な自分でも、……あの時あなたを置き去りにしてしまった自分でも、出来る事ならば。 掲示板へ視線を戻す主の、その翠の瞳に滲む笑いを正に魂に焼き付けながら、シュテルは願った。 今、彼は久しく無かった程切実で、しかも幸せな気持ちだった。 ――――― 「文字書きさんに100のお題」配布元:Project SIGN[ef]F様 ――――― 電化製品など電気を使うものの類には、ひょいとそこらの魂が入り込んだりするんじゃないかというイメージが在ります。 テレビとかビデオとか。 ――――― さて、最下位の星座が最高位に改ざんされたという事は、代わりに別の星座が最下位になってしまうという事だが。 「ああああ、ついてねえ、俺……」 暑い中、呻きながら待ち合わせ場所へと必死に走る少年は、ふっと視界に入った掲示板で自分の星座が最下位になっているのを見、思わず足を止めて汗だくの顔を引き攣らせた。 「げっ……ラッキーアイテムは携帯電話って、今持ってねえよ」 今日は朝からミスばっかで事故にもあいかけるし携帯は忘れるし、挙句一目惚れした憧れの人を遂にデートに誘ったってのに、肝心の待ち合わせに大遅刻と来た。 一時間半も遅れて、普通なら怒って帰っちまっているだろう。 …でも、だからってそのまますっぽかす訳には行かない。 待つ辛さも待たせる辛さも一応知ってるつもりだから。 「ちくしょう、占いなんか信じるか」 少年は一声吼えて、再び走り出す。 今日は何としてもあのぼうっとした人を笑わせてやるって決めてんだから。 待ち合わせのビルの前まで、もう少し。 ……其処に辿り着いた直後から、不可解な現象の数々に襲われる事になるなど知らず、彼は赤い髪を夏の熱風に乱しながら駆けていった。
今日の9時から、TVで「となりのトトロ」放映するじゃないですか。 あの話の中で、サツキとメイの姉妹がトトロと一緒に木の上にのぼって、笛(?)を吹くシーンがあるじゃないですか。 私、あのシーン、サツキとメイがシンナー吸ってるんだと本気で勘違いしていたんですよ。 シンナー吸ってラリってて、それで空飛んだり植物育てたりの妄想に耽っているんだと。 本気で長い間そう信じていました。 メルヒェンに退廃的な幼い子供を描く、宮崎監督ってば凄ェ天才だァとドキドキしたものでした。 それを勘違いだと気付く事が大人になるという事ならば、私は大人になんてなりたくない。 などとシリアスにうそぶいて「青臭い若者」らしさを出そうと躍起のTALK-Gですこんばんは。 ピンク映画には水曜日のレディースデイは適用されないのかと日頃歯をギリギリ軋らせている奴が何を言っているのか。 あの映画は妙にセンチメンタルになってしまって困りますね。 いや、ピンク映画ではなく。 因みに「トトロ」の個人的なお勧めポイントは「ちらりと途中で出てくる郵便配達人のお兄さん」です。 あのお兄さんの声あててるの、西村智博(現・朋絋)さんなんですぜ。 それでは、また後程。
「アデューと出会うてからロクな事無かっつぉ」 「ばってん楽しかやろ? 退屈なやつらに、俺達の笑い声ば聞かせてやるったい!」 予告編より、ケン→アデュー(軟派)、アダマ→ガルデン(硬派)。 39話、洞窟を出た後の「私は邪竜族の血を引いているのだぞ」「そんなの関係ない」の辺りに被せてみたら違和感なさげでビックリ。 こんばんは、TALK-Gです。 と言う訳で、昨日夜篠嬢と一緒に「69」見てきました。 せ、青春…!! ほろ苦さは原作よりかなり抑え目、グッと来る美味しいシーンは大増量の明るくお馬鹿で不健全に健康的な痛快青春映画でした…!! 夏休みにピッタリ。良い、良いぞォ!!(落ち着いて!) 友達同士やカップルで行くのに最適かと。 実際、映画館は高校生っぽい女の子でいっぱいだった…! 俳優陣が豪華なのが一番の理由でしょうが。 私は原作の小説を読んでから観たのですが、別に読んでいなくてもバッチリ楽しめると思います。 ただ読んでおけば、細かい60年代ネタが判り易いかもです。 とりあえず原作より更にお馬鹿で爽快な性格のケンと、美味しいとこ取りのアダマ、頼りになるケンの親父、かわい(そう)過ぎる番長にグラグラ来ました。 公式サイト載っているストーリーや写真、配信されている予告編の雰囲気で好みかどうか選んで間違いないかと。 細かいやり取りや小ネタまで確かな歯応えの個人的超お勧め映画です。 公式サイトはこちら。(音が出ますので注意) 次はタイからやってきたノンCG&ノンワイヤー・激生ムエタイアクション「マッハ!!!!!!!!」を見たい。 何がグッとくるかって、スタントマンもCGもワイヤーアクションも無しで凄まじいアクションを見せてくれるムエタイ使いの主人公の目的が、村から盗まれた仏像を取り返すことというのがもう堪らない!!!仏像ですぜ!!?流石仏教大国タイ!! 公式サイト(音が出るので注意)もイイカンジだ!!! むやみやたらに熱い感じにドキドキです。 そして褐色の肉体美……!!!(そこかよ) きっと見に行くんだ……!!とクリスマス前の子供の様に目を輝かせながら予告編を見、固く決意しましたとさ!! ……原稿?ああ……うん……。 ――――― 夜篠嬢とシュテガル本の話を詰めていたら、当サイトのシュテルは現実で言うなら東南アジア系の顔立ちじゃないかという説にいきあたった。 ビックリした。
今日は土用の丑の日ですね。 ――――― *大学教授ガルデン×女子高生パティで* 「土用の丑の日って、土曜日にあるんじゃないの?」 夏休みに入ったという事でいつにも増して元気なパティが、TVに向かって驚いた様な声を出す。 物憂げに経済紙を見ていた明らかに夏バテ気味のガルデンが、つられて手元から視線を移してみると。 お昼一番のニュースでか、土用の鰻を求めごったがえす老舗の和食店の内が映し出されていた。 「曜日の土曜と土旺用事の土用は違うだろう」 見ているだけであの脂っこく濃厚な匂いと味、更に込む店内の人いきれを思い出して、冴えない顔を益々ぐったりと暗くするガルデン。 覇気の無い声で言うとパティは頬を膨らまし、 「それは判ってるけど。でも去年も一昨年も、土曜日に丑の日があったんだもん」 其処にぽつりと、傍らのキッチンから低い男の声。 「昨年の土用の丑の日は7月27日、日曜日で御座いましたが……」 ……つい言ってしまった後でパティの視線に気付いたらしい。男は取り成す様に続ける。 「お、一昨年は7月20日、正真正銘土曜日で御座いました」 「……良いわよシュテル、気を遣ってくれなくて」 「は……差し出た真似、失礼致しました」 シュテルと呼ばれた偉丈夫は、でかい図体を縮めて詫びる。 今日シュテルがやってきたのには二つの理由があった。 一つは先日のガルデンの「実家」における事件の事後処理の報告。 もう一つは…… 「もう、そんな事は良いってば。それより、あれは?」 代名詞だらけの質問にシュテルははいと頷き、何かを盆に載せてキッチンから出てくる。 