2018年08月26日(日) |
あいあい傘、赤毛のアン(音量を上げろ、バルバラ、ビブリア、ボーダーL、ライ麦畑、あまねき、ファイティン、心魔師、ういらぶ、死霊館) |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※ ※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※ ※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※ ※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※ ※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※ ※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『あいあい傘』 2008年5月紹介『同窓会』などの宅間孝行脚本、監督による ヒューマンコメディ。宅間は2018年2月11日題名紹介『ラー メン食いてぇ!』などに出演の俳優でもあるが。本作は、彼 が2007年に主宰していた劇団「東京セレソンデラックス」で 上演した舞台劇を映画化したものだ。 物語の舞台は年に一度の祭りを控えた神社の門前町。祭りの ために全国からテキ屋たちが集まっている。その1人が車で 乗り付けたところに、旅行者と思われる女性が声を掛ける。 妙に親しげな彼女は、彼に街の案内を頼むが…。 その神社の鳥居前には1軒の茶屋があり、そこでカップルが 汁粉を食べると結婚できるとの言い伝えがあった。しかしそ の店の女将と亭主は苗字が異なり、入籍していないという。 そしてその家には若い娘もいた。 映画の開幕はかなり暗い感じで、そこからの展開が全く読め ない。ましてや予備知識を入れずに、時節柄コミックス原作 のラヴコメかと思って観ていた僕には、正しく衝撃の展開が 待っていたという感じだった。 実は今回記事の参考にした映画サイトの紹介文には、かなり 詳しく物語の背景が書かれており、僕的にはそれはこの映画 の興味を削ぐ感じもする。この映画は、是非とも予備知識は 入れずに観て貰いたい作品だ。 出演は倉科カナ、市原隼人。他に高橋メアリージュン、やべ きょうすけ、入山杏奈、原田知世、立川談春、トミーズ雅、 永井大らが脇を固めている。特に市原が巧みな演技で映画を 引っ張っている。 開幕はかなり暗いと書いたが、それは内容だけでなく画面も 含まれる。しかも妙な映像演出が施され、その意味が不明だ と、それには少しイラつきも感じさせた。しかしそれが最後 に解明され、さらに2段落ちのような仕掛けまである。 これには全く舌を巻くしかなかった。いやはやこういうカタ ルシスが映画を観る醍醐味と言えるものだ。舞台では不可能 な展開と思うが、オリジナルからこれを編み出した脚本も称 えたい。久し振りに映画を堪能したと言える。 因に舞台劇は立川の役柄の視点で描かれたそうで、それが映 画では倉科の視点に変えられているものだが。自分の年齢で 観ると、やはり前者の思いが気になる。それが役柄の存在感 が薄い中でしっかり描かれているのも見事と言える。 ただし僕の年齢層は最も映画を観ない世代でもあるようで、 その連中にどうやってアピールするかも重要なようだ。個人 的には僕らの世代に向けた極めて優れた作品だと思うので、 是非とも成功させて欲しいものだ。 公開は10月26日より、東京はTOHOシネマズ日比谷他にて全国 ロードショウとなる。
『赤毛のアン初恋』 “Anne of Green Gables: The Good Stars” 『赤毛のアン卒業』“Anne of Green Gables: Fire & Dew” 2017年3月12日題名紹介したL・M・モンゴメリ原作映画化 の続き。この3部作によって、1908年に発表され、後に多数 の続編が創作されたシリーズの第1巻が完結する。 前作経緯で老兄妹の家に暮らすようになったアンは、学校で 最初に大喧嘩をしたギルバートとの確執はそのままに、腹心 の友であるダイアナらと共に大自然に包まれた素晴らしい暮 らしを続けている。 そんな中でアンの気掛かりは、徐々に衰えを見せ始めた養父 マシュウの体調だった。その一方でダイアナの家での外泊や 新任牧師夫妻との交流。さらには学校に新たに来た女性教師 など、様々な出来事がアンを成長させて行く。 そして、アンが「アーサー王伝説」に感動してダイアナらと 共に行った野外演劇では、エレインに扮したアンの乗った筏 が増水した川に流され、危機一髪のところをギルバートに救 われるのだったが…。 と、ここまでが『初恋』の展開。そして『卒業』では、大学 進学を目指して学業でもギルバートと競争を始めたアンが、 遂にどの大学にも行ける奨学金を手にするが…。地元の学校 で教師になることを決意する姿が描かれる。 出演は、オーデションで選ばれたエラ・バレンタインが前作 に続けてアンを演じ、共演にはハリウッド俳優のマーティン ・シーン。他に舞台女優であり演出家でもあるサラ・ボッツ フォード。 さらに、ジュリア・ラロンド、ドゥルー・ヘイタオグルー、 ステファニー・キンバーらの若手がアンの友人たちを演じて いる。 本作を観ていると、まず豊かな自然に心を惹かれる。僕は神 奈川県湘南の街中の生まれだが、自分自身が子供の頃には、 それでも少し行けばまだこんな自然が広がっていたように記 憶している。 それは、今でも郊外に行けば田園も広がってはいるが、その 中には住宅団地が建設されて、最早自然とは呼べない。だか ら僕にはノスタルジーに感じられた映像が、今の観客にはそ うとは取れないのが現実かも知れない。 そんな状況の中で、本作について僕は、特に女性が若い頃に 読むべき定番の物語だとも思っていたが、現状ではそうでは ないのかもしれないという考えも浮かんでくる。 実際に1年前の前作の公開では、手堅い観客動員はあったも のの、本来観て貰いたい若年層への浸透は今一つだったよう で、その続きである本作にもなかなか厳しい状況ではあるよ うだ。 また原作とのタイアップでも、20種類以上あるという翻訳の 出版では、正に定番商品であるが故の新たな読者の開発にも 腰が重いようで、プロモーション用の帯の装着やポスターの 1枚の貼り出しも難しいとのこと。 なかなか厳しい状況のようだが、描かれているのは友情や血 は繋がっていなくても家族の物語であり、これらはノスタル ジーなどではなく、今の若い人たちが観て感じて欲しいもの なのだが。 公開は『初恋』が10月5日より、『卒業』が11月2日より、 東京は109シネマズ二子玉川他で原作出版110周年記念として 全国順次ロードショウとなる。
