2013年09月29日(日) |
僕が星になるまえに、武器人間、ウォーキング・デッド:シーズン3、ハンナ・アーレント、燦燦 |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※ ※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※ ※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※ ※方は左クリックドラッグで反転してください。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『僕が星になるまえに』“Third Star” 今年6月紹介『スター・トレック イントゥ・ダークネス』 で注目されたベネディクト・カンバーバッチの初主演作で、 2010年のエジンバラ映画祭でクロージングを飾ったイギリス 映画。 カンバーバッチが演じるのは29歳の誕生日を迎えた男性。し かし彼が30歳の誕生日を迎えられないことは、誕生パーティ に集まった彼の家族も友人たちも、彼自身も知っていた。 そして彼が希望した誕生日のプレゼントは、仲間3人との旅 行。それはすでに身体の動きに支障のある彼を特製のカート に乗せ、彼がもう一度見たかった浜辺に行くことだった。 ところが荒野を進むその旅には予想以上の困難が待ち構えて いた。その困難の中で、カートの破損や薬の紛失や仲間割れ などの問題が彼らに襲いかかる。それでも旅は続くが…。 共演は、2005年12月紹介『リバティーン』に出演のトム・バ ーク。本作の後で2011年8月紹介『キャプテン・アメリカ』 に出演のJJ・フィールド。因にフィールドは、2009年4月 に紹介と5月に追記も書いた香港映画『ラスト・ブラッド』 に比較的大きな役で出演していたようだ。それに本作のプロ デューサー補佐も担当したアダム・ロバートスン。 脚本は、俳優出身で脚本は初めてだが本作のプロデューサー も務めるヴォーン・シヴェル。監督は、編集部門の出身で本 作以前には短編作品を3本監督しているハッティー・ダルト ンが担当した。 物語は、最近では比較的目にしたり耳にしたりも多くなって いる題材と言える。従って描く側もそれなりの覚悟が必要と 思われるものだが、脚本家や出演者にもプロデューサーの肩 書きの人がいるのは、何か背景があるのかもしれない。 結末は、個人的には容認し難い部分もあるが、状況を考える と仕方ないかとも思える。人間はどんなに微かであっても希 望を持って欲しいものだが、逆にこういう結末を迎えるのが 彼の人生だったとも言えるのだろう。 そんな結末を描くことが、プロデューサでもある脚本家の特 別な思いのような感じもする。苦難の末にたどり着く浜辺の 静かな風景が、より強くそんな思いを感じさせてくれる作品 でもあった。 なお本作に関しては、“Third Star”という原題の意味が気 になるが、検索した中では“Peter Pan”に出てくる言葉と いうのが有力なようだ。確かに本作でカンバーバッチが演じ ている役名ジェームズは、『ピーターパン』の原作者にも通 じている。 そして彼らが目指すバラファンドル湾がネヴァーランドだと いうのだが…。因に、『ピーターパン』でネヴァーランドが あるのは「右から二番目の星」の方角のようだ。 日本公開は10月26日から、東京はヒューマントラストシネマ 有楽町ほかで予定されている。
『武器人間』“Frankenstein's Army” オランダのCM界で超人気ディレクターというリチャード・ ラーフォースト監督が、原案とクリーチャーデザインも手掛 けた長編デビュー作。 物語の背景は1945年=第2次大戦末期。ソ連軍の猛攻の前に ドイツ軍の敗色も濃厚となった東部戦線で、スターリンの密 命を受けた一部隊がドイツ占領地内の調査に向かう。 その調査の目的はほとんどの隊員には知らされていなかった が、そこには撮影班も同行しており、その一部始終が記録さ れた。その記録映像というfound footage設定の作品だ。 その部隊は激しい戦闘の中を、ドイツ軍がアジトにしていた らしい修道院に辿り着く。しかしそこには虐殺された死体が 散乱し、また墓地が掘り返された痕もあった。 そして修道院に侵入した隊員たちは、工場のようなその内部 と迷路のような地下道、さらに巨大な研究施設を発見する。 そこには全身に電気コードの繋がれた遺体が… 原題を見ればこれが何かは判ってしまうが、この修道院には フランケンシュタイン博士の末裔がいて、そこで最強の武器 となる人造人間が製造されていたというお話。 しかもこの人造人間が、通常のこめかみにボルトの付いた怪 人だけでなく、さらにいろいろな用途向けの改造が施された ものなど様々なクリーチャーで登場する。 それはまあそのクリーチャーのヴァリエーションだけでも楽 しめるものだし、その辺はCM出身らしいサーヴィス精神も 旺盛な作品になっていた。 ただ一言苦言を呈すると、ソ連軍が撮影したfound footage という設定なのに登場するソ連兵のセリフは英語。相手のド イツ軍はドイツ語を話していたようだが、これではなんとも 中途半端だ。 大体この物語でfound footageの設定にする必要があったか 否かも疑問で、物語はそれなりにしっかりしていたし、特に found footage設定に向けた展開があるものでもなく、単に 流行に迎合する姿勢はあまり褒めれらない感じがした。 出演は、ソ連兵役で新人のジョシュア・ザッゼ、部隊のリー ダー役にイギリスのテレビで活躍のロバート・グウィリムが 扮する他、フランケンシュタイン博士の孫役には2009年9月 紹介『エスター』にも出ていたというチェコの名優カレル・ ローデン。 さらに、2008年1月『ライラの冒険・黄金の羅針盤』などの アレクサンダー・マーキュリー、今年1月紹介『アンナ・カ レーニナ』などのルーク・ニューベリー、6月紹介『ワイル ド・スピード/ユーロ・ミッション』などのアンドレイ・ザ ヤッツらが脇を固めている。 本作は先に開催された「米子映画事変」という映画祭でも上 映されたようだが、一般公開は11月2日から、東京はシネク イント他にてレイトショウが予定されている。
『ウォーキング・デッド:シーズン3』 “The Walking Dead: Season 3” 2011年12月にシーズン1(全7話)、昨年6月にシーズン2 (全13話)を紹介した脚本家フランク・ダラボン企画による テレビシリーズの第3シーズン(全16話)。 第2シーズンを過ごした農園を新たな仲間も加えて脱出した 主人公たちは、流浪の旅の中でフェンスに囲まれた刑務所を 発見する。そこはゾンビたちの襲撃から身を守るには絶好の 場所だった。 そこで侵入していたゾンビたちを排除し、新たな生活を始め ようとした主人公たちだったが、そこにはゾンビ化せずに生 き延びていた囚人たちも暮らしていた。しかし元警官である 主人公に彼らを受け入れる気持ちはなかった。 こうして住む場所を分けての生活を始めた主人公たちだった が、実はその近くには元々町のボスだった男が支配する集落 が存在していた。そのボスは兵士となる男女に潤沢な銃器を 与え、街の防御を固めてその中で暮らしていた。 そして住民たちには民主的と思わせる施政を行っていたが、 その実態はある目的を隠した独裁的な組織だった。そのボス が主人公らのグループに目を付ける。しかし協力を拒否した 主人公らと対立し、一触即発の状況となる。 ゾンビが徘徊する終末世界の中で、何も人間同士が対立しな くても…とも思うが、結局こんなところが人間の本性なのだ ろう。第1シーズンの紹介のときにも書いたが、本作に登場 するゾンビはあくまでシチュエーションであって、そこで繰 り広げられる人間ドラマが主題の作品だ。 そしてそのシーズン3では意外な人物の再登場などもあり、 シーズン1から観続けてきた視聴者には存分に楽しめる展開 になっている。特にその後の状況が偲ばれる展開は、設定の 巧さが際立つものだ。 その一方で本シリーズは、主人公らには銃弾に限りがあるこ とから、できるだけ銃器を使わないことが制約され、それは ある種のアメリカ銃社会へのアンチテーゼのようにも見える ものになっている。 それで前シリーズまでは主に斧や西洋弓などが活躍していた が、そこに本シリーズでは日本刀が登場。その切れ味鮮やか な武器がゾンビの首をはねたり、頭部を一刀両断にするシー ンは、正しくCGI-VFXの極致とも言える映像になっていた。 出演は、シーズン1からレギュラーのアンドリュー・リンカ ーン、チャンドラー・リッグス、サラ・ウェイン・コーリー ズ、スティーヴン・ユン、ノーマン・リーダス、メリッサ・ マクブライド。 またシーズン2からのローレン・コーハン、スコット・ウィ ルスン。そしてシーズン3では、アメリカ生まれだが両親の 母国ジンバブエで成長したというダナイ・グリアが見事な女 剣士ぶりを見せる他、2008年6月紹介『ブーリン家の姉妹』 などのデイヴィッド・モリッシーらが脇を固めている。 なおアメリカでは、10月13日からシーズン4がスタートして いる。