「わ、待ってました」 「何だ?何か頼んでいたのか」 テーブルにつき嬉しそうなパティと不思議そうなガルデンの前に、迅速且つスマートに並べられたのは藻塩の入った小皿と箸、そして…… 「……棒寿司?」 そう、どちらにも丁度良い厚みをもって切られた棒寿司だった。 四角いかわらけの皿に、ネタの魚の白さが映える。 それは生魚の透き通る様な白ではなく、焼かれた身の純然たる色だった。 ごく軽くついた焦げ目もまた、皿と同様ネタの色を引き立たせる。 「白焼き」とはよく言ったものだ。 視線を向けると、配膳係は、皿と一緒に盆から下ろした柚子の、ごくごく表面だけをやはりごくごく軽い力でおろしながら応えた。 「鱧(はも)の棒寿司です」 パティを見れば、照れ笑いを浮かべながらも待ち遠しそうな表情は隠そうともせず、 「シュテルがね、この時期の鱧は凄く美味しいからって」 「鱧は梅雨の水を飲んで旨くなりますから」 彼女の言葉に続けながら、瑞々しい柚子の皮を寿司の上にこれもごく軽く散らせ、更に目の前で櫛切りにした酢橘(すだち)を添えた。 夏の暑いさなか、冷房の効いた室内に居るとは言え(もしくは居るからこそ)、パティと違って元々薄い食欲が絶賛減退中のガルデンだったが、この柑橘類の涼しげで爽やかな香りには何かそそられるものが有ったらしい。 パティに促されるまま酢橘を搾り、小皿の藻塩をちょいと突付く様にしてから、その白い棒寿司を口に運んだ。 「……ああ」 表面はかりっと中はふんわり柔らかく、鱧と柑橘、藻塩の甘(うま)みを、見た目からは想像もつかぬほど濃厚に凝縮した……それでもあくまで爽やかな鱧寿司を、ぎゅっと噛み締め嚥下し、確かに美味い、と驚いた様に呟いて。 此処暫く食事の度に目に浮かべていた、何とも言えない暗い色を綺麗に消して、二切れ目を取るガルデン。 それを見て安心した様に、傍らに立つ男へ目配せするパティ。 男はほんの僅か視線を緩め、パティもまた美味しいと喜んで食べ始めたのに小さく笑って、盆を持ってキッチンに戻った。 今回も、そもそもの発端はパティの問い。 「夏バテ気味のひとに、何か良い食べ物は無い?」 21日にそちらにお邪魔するとの連絡を入れた、電話の向こうからの切実な声。 「最近、凄く暑いでしょ」 其処まで聞けば、誰がどう夏バテで弱っているのか想像は容易い。 元々脂っこいものは(昔に比べて幾分ましになったとは言え)嗜好より外しているお方。 土用だから夏だからと、鰻の蒲焼など出そうものなら引き攣った顔で辞退して、代わりに胃薬など要求なさるかも知れぬ。 かと言ってそれを放っておけば、益々事態は悪化の一途、パティ嬢との生活の中で人並みに戻った食欲も、嘗ての様な善くない状態に戻りかねない。 「ねえシュテル、良いアイデア、ある?」 独りで居るときは殆ど揺らさぬ思考をぐるりと一巡りさせて、シュテルはいつもの如く主の大切な女性に応えた。 「御安心下さい、パティ嬢。全てこのシュテルにお任せを」 「……でも、まさか鱧を持ってくるとは思わなかったわ。 夏ばてって言ったら、やっぱり鰻とかかなって思ってたの」 並べられたとりどりの副菜にも頬をほころばせながら言うパティ。 それに、鱧寿司で弾みがついたのか久方振りにまともな食事をしている主へと、こちらは椀物や小鉢を一品ずつ出しながら答えるシュテル。 「鱧も鰻も、胴が長いのは同じで御座いましょう」 そう大した違いは御座いませぬ、と澄まして言うのに、どうやら自分の夏ばての為にこうなったらしいと理解して青年は苦笑した。 「……鱧も、あの鋭い歯で蟹や海老を食べたり釣り人に噛み付いたりと、大した生命力であるそうだからな。鰻に似ているのは胴が長い事だけでなく、その栄養もなのだろう」 気を遣わせてしまって済まない、と詫びる彼に、パティは「そんな事は良いから」と食事の続きを勧め、 「そう言えば……ガルデンの叔父様は夏ばてしていないのかしら?」 と呟く。 ガルデンの叔父とは先日ごたごたがあった「実家」の現当主、青みがかった銀髪と蒼い目が、涼しげを通り越してひんやりとした「一族の長」の事であるが。 「お館様なら、先日『夏に良い食物は無いか』と言ってらしたので、まむしを料理してお出ししました」 シュテルが淡々と答えたのに、パティとガルデンは顔を見合わせる。 「まむしって……鰻ご飯の事?」 「いえ、まむしです。有鱗目クサリヘビ科の」 想像違いの余地すら無いあまりにくっきりした答えに、二人はもう一度……やや青褪めた顔を見合わせる。 それに気付いたシュテルは取り成す様に、 「胴が長いのは同じで御座いましょう」 と、取り返しのつきにくい弁明をするのだった。 ――――― 「先日のガルデンの「実家」における事件」と話に出ていますが、これは未だUPしていません。 説明不足で申し訳ない。 ――――― 「ところでこの寿司、昔何処かで食べた気がするのだが……」 「『飛鳥(あすか)』の寿司で御座います」 「何、あの料亭『百道(ももち)』の直系のか」 「何でも行方知れずだった後継者を、先日婚約者が発見して連れ戻したらしく。 長らく休んでいたのを返上して、今では雑誌取材の依頼が舞い込むほどの繁盛振りだそうです」 「……後継者……あいつか。……胸騒ぎがするな」 「嵐にならなければ良いのですが」
おはよう御座います、TALK-Gです。 まずは本日の更新。 TOP絵を暑中お見舞い絵に変更。 「ILLUST」に過去のTOP絵を三枚UP。 宜しければ御覧下さい。 SDキラキラガルデンの次はいきなり腹筋割れか。<TOP絵 それでは、また後程。 ――――― プジョーの車はどれも顔立ちが凶悪で格好良いですね。 個人的に鬼エグゼクティブガルデン(例:製作部長)の愛車はボルボだと思っていたのですが(それもかなり旧型デザインの厳ついやつ)上記のスポーツモデルのでも良いなあ……! 原稿の進行は裸のちみッ仔を描いただけに留まりました。
まずは本日の更新。 「GARTERGUNS'HOSPITAL」の「STORY」に小説を一本UP。 「Hymne à l'amour」 (女子高生パティ×大学教授ガルデンのHANKY-PANKYシリーズ) 宜しければ御覧下さい。 それでは、また後程。 と言うか、また去年みたいな事になっていますよ。 ――――― 夜に少し風切嵐様とメッセでお話を…!! させて頂いたのですが、やはり狙った様にエラーが。 どんな時にも満遍なく怪奇現象が起きるのならまだ納得もいくのですが、決まってアデュガル話かシュテルのアレさ加減の話に落ちたりフリーズしたりするので、疑惑は深まるばかり。パティガルの話の時には無反応だったくせに!おのれおのれ。 風切様、例のアレ楽しみにしております…!(懲りていない) ――――― シュテガル原稿進まず。 三連休というこの奇跡を逃せば後は死のロードに突っ込むばかり。 ネタ出しは40Pぶんくらい済んでいるのに…!!
