Scrap novel
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日曜日の朝。 布団から顔を出すと、息が白くて。 寒いのが苦手な僕は、また、うつ伏せのまま、こそこそと布団に戻る。 冬はどうしても、苦手だ。 寒いのが苦手なくせに、厚着や重ね着をするのも苦手で、そのくせ、 ついつい風邪をひく。 風邪にも苦手意識があって、僕の風邪はいつも症状がすこぶる酷い。 薄着をしているからだとみんなから叱られて、でも。 やっぱり寒がりなのに、あったかくするのが下手で・・・ そうして、また風邪がぶり返す。 そんな自分の無器用さに、いい加減嫌気がさすから、冬は嫌いなんだ。 ・・・でも。 自分で暖かくするのは苦手だけれど、温めてもらうのはとっても好きだ。 自分で、温かさをつくるより、ずっとずっと暖かいし。
少し布団から出ただけなのに、それすら寒くて、だから僕は、 隣に眠る人の腕にもぐって、少しばかり冷えた身体を温めてもらう。 「ん・・なんだよ・・・」 すこぶる寝起きの悪いこの人は、朝はいつも不機嫌だ。 金色の、お母さんゆずりの少し硬質の髪は、寝癖がつき易くぐちゃぐちゃで、 起きたばかりは、瞼も少し腫れぼったい。 いつもカッコイイと言われているこの人の、こんな姿を見るのは僕だけだと 思うと、そんなカッコ悪いお兄ちゃんが、僕には嬉しい。 「・・・何、笑ってる・・?」 「笑ってないよ」 「そうかー・・?」 「ねえ、エアコンつけてよ」 「んー? リモコンあるだろ?」 「リモコンまで遠いもん。お兄ちゃん取ってよ」 「・・・・・・」 「え? なに?」 「・・・・・まだ眠い・・」 「もう10時だよ」 お兄ちゃんは寝起きが悪いけど、寒いのは苦手じゃない。 僕は寝起きはいいんだけど、寒いのが苦手。 ・・どっちかが妥協しないと、いつまでもお布団から出られないんだけど? 「もう、起きようよ・・」 「・・・寝たの、明け方じゃん」 「それは・・お兄ちゃんの勝手だし・・・僕だって、そうなんだから・・」 「・・冷てえよなぁ・・」 「どうして」 「おまえのせいだろ・・・」 「・・僕のせいじゃない、でしょ」 ちょっと拗ねたように言うと、腕が背中に回されて、そっと身体を包み込む。 抱き寄せられた胸は裸で、そのパジャマの上はというと、今、僕が着ている。 その代わり、お兄ちゃんはパジャマの下だけ履いてるから、僕は当然足は 剥き出し。 いい加減、自分のパジャマ、買ってこないとね。 「ねえ・・ってば」 「・・お兄ちゃんが好きって、100回言ったら」 「〜〜〜〜〜〜〜」 そんなこと、ゆうべ、何回も言ったじゃない・・。 照れて真っ赤になる僕をよそに、ほとんど半分寝てるお兄ちゃんは、 そのまま、ズルズルと布団にもぐりこんでしまった。 「もう・・・」 ・・ま、いいか。 今日も一日寒そうだし、だったら、お布団の中で過ごすのも。 僕はあきらめて、布団にもぐったお兄ちゃんを追いかけるようにして、 もう一度、その胸に入る。
ああ、ここは、世界中のどこよりも、 こんなにも暖かだね・・・ 包まれると、すぐに眠くなってしまうくらい・・。
ああ、恥ずかしい・・・甘々じゃん。 もういいや、年内、これで突っ走ろう。 とか言って、来年もこんなんばっかり書いてたらすみませぬ。 もうちょっと、深い話が書きたいんだけどなー。うん、来年こそ。 鬼が笑いますかね? なーんていうことはない、中身のない話ですけど、タケルが冬が苦手という のと、ヤマトは寝起きが悪い。というのが書きたかったのです。それだけ。
2001年11月09日(金) |
メール3(ヤマトのリベンジ!) |
放課後、掃除当番で遅くなったタケルは、パソコン室までの廊下を一気に駆け上がり、息せききったまま、ガラリとその扉を開けた。 「ごめーん・・・掃除当番忘れてて叱られてたら、遅くなっ・・・」 いつもの笑顔でそう言ったタケルの言葉が途中で途切れ、開けた扉の間で足がぴたっと歩を止めて、中にいる人の顔に釘付けになる。 「おっせーよ、おまえ! じゃあ揃ったことだし、みんな行くぜぇ!」 相変わらず脳天気な大輔は気づかないが、京とヒカリが少し妙だと言う顔をする。 いつもなら、ここでタケルの最高の笑顔が見られるシチュエーションなのに。 少し強張った顔で、思いもかけず部屋の中にいた兄を見上げている。 そのヤマトといえば、こちらもいつもの、あの弟を見るなりつい表情がゆるんでしまうという微笑みもなく、どちらかというと怒っているような顔でタケルを見下ろしている。 「ちょっと来い」 言うなり、立ち止まっていたタケルの腕を取り、そのままグイッ!とひっぱって廊下に出るヤマトに、タケルが驚いたようにその背中を見上げた。 大輔は出鼻をくじかれた形で呆然とし、ヒカリと京が何事ならんと顔を見合わせる。伊織は少し、心配そうな顔をした。 「お、お兄ちゃん・・・?」 明らかに怒っているらしい兄に、まさか“あんなコト”でそうまで怒らないと思っていたタケルは、ちょっとだけ自分の悪戯心を後悔した。 もしも、ヤマトが怒っているとするなら、それ以外原因は考えられないから。
・・けど・・! だって、こっちだって、充分恥ずかしい思いしたんだから! あれくらいのイタズラで、そんなに怒んなくったって・・・!