『ハンナ・アーレント』“Hannah Arendt” 昨年10月28日付「第25回東京国際映画祭」で紹介したコン ペティション部門作品が日本公開されることになり、改めて 試写を観させて貰った。 背景は1962年にエルサレムで行われたアイヒマン裁判。主人 公はその裁判を傍聴し、後にその記事をアメリカの雑誌に連 載したユダヤ人の女性哲学者ハンナ・アーレント。戦時中に 強制収容所を脱出し、アメリカに亡命した彼女は、誰が見て もその執筆者に相応しかった。 ところが彼女が執筆した記事はユダヤ人社会から思わぬ反感 を買うことになる。それは彼女が「アイヒマンは凡庸で、そ の所業は命令に従っただけ」と論じ、さらにユダヤ人の指導 者たちがアイヒマンに協力していたと暴露したためだ。 これらの論調にユダヤ人社会が反発し、彼女は誹謗中傷の嵐 の中に投げ込まれることになる。そんな彼女は、夫や親友の 女流作家メアリー・マッカーシーに支えられ、ついに教鞭を 執っていた大学の教壇で反論を開始するが… この物語に、後にナチスに入党する恩師との若き日の恋愛問 題や、ドイツ・シオニスト連盟書記長との交流と対立などを 絡めて、アーレントが構築して行く理論と彼女の人生が描か れる。 脚本と監督は、1981年の『鉛の時代』でヴェネチア国際映画 祭金獅子賞、1986年の『ローザ・ルクセンブルグ』ではカン ヌ国際映画祭の受賞も果たしているマルガレーテ・フォン・ トロッタ。 因に、監督が描いた『鉛の時代』の主人公はドイツ赤軍創設 メムバーの1人をモデルにし、『ローザ・ルクセンブルグ』 はドイツ共産党の創設者で、いずれも歴史に名を残す重要な 女性たちを描いているそうだ。 主演は、『鉛の時代』『ローザ・ルクセンブルグ』にも主演 したバルバラ・スコヴァ。共演は、昨年12月紹介『アルバー ト氏の人生』などのジャネット・マクティア、2005年5月紹 介『ヒトラー~最後の12日間~』などのウルリッヒ・ノエ テン。 正直に書くと、昨年の映画祭で本作を鑑賞した時には作品の 意図がよく理解できていなかった。それは映画祭の期間中は 毎日4、5本ずつ観ることになるし、その内容を咀嚼してい る時間もない。しかも本作はユダヤ人問題が背景で僕自身の 理解も充分ではなかった。 しかし今回は一応内容を把握した上で作品を鑑賞することに なり、特にアーレントが本当に言いたかったことは理解でき た感じがした。それは「ナチスに学ぼう」と公言して憚らな い政治家のいるような国では、特に心して観るべき作品のよ うにも感じられた。 公開は10月26日から、東京は岩波ホールでロードショウされ る。
『燦燦』 老老介護の問題を描いた2010年制作の短編『此の岸のこと』 が、2011年のモナコ国際映画祭で短編部門最優秀作品賞など 5冠に輝いた外山文治監督による長編デビュー作。 主人公は77歳の女性。長年連れ添った夫が闘病と介護の末に 先立ち、残された彼女は幼馴染で夫の親友だった病院長が主 催する老人会にも参加するが、如何にも老人のリクリエーシ ョンの場には馴染めないものを感じる。 そんな彼女が街でふと目に留めたのは、結婚相談所のウィン ドウに飾られた純白のウェディングドレス。そして「毎日が スタートライン」をモットーとする彼女は、「人生のラスト パートナー」を求めて婚活を開始する。 こうして結婚相談所のカウンターに座った彼女は、意外にも 多い高齢者の登録リストを目にすることになるが…。彼女の 起こした行動は、「そんな恥ずかしいことは止めろ」という 声など、周囲に様々な波紋を広げて行くことになる。 外山監督の前作は、老老介護のかなり悲惨な結末を描いてい たようだが、元々監督は本作のような作品を先に構想してい たそうだ。そのリサーチを続けた中で生まれてきたのが、こ の2作だった。 しかし監督は、まず明暗の暗の部分を描いたことで、明の部 分にはより慎重な対応が必要と思うことになる。そして高齢 者の恋愛を単なる恋愛物語や悪戯な挑戦物語ではない「命の 輝きを取り戻すための応援歌にしたい」と考えた。 こうして誕生した本作の企画は、昨年5月紹介『バルーンリ レー』と同じSKIPシティ彩の国ビジュアルプラザ主催の若手 育成プログラムD-MAPのシネマプロットコンペティションに 出品され、自身の脚本、監督による映画化が実現した。 出演は、吉行和子、宝田明、山本學、それに2006年6月紹介 『フラガール』でメムバーの1人を演じ、日本映画批評家大 賞の助演女優賞を獲得した田川可奈美。さらに蜷川幸雄主宰 さいたまゴールドシアターの面々が、その他の老人クラブの 会員やお見合い相手などを演じている。 吉行が1935年、宝田が1934年、山本が1937年の生まれだそう だから、正に等身大の演技というところかな。そんなベテラ ン俳優たちの実に楽しそうな演技が見られるのも面白い作品 だ。 それにしても僕はこの人たちの若い頃の演技も覚えているの だから、こっちも高齢者の仲間入り一歩手前かな。そんな高 齢の俳優たちが、意外と若々しく恋愛物語を演じてくれる。 これは確かに高齢者への「応援歌」と言える作品だ。 僕の父親はすでに他界して、母親は90歳を過ぎて最早こうい う状況ではないが、こんな人生の応援歌がこれからの時代に は必要なようにも感じられた。 公開は11月16日から、東京はヒューマントラストシネマ有楽 町の他、全国順次で行われる。
2013年09月22日(日) |
アイ・ウェイウェイは謝らない、ファントム開戦前夜、ケンとメリー・雨上がりの星空に、フィルス、僕たちの高原ホテル |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※ ※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※ ※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※ ※方は左クリックドラッグで反転してください。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『アイ・ウェイウェイは謝らない』 “Ai Weiwei: Never Sorry” 2008年北京オリンピックの主会場となった通称「鳥の巣」の 設計に参加したことでも話題になった中華人民共和国の現代 芸術家=艾未未の姿を追ったドキュメンタリー。 艾はスタジアムの設計に参加したものの、招待された開会式 と閉会式には出席しなかった。それは北京政府がオリンピッ ク開催のために住民のいる居住区を強制収用するなど、激し い住民弾圧を行ったことへの抗議であった。 しかも北京政府はオリンピックの直前に起きた四川大地震で は、ずさん工事で倒壊した学校校舎にいて死亡した子供たち の数を隠蔽。その事態に怒った艾は独自にその調査を開始す る。そして訪れた成都で警官の暴行を受ける。 その暴行では頭部に損傷を受け、個展のために訪れたミュン ヘンで緊急手術を受ける事態にまで発展する。さらにその事 実を訴えた艾は北京政府の嫌がらせを受け始め、ついには自 宅監禁の処置を受けて現在に至っている。 そんな艾の姿が本作では、共産主義の信奉者であったにもか かわらず右派分子の烙印を押され、黒竜江省や新疆ウイグル 地区に追放され、文化大革命でも迫害を受けた現代主義詩人 の父親=艾青のことから解き起こして紹介される。 さらに本作の取材はオリンピック後からではあるが、成都の ホテルで警官から暴行を受ける瞬間も含めて完璧に撮されて おり、さらに艾個人のブログの閉鎖など、北京政府の行為の 悪辣さも見事に描き出しているものだ。 その他にも艾のスタジオの閉鎖やそれに対する艾の抗議の模 様など、北京政府による艾への弾圧の様子は余すところなく 伝えられた作品だ。それは滑稽ですらあるものだが、それが 隣国では現実に起きている出来事なのだ。 その一方で本作では、初取材とされる母親や実弟へのインタ ヴュー、さらには艾が愛人との間に生まれた息子と遊ぶ姿な ど、ヴァラエティに富んだ内容で艾本人の姿が描き出されて いる。 それにしても北京政府の悪辣さは目に余るが、ブログを閉鎖 された艾は、現在もツィッターで情報を発信し続けいている とのことで、その草の根からの支援が艾と北京政府の将来を 左右して行くことになりそうだ。 そんなことも考えさせる内容になっていた。 監督はアリスン・クレイマン。監督はアメリカ出身のフリー ジャーナリストで、2006年から10年まで中国に滞在して米国 テレビ放送のレポーターなどを務め、本作が監督デビュー作 とのことだ。 その本作では、2012年のサンダンス映画祭で審査員特別賞を 受賞した。
『ファントム開戦前夜』“Phantom” 2012年4月紹介『崖っぷちの男』などのエド・ハリスと、テ レビドラマ『X-ファイル』などのデイヴィッド・ドゥカプ ニーの共演で、2002年10月紹介『K-19』と同じく旧ソ連の 潜水艦を舞台にした実話に基づくとされる作品。 物語は、退役間近の潜水艦艦長が、老朽化した潜水艦の最後 の任務の指揮を取るべく呼ばれるところから始まる。その艦 には大陸間核ミサイルも搭載されており、任務は太平洋海域 で米海軍艦隊の監視に当たるというものだった。 ところが艦長が乗艦すると、艦内にはKGBからの派遣とい う謎めいた一団がおり、彼らは上甲板に何やら装置を設置し た上で、秘密の実験を行うことが任務だと告げる。こうして 不穏な雰囲気の中、艦は出航するが…。 実話の事件は1968年、ソ連太平洋艦隊の潜水艦が通常の作戦 海域を大きく逸脱し、ハワイ沖に接近した上で爆沈したとい うもの。実際には同年2月に出港した艦は、3月に入って連 絡が途絶え、ソ連艦隊は大規模な捜索を開始。 一方、米英が共同で設置したソナー監視網は3月8日に爆発 と思われる音響を観測しており、その三角測量に基づく搜索 で深さ4900mに沈む潜水艦を発見。その後に引き上げを試み るが、艦首の一部しか回収できなかったとされる。 ただし特別に建造されたサルベージ艦で行われた引き上げ作 業は極秘扱いとされ、実は艦体は全て引き上げられ、そこに は重大な秘密が隠され、それをCIAが隠匿した…というの が、都市伝説のようだ。 本作はそんな都市伝説を踏まえたもので、従って内容はキャ サリン・ビグローが監督した2002年紹介作などに比べるとか なり荒唐無稽。ただまあ1968年当時の米ソ冷戦時代を考える と、こんな事がなかったとは言い切れないかな。 共演は、2011年10月紹介『ドライブ・アングリー3D』など のウィリアム・フィクトナー、1995年『キルトに綴る愛』な どのジョナサン・シェック。また今年2月紹介『ノー・ワン ・リヴズ』などのデレク・マジャール、テレビ版『インディ ・ジョーンズ』のショーン・パトリック・フラナリーらが脇 を固めている。 脚本と監督は、2007年9月紹介『ロンリーハート』などのト ッド・ロビンスン。因に監督は、1996年リドリー・スコット 監督の『白い嵐』で製作と脚本を手掛けており、その関係な のか本作のエンドクレジットにはトニー・スコットへの特別 な謝辞があった。 またエンドクレジットでは、model production coordinator という項目にFantasy IIの会社名を発見。この会社は1984年 『ターミネーター』の特撮なども担当していたが、CGI- VFX時代の今でも頑張っているのが嬉しいものだ。