早速ですが本日の更新。 「GARTERGUNS'HOSPITAL」の「STORY」に小説を一本UP。 「ポシブル・ポジティブ・アビリティ」(ガルデン×パティほのぼの) 宜しければ御覧下さい。 暗い話は必ずリバウンドを呼ぶと悟りました。 それでは、また後程。 ――――― 何度試しても掲示板に繋がらない…!! れ、レスがー!!メモ帳にガッツリ打った何かが煮え滾るレスが書き込めないんじゃよー!! メンテナンスの予定も聞いてないし、何故に…?また奴の仕業か?! おのれシュテル。「あいつなら主人が床に落としたハンカチを口で咥えて持ってきそうだ」とか友人との宴席で盛り上がったのをまだ根に持っているのか。(宴席に何故そんな話題が…?) 必ずレスは致しますのでもう少々お時間を…!アアー。 ――――― 7/15 メールフォームの方へ 当サイトのTV版シュテガル(他ガルデン受要素ベース)では、シュテルはいつもあんな妄想をしているのだと思います。自分と御主人様しか居ない世界。 ――――― 自分メモ 最近の萌え ザトーONE(再燃)海馬社長(寧ろ姫)、神官セト(寧ろ巫女)、明稜帝梧桐勢十郎の嘉神己一 44話冒頭のガルデンの口の半開き具合(エロ過ぎ!) リューを呼び出さない方が強い気がするサルトビ
026:The World この世界に生きるものには二つの種類があります。 支配するものとされるものです。 「シュテル!何処に行った、シュテル!!」 「はい、ただ今参ります!」 ある大きなお屋敷の一室。 銀と翠玉と象牙で出来た様なエルフめいた生き物が、豪奢なベッドの上から不機嫌そうに下僕を呼ばわります。大慌てで走ってきた図体の大きな男は、その自分よりずっと小さなものに何のてらいも無く跪き、頭を垂れました。 「お呼びでしょうか、ガルデン様」 「遅い!!何をやっていたのだ、シュテル!!」 ガルデンと呼んだそれに枕を投げつけられ、シュテルと呼ばれた男は益々恐縮して頭を低くしました。 「第一、この館などそう大した広さでもないだろうに…… 主を待たせるとはどういう了見だ」 「も、申し訳御座いません」 「ふん、まあ良い。今更お前に四の五の言ったところで何が改善される訳でもない」 尊大な態度で断じるガルデン。彼は言葉も無いシュテルに、手を差し伸べて命じます。 「服を着替えさせろ。寝汗で気持ち悪い」 ……下僕が恭しく寝間着を脱がせ、肌を冷たい濡れ布で拭い、髪をくしけずる間、されるままの主は退屈そうに、ベッドの天蓋を見上げながら呟きます。 「全く……少し熱が出ただけだと言うのに、十日近くもこんな所に閉じ込めおって」 「しかし、幾ら微熱と言えど油断は禁物。あなた様に万が一の事があったら……」 「お前の意見など聞いてはおらん」 口を挟むシュテルを睨み、その手の新しい寝間着を払い落とすと、 「もう家の中は飽いた。外出着を持って来い、外に行く」 つんと顔を背けて駄々を捏ね始めました。 「―――――」 下僕はそんな主の他愛無い言葉に、赤い目を一瞬細めました。 顔を背けている主には判らぬ事でしたが。 「どうした?早く持って来ないか。この際だ、服も靴もお前に見立てさせてやるぞ」 「……なりません」 「何?」 低い声に、主は下僕に向き直ります。 「外出はなりません。どうか御辛抱下さい」 繰り返すシュテル。 主はいっそ呆れた様な声音と表情で問いました。 「お前……自分が何を言っているのか判っているのか?」 「はい」 「そうか………」 瞬間。 バシーンと凄い音がしました。 「貴様如きがこの私に何を言うか! 外出の可否まで、貴様に口出しされる謂れは無いぞ!!」 「………申し訳、御座いません」 瞬間沸騰した主に叱責された下僕は、額を押さえながら再び床に跪きました。 褥での慰みと置かれていた分厚い本で殴られ、割れたのか、押さえる大きな手の下から赤い雫が滴ります。 「もう良い、自分でする」 最初からこうすればよかった、とガルデンはベッドから降り、すたすたとクローゼットに近寄っていきました。 下僕は額を押さえながらもそれを追い、回り込んで 「ガルデン様、まだお体の方が」 と食い下がります。 「しつこい!もう一発殴って、この身の健康を証明してやろうか?!」 「このシュテルを殴る事で思い止まってくださるのならば幾らでも。 お願い致しますガルデン様、どうか外へは」 「何故そうして私を外に出したがらない!」 「お言葉ですが、ガルデン様こそ何故そうして外に執着されるのですか」 シュテルの言葉に、拳を振り上げかけていたガルデンは 「―――――」 ふっと毒気を抜かれた顔になりました。 「何故って……此処よりも、外の方が良いではないか……」 子供に「何故空は青い」と問われた親のような表情。 困惑と呆れをない交ぜにした視線に、シュテルが問いを重ねます。 「何が良いのですか。この安全で快適な屋敷内と比べ、外にどの様な魅力があるというのですか」 その低い声に滲む暗さに、主は眉を寄せながら。 「外には……沢山の刺激がある。 敵も……私を『仲間』なんて呼ぶ変わった奴等も……そいつらと過ごす時間も…… こんな退屈な屋敷では手に入らないくらい面白い」 答えると、下僕は底冷えのする赤い瞳を閉じ、 「それがお望みなのですね……」 呟いて、背にしていたクローゼットに向き直りました。 「判りました、ガルデン様が其処まで仰るのならば、わたしは止めは致しません。 ……今、お召し物をお持ちします」 ぎ、と立派な扉を開き、部屋一つほどの広さがあるその衣装棚に足を踏み入れるシュテル。 その背を追いながら主は「最初からそう素直にしておれば怪我をせずとも済んだものを」とぼやき、しかし翠の瞳には隠しきれない嬉しさを浮かべていました。 外に出られる。 10日間、ベッドの上で眠りと退屈に倦み腐りそうになっていた日々からやっと解放される。 シュテルが戻ってくるや、ガルデンは彼が持ってきた服を奪う様にして身に付けました。 久々に寝間着以外の服に袖を通し、ブーツを履いて。 地面を踏まぬうちに少々萎えてしまった気すらする足に力を込めて。 殆ど駆け足になりながら屋敷のドアを開き、外に出ると。 其処は荒涼とした砂漠になっていました。 「―――――」 「……だから、外には出ない方がと申し上げたのです」 自分の見ているものが理解出来ず、ただ呆然と立ち尽くすガルデンに、シュテルが横に並んで。 「ガルデン様が病に臥していらっしゃる間に、様々な事が起きました」 やけに近く見える月は奇妙に欠け、世界を守護する大剣に光は有りません。 見渡す限り続く砂漠。緑溢れる森だった筈のこの地に生命の声は無く、ただ真っ赤な空の下に気怠そうに横たわっています。 それら全てを「様々な事」で済ませ、シュテルは感情の起伏の無い声で続けます。 「あなた様が望んでおられたものやことも、全て絶えてしまったのです」 ガルデンはシュテルを見上げ、その赤い瞳に嘘の色が無いのを認めて、それでも 「……嘘だ」 「嘘では有りません」 「嘘だ!!」 激しく言い募りました。 「こんな……こんな馬鹿な事が……」 そのままふらふらと歩み出そうとした所で、シュテルに止められます。 「離せ……」 「いいえ、今のあなた様ではこの砂漠を渡るなど無理です」 「っ……」 ガルデンは砂地にへたり込み、月より遠く見えるシュテルの目を見上げました。 「どうして……どうして皆いなくなってしまったのだ……?」 先程の剣幕が嘘の様な、途方に暮れた子供の問いに、シュテルは薄く笑いました。 「皆が居なくなったとしても、わたしが居ります故」 疑問には何も答えないまま。 「あなた様が望むのでしたら、敵にも友にも、隷(しもべ)にも主にも、どんなものにでもなって御覧に入れましょう。 わたしだけで足る筈です、元々あなた様の周囲にそう多彩なものは無かった筈ですから。 