心の中ではそう思うけれど、あまりの剣幕に声が出ない。 そのまま、腕をひっぱられたまま、空き教室を見つけると押し込まれ、後ろ手にピシャリ!と扉を乱暴に閉められる。 そして、見上げるなり伸びてきた兄の手に、タケルはびく!と身を縮ませると思わず目をつぶった。 「・・・な、なんだよ」 明らかに、そのタケルの反応に戸惑っているらしい兄の声に、恐る恐る目を開ける。 「え・・・?」 「何をそんなに怖がってるんだよ・・俺が殴るとでも思ったのか・・?」 あきれたように言われて、ちょっと涙目になる。 「だって・・・怒ってるもん。お兄ちゃん」 「怒ってたって・・おまえを殴ったことなんかねえだろ」 「ないけど。でも・・」 「それより」 また表情を作って、ヤマトがギロリとタケルを睨む。 「さっきはよくもやってくれたな!」 言うなり手が伸びて、盛大にタケルの鼻をつまんでひっぱった。 「痛い!痛いってば!! やめてよ、何するの、お兄ちゃん! 痛い〜!」 思わず赤くなった鼻を押さえるタケルに、ヤマトが笑う。 「お兄ちゃんをからかった罰だよ」 腰に両手をあてて弟の顔を覗き込むヤマトに、まだ“痛い・・”と言いつつも、なんだか笑いが込み上げて来る。 「もう・・お兄ちゃんってば、子供みたい・・」 「うるせえよ」 笑いながら言うヤマトに、タケルもついつられて笑って、それからふと気づく。 「あれ、バンドの練習は?」 「これから行く」 「え? それ言うためだけに来たの?」 「そう。メールじゃ鼻はつまめねえからな!」 笑うヤマトに、けどなんだか嬉しい気がして(鼻は痛いけど)タケルが微笑む。 その唇にそっとキスして、ヤマトが扉を開けた。 「じゃあ行くから。頑張れよ」 「うん・・」 2人して部屋を出て、廊下で兄を見送ろうとした時、タケルのDターミナルがメールの着信を告げる音をたてた。 誰からだろう?と不思議そうな顔でそれを開いたタケルは、その内容を読むなり、ぷぷッと吹き出した。笑いを堪える顔で見上げてくるタケルに、不審そうな顔でヤマトが見下ろす。 「メール、太一さんから」 いやーな予感がするが、とりあえず、聞いてみる。 「で・・・アイツ、何だって?」 「お兄ちゃん、鼻血出したの?」 「〜〜〜〜〜〜〜あのヤロ、余計なコトを・・・」 くるりと踵を返して、今にも太一を殴りに行きそうな勢いのヤマトに、タケルが慌ててそれを追いかけて、腕にしがみつく。 「ちょ、ちょっと待ってよ、お兄ちゃん!」 そこへパソコン室から追いかけてきたらしい大輔が『おい早くしろよ、タケル!』と苛々したように声をかけた。 「あ、ゴメン。大輔君! 僕、今日はパスするから。お兄ちゃんが具合悪いっていうから、家でゆっくり休ませた方がいいかなって・・・」 「はぁ?」 「タケルっ!」 「ね、お兄ちゃん」 腕を絡ませたままヤマトを見上げるタケルに、大輔がなんとなく面白くなさそうな顔で『わぁったよ!』とつっけんどんに言う。 「ごめんね、待たせて」 「べっつにィ! ま、いいけど。だいたい、おまえも今日変だったしな! ゆっくり頭冷やした方がいいんじゃねえの。授業中にイキナリわけのわかんねーこと言うしよォ」 ブツブツ言って立ち去ろうとするその捨て台詞に、タケルがカッと真っ赤になる。 「だ、大輔君!!」 「いきなり、立ち上がったかと思ったら『キモチ良かったです!』とか何とか。大方、居眠りでもしてヤラシー夢でも見てたんだろーけどな!」 「ちちちちがうよ! 変なこと言わないでよ!!」 「だってよー」 「もう! みんな待ってるんだし、さっさと行ったら?! デジタルワールド!」 耳まで赤くなって喚くタケルの後ろで、こそっと呟くヤマトの声がした。 「フーン・・」 「え・・・?」 ギクリとして振り返ると、ヤマトがにっこりと笑っている。 「なあんだ。やっぱ、キモチよかったんじゃん」 「何なに!? 