あのとき別れたのは結果的によかったということになった

昔結婚をしようとしていた人がいた
家族にももちろん紹介してうちにはいつもお風呂に入りにきていた
わたしが会社から帰宅するとうちでビールを飲んでたりしていたのだ
近所に住んでいたので寝るときだけ彼のアパートに行ったりした

結婚指輪もできたし婚約指輪もできたし
いつ結婚しようかと考えているようなお付き合いをして７年目

ある日彼が浮気をした
帰ってこなかったのだ
しつこく誘ってきている勤務先の女性がいるのは聞いていたが
まさか彼が
といろいろあったが結局別れた
許せなかった
毎月５万円とボーナス時に３０万円を振り込めといったら振り込むという
わたしは本当は別れたくなかったのでどんどんいやな女になっていった
ここまで言っても別れるのか、これでもかと条件をつけた
でも彼は去って行った

一番苦しかったのはセックスの相性がよすぎたので
その後めぐり合う男が全然ダメだったこと
ミスターグッドバーを探してという映画があったが
まさにあれのような感じだったか

その後彼は一部上場企業の社長になった
もし結婚していたらどんな生活になっていただろうと
夢を見たこともあったが

縁のなかった人だったんだと思っていた

３月の終わりにものすごい夢を見た
彼とのセックスの夢だ
あんまりにも正確に
両肩を抱かれていくよ、とインサート前にささやく
インサート直前の膣と子宮が震える感じ
両肩を抱きしめられ

今でもあの時のことを体がおぼえているのか
脳の奥底に記憶されていたのか
もう忘れたはずのあの感覚

その３日後、女友達と食事をした
みんな彼のことを知っていたから黙っていたらしいので初めて聞いたことには
彼がやったのかどうかはわからないが
何億の使途不明金があり裁判になって創業一族から追い出された
裁判も負けてすべて彼の負債になったと


僕は一人の女性を不幸にした
だから一生結婚するまいと思っていたが
もう許されてもいいかと４０過ぎて結婚しました

そんなことを言っていたと昔聞いた
その奥さんは一緒に負債を返済しているのか
自己破産してもまだ７年経っていないだろう

あの人と結婚したら不幸になっていた
浮気されてよかったわねと友達は言った

うん。
ほんまやな。

なぜ結婚できなかったのかずっと心の中に引っかかっていたけれども
結婚しなくてよかった。

ひとりごと。