わたしが、あなた様の望む何者にでもなって、あなた様の無聊を慰めて差し上げます」 ガルデンはぼうとシュテルを見上げていましたが、やがて手を引かれてのろのろと立ち上がりました。 「ああ、おかしいと思ったのだ」 色の無い唇から、先程のシュテルの血の様に零れる言葉。 「主従関係しか知らないし構築できないこの私が、どうしてこんなにも、楽しいものや嬉しいことに触れながら生きていられるのか。 この夢の様な日々はいつ終わるのだろうと、そんな事ばかり考えていた。 世界中の時間が止まらない限り、いつまでも楽しい時間が続く筈が無いと、判っていたのに」 この世界に生きるものには二つの種類があります。 支配するものとされるものです。 「もうそんな喪失の痛みに怯えるのはお止め下さい。 あなた様はあなた様のまま、停滞と言う安定に御身をお任せ下さい」 静かで否定する事を否定する様なシュテルの囁き。 それにこくりと頷きながらガルデンは、 「お前以外を知らずにゼロのままで居れば良かった」 戻った屋敷の閉ざされる扉の内で、誰にも否定して貰えない嘆きを口にして、それきり思考を停止させるのでした。 ――――― 「文字書きさんに100のお題」配布元:Project SIGN[ef]F様 ――――― 暗い赤はTVシュテルカラー。 漫画版シュテルはともかくTV版は、ティアダナーンや36話、38話、44話を見聞きすればする程、何とも言えない気持ちになります。 自分自身の意思、「良心」というものを持ちながら、他のリューやリュー使い、乗り手の育ての親を殺害するのに何の躊躇も無いシュテルを見るたびに、ゼファーがカイオリスの対キルガイン戦やOVAのソフィー戦で自発的に戦いをやめてしまうシーンを思い出します。
アデューが何らかの選挙に立候補したとしたら、無闇に社会的地位のある仲間達が票集めに奔走するんだろう。 社会的地位の無い者は対立候補者潰しに暗躍するんだろう。 そもそも選挙権が無い者(住所不定戸籍無しと言うか素敵な宇宙船アースティア号の正式な乗組員であるかどうかすら疑わしいあいつ)は応援している人が不利になったと見るや、開票所を雷で焼き尽くすに違いない。 こんばんは、TALK-Gです。 今朝投票しに行ったら「こんなに早くから起きて、ちゃんと(投票に)来て偉いわね」と近所の奥様に褒められました。 起きてません。エロ漫画描いてて完徹してしまっただけです。 そんな事は言えなかった。(意気地なし!) 漫画版でガルデンとパティが出会ったら素晴らしいと思いました。 大戦から100年後、平和なパフリシア王国の王子と王女がいつもの様に、臣下の目を盗んで城下町に遊びにくる。 其処に現れる魔物。と言うかドゥーム。 奴はどうやらパフリシア王国に有る強いリューを狙っている様だ。 圧倒的な破壊力に王子王女は大ピンチ。 其処に現れる謎の男。 背に古びた業物っぽい槍を背負った彼は、何故かその得物を使う事無く、しかも生身でドゥームを倒す。 パフリシアの人々からヒーロー扱いの男。 その強さに惚れた王女パティが彼の押しかけ弟子となり、王子アレクは姉の暴走を放っておく事も出来ずついていく事になる。 その男が嘗て世界を滅ぼしかけた闇の騎士であるとも知らず。 「その男」というのは無論ガルデンな訳ですが。 多分なんかこう、大戦の際に負った傷の所為で100年間眠りについていたとか、目覚めてみたらシュテルが今にも死にそうになっていたとか、これは不味いから何とかする方法を見つけなきゃと(たくましく生き残っていたイドロ他一族の者たちに見送られて)旅立ったとか、階級転移は解けていて君主の精霊石も封印されているとか、ガルデンはその封印された(ビジュアル的に鎖や錠で雁字搦め)槍を背負って歩いているとか、勿論それは実戦では使えないとか、普段使っているのは魔剣ヨグ・ソードとムチであるとか、シュテルも当然使えないので大物相手でも生身か、もしくは適当なドゥームに乗って(敵のをギって)戦うとか、そんな経緯をパティは全く知らないと言うか「あの」パフリシアに伝わる歴史の中で燦然と輝く悪名たるガルデンである事にすら気付いていないとか、恋は盲目だとか、何かそんな感じのお話。 最後はパティinマジドーラとガルデンinロードシュテルが「崩魔雷刃」ならぬ「招魔雷槍」とかの合体技で敵のボス(サイズL)を倒して終わり。 アレクは主に解説役。 ――――― 嘗て敵の大将が陣取っていた場所。 凄まじい力の爪痕がくっきりと残る大地を指し、ガルデンは満足げに言った。 「これが私の望む力でなくて何であろう。 そしてその力を生み出したのが……他でも無い、パティとの合体技だったのだ」 感慨深げに頷き、腕を組んで、ガルデンは続ける。 「一体何がどうして、このような力を生み出すのかは判らん。が…… 唯一つ確かなのは、あれがパティとの合体技だったからこそ凄まじい威力を発揮した、という事だ」 その背後で頬を染め、照れ隠しにアレクをボカボカ叩いている彼女には気付かないまま、小さく笑う。 「面白いものだ。人間の中に、全てから忌避された一族の長と同調する者が居るとはな。 ましてあいつはパフリシア王国第一王女……嘗てこの私と滅ぼし合った小僧と姫君の血を引いているのだ。 全く、剣神だか邪竜神だかの悪戯心にも困ったものよ」 「………嘗てガルデン様が敗れたものと同じでありながら、全く異なる力……… 『世界を否定する力』でございますね……」 「うん?」 「いえ………」 肝心な所で乙女心に鈍感な主と、純粋で真っ直ぐで暴走しがちな少女の間にある力。 闇と呪いの嫡子「ガルデン一族の長」と、光と希望に育まれた「パフリシア王国王女」の間にある愛。 これまでの剣聖界の歴史の中では有り得なかったもの。 それこそが、「これまでの世界を否定する力」ではないだろうか。 ――――― 何かこんな感じでモノローグ突入。 お話を考えると、いきなり最終回を書きたくなります。 前ふりも何も無しで、盛り上がってるシーンを思いのままに書き殴って「第26話!!緊迫のクライマックス!!」とか勝手に言ってみたり。 私はスパンの長い話を書くのには向いていない。とても向いていない。
アデュガルのお話をぺちぺち打っていたら、突如具合が悪くなってしまいました。 シュテル月間とか浮かれておきながらアデュガルばっか書いているのがお気に召さなかったのか。 そんなに憎いのか。 こんばんは、TALK-Gです。 話は変わりますが、ガルデンって色んな側面を持っていますよね。 その複雑な周囲の状況や設定に対応していった結果と言うか単にキャラクターが定まっていないと言うか。 不肖私は「ガルデンなら何でも良い」感じなので、それはもうTV(初期・中期・後期に分かれる)から特典CD2&3からラジオ版からOVAFINALから聖騎士の約束から漫画版からゲーム版(ロードオブパラディン。特徴としては稀にアデューを「君」呼ばわり&クラッシュドーンを使える)から漫画豪華本Bのピンナップ版から、全部大好きなのですが。 そんな「どのガルデンも良いんだよ!」みたいな気持ちの赴くままズッビャァァと書いたお話を顧みてみるに、「この話とあの話でガルデンの性格が違う!設定も違う!」なんて事がざらに有りまして、読んで下さっている方が混乱なさる事もあるんじゃないかと。 特にカップリングもの。 アデュー×ガルデンではガルデンの属性は乙女(クラスチェンジして姫でも可) パティ×ガルデンでは属性保護者(クラスチェンジして師匠または旦那) シュテル×ガルデンでは属性お嬢様(クラスチェンジで女王様または御主人様) サルトビ×ガルデンでは属性仔悪魔(チェンジでアバズレ←階級下がってないか) 何かこんな感じで書く度に性格が全然違うので、これじゃあ読んで下さる方も何がなんだかという感じなのでは?!と激しく反省し、せめてもう少し性格のぶれを無くそう!「揺るぎ無きガルデン」「ガルデンのイデア」を見出さん!!とDVDやCDやコミックスを嗜んでみたのですが。 この男は相手によって態度を変える、という性格最悪な一面を再認識しただけに留まりました。