この週は他に 『音量を上げろタコ! なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!』 (2013年4月紹介『俺俺』などの三木聡原案、脚本、監督に よる作品。登場するのは4オクターブの音域と驚異的な声量 で人気絶頂のロック歌手。しかし彼の歌声は「ドービング」 によって人工的に作られたものであり、長年の酷使で限界に 近づいていた。その恐怖に怯える彼は街に飛び出し、そこで 出会った圧倒的に声の小さいストリートミュージシャンに、 自分の過去を重ね合わせるが…。出演は阿部サダヲ、吉岡里 帆。他に千葉雄大、ふせえり、松尾スズキ、田中哲司、麻生 久美子、森下能幸、小峠英二、岩松了らが脇を固めている。 テーマ的には「スタア誕生」を思わせるが、物語の後半はか なりぶっ飛んだ展開で、これぞ三木ワールドといった感じの 作品になっている。ただ主人公らの来歴の辺りがもう少し欲 しかったかな。でも阿部の強烈なパフォーマンスも観られる し、ファンは満足できるだろう。公開は10月12日より、東京 はTOHOシネマズ日比谷他にて全国ロードショウ。)
『バルバラ セーヌの黒いバラ』“Barbara” (2013年2月紹介『コズモポリス』などの俳優マチュー・ア ルマリックが脚本、監督、出演を務め、2017年カンヌ国際映 画祭「ある視点部門」でポエティックストーリー賞を受賞し た作品。1997年に没したフランスの伝説的歌手バルバラを描 いた映画を撮るという設定で、その世界にのめり込んで行く 主演女優と映画監督の姿が描かれる。主演はアマルリックの 元パートナーであるジャンヌ・バリバール。作品は実話のエ ピソードに基づいていると思われるが、その辺の事情が音楽 に疎い僕にはよく判らなかった。でもまあアーティストが全 身全霊を込めて作品に向かって行く姿が、その作品の登場人 物とそれを演じる女優という両面から追及されていることは 理解できる。バルバラという歌手はフランスでは神話とまで 言われるようだが、そんなある種の神秘性も本作の描く目的 なのだろう。公開は11月16日より、東京は渋谷Bunkamura ル ・シネマ他で全国順次ロードショウ。)
『ビブリア古書堂の事件手帖』 (2011年からKADOKAWAメディアワークス文庫より刊行されて いる三上延原作、文庫本書き下ろしシリーズからの映画化。 同作からは2013年に剛力彩芽の主演によるドラマ化があった が、今回は黒木華と野村周平のW主演で長編映画化された。 物語は原作の第1巻をベースにしたもので、夏目漱石『それ から』と太宰治『晩年』の古書を巡って本の落書きに秘めら れた物語が描かれる。作中では古書に関する薀蓄も多く聞か れ、本好きには堪らない作品だ。共演は成田凌、夏帆、東出 昌大。ただし映画化の脚本にはかなりアレンジが加えられて いるようで、これは論議を呼ぶことになるのかな? 脚本は 2017年1月紹介『3月のライオン』などの渡部亮平と2016年 12月4日題名紹介『傷だらけの悪魔』などの松井香奈。監督 は2017年6月18日題名紹介『幼な子われらに生まれ』などの 三島有紀子が担当した。公開は11月1日より、東京はTOHOシ ネマズ日比谷他にて全国ロードショウ。)
『ボーダーライン ソルジャーズ・デイ』 “Sicario: Day of the Soldado” (2016年1月紹介『ボーダーライン』に登場したベニチオ・ デル=トロとジョッシュ・ブローリンのキャラクターを中心 に、米墨国境での違法移民と麻薬カルテルを巡る新たな戦い を描いた作品。本作の作戦は、麻薬王の娘を誘拐し、彼女を 対抗するカルテルの本拠地に拉致することでカルテル間の抗 争を引き起そうというもの。それは当然違法な作戦だった。 ところが事態は思わぬ方向に展開し、作戦は中止。軍以外の 当事者の抹殺が指令される。その状況下で麻薬王に家族を殺 された元検事と麻薬王の娘の必死の逃亡が始まるが…。脚本 は前作でオスカー候補になったテイラー・シェリダン。監督 にはイタリア人のステファノ・ソッリが起用された。共演は 2017年7月16日題名紹介『トランスフォーマー』などのイザ ベラ・モナー。他にジェフリー・ドノバン、キャサリン・キ ーナーらが脇を固めている。公開は11月16日より、東京は角 川シネマ有楽町他で全国ロードショウ。)
『ライ麦畑で出会ったら』“Coming Through the Rye” (2007年9月紹介『チャプター27』などにも描かれたJ・ D・サリンジャーの小説に影響を受けた若者を主人公にした 作品。本作の背景は1969年。級友と馴染めず孤独な高校生活 を送っている主人公は小説に感銘を受け、演劇作品にするこ とを思いつく。しかし原作者の許可が必要と教えられ、演劇 サークルで出会った女友達と共に隠遁生活を送る作家探しの 旅に出るが…。2010年に没した原作者は生前に一切の映画化 を認めていなかったそうで、これは苦肉の策なのかな。でも ある意味原作より可愛い青春作品に仕上がっている。製作、 脚本、監督は1952年生まれで、テレビ出身のジェームズ・サ ドウィズ。出演は、2017年3月26日題名紹介『パトリオット ・デイ』などのアレックス・ウルフと、2010年公開『ラブリ ー・ボーン』などのステファニア・オーウェン。それにクリ ス・クーパー。公開は10月27日より、東京は新宿武蔵野館他 で全国順次ロードショウ。)