知らないよ! 何の事だよ、もう〜!!;;」 「だからナニのこと」 さわやかに言われて、思わずさらに真っ赤になって絶句する。 「〜〜〜〜〜〜」 「イヤダとか言ってたけど、そうでもなかったんだ?」 「そ、そ、それは・・・・」 何の話かさっぱりわからず固まって立ち尽くす大輔に、ヤマトは“じゃあ、そういうことで、俺たち帰るから。悪いな”と笑いかけ、タケルの腕をひっぱり廊下をズルズルと引き摺っていく。 「やややっぱり、僕もデジタルワールドに行く〜!!」 「まあまあ、いいじゃん。今日のとこは。色々確かめたいこともあるし」 「えええ??? ちょっ、ちょっとお兄ちゃん!」
「大輔くうぅぅ〜ん;;」
廊下の向こうからタケルの声が響き渡り、大輔はぼけ〜っとそれを見送ると、脱力したように溜息をついた。 「わかってはいたけど・・・変な兄弟だよな・・・あいつら」 そして“さ、デジタルワールド行こっと・・”と誰に言うでもなく呟いて、タケルたちの反対の廊下をげっそり疲れたように歩き出した。
これで、リベンジなのか? 確かめたい事って何でしょうね???ニコニコv 日記で、一線越えると不穏もアリって書いたの誰? どこに不穏の影が??? 忍び寄るのは、イヤラシげなヤマトの影ってとこでしょうか。 (痴漢じゃないんだから!) なんだか、3に期待をして下さってた方に申し訳ない内容ですみませぬ(泣)
いつもなら、兄を待つ時は正門の外で待つことに決めていた。 出てきそうな時間を見計らって、少し離れた場所からずっと出てくるのを待つ。 けれども、今日はそうは言っていられない。 クラブ活動が終わって、真っ直ぐに小学校から走ってきた。 早く、早く、早く会いたくて。 それでも、さすがに校内に入るのはちょっと抵抗があった。 背中のランドセルが「僕は小学生です」と言っているし、誰かに咎められでも したら、兄に迷惑がかかるかなとも思ったから。 それで、放課後のひっそりした廊下でさえ、静かに音を立てないように歩き、 なんとか誰にも気づかれずに目的の音楽室にたどり着くけれど、そっとドアを 開けてみて、タケルは心からがっかりした。 誰もいない・・・ 「どこにいるんだろう・・」 つい声に出して言ってみて、 「ヤマトなら、体育館だぜ?」 と背中から掛けられた声に、思わず猫のように飛び上がって振り向いた。 2,3人の男子が顔を見合わせながら、フシギそうにタケルを見ている。 「おまえ、ヤマトの弟か?」 唐突に言われて、ドキリとする。 「え?アイツに弟なんていたっけ?」 「いるじゃん。しょっちゅう、弟がどうとか言ってるぜ」 「そうだっけ?」 “弟がどうとか”って何の話をしてるんだろうと気になるけど、今はそれより 兄を見つける方が先決だ。 タケルはにっこりして、どうやらクラスメイトらしき彼らに礼を言うと一目散 に体育館を目指した。
(なんで今日に限って体育館なんだろう・・・) 心の中で重い溜息をついた。 音楽室を訪ねるだけでも、相当勇気を振り絞ってきているものを。 体育館のそばまで走り、それからちょっと立ち止まって深呼吸する。 そして、その大きな扉を開くと、舞台の上に立つ兄たちの姿と、それを見に 集まった5,60人のギャラリーが目に入り、予想通りの光景に溜息もさらに 重くなってしまった。どうやら音あわせの最中のようだが、それはまるで、 ミニコンサートのようで、声など掛けられるはずもない雰囲気だ。 (どうしよう・・・) タケルは、深々と頭を垂れた。実は、こういう光景は苦手なのだ。 兄の歌う姿は好きだけれど、人気の兄を持ってちょっと誇らしい気もするけれ どそこで歌っている人は、なんとなく、自分の大好きな兄とは違う人のような 気がしてしまうのだ。 扉から舞台までのこの長い距離以上に、兄との距離をまざまざと感じてしま うから。 (・・・やっぱり、外で待とう・・) なんとなく、孤独感を募らせて、タケルがヤマトのいる舞台から背を向け、 その扉の外に出ようとした時、ゴト・・とマイクが床に置かれるような音がし た。その音に振り返ると、ヤマトがひらりと舞台から降りタケルの方に向かっ て、駆け寄ってくる。 視線がタケルに集中して、タケルは思わず、気恥ずかしさに頬を染めた。 そのまま、ヤマトがタケルの腕を掴み、体育館の外へと引っ張っていく。 「あ・・ゴメン。練習中に邪魔して・・!」 何しに来たんだ!と叱られるのかと思い、慌ててヤマトの背中に声をかける。 「いや、全然構わないけどな。アイツら、うるせーから」 体育館の影に来て、ヤマトが思いがけない弟の来訪に嬉しそうに笑った。 怒っていないと知って、タケルが少しほっとしたような顔になる。 「それより、どうした?」 「あ、えと、ううん。やっぱり後でいい」 「そうか? なら、もう少しで終わるから。ここで待ってるか?」 「うん」 「じゃ、待ってな。出来るだけ急ぐから」 言って行きかけて、ふと気がついて慌てた様子で戻ってくる。 「何?」 タケルが不思議そうに見上げるなり、その肩にバサ・・とヤマトの上着が掛け られた。 ヤマトの匂いのするグリーンの制服。体温の温もりがまだそこにある。 「寒いだろ、着とけよ」 「あ、あの、お兄ちゃん!」 「ん?」 振り返るその顔に、なんだかわけもなくドキリとして、後からと思っていたの に口が勝手にしゃべってしまう。 「僕! 僕、レギュラーに選ばれたんだ! 今日、さっき、決まって・・! それで、それでお兄ちゃんに・・・」 言い終わらないうちに、兄の腕がその身体を抱き寄せた。 「一番に報告・・」 ぎゅ・・・と抱き締められて、声が小さくなる。 「だ、誰かに見られたら・・・」 「構わねえよ。そうか、そうか! おまえ頑張ったもんな。おめでとう」 「あ、ありがと・・」 「よかったな。お祝いしような」 「・・・ん」 髪をくしゃっと撫でられると頬を染めて、さも嬉しそうにする弟に、ヤマトが 肩を抱き寄せて、その顎をくいと指先で持ち上げる。唇が、そっと重なる。 「お、お兄ちゃん」 「前祝い、な」 言って微笑むと、もう一度、今度は深く口づける。 そして、笑みを残して体育館に戻っていく兄を見送って、タケルはその壁に 凭れると、今、兄が触れたばかりの唇にそっと自分の指で触れた。 肩には、ヤマトの制服が掛けられている。 バンド活動のおかげで人気もあり、いつも歌っている兄に距離を感じて時折 辛くなっていたけれど、そんな風に遠くに感じる時に思いかけず傍に来てく れる。そういう時の嬉しさはまた格別だから、そして自分がヤマトにとって 特別な存在なのだと思わせてくれるから。 こういうことがまたあるのなら、もっと兄のライブに積極的に行くのもいい かなと小さな優越感を感じながら、タケルはヤマトの上着に背中を抱かれる ようにして、兄を待つ時間を楽しんだ。
えと、777HITリクに書いたお話の番外編という感じのお話です。 タケルがレギュラー決まって一番にヤマトに報告に行ったというとこが 本編(?)では書ききれなかったので。 それと、ヤマトのあのグリーンのブレザーの制服姿がとても好きなので、 あれ、タケルの肩にかけてあげてくれたら嬉しいな〜っとv そういう妄想もあってのお話でございました。
2001年11月05日(月) |
あなたの存在(番外編) |
