Scrap novel
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なんというか。 今日は一日、地に足がついてない状態だった。 もしかして、本当に浮かんでるんじゃないかと錯覚するくらい、足の裏に感覚がなかった。 大輔君には、おまえ、今日、気持ちわりーなんて言われるし。 何がだよ?と聞き返すと、なんか妙にへらへら笑ってて、とかって。 いつも笑ってるだろ。 そりゃあ、無理して笑ってるだろうと言われれば、当たらずとも遠からじな部分もあるけど。 まあ、自覚はあるけどね。 いつもが顔を緊張させて微笑んでいる状態でキープしてるんだとすると、今日は、ぼけ〜っとしてても顔が勝手に笑ってしまうというか・・・。 なんとなく、そんな自分が我ながら、らしくなくて変だ。 つまり、大輔くんは結構スルどいんだ。 自分の方こそ、普段はへらへらしてるくせにね。 でも、と思う。 そんなに浮かれてていいのか? だいたい、手紙の彼女には何て言おう。 昨日の今日じゃなんだから、いっそ来週に入ってからにしようか・・・。 それよりも。 昨日のこと・・。 あれは、本当に、本当のことなのだろうか? なんかこう、イキオイでというか、行き当たりバッタリというか、そんな感じで言ってしまったけど、もしかして「なんであんなこと言ったのか」 と後悔してるんじゃないだろうか・・? そんなことを給食のすんだあたりから思い始めて5時間目を向かえ、クラブが終わって帰るころには気持ちはかなり下降線を描いていた。 そんな時だったから。 正門を出たところに待っていた人影に、心臓が胸を突き破って飛び出そうなほど驚いた。 とりあえず、一緒だったトモダチと別れて、追いかけるようにして先を歩く兄の後をついていく。 何か話、あるのかな? もしかして。 きのうのことは間違いだったから。 なかったことにしてくれ。 忘れてくれ。 つい、イキオイで言ったけど、よく考えたら弟を好きだなんて、そんなのおかしすぎるよな。 本当に悪かったよ・・・。 そう言われるんじゃないかと、胸がどきどきしてきた。 いつもだったら隣を歩く時、さりげなく肩とかに置かれる手も今日はなく、ほとんど目も合わさずに先を歩くのは、本当にそういうことなのかな・・? 目があった瞬間に、ぱっと視線をはずしてしまうのも? 僕はそれでも、自分が赤くなってるのがわかる。 もしも、そうだとしても、いいんだよ、お兄ちゃん。 僕は、本当に本当に嬉しかったんだから。 世界中のすべてに感謝したいほど、嬉しかったんだ。 「オマエのことが好きなんだ」とそう言われて、頭がぼーっとなるくらい幸福だった。 だから、責めたりしないから、間違いなら、早くそう言って。 僕が、期待をしてしまう前に。
買い物をして帰ることになって、何が食べたいかと聞かれた。 お兄ちゃんが、僕のために作ってくれるなら、何だっていいよ。何だって嬉しい。 そういう意味で、そう答えた。 そうしたら、お兄ちゃんは照れくさそうに笑って、今日からはオマエも一緒に作るんだよとそう言った。 それって。 今日からは、って? 考えるよりも前に、うんと頷いて笑っていた。 カートを押す僕の肩に、やさしくあたたかい手が添えられる。 「あ、あの・・」 「ん?」 「ところで、どっちに帰るの・・?」 「え? あ、そうか。オレんち来るか? オヤジ帰ってくるの遅いし」 え? 遅いから、何? 「や、遅いからってことはねえけど」 ぼそっと言って、ちょっと赤くなる。 やだな、お兄ちゃん。変なとこで赤くならないでよ。 「風呂とか、入って帰れば?」 「え・・っ。お風呂って」 そこに反応するな、僕も! 「あ、着替えねえか」 「う、うん。あ、でも、お兄ちゃんの貸してもらってもいいけど・・」 いつも、突然に寄ってご飯ごちそうになって、お風呂もって時にはそうしてる。 