『ケンとメリー・雨上がりの星空に』 竹中直人を主演に迎えて、故深作欣二監督の息子の深作健太 が監督したマレーシアが舞台のロードムーヴィ? 竹中が演じるのは商社の中堅営業マン。その主人公の乗った クアラルンプール行の飛行機が嵐のためにマレーシア国内の 別の飛行場に緊急着陸するところから物語は始まる。彼はマ レーシアの取引先に商品見本を届けるためにやってきなのだ が、実は彼には別の目的もあった。 その真の目的は、2日後にクアラルンプールで行われる1人 娘の結婚式を阻止すること。妻に先立たれた主人公が、男手 一つで育てた娘は、厳しい父親に反発して海外に飛び出し、 ボランティア活動で出会った現地の男性と結婚すると言って きたのだ。しかも父親の出席は拒絶。 そのため断固式を阻止するべくやって来た主人公だが、到着 したのはクアラルンプールから遠く離れたジョホールバル。 しかも商品見本の荷物が大きいために連絡バスに乗ることも 拒否されてしまう。しかしそこに長距離トラックの運転手が 声を掛け、クアラルンプールに向う事になるのだが… それはとんでもない珍道中の始まりだった。 共演は、娘役に北乃きいと、運転手役はアジア男性初のルイ ・ヴィトン専属モデルで、日本のテレビや映画でも活躍した 中国人俳優のフー・ビン。主人公との珍道中ではコミカルな 役どころをよく演じていた。 登場するトラックはかなりのデコトラで、それは1970年代後 半に人気を博した東映映画『トラック野郎』を連想させる。 その主人公2人組を竹中、フー・ビンが再現している感じも するものだ。 そして主題歌にフィーチャーされているのが、2009年に他界 した忌野清志郎が歌う『雨上がりの星空に』。和製ロックの 名曲と言われるRCサクセションの楽曲が、作品中では忌野 だけでなく、中国語版や主人公らの演奏でも登場する。 物語は、竹中、北乃が演じる親子の情愛や、それに絡むフー ・ビンの行動などがコミカルに描かれ、そこにマレーシアの 現状などもそれなりに織り込まれて、全体はテンポ良く楽し める作品になっていた。 なお本作は、11月9日から全国の109シネマズ他で劇場公 開されるが、その前に11月6日からネットで有料配信される というもの。料金は共に1000円だそうで、同様の形態では他 に3作品も予定されている。 因に他の3作品は、 『TAP 完全なる飼育』(監督:片嶋一貴) 『I AM ICHIHASHI』(監督:ディーン・フジオカ) 『風俗行ったら人生変わったwww』(監督:飯塚健) となっている。
『フィルス』“Filth” 1996年公開の映画『トレインスポッティング』の原作者でも あるアーヴィン・ウェルシュが1998年に発表した長編小説の 映画化。 主人公はスコットランドのエジンバラ警察に勤務する刑事。 物語の始まりは、その街で深夜に日本人留学生がフーリガン のグループに襲われて死亡するところから始まる。その事件 を担当することになった主人公は、外交問題も絡む事件の解 決を出世への足掛かりにしようと考える。 そう彼には強い出世願望があり、それは彼の妻も同じ思いの ものだ。そのため彼はドラッグや女など、同僚を陥れる汚い 手も使って着々とその道を歩んでいた。ところが彼が担当し た事件は思いの外に捜査が難航してしまう。そしてその間に 別の刑事が金髪女性の目撃者がいたことを突き止める。 一方、主人公の前には淡い恋心を抱かせるシングルマザーも 登場する。しかし出世を焦る主人公は徐々に危険な道に脚を 踏み込んでしまう。さらに主人公のトラウマが生み出したと 思われる様々な幻想が出現して彼の精神を切り崩し始める。 脚本と監督はスコットランド出身のジョン・S・ベアード。 1990年代に映画制作のためにロンドンに渡った監督が、作者 自身が最も映画化したかったという原作を、原作者も納得の 映画に仕上げている。 主演は、昨年7月紹介『声をかくす人』などのジェームズ・ マカヴォイ。グラスゴー出身で本作の舞台とよく似た環境で 育ったというマカヴォイは、監督以上の高い熱意で主人公を 演じている。 共演は、2012年4月紹介『崖っぷちの男』などのジェイミー ・ベル、2011年10月紹介『フライトナイト-恐怖の夜-』な どのイモージェン・プーツ。さらにイギリスのテレビで活躍 するジョアンヌ・フロガット。またベテランのジム・ブロー ドベント、エディ・マーサンらが脇を固めている。 実はこの試写会の後で宣伝担当の人から、「『時計じかけの オレンジ』がお好きですよね」と声を掛けられた。しかし迂 闊にも僕は映画を見ている間はそれに気付かず、話し掛けら れて初めてその符合に思い至った。確かにそう考えると、数 多くのオマージュとも言えるシーンが点在する。 特に発端の暴行シーンは、正しく1971年の映画そのままに演 出されているものだ。また監督はマカヴォイにも、マルカム ・マクダウェルのようなイメージを要求したとのことで、こ れはその通りの作品のようだ。そんな物語が幻想シーンも織 り込みながら展開される。
『僕たちの高原ホテル』 2011年6月紹介『あの、晴れた青空』などの「タクミくんシ リーズ」に主演した浜尾京介、渡辺大輔のコンビと、脚本: 金杉弘子、監督:横井健司が仕掛ける青春映画。 浜尾が演じる主人公は、高原に建つホテルの清掃員。そのホ テルはかつて主人公の祖父が勤めていた場所で、主人公も祖 父と同じホテルマンを目指していたが、祖父が突然亡くなっ た日からその目的は失われていた。 そしてそのホテルもまた、祖父が築き上げた「おもてなし」 の精神も希薄になり、当時からの顧客はいるものの今では普 通のホテルと変わりなかった。そんな高原のホテルに、突然 渡辺が演じるマネージャーが現れる。 しかもそのマネージャーは、従業員たちに様々な要求を突き つけてくるが…。 共演は、舞台ミュージカル『テニスの王子様』に出演の和田 琢磨。他に髙﨑俊吾、本田剛文らの若手はいずれも舞台中心 の俳優たちのようだ。そしてその脇を、昨年9月紹介『自縄 自縛の私』に出演の馬渕英俚可、ベテランの小倉一郎、諏訪 太朗、河原崎建三らが固めている。 また舞台となるホテルは八ヶ岳高原ヒュッテ。この建物は元 侯爵徳川義親氏の邸宅を移築したもので、ここでは1976年に 田宮二郎が主演したテレビドラマ『高原へいらっしゃい』の 撮影されたそうだ。 「タクミくんシリーズ」はBL作品の中では伝説と言われる ものになっているそうで、特に前回の作品では、その描写も かなりの線になっていた。そんなスタッフ・キャストの新作 ということで、今回はどうなるか多少心配しながら試写会を 観に行った。しかしその心配は杞憂だった。 物語は、心に傷を負った若者の再生を描いたもので、青春映 画としては王道の作品と言える。それが高原の自然の中に建 つ由緒正しいホテルを舞台に繰り広げられる。しかもその展 開には様々な伏線なども散りばめられ、見ていてそれなりに 納得できる作品になっていた。 因に脚本の金杉弘子は、「タクミくんシリーズ」の他にも、 2007年3月紹介『きみにしか聞こえない』や、2008年2月紹 介『カフェ代官山』シリーズなど以前から注目している作家 だが、オリジナルのストーリーは本作が初めてだそうで、今 後の作品にも期待したいものだ。 なお本作は、9月28日からシネマート新宿でレイトショウ公 開の他、9月23日には以前紹介した「タクミくんシリーズ」 などと同様のイヴェント試写会も行われたようだ。
2013年09月15日(日) |
パーシー・ジャクソン/魔の海、REDリターンズ、りんごのうかの少女、死霊館、Tightrope-アウトサイダーという生き方-、落秋 |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※ ※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※ ※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※ ※方は左クリックドラッグで反転してください。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々/魔の海』 “Percy Jackson: Sea of Monsters” 9月6日付紹介『ウォールフラワー』のローガン・ラーマン が主演する2010年公開『パーシー・ジャクソンとオリンポス の神々』の続編。 実は前作のときは試写状を貰えず結局一般公開も見逃してし まっていた。という訳で前の話を知らずに続編だけ観ること になったものだが、主人公が海洋紳ポセイドンと人間の女性 のと間に生まれた半神だという基本を含め、設定はほぼ本作 でも説明されていたので、鑑賞に問題はなかった。 その本作の物語は、前作では苦難の末に主人公らが辿り着い たらしい半神たちの訓練施設で、その施設を守るバリアが破 られ、怪物たちが襲ってくるところから始まる。そのバリア は前作で主人公の仲間の1人が命と引き換えに作り出したも のだったが、その変身した樹が枯れ掛かっているのだ。 その樹を復活させるためには、魔海に隠された黄金の毛皮を 持ってくる必要があった。しかしそのクエストに乗り出した 主人公らの前には様々な障害や罠が待ち構えていた。その旅 に同行する仲間たちとの友情や、主人公らに敵対する半神と の闘いの物語が繰り広げられる。 前作は現代社会が背景で、現実の街中などで闘いが繰り広げ られていたようだが、続編の本作では時代は現代だが現実の 世界は脇に置いて、半神の訓練所や魔の海などが主な背景と されている。それはまあいろいろ事情はありそうだが、これ はこれで納得は出来るものにはなっていた。 ただまあ、お話自体は単純な黄金の毛皮の争奪戦になってし まうが、黄金の毛皮と言えば『アルゴ探検隊の大冒険』にも 登場するものだし、それなりにニヤリとするものが描かれて いるというところだ。1つ目のサイクロプスの登場なども、 オマージュと言えるのかな。 ラーマン以外で前作に続いての出演は、今年6月紹介『悪魔 のいけにえ』などのアレクサンドラ・ダダリオ、2008年『ト ロピック・サンダー』などのブランドン・T・ジャクスン、 2011年6月紹介『アイ・アム・ナンバー4』などのジェイク ・アベル。 他に、今年4月紹介『アンチヴァイラル』などのダグラス・ スミス、2009年11月紹介『ジュリー&ジュリア』などのスタ ンリー・トゥッチ、2008年10月紹介『ターミネーター:サラ ・コナー クロニクルズ』などのレヴェン・ランビンらが脇 を固めている。 前作クリス・コロンバスの跡を継いだ監督はトール・フロイ デンタール。VFX出身監督の長編作品は3作目のようだ。 また脚本は、2011年7月紹介『グリーン・ランタン』などの マーク・グッゲンハイムが担当している。なお、物語はまだ 続きそうだ。
