世界不変
あの日、世界は変わったと思ったのに。 ----- 東日本大震災のその日、その年、日記は書いていなかった。 関東のオフィスで仕事をしていた自分は 会社の椅子が勝手に動くほどの揺れで 慌てて家の近くに住んでいる親戚に電話をした。 仕事はほぼストップで気づけば外が暗く、 電車も駅もパニック状態だと言うから、家には帰れず 会社の同僚の家に泊めてもらうことになって ショッピングモールで必要なものを買って1時間くらい歩いた。 オフィスが多い場所だったから 会社で泊まろうとする人が食べるものを買うのに殺到して 家に歩いて帰ろうとする人が急ぎ足で去って行って でも、ひどく現実味がなくて、誰もが同じようなことばかり繰り返し話していた。 次の日は晴れていて、電車も動いていて、昼前に家についた。 スーパーの棚が空っぽになっていたことだけ、妙に現実だった。 ----- 震源近域の方々からすれば何の被害もないような場所で ボランティアも行けたわけでもなく ほんの少し募金をして、2日後くらいから普通に仕事をした。 普通に仕事をするというその仕事が、 誰かの直接の役に立つことじゃなかったから それも現実感がなかった。 たくさんの方が亡くなって、怪我をして、生活が破壊されて でも同じ国で普通に仕事をするんだ。 ----- そうして今、違う国で、ぜんぜん違う理由だけど たくさんの方が亡くなって、怪我をして、生活が破壊されて、 違う国で普通に仕事をしている。 それだけじゃないな。 自分の知らないところで、いつもそんなことは起きている。 また昨日も普通に仕事をした。 意義の低い会議の中で、黙祷もしないで。 ----- あの日、自分は変わったと思ったのに。
2022年03月11日(金)
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