『あまねき旋律』“kho ki pa lü” (インド北東部の山間に位置するナガランド州。ナガという 民族の暮らすその土地では、棚田での農作業はグループごと に行われ、そこで「リ」と呼ばれる伝承歌が歌われる。それ は1人が声を発するとそれに呼応して他の誰かが歌い出し、 それが山々に広がって行く。その内容は季節や友愛など生活 の全てが歌で表現される。そんな見事な伝承歌が次々に披露 される。しかしナガ族の歴史は平坦ではない、キリスト教の 伝来で賛美歌が強要され、伝承歌が消えそうになったことも ある。そして1950年代からはインド軍の侵攻で独立を求める ナガ族との間に武力対立も発生する。その対立は終結してお らず、人類史上最も長い独立抗争とも言われているそうだ。 そんな歴史や社会状況も織り込みながら、伝承歌の世界が展 開される。監督はインド南部出身のアヌシュカ・ミーナーク シとイーシュワル・シュリクマール。公開は10月6日より、 東京はポレポレ東中野他で全国順次ロードショウ。)
『ファイティン!』“챔피언” (2017年7月紹介『新感染ファイナル・エクスプレス』など のマ・ドンソク主演で、アームレスラーを描いた作品。主人 公は幼い頃に養子に出され、成長したアメリカで全国チャン ピオンにもなったという男。しかし東洋人であるが故に八百 長の濡れ衣で競技を追放された。そんな男に母国での復帰の 話が舞い込む。しかもそこには母との再会の期待もあった。 こうして帰国した男は母の家を訪ねるが、母は既に他界し、 家には娘と称する母子の一家が暮らしていた。そんな中で競 技が始まるが、そこにも八百長の陰が絡んでくる。共演は、 2017年6月18日題名紹介『春の夢』などのハン・イェリと、 2015年DVD発売『バトル・オーシャン』などのクォン・ユ ル。腕相撲というのは多少のテクニックはあるが間違いなし の力勝負だから観ていてそれだけで面白い。しかも巧みな構 成で競技自体も楽しめる作品になっている。公開は10月20日 より、東京はシネマート新宿他で全国順次ロードショウ。)
『心魔師』 (早稲田大学在学中の作品で評価され、東京藝術大学に進学 して黒沢清らに師事したという今野恭成監督が、日中若手映 画人合同プロジェクトの第1弾として制作したサイコホラー 作品。富士山麓の町で猟奇殺人事件が発生。応援に呼ばれた 不眠症の捜査一課刑事が捜査に加わる。そして町外れの精神 病院に潜入した刑事は、入院中の少女と出会うが…。出演は ロンドンで演技の勉強をしてきたという生津徹と、映画初主 演の真崎かれん。他に柳憂怜、小橋めぐみ、竹中直人らが脇 を固めている。最終的なテーマは映画ではそれなりの作品も 多く存在するもので、評価はそこに新たなものを付け加えら れたか、ということになる。本作にそれがないとは言わない ものの、伏線などが少し弱いかな。特に結末は、これでは物 語の全体が意味不明になってしまうもので、映画だからそれ が許されるとは言い切れない。公開は10月27日より、東京は 新宿シネマカリテ他で全国順次ロードショウ。)
『ういらぶ。』 (星森ゆきも原作コミックスの実写映画化。同じマンション で一緒に育った高校生の男女4人組。その中の1組の恋愛模 様が新たなライヴァルの登場によって劇的に展開する。出演 はジャニーズJr.「Mr.KING」の平野紫耀と、2018年4月1日 題名紹介『ママレード・ボーイ』などの桜井日奈子。さらに 2017年9月3日題名紹介『覆面系ノイズ』などの磯村隼人、 2017年2月紹介『サクラダリセット』などの玉城ティナと健 太郎、2017年7月紹介『東京喰種』などの桜田ひよりらが脇 を固めている。脚本は2010年9月紹介『大奥』などの高橋ナ ツコ、監督は2009年9月紹介『ブラック会社に務めて…』な どの佐藤祐市が担当した。後半はリゾート地が舞台になるな ど、まあ何と言うか少女コミックスの定番という感じの作品 で、これをジャニーズ系の主演で撮ると、またリピーター続 出の興行になるのかな。公開は11月9日より、東京はTOHOシ ネマズ日比谷他にて全国ロードショウ。)
『死霊館のシスター』“The Nun” (2016年6月紹介『死霊館 エンフィールド事件』など実話 に基づく怪奇現象を扱うシリーズの最新作。実は2013年9月 紹介第1作の後に2015年公開『アナベル 死霊館の人形』が あったが紹介を割愛していた。さらにその続編の2017年8月 13日題名紹介『アナベル 死霊人形の誕生』もあるから、本 作は第5弾になるかな。ただし本作も番外編という感じで、 1952年にルーマニアの修道院で起きた事件が描かれる。物語 は修道女がキリスト教では禁じられた自殺をしたという事態 に、バチカンから調査員が派遣されるというものだが。実は その修道院には古代から封じられてきた地獄の門が存在して いた…。出演は本編主演ヴェラ・ファーミガの妹のタイッサ ・ファーミガと、2014年1月紹介『マチェーテ・キルズ』な どのデミアン・ビチル。映画は正しくお化け屋敷感覚で、そ の脅かしぶりが存分に楽しめた。公開は9月21日より、東京 は新宿ピカデリー他で全国ロードショウ。) を観たが、全部は紹介できなかった。申し訳ない。
2018年08月19日(日) |
ちいさな英雄 カニとタマゴと透明人間(ジャクソンハイツヘようこそ、ごっこ、いつもの月夜に米の飯) |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※ ※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※ ※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※ ※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※ ※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※ ※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『ちいさな英雄 カニとタマゴと透明人間』 スタジオジブリ出身の西村義明プロデューサーが、2017年公 開『メアリと魔女の花』の製作のために立ち上げたスタジオ ポノック。その会社が新たに手掛けるレーベル「ポノック短 編劇場」の第1弾。 「劇場」は3作で構成され、その1本目は2010年公開『借り ぐらしのアリエッティ』などの米林宏昌監督が初のオリジナ ルストーリーに挑戦した「カニーニとカニーノ」。 