『REDリターンズ』“Red 2” 2010年12月に紹介したブルース・ウィリス、ジョン・マルコ ヴィッチ、ヘレン・ミレン共演による痛快アクション『RE D/レッド』の続編。 題名の意味はRED=Retired Extremely Dangerousの略。 退職しているが国家や世界情勢の重要な機密を握り、且つ年 は取っても能力は抜群という超危険な元スパイたちが、過去 のしがらみや組織内の陰謀と闘い、世界存亡の危機に立ち向 かうというもの。 物語は、前作で出会ったフランクとサラが大型量販店で買い 物をしているところから始まる。それはフランクにとっては 憧れの「普通の生活」だったが、スパイマニアで冒険好きの サラは不満顔。そんな2人の前にフランクの元相棒マーヴィ ンが現れ、フランクを仕事に誘い始める。 そんなマーヴィンを軽くいなして昔には戻らないと言い切る フランクだったが、その目の前でマーヴィンの乗ったSUV 車が爆発。葬儀に参列したフランクはFBIに連行され、過 去に遂行した任務について尋問される。しかもそこにCIA の特殊部隊が突入し…。 こうしてフランクは核兵器を強奪したテロ犯として各国情報 部から指名手配され、やむなく彼は旧ソ連を舞台に計画され て未遂に終ったとされる作戦と向き合うことになる。しかし その計画は未遂ではなく、しかも生き残った計画は世界情勢 に強大な破壊力を秘めていた。 果たしてフランクは過去の作戦を清算し、世界の存亡の危機 を回避できるのか? そこにMI6やKGBも絡んで、世界 を股に架けた殺るか殺られるかの大冒険が開始される。 共演は、前作に続いてのメアリー=ルイーズ・パーカー、ブ ライアン・コックス。他にキャサリン・ゼタ・ジョーンズ、 イ・ビョンホン、ニール・マアクドノー、デイヴィッド・シ ューリス、そしてアンソニー・ホプキンスらが脇を固めてい る。 脚本は、前作の後には2012年4月紹介『バトルシップ』も担 当したエリック&ジョン・ハーバー。監督は、1999年に公開 されたSFパロディの傑作『ギャラクシー・クエスト』や、 2005年12月紹介『ディック&ジェーン/復讐は最高!』など のディーン・パリソットが担当した。 物語は痛快で面白い。でも結末はこれで良いのかな。少し前 にも同じような結末の作品があったが、このやり方で核兵器 を始末するのはヤバイと思うのだが…。やはりアメリカ人は 核兵器の本当の恐ろしさを判っていないのだろう。 なおデータベースによると、脚本家は“Red 3”の計画も進 めているようだ。
『りんごのうかの少女』 9月25日からロンドンで開催のレインダンス映画祭において 特集上映が行われる横浜聡子監督による42分の作品。 主人公は題名の通りのりんご農家の1人娘。中学生の彼女は 口煩い母親に反発して家出を敢行。仲間と遊び歩いている。 そんな少女が家出の軍資金が乏しくなって帰宅すると、優し かった父親の葬儀が行われており、誕生日プレゼントの馬が つながれていた。 この両親を、1989年ジム・ジャームッシュ監督『ミステリー ・トレイン』以来の共演という工藤夕貴と永瀬正敏が友情出 演で演じ、1人娘役には地元アイドル「りんご娘」のときが 扮している。 元々は青森県弘前市が町のPRを兼ねた映像作品を企画し、 それを青森県出身の横浜監督に依頼したとのこと。因に地元 アイドルの主演は市側の依頼の条件だったようだ。そんな素 人が主演の作品だが、演出の上手さなのか見事に瑞々しく演 じられていた。 ただし試写会の挨拶で監督は、「青森市の出身なので弘前市 のことはあまり知らなかった。それにりんごは好きな果物で はなかった」のだそうだ。 という作品だが、映画の出来は予想した以上に見事だった。 話自体は思春期の少女が親に反発し、悪い仲間に入って親へ の復讐を試みたりと、それはまあ有り勝ちなものなのだが、 その演出が巧みというか個々の人物の心情などが見事に描か れている。 それは自分が子を持つ親として納得できるものだったし、恐 らく自分が子供の頃にはそう考えていたはずだと思えるもの にもなっていた。その辺がストレートに観客の胸にも響いて くる作品だった。 もちろんそれは上映時間も42分の作品だから、回りくどく描 くこともできないものだが、物事を深く掘り下げなくてもス トレートに理解できる。そんなところが短編を得意とする監 督の魅力なのだろうし、本作でもそれは成功している。 特に全編に張り詰めたような緊迫感が漂うのは、演出の巧み さ以外の何物でもないし、そんな緊迫感が心地よく感じられ る作品でもあった。 公開は、青森県の地元ではすでに先行で行われたようだが、 全国は12月7日から東京・渋谷ユーロスペースのほか順次で 上映されることになっている。東京での初日には舞台挨拶や トークイヴェントも予定されているようだ。
『死霊館』“The Conjuring” 2004年9月紹介『ソウ』の第1作を手掛け、2011年6月紹介 『インシディアス』なども発表しているジェイムズ・ワン監 督が今年春に公開した作品。因に監督は、今秋“Insidious: Chapter 2”も公開している。 物語に登場するのはエドとロレインのウォーレン夫妻。夫は バチカンが唯一公認した悪魔研究家で、妻は透視能力を持つ とされている。そんな夫妻は撮影や録音など科学技術も駆使 して、悪魔が介在するとされる事件を解決している。 その夫妻の許に1971年、1つの事件が持ち込まれる。それは ロードアイランド州ハリスヴィル郊外の一軒家に住むペロン 一家が心霊現象に襲われているというもの。そして調査が進 むとそこには悪魔の介在が明らかになり、正式のエクソシス トを呼ぶための証拠集めが開始されるが…。 その調査に対して悪魔の反撃が始まる。 出演は『インシディアス』とその続編にも主演のパトリック ・ウィルスンと、昨年8月紹介『デンジャラス・ラン』など のヴェラ・ファーミガ。さらに2009年9月紹介『きみがぼく を見つけた日』などのロン・リヴィングストン、2003年5月 紹介『カーサ・エスペランサ』などのリリ・テイラー。実力 派の4人が見事な演技を繰り広げている。 因に本作の登場するエド&ロレイン・ウォーレン夫妻は、実 は1979年『悪魔の棲む家』でアミティヴィルを訪れる心霊研 究家(映画では別名)であり、その他にも1991年に製作され たTVM“The Haunted”にも登場する実在の人物。従って本作 も実話に基づくとされているもので、夫妻が遭遇した最も恐 ろしい事件なのだそうだ。 そしてその恐ろしさ故に公表もはばかられていたというもの だが、その真偽は別として映画の展開ではエドの行為が明ら かに問題とされるもので、そのために公表できなかったとい うのはそれなりに筋が通る話にもなっている。その辺は脚本 家たちも巧みなところだ。 脚本は、2009年9月紹介『ホワイトアウト』などのチャド& ケイリー・W・ヘイズという双子の兄弟。彼らは2007年4月 紹介『リーピング』や2005年7月紹介『蝋人形の館』も手掛 けており、ホラー作品はお手の物という感じだ。 ワン監督の演出は外連もたっぷりで存分に怖がらせてくれる し、ウォーレン夫妻が映画の中で行うアプローチの仕方はそ れなりに科学的で納得ができる。その辺では充分に満足感も 得られる作品だった。 なおワン監督は、現在は来年7月全米公開予定の人気シリー ズ『ワイルド・スピード』の第7弾“Fast & Furious 7”を 撮影中だそうだ。
『Tightrope-アウトサイダーという生き方-』 元プロレスラーの前田日明が2005年に立ち上げた素人格闘家 による全日本選手権「THE OUTSIDER」に出場する選手たちを 追ったドキュメンタリー。 素人格闘家というのは、自分は喧嘩が1番強いと粋がってい るチンピラのこと。そんな連中を全国から集めて「日本一喧 嘩の強い奴を決める」というのがこの大会の主旨と言える。 つまりこの作品は僕があまり好みとしないチンピラを描いた もので、その点では多少躊躇しながら試写を観に行った。 それで観ての感想は、想いの外によく出来た作品だった。 もちろん登場するのは体中に入れ墨を彫っているような連中 だが、それが出場して最初の内は優勝したりも出来ていたの が、途中から正しく格闘家として鍛錬を積んだ連中が参入し 始め、それで勝てなくなってしまう。 そこで挫折を体験した彼らは、今度は自ら道場に通い鍛錬を 積んでリヴェンジに臨む。それはもはやアスリートの心情で あり、本作にはそんな目覚めた男たちの姿が見事に映し出さ れていた。 もちろんこんな風に立ち直る連中はひと握りなのかもしれな いし、大半は元のチンピラに戻ってしまったのかもしれない が、そんなひと握りでも更生の道を歩めたのなら、この選手 権の存在意義はあったと言える。 と言っても、作品はそんな末節のことにはこだわらず、正に 勝つために努力を重ねて王座を奪還しようとする男たちの姿 が、ドラマティックとも言える映像で綴られていた。それに は正直に感動すら覚えたものだ。 因に前田日明は「THE OUTSIDER」旗揚げの記者会見で、「こ こで“あしたのジョー”を見つける」と宣言したそうだが、 確かにいろいろなものを背負った選手たちの姿には名作マン ガを思い出させるものもあった。 しかも作品では複数の選手たちを追ったもので、それは単独 の選手を追うより変化に富んだ内容になっている。そこには いろいろな意味でのマイノリティの姿も描かれており、それ らの社会的な側面も描かれた作品になっていた。 撮影は、NIKON D800とSONY NEX-FS700を併用して行われてお り、解像度はNIKON、動きはSONYで収録されている。その映 像のクリアさも注目したいところだ。 監督は、1995年にテレビCMから派生した長編作品『四姉妹 物語』などを手掛けた本田昌広。出演は、前田日明の他に、 11人の選手たちとその家族。また選手たちに寄り添うような ナレーションを吉川晃司が担当していた。