*アデューとパッフィー結婚後・アデュパフアデュガル* 「……と、言う訳で、アデューは何処かに旅立ってしまっていて……」 「ふむ……奴の放浪癖にも困ったものだな。ひとの事は言えんが」 「もしかしたら、わたくしと結婚した事も彼にとっては重荷になっているのかも……」 「いや、それは違う」 「え?」 「寧ろ、この国……そしてパッフィー姫と言う大きな『家』が出来たからこそ、奴は『いつでも帰って来れる』と安堵して旅に出て行くのではないか」 「家………」 「それに、『重荷』になっているなんて傍から見ていると考えられんぞ。 お前達、相思相愛なのだろう?」 「えっ、そ、それは、はい、きっと……」 「何だ何だ、煮え切らない答えだな。それではアデューが泣くぞ。 夫を信用できないのか?」 「そういう訳では……ないのですけれど……」 「パッフィー姫は、美貌と頭脳、優雅さと気品に強大な力、そして優しい心を兼ね備えたパフリシア王国の女王だろう。 しかもこの私が惚れた男が選んだ妻なのだ。 凄い事だぞこれは。もっと自信を持て」 「は、はい……何だかよく判りませんけれど、自信がついた気がしますわ」 「……よし、では行くか」 「い、行く、とは?」 「決まっている、アデューを追いかける旅に出るのだ」 「ええっ、そ、それは……国の事もありますし……」 「この平和な時代だ、玉座を守るのにはイズミが居れば事足りよう。 それに私もアデューに会いたいのでな」 「ガルデンも……?」 「うむ。パッフィー姫の話を聞いていたら、奴のあのすっからかんな笑顔を見たくなった。あれからどれほど腕を上げたか、手合わせもしたいしな」 「けれど、アデューの迷惑になってしまうかもしれません……」 「勝手に出て行った奴の迷惑など知らん。会いたいから会いにいくのだ。姫が会いたくないと言うのなら無理強いはしないが」 「……判りました、いきます!」 「よし、それでは早く準備を!」 「はっ……はい!」 ――――― 「エンジェル伝説」みたいな人物関係。 誠一郎=アデュー、良子=パッフィー、幾乃=ガルデン、みたいな(即座に脳内変換)。 しっかりものだが色恋沙汰には純情路線のパッフィーに、彼女とアデューを応援しつつ自分は愛人になろうかななどと極めて真面目に天然ボケなガルデン。 そんなハーレムの図。 「聖騎士の約束」を聞く限り望めそうに無い関係ですが、そんなアデュー総攻めがあってもいいんじゃないかと思いました。 と言うか、「私はアデューが好きだがパッフィー姫は?」「わ、わたくしも、その、す、好きですが……?」「そうか。気が合うな。何と言ってもアデューは格好いいし強いからな(何故か自慢げ)」「え、ええ……(赤面)」みたいな、そんなアホの子なガルデンと振り回されるパッフィーが書きたかったです。 話が逸れますが、TV版ごく初期のガルデンは本当にアホの子で良いですね。 喜怒哀楽がはっきりしていて、でっかい夢があって、大好きなリューや世話役にちやほやされていて、俺様最強で、しかも悩みが無さそう(あっても一晩寝たら忘れていそう)な辺りが無邪気で何とも可愛いです。たまらん。
「星に願いなど……子供じみている…… 祈ったところで、私の願いを聞き届けてくれる神は居ない……」 『ガルデン様…… どうかそんな悲しい顔をなさらないで下さい』 「シュテル……」 『貴方の望みはこのシュテルが、どんな手を使ってでも叶えて御覧に入れましょう』 「神でもないお前に、何が出来るというのだ……?」 『何であろうと、それが貴方様の願いならば』 「…………では……その……」 『はっ、何なりとお申し付けを』 「……今日一日、私から離れていてくれないか……?」 『―――――は……?』 「駄目か……?」 『いっ、いえ、そのっ、あっ、……な、何故?!! ここ、このシュテルが何か貴方様の信頼を裏切る事を致しましたでしょうか?!!』 「そんな事は無い。いつもお前は私によく尽くしてくれている…… ……だから、なのだ」 『お、仰っている事がわたくし目には……理解できませぬ』 「……お前は、初めて出会った時から長い間ずっと、片時も離れず私の傍に居てくれた…… 特にアデュー達と出会ってからは、まるで私を包み込む様に、害悪から常に守っていてくれていた」 『そ、それは当然の事ではありませぬか』 「そうだな……何時の間にか私には、それが当たり前になっていた。 お前に守られる事に、何の疑念も抱かなくなっていたのだ…… けれど、それではいけない、と思った」 『が、ガルデン様……?』 「私は、『ガルデン』の真名を継いだ誇り高き魔法剣士。 それが何時の間にかお前に頼る事に慣れて……安堵と言う名のぬるま湯に浸かり切ってしまっていた。 これでは駄目だ。私は、私の名前と誇りに相応しく、もっと寒風吹く『外』に出て行かねばならない。 私自身の力をもって様々な害悪を肌に感じ、それを打ち破っていかねばならないのだ」 『………ガ………』 「丁度今日はタナバタとかいう、引き裂かれた者達が年に一度の逢瀬をする日であるらしい。 その逆と言う訳ではないが、この機会に一度私はお前の手を離し、私とお前それぞれの姿を見つめ直してみたい」 『…………―――――』 「だからシュテル……今日一日は、私を庇護せず、放っておいてくれ………」 『うわあぁあァアああーーーッッ』 『……頼むから、主人につれなくされる度に、酒瓶抱えて飲んだくれて泣き叫びながら俺に絡むのはやめてくれないか、シュテル……』 『き、貴様にはこの気持ちが判らないのか?!!それでも同じリューか?!!』 『同じリューって、お前はドゥームとのハイブリッドだろう…… 第一俺は、歴代の乗り手達とはお前達の様なベッタリとした関係は結んでこなかった。 乗り手の交代も、お前に比べれば短いスパンで巡ってきたしな…… 300年前なんか、魔王ガルデスとの戦いを共に生き抜いた勇者の乗り手から聖女に、あっさりと「これは元々貴女のものだから」みたいな感じで譲渡されそうになったことが有るぞ。 結局聖女からは拒まれて、かなり居心地が悪かったが』 『くっ……短命な者達に乗り継がれてきたお前には、このシュテルの一世一代の思いは理解できんか……』 『失礼な言い方だな。 大体お前の主の発言は、その心の真っ当な成長を表していてめでたいものじゃないか。 喜びこそすれ、嘆く必要は無いだろう』 『……………』 『お前の大事な主に、一日限定では有るがやっと巣立ちの兆しが見え始めたんだ。 それを温かく見守ってやるのがお前の役目だろう』 『……それは……』 『まあ、寂しい気持ちも良く判る。俺もアデューの成長を見守っていた時は、程度の差こそあれお前と同じ葛藤を抱えた。 だがああして見事に一人前の男になった今では、やはりあの時、あいつを信じて放任していて良かったのだと……』 『待て、ゼファー。そう言えばお前の乗り手は、今日は何処に……?』 『ああ、何かデートだとか言っていた気が……「今日は邪魔者が居ないからゆっくり楽しめるぜ」とか言って…… いやあ、あいつももうすっかり大人の仲間入りだな』 『……あァアあの野郎ーーーッッ!!!』 『ま、待てシュテル!カウンターに叩き付けて割った刺殺に最適な酒瓶の破片を持って何処に行く気だ?!シュテル、シュテルーーッ!!』 ――――― 七夕ネタ。 本当はゼファーvソフィーな話にしようと思っていたのですが。 護る者と護られる者の強力コンビ・ゼファソフィ大好き。(見た事も聞いた事も無いカップリングをさもメジャー所の様に)