と言っても、お話は『アリエッティ』に繋がる小さな人が主 人公で、水中を自由に泳ぎながら蟹の爪を道具に小魚を捕え て暮らしている父親と息子と娘の生活が描かれる。 そして兄がようやく1人で漁ができるようになり、暮らしぶ りも安定するかに見えたが、彼らを一飲みにする大形魚や、 急な増水など脅威は絶えない。そして…。 一家の母親の行動は沢ガニの生態を基にしているのかな? でも生物としてのカニ自体は他にも登場しており、その辺は ファンタシーな登場人物ということのようだ。 声優には2016年2月紹介『スキャナー』などの木村文乃と、 2017年7月紹介『ナミヤ雑貨店の奇跡』などの鈴木梨央らが 起用されている。 2本目は、高畑勲の右腕と言われた百瀬義行監督が2002年に ジブリで撮って以来の第2作で「サムライエッグ」。 卵アレルギーに苦しむ少年を描いた実話に基づく物語とのこ とで、かなりリアルにその恐怖と、それに対決する主人公の 勇気が描かれる。 声優には『ナミヤ雑貨店の奇跡』などの尾野真千子、2017年 2月26日題名紹介『破裏拳ポリマー』などの篠原湊大、同年 8月6日題名紹介『ナラタージュ』などの坂口健太郎が起用 されている。 そして3本目は、多くのジブリ作品で作画監督を務めてきた 山下明彦監督の「透明人間」。 登場するのはH・G・ウェルズが創造したような透明人間。 ただし着衣はしているが、顔に包帯を巻くようなことはして おらず、見るからに透明人間だ。しかも体重もないらしく、 常に消火器などの重いものを持って行動している。 という展開だが、実は彼の存在も「透明」のようで、職場な どでも無視され、題名自体が寓意なのかとも思わせる。そん な彼が盲導犬を連れた人物と出会い…。 声優には2017年9月24日題名紹介『エルネスト』などのオダ ギリジョーと、2013年11月紹介『祖谷物語』などの田中泯が 起用されている。 3作品は、内容の分類ではファンタシーであったり、実話で あったり、SFであったりとヴァラエティに富んでいるが、 いずれもがある局面で勇気を持つ、ちいさな英雄たちの物語 ということになる。 上映時間も全体で54分というのは、ちょっと映画を観るには 良い作品と言えそうだ。 公開は8月24日より、東京はTOHOシネマズ日比谷、TOHOシネ マズ府中他で全国ロードショウとなる。 なお25日には日比谷で舞台挨拶。また府中では監督らによる ティーチインも行われるようだ。
この週は他に 『ニューヨーク、ジャクソンハイツヘようこそ』 “In Jackson Heights” (2018年3月18日題名紹介『ザ・ビッグハウス』の想田和弘 監督「観察映画」を思い出すような、ニューヨークの下町を 記録したドキュメンタリー。その町は1990年にゲイの若者が 殺されたことに端を発するゲイパレードの発祥地ともされ、 そのためマイノリティに優しく、多国籍化によって167の言 語が話されているとも言われる。ところがそんな町に再開発 特区の動きが顕著化し、古くからの商店には立ち退きが迫ら れ、育まれてきた文化が消え去ろうとしている。そんな町が ナレーションもなく、ただ人々の活動を記録するだけで綴ら れる。そこでは様々な音楽や宗教が入り混じるように紹介さ れ、また高齢化による老人たちの繰り言のような会話や、一 方では立ち退きを迫られる商店主の悩みなども聞かれるが、 その背景は常にマイノリティの問題に帰結する。長尺だがそ れも納得の作品だ。公開は10月より、東京は渋谷シアター・ イメージフォーラム他で全国順次ロードショウ。)
『ごっこ』 (2016年に46歳で夭逝した大阪府出身の漫画家小路啓之が、 2010−12年に雑誌連載した作品の映画化。映画化は原作者の 生前に発表され、2017年に撮影されたが、諸般の事情で公開 が延期されていた。40歳目前ニートの男性が子連れで故郷の 町に帰ってくる。そこには幼馴染みの婦人警官もいて、彼女 は男性を「パパやん」と呼ぶ娘の存在に疑いを持つが…。や がて彼らを取り巻く様々な事情が明らかになる。出演は千原 ジュニア、優香、2017年9月17日題名紹介『ユリゴコロ』で 主人公の幼少期を演じた平尾菜々花。他にちすん、清水富美 加、秋野太作、中野英雄、石橋蓮司らが脇を固めている。脚 本は2017年12月10日題名紹介『サニー/32』などの高橋泉。 共同脚本と監督を『ユリゴコロ』の熊澤尚人が務めた。後半 に怒涛の展開を設けるのは原作者の手法のようだが、映画も それを見事に映像化している。公開は10月20日より、東京は 渋谷ユーロスペース他で全国順次ロードショウ。)
『いつもの月夜に米の飯』 (2017年10月15日題名紹介『最低!』で主演者の1人だった 山田愛奈の初単独主演作。母親が嫌いで故郷の新潟を離れ、 1人で東京の高校に通っていた女子の許に母親が失踪したと 連絡が来る。そこで実家の居酒屋に戻った彼女は若い料理人 と会い、主人のいない店の切り盛りを始めるが。常連客との 会話の中で母親の実像が見えてくる。そして彼女は料理人に 惹かれて行くが…。共演は和田聰宏。他に高橋由美子、渡辺 佑太朗、小倉一郎、角替和枝、春花、MEGUMI、森下能幸らが 脇を固めている。脚本と監督は2015年公開『おんなのこきら い』などの加藤綾佳。ご当地ものと言える作品だが、主人公 と母親、料理人の三角関係は面白かった。ただし故郷の町と 漁港との距離感や、地元の食材などはもう少し見たかったか な。それとエンドロールの後のシーンは必要かな? やるな らもう少し工夫が欲しかった。公開は9月8日より、東京は 新宿シネマカリテ他で全国順次ロードショウ。) を観たが、全部は紹介できなかった。申し訳ない。
2018年08月12日(日) |