『落秋』 試写会で年間500本以上観るようになると、いろいろな状況 の作品に出逢うもので、今回の作品は2011年には完成してい たようだが、未だに配給も決まっていないというもの。従っ て一般の人が観る機会は少なそうだが、そんな作品の試写を 観せて貰えたので、紹介だけしておくことにする。 主人公は、元はカメラマンだったらしい男性。しかしある事 情からスランプに陥り、未だにそこから立ち直れていない。 そんな彼には同棲中の恋人もいたが、過去を吹っ切れないま ま彼女との結婚にも踏み切れない状態だ。 そんな彼が飲み屋で1人の女性と出会う。その女性は既婚だ が、夫との関係が上手くいっていないという。それは夫が勝 手に転勤を承諾したもので、遠隔地に行くことになるらしい その転勤が彼女には承服できなかった。 そんな2人が行きずりで出会い。互の状況を探り合いながら 付き合いを続けてゆく。しかしその2人の関係には、ある事 実が隠されていた。 まだ配給が決まっていないということで、試写会にはプレス 資料なども用意されておらず。上記の物語もうろ覚えで書き 起こしたものだ。ただまあ上映時間は1時間20分程の作品な ので、物語的にはこの程度のものだったと思う。 それでスタッフ・キャストなどの情報も手元になかったのだ が、後日監督から礼状としてアドカードが届いた。それによ ると、監督は西本信也、出演者は桑原麻紀、岸田研二、秋山 実希となっている。そこでこれらの名前を検索した。 まず監督の西本信也は、2001年の『BACKSTAGE』という作品 で予告編を担当しており、その他にも検索で監督作とされる 名称は挙がってくるが、実際の作品の情報はチェックできな かった。 一方、出演者の内、女優の2人は過去の作品が挙がってきた が、男優は映画は初出演のようだ。ただいずれにしても映画 はインディペンデンスの作品が中心の俳優のようだった。 という監督、出演者による作品だが、監督の演出はそつなく 映像も美しくて、観ていて悪い感じはしなかった。因に現在 YouTubeに本作の予告編がアップされているが、それに観ら れる雰囲気がそのまま本編になっている。 また俳優たちの演技も悪くはなくて、観ていてすんなり気分 に浸れる作品だった。 ただし物語の展開は、こんなことで主人公は騙されてしまう のかとも思ってしまうし、また映像で三軒茶屋の近辺と確認 できたものが、その直後に屋形船の行き交う川の鉄橋を歩い ているのはいかがなものか。 確かに場面としてここに鉄橋が欲しかったのは判るが、東京 に住んでいる人間としてはやはり違和感がある。それは例え ば『ワイルド・スピード3』では、新宿大ガードを抜けると 渋谷駅前交差点なんて迷シーンもあったが…。何かもう少し 工夫が欲しかった感じがしたところだ。 でもまあ映画の全体は悪い感じはしなかったし、何とか一般 公開の道が開けることを祈りたい。 * * とりあえず、昨年と同じ週報でしばらくやってみます。 遅れはできるだけ早く解消する予定です。
2013年09月06日(金) |
ウォールフラワー、ルームメイト、くじけないで |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※ ※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※ ※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※ ※方は左クリックドラッグで反転してください。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『ウォールフラワー』 “The Perks of Being a Wallflower” 1999年に出版され、『ライ麦畑でつかまえて』以来の青春小 説の金字塔と謳われた原作を、原作者のスティーヴン・チョ ボスキー自身が脚色・監督した作品。 主人公は、高校生活が始まったばかりの男子。しかし友達は 0人、国語の担任は優しい声を掛けてくれたが、ランチも食 堂の片隅に1人で座っている。そんな彼が勇気を奮ってアメ フトの応援席で同じ講座を取っている上級生に声を掛ける。 それが運命の瞬間だった。 そして彼の横には同じく上級生の女子が座ってくれ、試合が 終ると2人は、当然のように彼を行きつけの店に誘ってくれ た。こうして友達の出来た主人公は、プロムの会場でも壁の 花を卒業し、彼の高校生活は輝き始めるが…。彼には他人に 打ち明けられない大きな心の傷があった。 出演は、主人公に2011年9月紹介『三銃士~王妃の首飾りと ダ・ヴィンチの飛行船』でダルタニアンを演じていたローガ ン・ラーマン。その上級生の友人役に『ハリー・ポッター』 シリーズなどのエマ・ワトスンと、2012年3月紹介『少年は 残酷な弓を射る』などのエズラ・ミラー。 他に、2008年9月紹介『ティンカー・ベル』などのシリーズ で妖精の声優を務めたメイ・ホイットマン、2012年7月紹介 『声をかくす人』などのジョニー・シモンズ、さらに先生役 では1999年『サイダーハウス・ルール』などのポール・ラッ ドらが脇を固めている。 脚本と監督は上記のように原作者が務めているが、製作を俳 優であり映画監督でもあるジョン・マルコヴィッチが担当。 マルコヴィッチが主宰するミスター・マッド社では、撮影に 2010年4月紹介『小さな命が呼ぶとき』などのアンドリュー ・ダン、美術に今年4月紹介『プレイス・ビヨンド・ザ・パ インズ/宿命』などのインバル・ワインバーグ、編集に6月 紹介『スター・トレック イントゥ・ダークネス』のメアリ ー・ジョー・マーキーら錚々たる顔触れを集めて、新人監督 のデビューを支えている。 自分自身の高校生活と比較すると、舞台がアメリカというこ とを別にしてもかなりの様変わりは仕方がない。これが現代 なのだろうし…。これが日本の観客に受け入れられるかは、 もはや僕には全く判らないところになってしまった。 でも青春の本質的な悩みなどは変わっていないと思えるし、 それはおじさんになっても共感できるものがあった。こんな 風に悩みながら成長して行くのが青春なのだろう。そんなこ とを懐かしくも思い出させる作品だった。
『ルームメイト』 北川景子と深田恭子の共演で、凶悪な事件に巻き込まれた女 性を描いたサスペンスドラマ。 北川が演じる春海は派遣社員だった。しかし交通事故に巻き 込まれ、命に別状はなかったが頭を強く打ち脚を骨折して、 しばらく入院することになる。そんな春海を親身になって支 えてくれたのは、深田が演じる看護士の麗子だった。 こうして親しくなった2人は、退院の日が来ても仕事に就け ない春海に対して麗子がルームシェアを提案。さらに麗子は 交通事故の加害者との交渉も引き受けてくれる。そんな麗子 に信頼を寄せる春海だった。 ところがある日、春海は1人しかいないはずの麗子の部屋か ら、激しく言い争う声が聞こえてくることに気付く。こうし て春海の前にマリと名乗る麗子の別人格が現れる。そしてマ リの人格は次第に凶暴さを見せ始める。 物語は、今年亡くなったミステリー作家今邑彩の同名の原作 に基づくもので、それを2010年8月紹介『making of LOVE』 などの古澤健が脚本・監督。ただし、プレス資料では今邑の 「原案」とされており、これはかなり脚色があるのかな。 映画では、巻頭に凄惨な殺人事件の現場が登場し、そこから フラッシュバックで物語が展開されて行く。従って物語には 常に犯罪の影が付き纏い、しかもそれがかなり凶悪だという ことになる。 そんな緊張感はそれなりに表現されていたかな。ただ本筋の 多重人格というのは過去にいくつもの名作があるから、種明 かしの驚きというのは薄れているし、その辺ではもう少し何 か工夫が欲しかった感じはした。 とは言えクライマックスの2人の女優によるバトルは血糊も たっぷりで、その中で北川と深田はよく頑張っていた。でも これで話の辻褄は合っているのかな? その辺はちょっと気 になったところだ。 共演は、高良健吾、尾上寛之、大塚千弘、筒井真理子、蛍雪 次朗、それに田口トモロウらが脇を固めている。でも映画は 事実上2人の女優だけの物語で、その北川と深田の演技の渡 り合いも見ものの作品だ。特に深田は多重人格の変化を巧み に演じていた。 なお本作は東映撮影所で撮影され、東映映画が配給する作品 だが、製作プロダクションは東宝映画とクレジットされてい た。日本の2大映画会社の共同となるもので、その辺の経緯 も知りたくなったものだ。
『くじけないで』 90歳を過ぎてから詩作を始め、その出版された2冊の詩集が 累計で200万部超えのベストセラーとなり、今年1月に101歳 で他界した柴田トヨさんの生涯を描いた作品。 物語は、作家志望だが挫折を繰り返してきた息子と、母親を 中心に描かれる。その息子は職に就いても長続きせず、憂さ 晴らしのギャンブルに溺れて、家計は学生時代からの糟糠の 妻が保険の外交員の仕事で支えている。 そんな息子が新聞の投稿欄で詩作の募集を見たことから話が 動き始める。元々作家志望で文才もあった息子は母親に詩作 を勧め指導を始める。こうして始められた母親の詩作では、 新聞紙上の掲載も勝ち取るが…。 物語はこれに、妻が夫の就職先としてようやく見付けてきた 印刷所の話や、母親の主治医の話、さらに登校拒否児を抱え るシングルファーザーの話、そして母親と息子の若い頃の話 などを絡めて、全体は人情ドラマとして描かれている。 出演は、母親と息子の役に八千草薫と武田鉄矢、息子の妻役 に伊藤蘭。他に、上地雄輔、ピエール瀧、鈴木瑞穂、橋本じ ゅん。さらに檀れい、芦田愛菜、尾上寛之、黒木華らが主人 公たちの若き日を演じている。 脚本と監督は、2008年7月紹介『真木栗の穴』などの深川栄 洋。監督の作品では2010年10月に『白夜行』も紹介している が、人間の描写だけでなく時代考証などもしっかりした作品 を今回も作り上げている。 ただし本作は1人の女性の生涯を描いているものだが、原作 は詩集ということで、描かれる物語がどこまで実話に基づい ているかというと、多分創作された部分が多少あざといよう にも感じられた。 特に主治医の話やシングルファーザーの話は本編との関りも 少ないし、これを描く必要があったか否か。確かに物語に変 化を付ける意味では理解するが、それにしても描き方が中途 半端な感じもしてしまう。 因にこれらのエピソードには、それぞれ原作の詩が添えられ ているもので、その詩からインスパイアされた物語というこ とだろうと思われるが、どことなく取って付けた感じが否め なかった。 とは言え、紹介される詩自体が元々相田みつを風というか、 何でもないことをただ言葉にしているだけのもので、それを ドラマにするとこんなものかな。観客はその詩のファンなの だからこれはこれでよい作品なのだろう。 そんな印象の残る作品だった。 * * 以上、今週は9月1日付から1週間に観た作品15本を全部 紹介してみたが、結果は3週間近く掛かってしまった訳で、 これを継続するのは無理と判断せざるを得ない。 今後はとりあえず遅れを解消することを念頭に、もう少し 試行錯誤してみることにします。