025:のどあめ イルルヤンカシュ山脈に連なる霊峰の一つに、秘宝が眠っているという。 「クバシルの蜜って言うんだけど、それを守ってるのがまた厄介な奴らしくてさ。 そいつを躱して秘宝を手に入れる為に、サルトビにも是非協力して欲しいんだ」 いきなり地図を広げて説明を始めたアデューに、サルトビは胡乱な視線を向ける。 「……何で俺が手伝わなきゃいけねえんだ?」 「丁度此処で会ったから」 確かに自分はイオリから託された情報収集の為に、このイルルヤンカシュ山脈ふもとの町に来ていたが。 そして其処でアデューと出くわしたのだが。 「一人じゃ心もとなくてさ。乗りかかった船だと思って助けてくれよ」 「俺だって暇じゃねえんだ。大体『一人』って、手前(てめえ)のいつもの連れはどうした」 問うと、アデューはふっとその表情を曇らせた。 「ガルデンは……寝込んでる」 「何?」 「頼むサルトビ、力を貸してくれ。 あいつを救けるのに、どうしてもクバシルの蜜が要るんだ」 あの、見た目に拠らぬ頑丈さを持つガルデンが、寝込んでいる。 告げられた事実と告げた者の眼差しにサルトビは眉を寄せ、「鬼の霍乱だな」と呟いて。 「……で、どうするんだ」 「え?」 「嫌だっつったってしょうがねえんだろ。あいつが寝込んでるなんて可笑しいの通り越して気味が悪りいしな。気味が悪りいもんをそのままにしとくってのも寝覚めが良くねえ。 ……俺はさっさと任務に戻らなきゃいけねえんだ、手っ取り早く説明しろよ」 「サルトビ……」 諦めた調子で言う忍者に、アデューは「そうこなくっちゃ」と破顔して説明を再開した。 翌朝、未だ日が昇り切らぬ内に、アデューとサルトビは霊峰に向かって出発した。 目的の物が有るらしいのは山の頂上付近。その途中、中腹を越える辺りまではリューで飛び、時間と距離を稼ぐ。が、残りの道は徒歩だ。 「本当はリューで一っ飛びにしたいんだけどな。 リューは凄え強い魔力を放出するだろ。 クバシルの蜜を守ってる奴は魔力の流れに敏感で、それで敵の位置や強さを察知するんだってさ。 とにかくタフな奴らしいから、出来れば気付かれずアイテムだけ取って帰りたいんだけど」 「何処から仕入れた、そんな情報」 「ガルデンから」 ガルデンがほんの小さな子供だった頃、今の様に寝込んでしまった事があるらしい。 その際、病の治癒と滋養強壮に効果てきめんの魔法の甘露、「クバシルの蜜」と共に母親から与えられたのが、それを彼女が入手するまでの武勇伝だったという。 「あいつが、クバシルの蜜があれば……って泣きたくなるくらい弱々しい声で言うもんだから、それは何だって聞き出してさ。 あいつが言ってた『武勇伝』通りにすれば、その蜜も手に入るんじゃないかって」 「……子供を寝かせる為のおとぎ話じゃねえのか」 「行ってみなきゃ判らないだろ。俺は本当の話だと思う」 譲らないアデューにサルトビはやれやれと首を振り、彼に続いて飛ばしていたリューを降下させた。着地先は山の半ば。 「一歩間違えたら崖の下だな」 リューをミストロットに戻した二人は、剥き出しの険しい山肌に沿う様にして、霧深く道とも言えない道を山頂に向けて登っていく。 アデューはその体力で、サルトビはその身軽さで、難所も巧くかわしつつ行くが行くと、日が大地の剣の頂に差し掛かる頃に目的の場所に辿り着いた。 それは、山の側面をぶち抜く様にして掘られた洞窟めいた空間。 ごつごつとした岩肌の天井は人の手では為し得ぬ高みに在り、支柱が埋め込まれた壁面には幾何学的な模様や絵文字が並び、暗くて見通せぬ奥までそれがずっと続いてある。 「『巨人の根城』だ」 アデューは興奮した様子で言った。 「『武勇伝』で聞いた通りだ。この奥にクバシルの蜜が有るんだ!」 「おい、ちょっと待て」 喜び勇んで早速中に入ろうとするアデューを止めるサルトビ。 「何だよ、早く持って帰ってやらなきゃあいつが……」 「……その『クバシルの蜜』とやらを守っている番人は何処に居やがるんだ?」 「…………」 息を詰め、周囲を見渡す二人。 一先ず何の気配も感じられない事を確認して、アデューは声を潜めつつ言った。 「……説明した通り此処には魔力に敏感に反応する『巨人』が居て、そいつがクバシルの蜜を守ってる。 聞いた『武勇伝』じゃあ、あいつの母さんは此処に来るなり巨人に襲われたらしい」 「此処まで登るのに歩きじゃなく飛行魔法を使って、それを察知されたんだったか」 そんな待ち伏せを避ける為に二人は徒歩を併用してやってきた訳だが。 「……じゃあ、こうやって魔法や魔力を放出するアイテムを使わねえで居れば、そいつは現れねえのかよ」 「其処までは判らない。けど、例え出くわしても危険度が減るのは確かだと思う」 言いながらアデューは暗い洞窟に一歩踏み入れ、ミスト鉱石の魔力を利用したランタンに火を…… ……………… ……ズズズズ、と地震の様に壁や天井が震える。土埃が舞う視界にゆっくりと滲み出す影。 「……おい音速馬鹿」 「……ははは……悪りいサルトビ、やっちまった」 地響きめいた足音を響かせ、洞窟の奥からランタンの発した光の魔力に呼応して現れたのは、古のドゥーム・ゴーレムだった。 邪竜族の操るドゥームの様な高性能ではない代わりに、とにかくタフでしつこい。急所を破壊されるまでは、何処までも自分のエリア内に侵入した不心得者を追いかけ攻撃するという、何かを守る番人にはうってつけのドゥームだ。 「また厄介なもんを目覚めさせてくれたな」 「いや……ほら、まあ、その、何だ…… ……黙ってひとの宝物貰ってくのも悪いしさ、どうせなら正々堂々ぶんどるかって……」 「言ってろ」 こうなったら魔力を隠していても仕方が無い。踏み潰されるより先にとリューを召喚した二人は、先手必勝とばかりにそれぞれの武器を抜いて番人に襲い掛かった。 が――――― 「?!」 パラディンの必殺の剣を愚鈍な筈のドゥーム・ゴーレムに躱され愕然とするアデュー。同じく並ぶ者の無い疾駆の一撃を躱されたニンジャマスターは、即座にとんぼをきってゴーレムの攻撃範囲から逃れた。 (何だこいつ……) パラディンの、増してニンジャマスターの攻撃は、ゴーレム如きに反応出来る生易しいスピードのものではない。 なのに何故…… 「………」 サルトビはその目を眇め、パラディンとゴーレムの攻防を見極めんと神経を集中した。 ―――――パラディンが微かに腕に力を込める。その瞬間からゴーレムは、鈍重に、しかし確実にその身を動かす。 「!」 振り上げられ、叩き付ける様に下ろされたパラディンの剣は、しかしゴーレムに掠る事も無かった。 いや、傍らで見ているとそれはまるで、パラディンがわざわざゴーレムを攻撃範囲から外して見当違いの場所に剣を振るっている様にさえ見える。 「なっ……何なんだよこいつ!鈍いくせに、何で攻撃が当たらないんだ?!」 「無駄だ、アデュー」 剣を大きく振りぬいて隙が出来た所に、攻撃力しか考えられていない無骨で巨大なゴーレムの棍棒に打たれ、堪らずよろめくパラディン。 アデューはその痛みと衝撃に咳き込みながら、サルトビに怒鳴った。 「む、無駄って何がだよ!!」 「俺達、気配だか魔力だかの流れで、動きを完全に読まれてるみたいだぜ」 ゴーレムは攻撃を躱しているのではなかった。 相手の攻撃を先読みして、それが当たらない場所に前もって動いているだけなのだ。 どんな剛剣でも、相手を捉えられねば意味が無い。また、一度決めた攻撃の軌跡を急に変更するのは至難の業だ。ましてそれがアデューやパラディンの様な大剣使いならば。 「『魔力の流れに敏感』ってのはこういう事かよ……」 これでは攻撃を当てるだけなら兎も角、急所を狙うのは困難を極める。 「おいアデュー!その『武勇伝』では、どうやってこいつを躱してクバシルの蜜を奪い取ったんだよ!」 「魔法だ!魔法の歌で眠りにつかせたんだ」 「魔法の歌……手前がこないだ散々自慢してきやがった『ハイアールブの蜜歌』みたいなもんか」 確かに高レベルの魔法ならば、使う事を先読みされていようがどうしようが、ゴーレムに為す術は無いだろう。