もう、少し小さくなったお兄ちゃんの服を、そのままもらって帰ったりして。 上の兄弟のお古をもらうなんてことがなく育った僕にとっては、そんなことでも嬉しかった。 違う意味でも、もちろん嬉しかったんだけども。 「いや、貸してやっけど? パンツでもなんでも」 「え? ぱ、パンツ?」 だから、そこに反応するなって、僕!! 顔を見合わせて、真っ赤になる。 「いや、まあパンツはともかく・・・」 「う、うん」 そんなことを話ながらなので、何を買ったのかよくわからないまま、レジを過ぎて袋に買ったものをとりあえず詰め込んだ。 ・・・・・お兄ちゃん、どうして土しょうが三袋も買ってるんだろう? 何に使うの? ま、いいんだけど。 全部詰め終わって、あたりまえのように袋を持とうとするお兄ちゃんに、慌てて僕が手をのばす。 「僕が持つよ!」 「いいよ、俺が持つって」 「いや、僕が」 「だから俺が」 「・・・あ」 スーパーの袋を取り合ううちに、手がふれあってビク!と思わず手をひっこめた。 「あ、ごめん」 「あ、いや、俺の方こそ」 なんだか兄弟でこんなことで真っ赤になり合ってるなんて、他人から見たらきっと変にうつるだろう。 でも。 偶然ふれあってしまった指先が熱い。 今、どんな顔してるんだろう、僕。 お兄ちゃんが、手をひっこめたまま固まってしまった僕を見て、少し笑って言う。 「一緒に持つか?」 心の中に、ふわっと流れてくるものがある。 あったかい何か。 そっと手を出して、こくんと頷いた。 いっしょにスーパーの袋の手のとこに指をかける僕らは、お母さんと小さい子みだいたね。
外に出ると、きれいな夕焼けだった。 その中を、スーパーの袋を間において、歩道をゆっくりと歩いて帰る。 少しだけ、触れてる手の一部が、じ・・んとあたたかい。 泣きたくなるようなあたたかさだ。 そのまま何も言わずにただ歩いていると、ふいにお兄ちゃんが前を見たまま静かに言った。 「あのな・・」 「うん・・?」 「おまえのことだから、なんか、こう・・・。聞き間違いとか、思いちがいとかそんな風に考えてんじゃねえかって・・」 「・・え・・・?」 「そういうんじゃなくて、イキオイで言っちまったのは、ま、本当だけど。嘘はねえから」 前を見ているお兄ちゃんの頬が赤く染まって見えるのは、夕焼けのせいだろうか? まっすぐに夕日を睨むようにしてそれだけ言うと、肩越しに少し遅れて歩く僕を振り返る。 「おまえのこと、好きだから。誰よりも一番、大切に想ってるから」 うん・・と頷くけれど、胸でつまって声にはならなかった。 甘酸っぱいものが溢れてきて、お兄ちゃんの照れくさそうな笑顔を見上げていると、なんだか夕日が目にしみた。 「泣くなよ、馬鹿・・」 一緒に持っていた荷物を僕の手から取り上げて、片方の手で軽々と持って、空いた手でそっと目元を拭ってくれる。 「お兄ちゃん・・」 「んー?」 「・・・・に・・・・・・ちゃん・・・」 「だから、泣くなって・・」 「うん・・」 「手、とか繋ぐか?」 「う、うん・・」 ぽろりと頬を伝ってきた涙を慌てて拭って、差し出された手に自分の手を差し出す。 なんて、あったかくて大きな手なんだろう。 やさしくて、あったかい。 心ごと、包み込んでくれるみたいだ。 僕もずっと好きだったんだよと言いたいのに、言葉にしたら、また涙が溢れそうで。 唇を震わせて一生懸命見つめていると、わかってるよ、と笑ってくれた。
そのまま、僕らは手を繋いで、なんだかつきあい始めたばかりのカップルのように(いやマジで、実際そうなんだけど)、恥ずかしそうに互いの顔をちらちら覗き見ながら、マンションまでの道のりをほかほかしながら歩いた。
ところで、兄弟でコイビトになってしまった場合でも。 その・・。 ・・・・キスとかそういうの。 やっぱり、するもんなんだろうか・・・・・。
いや、したいわけじゃないけど! いやいや、したくないわけでも、もちろんないけど!
