前職、低レベルなインスト稼業…(といっても一部まだ就業中)
現職、事務員(パート勤務)
転職して変わったこと
仕事内容、形態はもちろんだけど
意識が変わった。
結構複雑な事務内容を覚えるのは大変だけど
その一方で気楽になった。
現場と営業の間にあって自分の判断だけで処理できず
指示待ち仕事が多くなるのはストレスの元だけど
それでも一人請負業であるインストとはまた違う気楽さがある。
時間外事前準備や、仕事限定の自己投資をしなくてもいい。
直接、お客様に振り回されることもない。
確かにそうだ…。
でも、ふと気がついた。
例えば。
今晩必要となるテキストの確認、休講の連絡、交代要請の返事…。
要するに別の場所での、ここの仕事とは関係のない仕事の話に関して。
就業中はもちろんだけど、昼休みであれ、タイムカードを押した後であれ、
オフィス内でケータイを掛けることが出来ない自分に気がついた。
インスト業をしていた時はどうだったか。
もちろん講習中などはもってのほかだが、休憩時間、控え室等で、
ここの仕事とは関係ない案件でも平気で連絡を取っていた。
フリーの自負と、たぶんに間違ったプライド、見栄も多少あったと思う。
私用電話は職場外で。常識だ。
別件の関係のない仕事なら尚更だ。
そんな当たり前の感覚も忘れていた。
久々の会社という職場の雰囲気がそうさせる。
売上に、仕事の出来に一喜一憂する。
毎日、残業が当たり前の社員さん。
みんな一生懸命で、必死で、マジメで頑張っている人ばかり。
困った。こんな中で、どうして別の仕事の心配ができようか。
当面バイトを続ける件は面接時に申告している。
居残っても怒られはしないが、5時になればバイトのない日も引き上げる。
小さなオフィスの社員さんはまだ仕事中だ。
仕事と心中は懲り懲りだが、何だかサミシイなぁ…。
「お先に失礼します」と遠慮気味に言って。
淋しさと、気楽さを同時に味わう。
あーぁ。
少し慣れてきた途端コレだ。
なんだって。もっと楽しくやれないかなぁ、キミィ?
カレンダー通りのゴールデンウィーク。
月末の締めも無事終わり、運動がてら違う路線から帰ろうと歩いていたら、
歩道の真ん中に何やらスーパーの袋を積み上げたような白い塊が見えた。
ド近眼な私の目にはゴミ袋が散乱しているようにも見える。
それにしても何で歩道のど真ん中に…?
眉を顰め近づくとそれはゴミ袋などではなく、たくさんの白い花束の山だった。
条件反射的に親指を握り隠した。
数日前のこと、その場所で大きな事故があった。
居眠り運転の車が猛スピードで歩道の上に乗り上げ、多くの死傷者を出した。
新聞記事に載っていたように確かにその前には釣り具屋もコンビニもあった。
運転していた人も、亡くなった人も若い男性であったと記憶する。
事故を起こした車内には運転していた息子さんの両親も同乗していた。
一瞬の隙に襲い掛かる魔。
震えて足が止まりそうになる。
ましてや不謹慎にも花束の意味を不法放置のゴミ袋と勘違いするなんて。
申し訳なく冥福を祈る一方、両方の親指を強く握りしめていた。
逃げるように通り過ぎて、気づく。
…そうか。
お父ちゃんも、お母ちゃんも、もういないんだ。
霊柩車を見たら親指を隠せ。
親の死に目に会えなくなるから。
そんな迷信が全国的にあるのかどうかは知らないが。
妙に信じて子どもの頃からの癖になっていた。
死に目を看取った二親はもうこの世にはいないけれど。
たぶん、これからもそうしていくのだろうな。
親指を隠して。
Sako