それが位置や間合いをある程度無視できる、音響に拠るものなら尚更。 が、自分達は戦士である。この打たれ強いゴーレムをどうにか出来る様な魔法のスキルは、当然持っていない。 「畜生、ガルデンが居れば魔法や蜜歌でこいつをさくっと躱して、さっさとクバシルの蜜をガルデンに持って帰ってやれるのに」 「思考が破綻してるぞ」 どうやらスピードや攻撃方法の面に於いて汲みやすしと見られたか、集中的に攻撃を受けているゼファーを見やってサルトビは考えた。 ……幾ら怪力でこちらの攻撃が当たらないとは言え、ゴーレム程度の攻撃力では、パラディンをそう易々と打ち取れる筈が無い。 ならばパラディンを囮にしておいて、スピードで勝る自分が目的のお宝を取ってくるか。 ……いや、奥に侵入しようとするなら、奴はすぐさまこちらを標的にしてくるだろう。 スピードを極限まで高める為に防御力を犠牲にしたニンジャマスターでは、あのゴーレムの攻撃を甘くは見られない。動きの先を読まれ、更に攻撃まで加えられて、果たして奥まで簡単に辿り着けるだろうか。 「………結局、ぶっ壊すしかねえって事かよ」 面倒臭え、と鼻を鳴らし、サルトビは大きくニンジャマスターを後退させた。 それに慌てたのがアデューである。 「おっ……おい、サルトビ!!何処行くんだ!!」 呼べど答えは返らず。探れど気配は読み取れず。 「ちょっと待ってくれよ………」 じとりと額に汗が滲むのを感じながら、アデューは少し痺れてきた腕で盾を構え直す。 ゴーレムの攻撃は相変わらず容赦ない。何時の間にか防御に徹する事を余儀なくされ、しかもじわじわと押し戻されている。このままではクバシルの蜜を手に入れる事など出来そうも無い。 (……メテオザッパーを使うか?) アデューの脳裏に、ちかりと考えが瞬く。が、彼はそれを慌てて打ち消した。 修得したての頃ならいざ知らず、今のアデューのそれは正に山をも吹き飛ばす大爆閃剣。 こんな所でそれを使ったら、この霊峰は勿論ふもとだってどうなるか。 そもそも、目的であるクバシルの蜜が跡形も無く灰燼に帰す事間違いなしである。 「畜生ーーー!!!」 どうにもこうにも出来ない状況に、焦りと苛立ちを爆発させそうなった瞬間。 目の前で棍棒を振るわんとしていたゴーレムの首が、勢い良く斬り飛ばされた。 「―――――」 唖然として見れば、その肩には闇風を手にしたニンジャマスターが。 力無く崩折れ、地響き立ててどうと倒れるドゥームからひらりと降りた彼は、 「隠形の術は実戦向きじゃねえから嫌いなんだよ」 やれやれといった調子で呟き、ドゥームの頭部を念の為細切れにしてからパラディンに振り向いた。 呆気に取られていたアデューは、漸く番人をどうにかしたのに気付き、 「……何だ、今の」 至極尤もな疑問を述べた。 「隠形の術。気配を殺す術だ」 「いや……それは何となく判るけど」 「あれは気配を読むドゥームだろ。だったらこうするのが一番じゃねえか」 「それも尤もだけど、いや、そうじゃなくてさ。 お前、そんな術使えたのか?」 生身でなら兎も角、魔力の横溢するリューごと気配を消すとは。 「これぐらい出来ねえと、アスカ流忍者の次期頭なんてやってられるかよ。 鬼より怖ぇ女に爆烈丸を没収されちまう」 面白くも無さそうに言い、サルトビはリューから降りた。 「あれには精神集中が必要なんだ。もうちっと熟練した忍なら、一瞬で姿を消せるんだがな。俺はまだそうはいかねえ。 しかも姿を消したままで攻撃なり移動なりしようと思ったら、生半可な気の練り様じゃ足りねえ。一刻を争う場じゃあ、実戦的じゃねえんだよ。 ……ま、大ぶりな剣筋に気配だだ漏れの手前がドゥームを引き付けてたお陰で、ちっとは楽に精神集中できたぜ」 「……お前、何か俺の事馬鹿にしてないか」 「馬鹿とはさみは使いようだって褒めてんだよ」 「嬉しくねえし褒めてねえよそれ」 アデューもまたリューから降り、いまいち良い所が無かったとぶつぶつ言いながら、 「……とにかく、こうやって番人も倒した事だし」 「そうだな、さっさと目的のもん持ってずらかるか」 サルトビと連れ立って洞窟の奥へと向かった。 やがて辿り着いた洞窟の最奥。 其処には、根元に魔法めいた紋様を刻まれた、一本の背の低い木が植わっていた。 アデューのカンテラの光に、その葉はきらきらと濡れた様に輝いている。 「……………」 注意して寄ってみると、何とも甘い香りが馥郁と漂ってくる。 熟した果実の様な、咲き初めの花の様な、濃密かつ爽やかな甘い匂いにアデューは 「すげえ良い匂いだな」 と喜び、サルトビは 「……胸焼けがする」 と眉を顰めた。 更に傍に寄って見てみれば、瑞々しい緑の葉の一つ一つに、丸い水滴の様なものが乗ってある。 黄金色、もしくは血を溶かした様な紅玉色の、指先ほどの丸い雫。 「これがクバシルの蜜か」 「ああ」 アデューはかねてより用意してあった小さな硝子瓶を取り出し、葉先にその口をあてがって、そっとその葉を突付いた。 ふるふる震え、やがて葉脈を伝って転がり落ちた蜜は、瓶の中でころんと硬い音を立てた。 覗いてみると、つい先程まで柔らかな雫だったそれが、まるで飴玉の様に真ん丸く固まっている。 「この木は、霊峰の水脈地脈からいいものだけを取り込んで育った木で…… その葉にたまる雫は、どんな蜜よりも甘くて栄養があって、一口舐めれば、どんな酷く痛めてても飛び切り良い状態に治っちまう位、喉に良いんだってさ」 「喉に……?」 「ずっと昔、まだハイエルフっていう精霊がこの世に沢山居た頃は、『歌』ってのが言葉と同じ位に大事なもんでさ。 だからハイエルフ達はそれぞれが住む森や霊峰でこの木を育てて、その蜜を舐めて、綺麗な歌を歌う為の喉を大事にしてたらしい」 「それもあいつが言ってた『武勇伝』の中の話か」 「いや……この木を見て何となく思い出した」 「………………」 冗談なのか本気なのか判らない顔のまま、蜜玉を硝子瓶に詰め終えたアデューはそれにしっかり蓋をし、割れない様に布に包んでから荷物の中に入れた。 その慎重さがどうして普段から発揮出来ないのかと思いながらもサルトビは、戻る道すがら、肩を竦めてどっちらけた顔で言う。 「何だ何だ、結局ガルデンの奴ぁ喉を痛めてただけだったのかよ。 寝込んだなんつう大袈裟言って、俺まで巻き込んで、イルルヤンカシュの山脈くんだりまで喉飴探しか」 「喉痛めたのもそうだけど、寝込んだのは本当なんだぜ、ちょっと無理させちまって」 「どうせ腹ぁ出して寝て風邪引いたとかそんな所だろ。それともその『歌』でも歌いすぎたのか」 洞窟を出ると、夕焼けが辺りを染めていた。 その赤い光の中で爽やかに微笑みながらアデューは、 「いや、最近益々あいつが色っぽくなったもんだから、毎夜毎晩朝まであんあん泣かしてたら、喉壊した挙句に腰痛めて寝込んじまったんだ」 サルトビはアデューを無言で崖から蹴り落とし、速やかにその場を立ち去った。 ――――― 「文字書きさんに100のお題」配布元:Project SIGN[ef]F様 ――――― お題022:MDの続き。「クバシルの蜜」の元は神話に出てくる「クヴァシルの蜜酒」、モデルはこの飴。(喉飴ではないのでは)
ヴィ○ツがシ××ルだったなら、ペンキ屋の兄ちゃんをアデューとしてこんな惨劇を繰り広げがちなのでは。 ごめんなさい。>なるみ忍様 参考→http://www.paris-nora.com/ ――――― シュテルの館・メールフォームへのお返事 7月2日の方…… 報われても、あの男の存在がある限り、悲しみが止まらないかも知れません。 それでも尽くすしか出来ないのがあのシュテルの進む道なのかも。 TV(聖騎士の約束)の世界でのハッピーエンドも書いてはみたいのですが……!