す、するのかな・・。 いつか・・。
END
しあわせなタケルを読ませろ!・・・いや、読みたいというリクに答えてみました。 どうよ、こんなで。一応、幸せだと思うんだけど。 なんかヤマタケで「あ〜〜〜もう恥ずかしい!」ってぐらい甘いのって、まだ書いてない気がしたんだけど、私が忘れているだけでしょうか? なので、このシリーズはこんな感じで。 タケルからの一人称にするとどうも暗くなりそうで、ちょっと最初は危なかったけどね。持ち直しました、よかった、よかった。 出来上がっていくヤマタケというのもいいもんですv
つうわけで、これ読んで元気出せ!v(余計に出ないか?) しかし、本当、人づかい荒いよお!(爆笑) 私も癒されたいよ〜 癒しあいっこしようよー >以上、私信デシタv
ゆうべはさすがに眠れなかった。 ので、今日の太陽はやたらと目に痛い。 それでも、なんとなく、そのままにはしておけなくて、バンドの練習もサボって弟の部活が終わるのを待って、正門のところまで向かえに行ったんだ。 いつもなら、そんな風にゲリラ的に待ち伏せされてたりすると、一瞬おどろいたような顔をした後、満面の笑みになるんだよな・・。 が、今日は思い切り「困った」という顔をされてしまった。 ・・・あたりまえか。 それでも、一緒にいたトモダチと別れて俺のとこにやってきて。 けど、別に用があるわけじゃなかったから、ぶらぶらと、街並みをちょっと離れて歩くだけで。 何というか、何を言って良いやら、あんな後に。 顔を見るのすら、なんだか照れくさい。 それどころか、会ってからずっと目も合わしてねえや。 ちらっと見ると、向こうもちらっと見上げてくる。 ぱっと目が合い、ばっと離す。 うわ〜顔熱い・・。 誰か、どうにかしてくれよ・・・。 まいった。 マジで、なんでいきなり告ったりしちまったんだろう。 ずっと言わないでおくはずだったのに。 しかも、誕生日でもなければ、何の記念日でもないフツウの日に、しかも勢いで。 だって、コイツが・・。 コイツが、クラスの女の子から俺あてのラブレターなんか預かってくるから。 しかも、それを、なんだか苦しそうな顔で「付き合って上げてよ」なんて手渡すから。 つい・・・。 はっきり言って、この気持ちを言ってしまったら、今までの兄弟としての時間はすべて無になってしまうほどに思っていたから。 (きっと弟は俺を軽蔑するだろうし。そんな風に、実の兄に自分が見られていたってことに) 絶対に言っちゃいけないと思っていた。 もし、打ち明けるならそれは、すべてをカクゴした時だと。 だから、その時のことは、自分の頭でイメージしたことはあったけれど、まさかその先があるなんて思わなかったから・・。 こういう事態をまったく予測できなかったんだ。 両想い、つーか。そういうの。 ねえだろ、フツウ。兄弟で。 ・・どうすりゃ、いいんだ? 兄弟で、しかも色恋沙汰で両想いになった時って。
き、キスとか・・・そういうの、 しても、いいもんなのか・・?
いや、小さい頃ならキスとかさ、そういうの、たぶんしたこともあったような気がするけど。 でもそれは、単に唇と唇をくっつけただけのもんだったから。
「あの・・・」 「え? ええ?」 「ええ?って・・」 「あ、悪い。な、なんだっけ?」 つーか、キスどころか、まともに顔も見れないじゃん・・! 昨日まで、ごく自然にふれられてた肩とかも、昨日までは、まだ、ただの兄弟だったから平気だった。 髪にさわったり、軽く腕を握ったりとか、そういうのも兄弟のコミュニケーションの延長だったから。 いや、別に、離縁したわけじゃねーから、今日だってもちろん兄弟なんだけど。 「えと」 「んー?」 なんか、問い返すこういう声も、妙に甘くねえか、俺。 「あのね」 「うん?」 「さっきからね」 「ああ」 「同じとこ、ぐるぐる回ってない?」 「・・・え?」 そういや、同じスーパーがずっと角を曲がったらあるってのは変だよなと思ってた。 スーパーの角を曲がって、また曲がって、また曲がって、同じとこに帰ってきてたらしい。 やれやれ・・・。 一人で、くくっと笑う俺に、ちょっと赤い顔をしたオマエがくすっと笑う。 「なんか買って帰って、一緒に作るか?」 「うん」 「何、食いたい?」 「何でもいいよ、お兄ちゃんの作ってくれるものだったら」 「おまえも一緒に手伝うんだよ」 「え? あ、そうか」 「今日からはな」 「うん、今日からは」 答えて、タケルがにっこりする。 ああ、そういう笑顔にすんげえ弱い・・。 それに微笑み返して、カートを取りに行って横に並んだ背中を軽く押した。 その、微かにふれた指先がびりっと熱くなったけれど、それでも離すのには惜しくて、そのまま軽く肩に手を置いた。 オイ、恥ずかしそうに、ぽっと赤くなるなって。 こっちも、恥ずかしくて、ひたすら熱いよ。
いったいこの先、どうなっちまうんだろう。 でもまー。いいか。 どうなっても。 タケルが、俺のこと想ってくれてるってわかったから。 それだけで、充分だ。
それよりさ。 兄弟で、キスとかって、 マジでしても、大丈夫なものなのだろうか・・・?
一応。END
なんと、ここの更新を2ヶ月もしてないってことに気がついてね、何か軽いものをちょこっと書いてみようと思ったら、こんなことになりました。 ははは・・。 いや、しばらくなんとなく重いヤマタケを書いていたような気がするので、甘いのもいいかなあと。 ちなみに、この兄弟は、両想いになったばかりで、もちろんキスもまだで、とにかく顔を見るだけでドキドキという、大変かわゆらしいヤマタケであります。 中2と小5くらいかな? だんだん接近してくとこを書くというのも、またいいかなーとかって。フフフv 内容はないんです、甘いだけです、ハイ。
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