2013年09月05日(木) |
蠢動、セイフ・ヘイブン、トミカ・プラレール映画まつり |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※ ※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※ ※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※ ※方は左クリックドラッグで反転してください。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『蠢動』 1958年生まれ、高校生だった1970年代に8mmで複数本の時代 劇やアクション映画を自主映画として発表し、話題になって いたという三上康雄が、1982年に16mmで自主制作した時代劇 を劇場用にリメイクした作品。 舞台は享保20年、山陰の因幡藩。大飢饉から3年が経ち、漸 く落ち着きを取り戻したように見える藩政に問題が生じる。 それは幕府から派遣されている剣術指南役に不審な動きが見 られるというもの。実は因幡藩では飢饉に備えた隠し倉や隠 し田があり、それを指南役が調べているらしい。そして指南 役が送ろうとした密書には、正にその実態が記されていた。 しかしその密書は奪取され、城代家老はそれを握りつぶすの だが、折りしも幕府から使者が訪れるという連絡が入る。こ こでその使者と指南役が会ったらすべてが露見する。この事 態に城代家老はある策略を巡らすが… 出演は、家老役に若林豪、指南役に目黒祐樹、幕府の使者役 に栗塚旭。さらに昨年8月紹介『のぼうの城』に出ていた平 岳大、2009年5月紹介『刺青/匂ひ月のごとく』などのさと う珠緒、2006年5月紹介『タイヨウのうた』に出ていた脇崎 智史らが共演。 その他、13人の追っ手役にはオーディションで選ばれた若手 俳優たちが半年間の殺陣などの訓練を受けて出演しているそ うだ。 三上監督は、大学生の時に1962年製作の『切腹』を観て時代 劇を撮りたいと思い、その結果製作されたのが1982年の作品 のようだ。従って本作でも、藩政を守るための執政や、武士 道に名を借りた下級武士への強要など、かなり社会派的な内 容が描かれている。 そして後半の大立ち回りに繋がる展開も設けられているが、 この剣戟シーンが雪原での野外ロケで、この撮影などはかな り周到に準備されたと思われるものになっていた。 なお撮影には、殺陣に2010年8月紹介『桜田門外ノ変』など の久世浩、照明には2010年6月紹介『最後の忠臣蔵』などの 宮西孝明、音響効果も『桜田門外ノ変』などの伊藤進一ら、 日本映画を支えるスタッフが結集しているようだ。 今の時代に、武士の世界を描く物語がどれほど通用するもの なのかよく判らないが、人間関係の話などはそれなりと思わ せるし、それに何より時代劇を復活させたいという監督たち の気持ちはしっかりと感じ取れる作品だ。
『セイフ・ヘイブン』“Safe Haven” 2004年11月紹介『きみに読む物語』などのニコラス・スパー クスの原作を、昨年11月紹介『砂漠でサーモン・フィッシン グ』などのラッセ・ハルストレム監督が映画化した作品。な お2人が組むのは2011年6月紹介『親愛なるきみへ』に続い て2作目となる。 物語は、犯罪現場から逃走する女性の姿から始まる。彼女は 隣家の老婦人の助けも借りて、身を隠すように長距離バスに 乗車。そしてそのバスが途中で休憩したとある港町で、彼女 はバスを降りる。 その町は時間から忘れられたようにのどかな場所で、そこで 彼女はカフェで仕事を見つけ、古家を借りて暮らし始める。 そして雑貨屋を営むシングルファーザーの男性との付き合い を深めて行く。 一方、彼女を追う警察はバス乗り場の映像から乗車した路線 を突き止めるが、ボストン発アトランタ行きバスの停留所は あまりに数が多かった。そこで警察は、捕まれば死刑となる 第一級殺人の指名手配書を作成し、沿線に配布するが… 出演は、2010年11月紹介『バーレスク』や2012年のトム・ク ルーズ主演作『ロック・オブ・エイジズ』ではヒロイン役を 演じたジュリアン・ハフと、2010年12月紹介『かぞくはじめ ました』などのジョシュ・デュアメル。 他に、昨年6月紹介『アベンジャーズ』と2015年公開予定の 続編にも出演するコビー・スマルダーズ、テレビ『ER』の 第15シーズンにレギュラー出演したデヴィッド・ライオンズ らが脇を固めている。 観終ったときの率直な感想は、これは1本やられたなという ものだった。スパークスという作家は、過去に映画化された 作品を観る限りではうまい題材を扱って、話題性は振り撒く が、物語そのものは古臭い感じで好きではなかった。 そして本作は、そのスパークスが初めてサスペンスに挑んだ という触れ込みで、これはお手並み拝見という感じだった。 その感想が上記のものだ。特に結末は涙を煽ることもなく、 実にスマートに感動させられた。 しかもそれがご都合主義や辻褄合わせでなく、正に納得のエ ンディングなのだ。これは今までのスパークスに対する態度 を改めなくてはとさえ思わされた。そしてハルストレム監督 が、それを実に巧みに映像で表現している。 またハルストレム監督は、過去の作品でも物語の展開にファ ンタスティックな表現を巧みに取り入れてきたが、本作では 正にそれが壺に嵌った感じで、これはファンタシー映画のフ ァンにもお勧めしたいものだ。
『トミカ・プラレール映画まつり』 タカラトミーが販売する1970年誕生の自動車玩具トミカと、 1959年誕生の鉄道玩具プラレールを題材にした映画作品。 東宝本社試写室での試写会は、一般上映の時と同じ条件とい うことで客席の明りを点けたままで行われた。つまりこれは 作品を観に来る幼い子供に配慮したもので、まずはそういう 点を考慮して本作は鑑賞しなければいけない。 そこで作品の内容は、3つの物語とその間を繋ぐ3つのヴァ ラエティコーナーで構成され、その全体的な作りはNHKの 「おかあさんといっしょ」のような幼児向け番組の構成とさ れている。 そして物語の1本目は、人間の子どもがデパートの玩具売り 場などで見られる模型の「トミカ・プラレールタウン」を訪 れるという合成もの。他の2本は、トミカとプラレールその ものが活躍する人形アニメーションになっている。 因に3作目に登場するトミカとプラレールは、本作の公開に 合わせて新発売されるもののようだ。 一方、ヴァラエティコーナーでは、トミカで発売されている 工事用車両の実物を紹介するコーナーや、プラレール隊と称 するグループが実際の住居の中にプラレールを敷き詰めて走 行させるコーナー、そして歌や体操などが披露される。 これは正に「おかあさんといっしょ」の構成だろう。 出演は、NHK・Eテレなどに出演の他、ジャニーズ嵐に楽 曲なども提供しているミュージシャンのチーミーと、キッズ ステーション「ハローサンリオ」MCの梅田みさと。それに 子役の須田瑛斗。 またプレス資料に脚本・監督などの紹介はなかったが、原作 はタカラトミー、総合演出は岡本智朗という人が担当してい るようだ。 僕自身はプラレール世代より年上の人間だが、息子には買い 与えていたし、一緒になって組み立てもしたから、それなり に思い入れはある。そういう目で観ると、お子様向けならこ んなものかと思う反面、もう少し何か出来る感じはした。 特にプラレール隊のコーナーでは、実際に自分で組み立てて きた感じで言うと、もっと驚かせるような作品も見せて欲し かったし、もう少し裏技みたいなものも紹介して欲しかった ところだ。 でもまあ作品は今回が第1作とのことで、試行錯誤もあるの だろうし、取り敢えず今後の展開は見守りたいものだ。それ にしても現在のトミカとプラレールがこんなに進化している とは、それは驚かされた。
2013年09月04日(水) |
劇場版BAD BOYS、ミッドナイト・ガイズ、42-世界を変えた男- |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※ ※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※ ※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※ ※方は左クリックドラッグで反転してください。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『劇場版BAD BOYS J-最後に守るもの-』 1988年から96年に連載され、総発行部数5500万部を記録した という田中宏原作コミックスの映画化。先にテレビの深夜枠 でドラマ化された作品が、ジャニーズ事務所所属Sexy Zone の中島健人主演、共演にKis-My-Ft2の二階堂高嗣、ABC-Zの 橋本良亮という配役そのままで公開される。 舞台は現代の広島市。そこで個々にチームを組む若者たちの 集団がしのぎを削り、抗争を繰り返しながら覇権を争うとい うもの。その抗争の手段は素手による殴り合いで、それ以外 の武器は許されていないようだ。 そして物語は、有力3チームの1つ「極楽蝶」の元メムバー が少年院から出所してくるところから始まる。しかしその元 メムバーは古巣には戻らず、新興のチームに参加、そしてそ の新興チームが覇権争いに参戦してくる。 このため今までは有力3チームの許で保てれていたバランス が一気に崩れ、市内は激しい抗争の場となって行くが…。そ んな背景の中で、恋や裏切りや友情など絆の物語が展開され て行く。 共演は、ジャニーズ事務所Snow Man、ジャニーズJr.の面々 と、関西ジャニーズJr.から重岡大毅、さらに乃木坂46のメ ムバーなどが脇を固めている。 広島といえば、東映の『仁義なき戦い』などの舞台であった はずだし、近年でも祭りのたびに凶悪な事件を引き起こす暴 走族の存在など、抗争事件の本場としては一般にも広く認識 されているところだろう。 そんな舞台の中で、何ともまあ甘ちゃんな物語が展開されて 行く。でも基本ジャニーズのアイドルが主演のドラマだから それも仕方ないのかな。若い女の子たちがこれにはらはら、 どきどきしながら観ていればいいという作品だ。 それにしても抗争…、といっても喧嘩程度なのだが、そこに チェーンはおろかメリケンサックも出てこないのは、これは 一種のファンタシーとも言えそうだ。現代ならもっと派手な 銃器もネットで簡単に手に入ってしまいそうだが… ま、それもファンタシーということなのだろう。それに見る からに強そうでない主人公たちが、屈強な男たちの集団を簡 単に打ちのめしてしまうのも、ファンタシーかな? 監督は、2011年にも三浦貴大主演で同じ原作の実写映画化を 手掛けている窪田崇。因に監督は広島市の出身とのことで、 「Sweet ヤンキー」をキーワードに本作を手掛けたそうだ。