何時間か眠り込んでいたらしい。ソファにもたれていた首が少し痛い。 ヤマトは首を振りながら身を起こすと、膝の上で眠っているはずの弟を 見下ろした。 タケルは、いつのまにか目を覚ましていて、上体を少し起こし、なんだか もぞもぞとしている。心なしか、頬が赤い。 「タケル?」 呼びかけるなり、ぎくっとしたように兄を見上げる。 「どうした? 足が痛むのか?」 聞かれて、ううんと首を振る。 「なら、どうした? 顔赤いぞ。熱が上がったのか?」 言って、タケルの頭の後ろに手をやって、自分の方へ引き寄せると、自分 の額とタケルの額をそっと合わせる。 「あ、熱下がったみたいだな。よかったじゃん。・・・ってことは」 考えて、心ここにあらずという感じでまだモゾモゾしているタケルを見て なるほど、そういうわけか、と思い当たって納得する。 「我慢してると、体に悪いぜ?」 「え、な、なななに・・・???」 急に腕に抱き上げられて、タケルがあたふたと慌てたように身をよじる。 「トイレだろ」 「え・・・・」 あっさり言われて、真っ赤になる。 「ちちちちちがうよ!」 「じゃあ、なんだよ」 「え・・・・えと」 「ま、とりあえず、一回いっておけよ。おまえ全然行ってないだろ」 「で、で、でも、どう・・・・」 どうやって、と言いたいらしいタケルに、言われてみれば、なるほど立って するには足は包帯で覆われている状態だし、片足で立つのも、今日はまだ それすら難しそうだ。 「じゃあ、俺が後ろで支えててやろうか。ついでに手も添えてやるぜ」 いやらしげな笑いを浮かべる兄に、上目使いにタケルが見上げる。 「手を添えるって・・・何に?」 「xxx」 「なななななに言ってるのもう!!!!お兄ちゃんの変態!」 「なんだよ、その言い方は! 人がせっかく・・・! あ、そうか」 トイレの前で言い争っていても埒があかず、しかしよく考えてみれば坐って すれば何も問題はないわけで。 ヤマトは一人納得すると、トイレのドアを開け、タケルを抱いたまま、中へ と入った。 しかし。 蓋をあげて坐らせたまではよかったが、パジャマのズボンを脱がそうとして、 ウエストのゴムに手をかけるなり、また大騒ぎとなってしまった。 「おおおお兄ちゃん、やだ、やめて!」 「やめてって! おまえ、どうでもいいけど、早くしねえと漏れるだろうが」 「だって、いやだったら!」 慌ててズボンを押さえて、ヤマトの手を引きはがそうともがくタケルと、もう 待てないと強引に、またそのタケルの手をはがそうとするヤマトとの間で争い は続き、しまいにはタケルが泣き出しそうな声をあげる。 「いやあああっ!」 「・・・・それじゃあ、まるで俺が襲ってるみたいじゃねーか・・・」 疲れた声でそう漏らすと、とりあえず横向いてるからと固い約束をして 「絶対見ないでよ!」とまだ念を押され、とにかくパジャマのズボンとパンツ を下ろしてやると、今度は退室を命じられる。 ヤマトはタケルを残してトイレの外へ出ると、ずるずると疲れたようにドアに もたれて坐りこんだ。 (なんで、こんなことで疲れなきゃなんねーんだ・・・) 考えて、余計どっと疲れる。 母さんしかいなかったら、どうするつもりだよ、まったく。 別にやましい心がないわけではないわけではないわけではないが。 <どっちだよ・・> だからといって、あそこまで抵抗されると、妙に興奮するじゃねえかよ。 なあ・・・・ そう思いつつも、平常心平常心と自分に言い聞かせてゆっくりと立ち上がる。 その途端、中から遠慮がちなタケルの声が聞こえた。 「お兄ちゃん・・・・パンツ一人で上げらんない・・・」 その言葉に、ヤマトは大きくため息をつくと、脱力したかのように再び、ズル ズルとその場に坐りこんだ。 (挑発すんなって、もう・・・)
えと、これはキリリクのお話に入り損ねた(だってコメディだもん;)番外編 でございました。こういうの書いてると楽しいわ。書くのも早いし。 なんか小5くらいって、一番恥ずかしがりそうだもんね。うふふ。 というわけで、これもついでによろしかったら777HITリクのうみさんに。 さすがにこれはいらないって言われるかも(笑)
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