テルマ(運命は踊る、Workers、プーと大人になった僕、エンジェル、銃、カスリコ、スカイスクレイパー、クワイエット・プレイス) |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※ ※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※ ※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※ ※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※ ※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※ ※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『テルマ』“Thelma” 2016年10月紹介『母の残像』に続く、ノルウェーの俊英ヨア キム・トリアー監督による2017年の作品。本作は世界各地の 批評家協会で最優秀外国語映画賞に選ばれている。 物語の始まりは都会の大学。1人の女子学生が痙攣の発作で 倒れるが、医学的には何の疾患もないと診断される。しかし 彼女が倒れると同時に、キャンパスの上空を飛ぶ鳥の群れに 変調が生じていた。 それでも、最初は孤独だった彼女にも友達ができ、カフェや ダンスに青春を謳歌するが、彼女は宗教上の理由で酒を口に したことがないなどの生い立ちも判明する。そして彼女は、 診察した医師に両親に報告しないことを頼んでいた。 そんな彼女の両親は、田舎で開業医の父親と足が不自由で車 椅子生活の母親だったが。彼女の下宿を訪ねてきた両親は、 必要以上に彼女の行動を心配しているようにも見える。それ でも彼女は気丈に振舞っていた。 ところが症状が繰り返し、MRI診断でも異常はなく、遂に 脳波計で精神的な負荷をかけた検査が行われることになる。 そしてその検査が佳境になった時、恐れていた事件が発生す る。 出演は、2018年のベルリン国際映画祭でShooting Star賞を 受賞したエイリ・ハーボー。他にカヤ・ウィルキンス、ヘン リク・ラファエルソン、2012年1月紹介『孤島の王』に出演 のエレン・ドリト・ピーターセンらが脇を固めている。 脚本は、ヨアキムと『母の残像』も手掛けたエスキル・フォ クトの共同で執筆されている。因にフォクトは、2014年の脚 本監督作品『ブラインド 視線のエロス』でもピーターセン とラファエルソンに夫婦を演じさせている。 学園が舞台であるなどの設定には、2013年10月にリメイク版 を紹介したスティーヴン・キング原作『キャリー』を思い出 させる。特に宗教によってそれを封じようとするなどの親側 の意向は、正に流れを踏襲しようとしているようだ。 しかしノルウェーの俊英たちはそこからの展開を全く別の方 向に向ける。それは科学的な検査の様子であったり、両親へ の想いであったり。そして主人公自身の目覚めに向けての展 開が観客の心にも沁みるものになって行く。 それにしても、巻頭の描写が後で深い意味を持つなど、物語 の構成にも様々な趣向が凝らされており、それは巧みと言え る作品だった。ヨアキム・トリアー×エスキル・フォクトの コンビには、これからも期待を寄せるものだ。 公開は10月20日より、東京はYEBISU GARDEN CINEMA、ヒュー マントラストシネマ有楽町他にて、全国順次ロードショウと なる。
この週は他に 『運命は踊る』“Foxtrot/פוֹקְסטְרוֹט” (運命の皮肉を描いたイスラエル映画。2017年のヴェネチア 国際映画祭で審査員賞など3冠を獲得した作品。中年夫婦の 許に息子の戦死報が届き、混乱した中で手続きが進む内、そ れが誤報であったことが判明する。そして場面は砂漠の検問 所で、退屈な毎日を送る息子の姿に移るが…。脚本と監督は 2009年ヴェネチア国際映画祭金獅子賞を受賞のサミュエル・ マオス。出演は前回題名紹介『嘘はフィクサーのはじまり』 などのリオル・アシュケナージと、2008年1月紹介『ジェリ ーフィッシュ』などのサラ・アドラー。前半は戦死の報に取 り乱す夫婦の様子や、それらに対する軍関係者の対応などが 克明に綴られ、それは冷酷とも戯画化とも取れる。それが一 転、息子が送る日々の様子にはシュールな雰囲気すら漂い、 何とも不思議な感覚の作品だ。これがイスラエルという国の 反映でもあるのだろうか。公開は9月29日より、東京は新宿 武蔵野館他で全国順次ロードショウ。)
『Workers 被災地に起つ』 (労働者の協同組合(NPOワーカーズコープ)の活動を描 いたドキュメンタリー。この組合の理念は、「働くこと」を 通じて人と人とのつながりを取り戻し、コミュニティの再生 を目指す、とするもの。その活動は2013年公開『Workers』 でも紹介されたようだ。そして本作では、その組合が3・11 の後で何を為しえたかが描かれる。僕は前作を観ておらず、 この団体自体も不知だったので正直驚かされた。それは原始 共産主義にも通じるが、ある種の理想郷と言えるもの。その 活動が、働く場所もなく高齢者ばかりが残った東北の被災地 で展開される。具体的には岩手県大槌、宮城県気仙沼などで の老人や障害児との共生に始まり、宮城県登米では林業の再 生や炭焼きの復活などにも繋がる。理想論かもしれないが、 国の全体が過疎や高齢化の時代に、これが日本の進むべき道 とも思わされた。公開は10月20日より、東京はポレポレ東中 野他で全国順次ロードショウ。)
『プーと大人になった僕』“Christopher Robin” (1926年に発表されたA・A・ミルン原作から、1960年代に はディズニーのアニメーションでも人気を博したヌイグルミ が主人公の児童文学を基に、その持ち主だった少年が大人に なった世界を実写で描いたディズニー作品。成長してプーた ちの住む森に別れを告げた少年は家庭を持ち、家族を守る仕 事人間になっていたが…。出演はユアン・マクレガー。監督 は2013年7月紹介『ワールド・ウォーZ』などのマーク・フ ォースターが担当した。同旨の作品では2010年『トイ・スト ーリー3』が先にあるが、本作では少年の年回りなどの関係 で時代設定が限定され、欧米人にはノスタルジーに感じるで あろう世界が展開する。その辺が僕には少し辛かったかな。 でもまあプーが中心の世界はそのままだし、物語も原作者が 書いたらこうなったであろうと思える展開で、それは日本人 のファンにも受け入れられるものだ。公開は9月14日より、 東京はTOHOシネマズ日比谷他で全国ロードショウ。)