『ミッドナイト・ガイズ』“Stand Up Guys” 1992年『セント・オブ・ウーマン』でアカデミー賞主演男優 賞受賞のアル・パチーノと、1978年『ディア・ハンター』で 助演賞のクリストファー・ウォーケン、2006年『リトル・ミ ス・サンシャイン』で助演賞のアラン・アーキンが共演し、 老境のギャングたちの姿を描いた作品。 主人公は28年の刑期を終えて出所してきた元ギャングの男。 その出迎えは昔の仲間1人だけだったが、うらぶれたその仲 間のアパートに腰を落ち着けた主人公は、まずは女遊びから 昔の勢いを取り戻そうとする。そして薬の力も借りて元気は 取り戻すが… そんな彼の前に、彼にギャング団の元ボスだった父親を殺さ れたことを逆恨みする現在のボスが立ちはだかる。そのボス が送り込んだ刺客とは…。これに老人ホームに入っている昔 の仲間や、現ボスたちに乱暴された女性らが絡んで、彼らの 一世一代の作戦が開始される。 共演は、テレビドラマ『ER』でハサウェイ看護婦役などの ジュリアナ・マルグリーズ、昨年4月紹介『バッド・ティー チャー』などのルーシー・パンチ。 さらに2008年カンヌ国際映画祭出品作“Afterschool”など に出演のアディソン・ティムリン、2011年1月紹介『ブラッ ク・スワン』に出ていたマーク・マーゴリスらが脇を固めて いる。 監督は、1986年『ショート・サーキット』とその続編の88年 『がんばれジョニー5』では主役も務めていた俳優でもある フィッシャー・スティーヴンス。 最近では2009年のアカデミー賞長編ドキュメンタリー部門を 受賞した『ザ・コーヴ』の製作者として授賞式の壇上にも上 がっていたが、そのスティーヴンスの長編映画監督としては 第2作のようだ。 もっとも本作では出演者が上記の顔ぶれで、この受賞トリオ を前に彼が一体どのような演出をしたのか、機会があったら 聞いてみたいところだ。因にこの後には、フィリップ・ロス 原作の映画化が予定されているそうだ。 上記の日本映画に続けてちょっと変格のギャング映画という 感じだが、ここまで老練の演技を魅せられると若いアイドル 映画は霞んでしまうのも仕方がない。そんな気分にさせられ る作品だった。 なお本作の音楽と主題歌を、ジョン・ボン・ジョビが手掛け ている。
『42-世界を変えた男-』“42” 毎年4月15日にはアメリカ大リーグの全選手が同じ「42」の 背番号をつけてプレーする。大リーグ全球団の永久欠番とさ れるその背番号の主ジャッキー・ロビンスンを描いた作品。 1945年の第2次世界大戦終結によりアメリカでは戦場で共に 戦った有色人種の平等を求める機運が高まる。それに対して 大リーグも有色人種に門戸を開くことを決めるが、現実は大 リーグに所属する400人の選手は全て白人。黒人選手は彼ら のリーグでプレーするしかなかった。 そんな現状の打破を考えたのが、ブルックリン・ドジャース 球団社長のブランチ・リッキー。彼は黒人アスリートの時代 が来ることを予感し、史上初の黒人大リーガーの誕生を画策 する。そして見出したのが、UCLAでは白人と共にプレー したこともあるジャッキー・ロビンスンだった。 しかし1945年に契約し、まず傘下の3A球団でプレーさせ、 そこから2年掛けて大リーグに昇格させるまでの道のりは、 特に人種差別の根強い南部チームからの嫌がらせや球団内部 の反発など、並大抵のものではなかった。 それでもロビンスンは球団社長との約束の下、妻や黒人であ るために記者席に入れない黒人レポーターらの支援を受け、 辛抱に辛抱を重ねて道を歩んで行く。そしてその姿にチーム メイトや相手選手からも賞賛を得て行くことになる。 大リーグファンにとってロビンスンの名前はその業績から知 らぬ者はないと言われる。しかし実際に彼が受けた迫害や、 それに対して彼自身や球団、同僚選手らが取った行動に関し ては、もはや歴史の中に埋もれているものも多いそうだ。 またロビンスンは、選手として大成後も基金の設立など多く の業績を残している。しかし本作はそんなロビンスンの業績 を全て見せるものではない。1945-47年の正に歴史が動いた 瞬間に焦点を絞り、それを見事に再現してみせた作品だ。 出演は、2008年のデビュー作ではフットボールの名選手を演 じたというチャドウィック・ボーズマンと、球団社長役には ハリスン・フォード。昨年12月紹介『SHAME-シェイム-』な どのニコル・ベーハリー、舞台俳優のアンドレ・ホランド、 2010年4月紹介『レギオン』などのルーカス・ブラックらが 脇を固めている。 脚本と監督は、2003年12月紹介『悪霊喰』などのブライアン ・ヘルゲランド。1998年『L.A.コンフィデンシャル』の脚本 でオスカー受賞の脚本家が今回も見事な物語を紡いでいる。
2013年09月03日(火) |
眠れる美女、終わりゆく一日、ザ・ストーン・ローゼズ:メイド・オブ・ストーン |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※ ※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※ ※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※ ※方は左クリックドラッグで反転してください。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『眠れる美女』“Bella addormentata” 2011年3月紹介『愛の勝利を』などのマルコ・ベロッキオ監 督による2012年の作品。 2009年にイタリアの国論を2分した1人の女性の延命措置を 巡る出来事を背景に描かれる3つの人間ドラマ。 まず背景となるのは、17年前に交通事故に遭って以来、カソ リック系の病院で昏睡状態が続いている事故当時21歳だった 女性の問題。彼女の両親はその延命処置の停止を求めて裁判 を起こし、裁判所は停止を認める判決を下すが、尊厳死を認 めないカソリック教会はそれに猛反発する。 そのため両親は、娘の身体を尊厳死の実行できる病院に移送 する。しかしその周囲には尊厳死に反対・賛成のデモが渦巻 いていた。一方、カソリック教会を支持母体とする当時のベ ルルスコーニ首相を中心とした議会はその判決を無効にする 緊急立法を進めていた。 そして1番目の物語は、その立法審議に加わっている国会議 員。彼の所属する党は立法に賛成派だったが、彼自身には妻 の延命処置を停止させた過去があった。そして以来彼に反発 する娘は、女性の移送された病院の周囲で延命措置の継続を 求めるデモに参加していた。 2番目の物語は、病院勤務の医師。彼は出勤中に出会った女 性に金を取られそうになり、さらにその女性が病院でも盗み を働く現場を目撃する。そして取り押さえた女性はとっさに 手首を切り、昏睡状態に堕ちいてしまう。しかし医師は彼女 を見捨てられなくなっていた。 3番目の物語は、輝かしいキャリアを捨てて昏睡状態の娘の 看護に没頭している女優。その女優の行動には周囲も困惑し ており、特に女優としての母親を尊敬して止まない息子は、 母親の愛に飢えていた。また夫との関係も冷え切っていた。 そして息子はある行動に出る。 この3つの創作された物語が、実際の報道の記録映像などと 交錯しながら描かれる。 出演は、2011年8月紹介『ゴモラ』などのトニ・セルヴィッ ロ、2011年8月紹介『やがて来たる者へ』などのアルバ・ロ ヴァケルとマヤ・サンサ、『愛の勝利を』などのピエール・ ジョルジョ・ベロッキオ、そしてフランスから今年1月紹介 『愛、アムール』などのイザベル・ユペール。 実際の出来事は、言葉は悪いがある種滑稽ですらあったもの で、その政治に振り回される出来事の裏での人間ドラマが巧 みに描かれている。それを支える俳優たちの演技も見ものの 作品だ。
『終わりゆく一日』“Day Is Done” 1997年に“Ghetto”という作品でハイデルベルグ国際映画祭 際の最優秀ドキュメンタリー賞などを受賞しているトーマス ・イムバッハ監督が、15年の時間を掛けて撮影した作品。 映像は、スイスのチューリッヒ駅近くの工場街の一角にアト リエを構える監督が、その窓から見える風景を長年撮影した もの。そこには三角に敷設された鉄道線路が見え、駒落しで 撮影された二階建て列車やイヴェント運行らしい蒸気機関車 などが走りまくる。 また周辺に暮らす人々の営みや、眼下で起きた交通事故、火 事などの様子も記録される。さらに映画の後半では高層ビル が建ち始め、その工事の進捗なども記録されている。そして 上空を形を変えながら流れて行く雲や満月などの風景も撮影 されている。 その一方で音声には、留守番電話に残されていたという録音 が登場し、それは監督に行動記録にも相当するものにもなっ ている。そこでは映画祭での受賞の報告や出演のオファー、 また息子の誕生や夫婦間の確執、離婚。さらに別れて暮らす 息子との会話などが記録されている。 まあ長い年月を描く作品として、その間の状況を留守番電話 で描くというのはなかなか面白い手法だと思う。ただし本作 の場合はそれはあまりにプライベートな内容で、監督の本人 的には思いの丈なのかも知れないが、傍から観るとちょっと 退いてしまうところもあった。 それに対して列車の行き交う映像は、マニアにはかなり堪ら ないものがあるところで、中でも威風堂々とした蒸気機関車 の登場は、多分事前に知っていた上で撮影されたものと思わ れるが、その煙だけの映像から本体が現れるまで監督も好き だなあと思わせるものがあった。 因に線路の配置はグーグルで見ると、駅から左右に分かれて 線路が敷設され、さらにその別れた線路を直進で繋ぐ線路が 設けられている。ただし映像で、弧を描いて二階建て列車が 走行しているのはさらにもう1本の別線のようで、かなり複 雑な配置になっていた。 そんなことを確認しながら観るのも面白い作品だった。