024:ガムテープ 引越し準備ってのは不思議なもんで、忙しかったり大変だったりするんだけど、無性に楽しくもある。 昔の雑誌が出てきてつい読み耽っちまったり。 家具を処分した部屋が今までと全然違って見えたり。 食器を全部梱包した後、コンビニで飯を買ってきて床に座り込んで食ったり。 そんな他愛も無い事が、何だかやたらと新鮮で。 高校の頃、文化祭の準備で泊り込みしてた時みたいだ。 しかも今回は、俺の恋人が俺の家に引っ越してくる為の準備なんだぜ。 これで楽しくならない訳が無いだろ。 「何をぼんやりしている」 ダンボールが詰まれた部屋で、これからの期待に俺が夢を膨らませていると、背後から冷たい声。 振り向けば件の恋人が、腰に手を当て立っていた。 その細い手首にはガムテープのリング。 普段は繊細なプラチナの時計が輝いてるってのに。 「……一人でにやにやするな」 あまりのギャップについ笑ってしまうと、彼はむっと眉を寄せた。 そのちょっと子供っぽい顔は、文化祭の前夜に見たのとそう変わっちゃいない。 「いやー、色々と楽しくってさ」 「何がだ?」 「だってお前、明日っから俺んちに来るんだぜ。朝も夜も一緒に過ごせるんだ。 で、これはその準備だろ。そう考えたら何かな」 「…………」 彼は「下らない」とか言いながら、ぷいと横を向いた。照れてる照れてる。 「大体、……私はこのままでも良いと言ったのに、お前があんまり何度も同棲したいと言うから……」 それは事実だけど、俺がこの部屋に泊まって翌朝そろそろ帰るって言う度に、お前がすげえ寂しそうな顔するのも、同棲の理由に入れてくれても良いんじゃないだろうか。 「……とにかく、早く準備をしろ。このままでは明日の昼までに終わらん」 照れ隠しか、そう言って彼は自分の持ち場に戻ってしまった。 まあ確かに、このままぐだぐだして、明日の引越し業者到着までに荷造りが済んでいないなんて事になったら面倒だもんな。 俺は傍に有ったダンボールを組み立て、底をこれまた傍に置いておいたガムテープで補強してから、中に荷物を詰め込む作業を再開した。 ビッ。 詰め込んだ箱に貼り付け封をする、ガムテープを伸ばす音。剥がす音って言った方が良いのか。 貼り付ける為に剥がすってのも、何だかおかしなもんだ。…… ……そういや今までこうして離れて暮らしてたのも、ひょっとすると、明日から始まる一緒の生活の為なのかも知れない。 俺は唐突にそんな事を考えた。 ……最初からずっと一緒だったら、それが当たり前で、相手が帰っちまうのが寂しいとか、次に会うのが待ち遠しいとか、そんな気持ちも知らずに居たかも知れない。 それはそれで幸せな事だろうけど、何て言うか…… スイカは塩を掛けた方が甘くなるとか、何かそんな感じでさ。 「そんな気持ち」を知っていた方が、これからをもっとずっとグッと楽しく過ごせるんじゃないか…… 「アデュー!」 「うわっ!!」 後ろからガムテープを投げつけられ、俺は我に返った。 「が、ガルデン……いつから其処に立ってたんだ」 「喧しい!いつまで経っても作業が進まんではないか!ぼんやりしているだけなら帰れ!」 「ごめん、悪かったって。……今思ったんだけど、明日っからは俺達同じ場所に住むんだから、帰れっつっても意味無いよな」 「訳の判らん事を言うな!」 彼は尚も怒っていたが、俺が大人しく作業を再開したのを見るとまた持ち場に戻っていった。 ・ ・ ・ ビッ。 「……あっ」 黙って作業をしていると、後ろの方からしょっちゅう彼の声が聞こえてくる。 それも決まってガムテープを剥がす音の後に。 あんまりそれが続くので、気になって彼の様子を覗きに行ってみる。 「どうしたんだ?」 「あ……」 一杯に服を詰めた段ボール箱を前に、彼はばつ悪そうに俺を見上げてきた。 その手には丸められたガムテープの切れ端。 「その……貼るのが巧くいかなかったから……」 ころころとその丸めたテープを手の中で転がす彼。 元来不器用な彼の事だ、伸ばした時点でよじれて絡まったか、封をしようとして上手に真っ直ぐ貼れなかったかのどちらかだろう。 さっきまでガムテープに俺達の関係を投影していた事もあって、俺はつい苦笑してしまった。 それがまた面白くなかったのか、彼は俺に向かって丸めたテープを投げてきた。 「だ、大体、私はガムテープというもの自体好かんのだ。 すぐにペタペタとくっつくし、捩れ易いし……そもそもこのダンボールに貼るのだって、どうせいつかは剥がしてしまうのだから、無駄な事をしている様に思えてならん」 「…………」 俺は投げられたガムテープを解しながら、反論してみた。 「ガムテープは、貼る為にまず剥がすもんだけど……でも、剥がす為に貼るもんじゃあないだろ。 貼るのは、中の大事なもんをしっかりと守る為だ。この場合はな」 「………………」 彼は俺の顔をぽかんと見ていたが、やがて口を尖らせて視線を逸らし、 「……お前は、こんな時だけ理屈を捏ねるのが巧い」 呟いて、俺の手の中で元の真っ直ぐな形になったガムテープに手を伸ばし、それでしっかりとダンボールに封をした。 ――――― 「文字書きさんに100のお題」配布元:Project SIGN[ef]F様 ――――― 「ガムテープ」で真っ先に思いついたのが怖い話、そして次にエロい話。 両方ともガルデンが目と口にガムテープを貼られて転がされているお話でした。(ガルデン保護条約違反)
7月ですね。 と言う訳で本日の更新。 シュテル月間再び。「GARTERGUNS'HOSPITAL」に変な小部屋が出来ました。 宜しければ覗いてみてください。 それでは、また後程。 ――――― リュー辞苑 邪神作画……TV11話でサルトビやガルデンの顔が恐ろしい場合全てを言う。「あの回はパフ以外邪神作画やから」「しかし味がある」 飼い犬に手を噛まれる……1、TV12話のギザルの事。2、TV36話のイドロとガルデンの事。3、ラジオ版のサルトビの事。 獅子身中の虫……1、(「梵網経(下)」獅子の体内で養われている虫が、かえって獅子を滅すということから)仏の弟子なのに仏教に害を与える者。転じて、内部の者でありながらその組織などに害を与える者に言う。(大辞林 第二版より)2、ガルデンが好む作戦。大抵失敗する。 大福餅……ラジオ版のガルデンの事。外見は白いのに中身は黒い事に由来する。 爆烈丸状態……機能は多いのに、それを使いこなせない状態の事。「最近のパソコンは爆烈丸状態だがや」 ドロイム……TV32、33話で、イドロがイオリを捕らえるのに使った魔法生物。こっそり話を聞いたり、捕らえた者に電流を流したりする。エロい。 良心の権化……いつも絶妙のタイミングで邪魔を入れるサルトビの事。特に漫画版、パッフィーがガルデンの部下に捕らえられたり、ガルデンに鞭でしばかれたりするシーンの後に登場したサルトビの事。類語……妖精さん 誰であろうと心の中にうごめくどす黒い力……漫画版において、パッフィーが鞭打ちされるシーンを見て喜ぶ事全てを言う。否定はさせてもらえない。 その程度の事は計算済みだ……ラジオ版ガルデンの登場シーンより。一歩間違えれば大惨事を引き起こしかねない状況で使う。「もし妊娠したらどうするつもりだったんだ」「その程度の事は計算済みだ」 質量保存の法則を覆している……尻尾が生えても体重が変わらないダークナイト・シュテルの事。何処かに収納されているのか? ドン小西がデザインした鎧……漫画版ロードシュテル搭乗時のガルデンの鎧の事。トレンディでナウいが、着用するのに相当の勇気が要る。 覇王体系リューナイト……間違っている。 伊藤岳彦……間違っている。 シュテルビーム……邪竜形態シュテルが胸の瞳から放射する赤いビームの事。別名乳首ビーム。 庭……ガルデンの事。独語で庭の事をガルデン(garten)と呼ぶ事に由来する。 玩具「ミストロットコレクション」ではガルデンのスペルが「Garden」になっていて、いよいよ庭扱い。 負けたわけではないぞ!……負けたわけではない時に使う。「アデューが乗るゼファーには、苦戦を強いられた。だが、負けたわけではないぞ!」(by「リューナイトアニメスペシャル」) アースティア皇帝……パッフィーの事。
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