『エンジェル、見えない恋人』“Mon ange” (透明人間の少年と視覚障碍者の少女という究極のカップル を描いた恋愛映画。パートナーの失踪で絶望の淵に沈み、精 神病院に収容された女性が密かに出産した子供は透明人間だ った。そして世間とは隔絶して育てられた少年はある日、窓 から見える家に住む少女に目を留める。その少女は盲目で、 少年は自らの秘密を知られないまま2人は恋に落ちるが、少 女に視力を取り戻すチャンスが訪れる。そして数年後、視力 を得た少女が家に戻ってくるが…。脚本と監督は、ベルギー 出身で俳優としても活躍するハリー・クレフェンが手掛け、 製作は2016年公開『神様メール』などのジャコ・ヴァン・ド ルマルが担当した。殆んど1アイデアの作品で、捻りと言え るのは途中で少女が視力を得るという程度だが、そんな物語 を誠実に描いているのは評価できる。公開は10月13日より、 東京はヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館他で 全国順次ロードショウ。)
『銃』 (2017年11月26日題名紹介『悪と仮面のルール』などの中村 文則の原作を、2017年10月8日題名紹介『嘘八百』などの武 正晴脚色、監督で映画化。ふとしたことで実弾入りの拳銃を 手に入れた若者が、その魔力に取り憑かれたかように自らの 存在を意識し、女性たちと出会い振る舞いも変わって行く。 しかしそこに刑事が現れ…。出演は村上虹郎、広瀬アリス、 モデル出身の日南響子。他に岡山天音、サヘル・ローズ、リ リー・フランキーらが脇を固めている。拳銃がリボルバーだ と通常6発込められる銃弾の数が気になるが、本作では発射 される数は4発、それに2発が残される。これで計6発は話 が矛盾するが、最後に発射される2発にはいろいろ考えられ るところもあり、矛盾は解消できる。ただ最初に弾倉を開け たときにフル装填に見えた感じがし、それと最後に弾倉に残 された1発との関連が気になったところだ。公開は11月17日 より、東京はテアトル新宿他で全国ロードショウ。)
『カスリコ』 (日本シナリオ作家協会選出の新人シナリオコンクールで、 2016年度の大伴昌司賞準佳作を受賞した國吉卓爾の脚本を、 殺陣師、映画監督の高瀬将嗣が映画化した作品。昭和40年代 の高知を舞台に、良い腕を持ちながら賭博で身を持ち崩した 板前が、カスリコと呼ばれる賭場の下働きとなり、賭場の常 連客など様々な人たちとの交流を通じて立ち直って行く姿を 描く。とは言っても違法賭博の話であり、さらにそこに時代 背景に基づく陰も落ちてくる。出演は石橋保、宅麻伸。他に 高橋長英、小市慢太郎、中村育二らが脇を固めている。昭和 40年代の後半は僕も大学生で、知人の作家などから違法賭博 の話を聞いたこともあるが、本作にはそんな時代が丁寧に描 かれている。それは作者たちの憧れだったのかもしれない。 そんな反社会的ではあるが日本文化の一端が、記録として再 現されているとも言える作品だ。公開は11月3日より、高知 あたご劇場を皮切りに全国順次ロードショウ。)
『スカイスクレイパー』“Skyscraper” (香港に新築された高さ1000mの超高層ビルを舞台に、好漢 ドウェイン・ジョンスン演じる片足義足の元FBI人質救出 員が、燃え盛る上層階に取り残された家族救出のため、火災 を起こした犯罪集団と闘いを繰り広げる。超高層の火災とい うと1974年『タワーリング・インフェルノ』を思い出すが、 時代も変わると原因や結果も変わってくる。特に本作では、 こんな事件を引き起こす犯罪集団の動機も気になるが、その 辺が納得できるように描かれていた。そしてアクションも、 いやはやこれは凄いと言えるものになっている。勿論、それ は無理だろうという展開も満載だが、それを楽しむのが本作 だと言える作品だ。共演は2011年9月紹介『スクリーム4』 などのネーヴ・キャンベル。他に、2017年4月紹介『ゴース ト・イン・ザ・シェル』などのチン・ハン、2015年1月紹介 『プリデスティネーション』などのノア・テイラーらが脇を 固めている。公開は9月21日より、全国ロードショウ。)
『クワイエット・プレイス』“A Quiet Place” (2014年6月紹介『ALL YOU NEED IS KILL』などのエミリー ・ブラントが、夫のジョン・クラシンスキー脚本、監督で、 さらに夫婦共演も果たしたSFサスペンス。設定は音に反応 する何かによって人類が滅亡に瀕している世界。そんな中で その夫婦と子供たちは通路に砂を敷くことで足音も立てない ようにした場所で暮らしていた。しかし様々な出来事が徐々 に彼らを追い詰めて行く。上記の『エンジェル』と共に本作 も1アイデアの作品だが、両作共に詰めの甘さを感じる。特 に本作では、聴覚は鋭敏でも盲目の敵に対して、単純なブー ビートラップも含めて、打つ手が何もないとは思えない。で もまあそんなことは思いつつも、ハラハラドキドキはしてし まう作品だ。共演は2018年1月紹介『ワンダーストラック』 のミリセント・シモンズと、4月題名紹介『サバービコン』 のノア・ジュプ。公開は9月28日より、東京はTOHOシネマズ 日比谷他で全国ロードショウ。) を観たが、全部は紹介できなかった。申し訳ない。
2018年08月05日(日) |
ルパ・パト/ライダー(嘘はフィク、ガンジス、3D彼女、モルゲン、アント、若おかみ、スカイL、ギャングース、彼らの原発、パパはわる) |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※ ※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※ ※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※ ※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※ ※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※ ※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー en film』 『劇場版 仮面ライダービルド Be The One』 毎夏恒例、お子様番組の2本立て。 