『ザ・ストーン・ローゼズ:メイド・オブ・ストーン』 “The Stone Roses: Made of Stone” 2011年10月に活動を再開したイギリス・マンチェスター出身 のロックバンド「ザ・ストーン・ローゼズ」の姿を、2009年 1月紹介『THIS IS ENGLAND』などのシェイン・メドウズ監 督が追ったドキュメンタリー。 バンドは1987年に結成され、1989年にメジャーデビュー。翌 年にはリヴァプールで2万7000人を集める野外ライヴを敢行 する。しかしマネージャーとの確執などからアルバムを発表 できない時期があったり、さらにメムバーの脱退も相次いで 1996年に解散。それから15年後の出来事が描かれる。 そのバンドを追ったドキュメンタリーだが、メドウズ監督は 元々がバンドのファンだったそうで、その監督の目が現在の バンドを追いかけ、さらにアーカイヴ映像で過去の日々が描 かれる。ただしその描き方はあくまでファンの目線であり、 それはある種の慈愛に溢れた作品になっている。 このため一般のファンは立ち入れない楽屋の映像では、あく まで傍観者の目に徹するし、また急遽開かれたライヴの様子 では、間に合わなかったファンの姿に眼が向けられていたり もしている。 しかしその一方では、ライヴ途中でメムバーの1人が帰って しまった出来事でその原因などを深く追求しないのは、多少 物足りない感じもしてしまうが、ファンにはこれで充分とい うところなのだろうか。 なお個人的には、知人に以前からファンの女性がいて、彼女 は多分2011年にはイギリスまで復活を目撃しに行ったと思わ れるが、バンドには日本にも熱狂的なファンが多いようだ。 そんな日本のファンには、映画のエンドロールに添えられた メムバーの日本での様子も貴重と思われる。 ここに特別な映像が綴られたのには、ワールドツアーに日本 まで同行した監督の心情が反映されているとも思われ、そん な日本のファンの熱意がこのドキュメンタリーを締め括って いるものだ。ファンには必見の作品と言えるだろう。 ファンなら当然観に行くと思うが。ファンでなくても熱気に 溢れたコンサートの模様などは、臨場感も充分に楽しめた作 品だ。
2013年09月02日(月) |
遥かなる勝利へ、ロード・オブ・セイラム |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※ ※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※ ※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※ ※方は左クリックドラッグで反転してください。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『遥かなる勝利へ』 “Утомленные солнцем 2: Цитадель” 2008年5月紹介『12人の怒れる男』などのニキータ・ミハ イロフ監督が、1994年『太陽に灼かれて』、2010年『戦火の ナージャ』に続けて発表したスターリン時代を背景とする戦 争ドラマ3部作の完結編。 と言っても僕は前の2作を観ていなくて、しかも戦場で英雄 とされながらスターリンに粛清された主人公と、その愛娘の 物語には前作に続く部分も多いようで、正直理解がうまく行 かなかった。 しかも映画の最初と最後では同じ戦場が描かれるが、それが 時系列的にどうなっているのかよく判らず、かなりシュール な印象も持ってしまった。でも後でプレス資料を読んだら、 それは順番に起きた出来事だったようだ。 とは言うものの、激しい戦場に続けて描かれる静寂の風景な どは、「国敗れて山河あり」ではないけれど戦争の無意味さ みたいなものは巧みに描いていた。それに僕自身はシュール な展開でもそれなりにOKな感じもしたものだ。 出演は、主人公をミハイロフ監督自らが演じる他、愛娘役の ナージャ・ミハイロフ、秘密警察の将校役のオレグ・メンシ コフらは3作続けての出演となる。因にナージャは監督の実 娘だ。 ただ最後の要塞攻めの結末では、僕としてはちょっとあっけ に取られたもので、それがシュールな印象を僕に与えたとこ ろにもなった。また全体がある種の「夢落ち」のような印象 にもなった。これは前作を観ていない僕の勝手な印象になっ てしまうが、その辺が実際はどういう印象なのかな? 前2作を観ている人は、当然観るべき作品だし、観ていない 僕のような人間には、ちょっと別の見方も出来てしまうが、 それなりに興味深い作品にはなっている。それにスターリン 時代のソ連の恐怖政治は巧みに糾弾されている作品だ。
『ロード・オブ・セイラム』“The Lords of Salem” 2004年7月に『マーダー・ライド・ショー』を紹介している ロブ・ゾンビ監督による2012年作。 セイラムは17世紀末に「魔女裁判」が行われ、そこで複数の 女性が火あぶりの刑に処せられた場所として知られている。 そのセイラムのラジオ局でDJをしている女性宛に、木箱に 納められた‘The Lords’と記されたレコードが届けられ、 それを試聴した彼女は一時トランス状態に陥る。 以来体調が優れない彼女だったが、その彼女の番組に「魔女 裁判の真実」という本を著した作家がゲスト出演した日、番 組の最後に掛けられたレコードは、セイラム中の女性たちを 同じ状態に陥れる。 そうとは知らず帰宅した彼女は、アパートの女管理人にパー ティに誘われ已むお得ず参加するが、そこで彼女は管理人の 女友達から呪いのような言葉を聞かされる。それは彼女の出 自にも関るものだった。 主演は、『マーダー・ライド・ショー』にも出演のシェリ・ ムーン・ゾンビ。実生活で監督の妻でもある女優はゾンビ監 督の全作に出演の他、トビー・フーパー監督作品や、2007年 7月紹介『グラインドハウス』のフェイク予告編にも出てい たようだ。 しかし本作で注目の出演者は彼女だけではない。彼女の番組 に出演する作家役に1971年『ウィラード』などのブルース・ デイヴィスン、アパートの管理人役に1967年『茂みの中の欲 望』などのジュディ・ギースン。 さらに1988年『ゼイリブ』などのメグ・フォスター、1975年 『ロッキー・ホラー・ショー』などのパトリシア・クイン、 1982年『E.T.』の母親役などのディー・ウォーレスなど、 ジャンル映画ファンには涙ものの顔ぶれが出演している。 そう言えば『マーダー・ライド・ショー』でも、先日訃報が 伝えられたカレン・ブラックの出演を紹介していたが、この 配役はゾンビ監督の面目躍如という感じだ。 なおゾンビ監督は、2004年の紹介でもその真面目さを評価し たが、今回もそれは変わらない。ただ今回は少し真面目すぎ たかな。もう少し力を抜いた作品も観てみたいものだ。
2013年09月01日(日) |
トランスポーター:ザ・シリーズ |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※ ※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※ ※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※ ※方は左クリックドラッグで反転してください。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ (今になっていろいろ試行錯誤していますが、この日付より 暫らくは日報の形で書くことにします) 『トランスポーター:ザ・シリーズ』 “Transporter: The Series” 2002年11月に第1作、その後は2006年3月に第2作、そして 2009年4月に第3作を紹介したリュック・ベッソン製作によ るヒットシリーズのテレビ版。フランス-カナダ合作の本作 は、実は8月9日に第1話~第3話がレンタル開始されてい るが、9月6日に全作のBOXリリースが行われるとのこと で、第1話~第6話のサンプル版を鑑賞した。 物語の主人公は、映画版と同じ運び屋のフランク・マーティ ン。ただし演じているのはジェイスン・ステイサムではなく て、2007-08年の『プリズン・ブレイク』にレギュラー出演 していたクリス・ヴァンス。ステイサムがワル風なのに対し て、ヴァンスはどちらかというと英国紳士風の風貌だ。 ということで多少の違和感が生じるかというと、実は映画版 の3作に登場のフランス人警部役フランソワ・ベルレアンが 本シリーズにも登場して、主人公に「フランク」と呼び掛け るから、これは観客としては納得せざるを得ないところだ。 そして本シリーズには別のレギュラーも登場する。 物語は1話完結で、美女やら移植手術用の心臓やら、はたま た昔の戦友だった盲人などいろいろな「荷物」が運搬の対象 となる。そしてその運搬に様々な障害が現れ、それらをカー チェイスやアクションなどで克服して、「荷物」を依頼主に 届ける展開となる。 ただまあ、6話をぶっ通しで観ているとよく似た展開の繰り 返しに感じるのは否めないところだが、本来の観客は各話を 1週間置きに観るものだし、このある種のマンネリが視聴者 に安心感を与えるものでもある。それにその中で少しずつ変 化のあるのが、テレビシリーズとしては及第点だろう。 もっとも、シリーズの掴みのつもりなのか、最初の2話には 多少エロティックなシーンがあったが、それが第3話以降消 えてしまうのは、どういう事情があったのかな。最初の2話 がテレビにしては過激だったので、それにはちょっと驚かさ れた。 共演はアンドレア・オスヴァルト、デルフィーヌ・シャネア ック、チャーリー・ヒュブナ。この内のオスヴァルトの役柄 はオリジナルシリーズにはない連絡係で、これが情報収集な どもやってくれるのは、短い時間で物語を展開させる上での 工夫という感じだ。 それに上では物語は1話完結と書いたが、これは今回鑑賞し た第1話~第6話でのこと、実は物語の背後には別の組織も 動いているようなのだが、その辺はまだ明らかにならない。 それが9月6日にリリースでは全12話とのことで、そこでは その真相が明らかになりそうだ。
|