1本目の「スーパー戦隊」は42作目だそうで、異世界からの 犯罪集団「ギャングラー」と、対抗するルパンレンジャー、 さらにその好敵手パトレンジャーによる3巴の戦いに、新た に来日した私立探偵が参戦する。 そして早速、探偵が到着した空港で戦いが始まり、その戦い の最中にリーダー格のルパンレッドとパトレン1号が異世界 に連れ去られ…。果たして2人は異世界を脱出し、ギャング ラーの犯罪を止めることができるのか? 設定はテレビシリーズのままのようだが、物語は視聴者では ない僕にも判り易く展開されていた。因にタイトルの末尾は フランス語で、「アン・フィルム」とルビが振られているも のだ。 出演は、伊藤あさひ、結木滉星、濱正悟、横山涼、工藤遥、 奥山かずさ、元木聖也と温水洋一。他に三ツ矢雄二、茶風林 らが声優を務める。そしてゲストにココリコの田中直樹が出 演している。 2本目の「仮面ライダー」は通算29作目。日本が3分割され た世界を背景に、3国間の戦いの中で暗躍する謎の組織と仮 面ライダーとの闘いが描かれる。そして映画では3分割され た国家が新たな形態で統合されるが…。 そこでは民衆の心を操ることで、仮面ライダーを敵と見做す 扇動が行われ、さらにその裏では地球を最終滅亡に導く謀略 が進められていた。 出演は、犬飼貴丈、赤楚衛二、高田夏帆。そしてゲストには 勝村政信、藤井隆、松井玲奈らが登場する。 お話のメインは戦隊ものと同様に敵を倒すだけだが、本作で は少し背景が複雑で僕としてはその辺を理解するのに、多少 調べる必要があった。でもまあ映画館まで観に行こうという 観客層にはこれで良いのだろう。 ただ、戦いの中に登場する究極のアイテムの始末が判然とせ ず。それは回収しているのだろうと想像は出来るものの、も う少しその辺の描写を明確にして欲しかったかな? 回収と 思えるシーンはあるが、はっきりしなかった。 しかし2本立てで上映時間が合計95分では、それも致し方な いのだのだろう。とは言うものの「仮面ライダー」に関して は、出来たら1本立てで、しっかりとした展開の作品も観た い気はしたものだ。 公開は8月4日より、全国ロードショウは始まっている。
この週は他に 『嘘はフィクサーのはじまり』“Norman” (リチャード・ギアの主演で、政治の舞台裏に暗躍するフィ クサーの実態を描いた作品。主人公は資産家に接近する道具 としてイスラエル政府の若手閣僚に目を付ける。その目論見 は失敗するが、やがてその閣僚がイスラエルの首相となり、 主人公はその人脈を駆使してフィクサーとしての活動を始め る。しかしそれがスキャンダルを引き起こす。首相が和平の 推進派で、その失脚は戦争の引き金となる。そんな国際情勢 の中で物語が進行する。共演は2014年公開『オオカミは嘘を つく』などのリオル・アシュケナージ。他にスティーヴ・ブ シェミ、マイクル・シーン、シャルロット・ゲンズブールら が脇を固めている。脚本と監督は『ボーフォート』『フット ノート』で2度のアメリカアカデミー賞外国語映画部門への ノミネートを果たしたヨセフ・シダー。結末に承服は出来な いが、これがイスラエルのやり方だろう。公開は10月より、 東京はシネスイッチ銀座他で全国順次ロードショウ。)
『ガンジスに還る』“Hotel Salvation/Mukti Bhawan” (ガンジス河畔で仏教とヒンドゥー教の聖地とされるバラナ シ(ヴァーラーナシー)を舞台に、死期を悟って当地に向う父 親と、それに付き添うビジネスマンの息子の姿をユーモアを 込めて描いた作品。そこには「解脱の家」と呼ばれる宿があ り、そこでは2週間を基本に宿泊が許される。そして解脱後 には葬儀も行ってくれるようだ。死期を悟るということが僕 にはまだ判らないが、登場する「解脱の家」では日常的に起 きていること。そんな物語と川岸で催行の壮大な荼毘の様子 が、セミドキュメンタリーのような感覚も含めて描かれる。 出演は、2016年12月紹介『汚れたミルク』などのアディル・ フセイン。脚本と監督は弱冠27歳のシュバシシュ・ブティア ニが実在する「解脱の家」での取材を基に作り上げた。なお 劇中に『空飛ぶ円盤』というテレビ番組が出てくるがこれも 実在かな? 公開は10月27日より、東京は岩波ホール他で全 国順次ロードショウ。)
『3D彼女 リアルガール』 (2017年9月3日題名紹介『覆面系ノイズ』などの中条あや みと、2018年7月15日題名紹介『青夏』などの佐野勇斗の共 演で、那波マオ原作同名コミックスの実写映画化。佐野が演 じるのは、恋愛経験ゼロのアニメオタク男子。ところがひょ んなことから中条扮するリア充美少女に気に入られ、彼女の 猛烈なアプローチに最初は新手の苛めかと戸惑うが…。共演 は清水尋也、恒松祐里、上白石萌歌。他に三浦貴大、濱田マ リ、竹内力、神田沙也加らが脇を固めている。脚本と監督は 2017年7月23日題名紹介『あさひなぐ』などの英勉。なお脚 本は、『仮面ライダーエグゼイド』のスピンオフ作品などを 手掛ける高野水登との共同になっている。コミックスが原作 ということでストレートなラヴコメかと思いきや、要所に登 場するアニメとの合成に、後半はかなり捻った展開で、原作 も良いのだろうが、さすが英監督作品とも思わされた。公開 は9月14日より、全国ロードショウ。)
『モルゲン、明日』 (2011年8月紹介『沈黙の春を生きて』などの坂田雅子監督 による新作。監督の作品では、2015年公開『わたしの、終わ らない旅』もあり、その作品では福島原発の事故を契機に核 兵器と原発の関係を取り上げていた。しかし同作では、その 趣旨は理解するものの、それを現代にどう反映するのかが不 明だった。それに対して本作はその回答編のようなかたちに なっている。そして本作では福島事故に呼応したドイツの原 発廃絶の方針が取り上げられ、ドイツ国内でのクリーンエネ ルギーに向けた取り組みが紹介される。それはもう長年に亙 る取り組みであり、日本がそれを直ちに真似できるかという ようなものではないのかもしれないが。すでにそれを実践し て実績も上っているという事実は日本人もしっかりと知るべ きものだ。このような事実の紹介こそが、今の日本社会に必 要な物とも感じられた。公開は10月6日より、東京はシネマ ハウス大塚他で全国順次ロードショウ。)
『アントマン&ワスプ』“Ant-Man and the Wasp” (2015年公開『アントマン』の続編。身体のサイズを自由に できるスーツを開発した科学者と、それを着たヒーローが、 今回は同様の相棒も得て、研究を盗み出そうとする悪人と対 決する。主人公は前作の後でアベンジャーズに参戦。そこで の失策でFBIの監視下にあり、その監視を掻い潜っての奮 闘となる。そしてその目的は科学者の妻の救出だが、そこに 物体をすり抜ける新たな敵も現れる。出演は、前作からのポ ール・ラッド、エバンジェリン・リリー、マイクル・ダグラ ス、マイクル・ペーニャらに加えて、ローレンス・フィッシ ュバーン、ミシェル・ファイファーらが新登場。巨大な研究 所ビルを縮小したり、一方で主人公の巨大化など、とにかく シッチャカメッチャカな作品だ。ただ単純なスーパーヒーロ ーものより、SF的にはしっかりと作ろうとしている意図は 感じられ、原子サイズ以下の世界観など見所はある。公開は 8月31日より、全国ロードショウ。)
『若おかみは小学生!』 (令丈ヒロ子原作、累計発行部数が300万部を超えるという 講談社青い鳥文庫の人気児童文学シリーズからのアニメ化。 両親を交通事故で亡くし、祖母の営む老舗旅館で暮らすこと になった小学生の主人公が、その旅館に出没する幽霊や魔物 と交流し、また祖母を助けたいという気持ちから、若おかみ として仕事を手伝うことになる。そして来る人は拒まないと いう方針で訪れるいろいろな客たちとの交流や、ライヴァル 旅館などとの様々な問題を通じて女将として成長して行く姿 を描く。声の出演は人気子役の小林星蘭と、歌手声優の水樹 奈々、声優の松田颯水。さらに薬丸裕英、鈴木杏樹、ホラン 千秋、設楽統、山寺宏一らが脇を固めている。脚本は2017年 3月紹介『夜明けを告げるルーのうた』などの吉田玲子、監 督は2003年公開『茄子 アンダルシアの夏』などの高坂希太 郎。公開は9月21日より、東京はTOHOシネマズ日比谷他で全 国ロードショウ。)
『スカイライン−奪還−』“Beyond Skyline” (2011年公開『スカイライン-征服-』の続編というかスピン オフ。オリジナルはSPEから盗作で訴えられたものの、そ の嫌疑も晴れて低予算ながら全米興行で2000万ドルを超える ヒット作となった。そして本作では、前作と同じエイリアン に襲われた人々の果敢に立ち向かってして行く姿が、アメリ カだけでなく東南アジアの仏教遺跡や密林を背景に展開され る。出演は、2017年4月紹介『パージ』シリーズなどのフラ ンク・グリロ、2011年6月紹介『復讐捜査線』などのボヤナ ・ノヴァコヴィッチ。他に2013年4月紹介『マーヴェリック ス』などのジョニー・ウェストン、2012年8月紹介『ザ・レ イド』などのイコ・ウワイスとヤヤン・ルヒアンらが脇を固 めている。脚本と監督は、前作では製作と脚本を務めたリア ム・オドネル。前作は侵略物なのにマンションの一室が舞台 というものだったが、本作はストレートだ。公開は10月13日 より、東京は新宿バルト9他で全国ロードショウ。)
『ギャングース』 (2016年1月紹介『太陽』や2017年9月24日題名紹介『ビジ ランテ』などの入江悠監督で、講談社「モーニング」連載、 肥谷圭介×鈴木大介による漫画の映画化、少年院育ちで世間 を生きる術が犯罪しかないと思い込む少年3人組が、振り込 め詐欺などを行う卑劣な犯罪集団を相手にした現金強奪計画 を敢行する。出演は高杉真宙、加藤諒、渡辺大知、林遣都、 伊東蒼。他に金子ノブアキ、MIYAVI、篠田麻里子、般若、勝 矢らが脇を固めている。入江監督の作品としては、『ビジラ ンテ』に繋がる社会の裏側を描いた作品だが、主人公が若者 な分、少し軽量というか監督曰く「キラキラした映画」にな っている。しかしそれが小気味よく描き切れているのも本作 の良いところだろう。映画の最初の強盗シーンで少し演出ミ スはあったが、満足できる作品だ。でも、そろそろ『太陽』 みたいな作品も観せて欲しいかな。公開は11月より、東京は TOHOシネマズ日比谷他で全国ロードショウ。)
『彼らの原発』 (上映前の挨拶で「自分は反原発です」と言い切った川口勉 監督が、2011年以降の再稼働に揺れる福井県おおい町を取材 した作品。監督自身は反原発だが、作品はそちらに偏ること なく、平坦な目で原発問題を描いている。それは原発でしか 生き延びられない過疎の町の現実であり、日本の各地が抱え ている問題だろう。そこに原発が立地されたというある種の 幸運が描かれているとも言える。勿論それは傍目からは歪ん だ幸運である訳だが。そうも言っていられないのが彼らの現 実なのだ。そんな地元の賛成派、反対派の声がまんべんなく 取材されており、それは福島のような特別な事情がない分、 より鮮明に問題点が描かれているとも言える。ただし本作は 2014年の取材で、大飯原発は3、4号機が既に再稼働され、 1、2号機は廃炉が決まっているもので、その辺を踏まえて の最新情報でないのが少し残念かな。公開は10月20日より、 東京は新宿K's cinema他で全国順次ロードショウ。)
『パパはわるものチャンピオン』 (新日本プロレスのエースとも言えるプロレスラー棚橋弘至 の主演で、岩崎書店刊、板橋雅弘(作)、吉田尚令(絵)による 原作を映画化した作品。主人公は元はエースだったが故障も あってマスクを付けたヒールに徹しているプロレスラー。プ ロレスが好きで他の仕事は考えられない。そんな彼の家には 妻と小学生の一人息子がいるが、息子には自分の仕事を告げ られないでいる。そんなある日、父親の後を付けた息子はレ スリング会場に紛れ込み、そこに居合わせたクラスの人気者 の女子と初めての観戦をする。そしてエースを応援し、マス クを付けたヒールの敗戦を目撃するが…。共演は木村佳乃と 人気子役の寺田心。他に仲里依紗、大泉洋、寺脇康文。さら に真壁刀義ら現役のプロレスラーが脇を固めている。脚本と 監督は2012年5月紹介『バルーンリレー』などの藤村亨平。 物語は見事な父子物だが、プロレスラーの芸達者振りにも驚 かされた。公開は9月21日より、全国ロードショウ。) を観たが、全部は紹介できなかった。申し訳ない。
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